怪しさが露呈した自衛隊派遣の世論調査

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新型コロナウィルスのニュースに紛れてしまったが、中東地域の「調査・研究」にあたる海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が1月横須賀を出港し、安倍晋三首相がトランプ米大統領に約束した中東でのプレゼンスを本格化した。その前にはP3C哨戒機2機が先行して現地で行動している。問題は、この自衛隊派遣について、ほぼ同時期に行った大手マスコミの世論調査結果が極端に異なっていたことであり、とあるメディアが調査の信頼性に疑念を投げかけた。何故か。自衛隊派遣に対する賛否がほぼ逆だったからだ。

同じ調査のはずが、真逆の結果

一つは共同通信が1月13日付朝刊用に出稿した電話世論調査の記事。全国の共同加盟紙に一斉に載った。IRカジノ誘致と自衛隊の中東派遣を一緒に聞いており、記事も散漫になったきらいがあるが、1月11、12の両日電話した調査によると、自衛隊の中東派遣に「反対」が58.4%、「賛成」の34.4%を上回った。12月の調査では「反対」は51.5%だったので、反対が増えたことになる。ちなみに昨年8月に行った調査でも「派遣するべきではない」が57.1%、「派遣すべきだ」は28.2%だったので、トレンドは変わっていない。
ところが11日から13日に電話世論調査を実施したNHKは「賛成」が45%だったのに対し、「反対」は38%と賛成意見の方が多かったという。さらに極端なのは産経新聞。12、13の両日フジFNNと合同で行った調査では「賛成」49%、「反対」35.3%と半数近くが「賛成」と答えており、いずれも共同通信の調査とは極端に異なっている。翌週行った読売新聞の世論調査でも、中東派遣を「評価する」は50%、「評価しない」は35%だったという。

答えを誘導しようとする質問つくり


調査によって、こんなに違うのか。先のメディア子は各紙の設問を調べてみた。するとNHKはこう質問していた。


中東地域に原油の大半を依存していることをふまえ、政府は、自衛隊を中東に派遣し、日本に関係する船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化するとしています」


とした上で、中東派遣に賛成か反対かを聞いている。
産経に至ってはもっと露骨だ。

「エネルギー供給の大動脈である中東地域での日本関連船舶の安全確保に向け、政府は情報収集態勢を強化するために海上自衛隊の艦船などを派遣する方針です」


と具体的に述べた後、賛成か反対かを問うている。
裁判でこんな質問をしたら「誘導尋問だ」と異議を申し立てられるだろう。しかし、一見中立的な「世論調査」ということでまかり通っている。また、それらを読んだり聞いたりしている私たちも、設問の問題点まで立ち入らず、結果だけをみて論じてしまっている。

誘導から洗脳に転化する恐れも


市民がふっと疑問に思って調べてみると、これだけ怪しい記事がまかり通っていることに気づいてしまう。今に始まったことではないが、マスコミが垂れ流す記事が「忖度」以上の阿りに終始していると思われてしまったら、信頼性は一気に失われるだろう。
だが、もっと恐ろしいのは、こうしたプロパガンダを毎日のように見聞きし、「ほら世論はあなたと同じだよ」と囁かされるうちに、すっかり洗脳されてしまいかねない恐れがあることだ。わずか80数年前の日本人のほとんどがそうだったことを忘れてはならない。「知識人」と見なされていた人の大半が真珠湾攻撃に喝采を叫んでいたのだったから。