日本の神社に通じ合う朝鮮半島の堂と呼ばれる祭祀
朝鮮半島の堂(たん)と呼ばれる祭祀は、日本の神社に通じ合うものがある。この堂は、ほとんど村ごとにある。村を最初に開拓した先祖だ。場所は樹木が密生している中で、ひと際大きな木の根元などに小さな祠があり、ここで近親者や子孫などによって祭祀が行われる。祖先を祭るということでは日本の神社や古墳に似ている。
堂の森は日本の村々にある鎮守の森を、ほうふつとさせる。古代史家の三宅和朗氏は「古代の神社と祭り」の中で、万葉集では森と杜はモリと訓み「神社」もモリと訓んだ例を挙げて、鎮守の森ももちろんだが、森の空間こそ神が住むところであるという考えがあったのだろうと説いている。
堂の祭りは天候が悪いと、公民館や体育館などで行われる。ただしこの堂はソウル市内でも、ほとんど見かけることはなくなった。ソウルで泊まっていた下宿の主人は「堂は榎などの古木の根元に、白砂を敷いて瓶に花をさした程度の簡単な祭壇だが、都会ではもうしばらく見ていない」といった。
堂を四種類に分類
堂については、朴桂弘氏の「韓国の村祭り」、金泰坤氏の「洞(とん)神堂」、同「韓国の巫俗」、岡谷公二氏の「神社の起源と古代朝鮮」、文武秉氏の「済州島の堂信仰研究」などを大いに参考にさせてもらった。
偶然、ソウル市の郊外で見た堂は、雑木林の榎の古木根元にあった。こぶや空洞のある榎の根元に、花瓶や酒缶が並べてあるごく簡素なもので、祭祀が行われてからずいぶん経っているようだった。神が触れたものは神聖だから、祭壇は片づけないでそのままにしてあるという。
社会学者の金泰坤氏は「洞神堂」で、堂を四種類に分類している。「洞」とは韓国の行政単位で「村」に当たるので、差し当たり「村の神社」ということになる。まず①は神樹だけのもの②神樹の下に石の祭壇などのあるもの③神樹の傍らに堂舎の立っているもの④神樹の有無は別として、堂舎が殿閣風で立派なものーの4種類である。このうち①は、原始からの姿をとどめているとされ、②以下は時代の順に変化がうかがえるとされる。
堂の主催者は巫女
また堂は地域ごとに呼び名が異なっている。例えば山神堂、国師堂、ソナン堂、コルメギ堂、堂山、本郷堂などである。堂では「クッ」と呼ばれる儀礼を行う巫女(シャーマン)が主催者となって、人々の悩みを聞いてアドバイスをする。歌や踊り などもして人々と一体になる役割をしている。
一方済州島では、堂で祭られている神には、天を司る玉皇上帝、日月の神、穀の神、一族の祖上神、産育の神、山の神、風の神、雨の神、漁業の神、狩猟の神、竈の神、厠の神などがあり、複数の神を祭る堂もある。
生活の周辺にある目に触れるものは「すべて神宿る」という考えがあるといわれ、日本には、百万(やおよろず)の神がいるが、済州島では1万8千の神々に出会うという言葉がある。
どこにも等しく来た正月の神
仏教では山川草木悉皆(しっかい)成仏と言われる。人間は生あるものすべてに謙虚でなければいけないと戒めているのだと言われるが、堂と神社には通じ合うものを感じる。
そういえば、子供のころ、関東平野の北の方で育ったが、正月が近くなると東西南北の神、門や玄関の神、風の神、風呂の神、台所の神、竈の神、井戸の神、厠の神、また裏山の古木、小川の橋のたもとなど目に入るものほとんどに、お正月の飾りをつけた記憶がある。正月の神はどこにも等しく来たのだ。
(了)