コラム「番犬録」第33回  高市首相、憲政史上最悪の「国会軽視」 これが「独裁政治」の始まりでなければいいが 「寝ていない」とのX投稿に批判の声  「記憶がない」との表現ばかりの秘書の陳述書 「出来レース」だった男尊女卑の改正皇室典範 心ない小泉防衛相の「とんでも発言」

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 7月24日朝、新聞のラジオテレビ欄に「衆院予算委の中継」という文字がないので、思わず、NHK視聴者窓口に電話した。「開催が決まったのが遅かったので、新聞には載っていないところもある」との返事だった。午後1時からの予定だというので、メモ取りをするために、いつものように、鉛筆と紙を手元に置いてテレビの前で待った。中継を埋める番組が続き、2時間たったら何の説明もなく午後3時、大相撲中継に切り替わった。

 この日、高市早苗首相が出席する衆院予算委があり、私の今の最大の関心事である「誹謗中傷動画・暗号資産サナエトークン」疑惑の答弁があるというので、前々日に1カ月ぶりに、やっと出た高市氏の公設秘書・木下剛志氏のA4版で5ページの「陳述書」を塾読。待ち構えていたが、結局、空振りだった。参院特別委での「副首都構想関連法案」の審議がもめにもめ、これに合わせて衆院予算委の集中審議も行われなかったということらしい。「らしい」と書くのは、私が見る限り、マスメディアによるその理由をきちんと説明した報道が見当たらなかったからである。

 副首都法案で野党側の抵抗が続き、国会が再延長となれば、一刻も早い幕引きを狙って、様々な理由を付けて、真正面からの野党質問から逃げに逃げ、最後には憲法の首相の「答弁責任」をないがしろにする禁じ手である秘書の「陳述書」提出まで持ち出した。この問題を避け続けたこうした高市氏のたくらみが台無しになる。

 なぜならば、あくまでも私の推定だが、副首都法案の成り行きが不透明な中で、答弁に応じてしまうと、再びこの疑惑で答弁に立たなければならなくなると首相側が考えたからではないかとにらんでいる。

 首相側が「中傷動画・暗号資産」疑惑の首相答弁はこの1回で終わりにしたいと考えたとしても不思議ではない。結局、24日夜、法案は参院本会議で成立したので、27日に「閉会中審査」として、衆院予算委は行われることになった。高市氏にとっては、これで「閉会中審査」に応じたという野党への言い訳にもなったのではないか。

 なぜ、このことをくどくど書いたかというと、参院での副首都法案と衆院予算委審議は全く別の話である。高市氏は参院特別委に出ていたわけではないし、副首都法案は閣法ではなく、議員立法である。連立相手の日本維新の会が2度も失敗した「大阪都構想」を実現するための維新のための法案であり、高市氏にとっては、維新へのアリバイという意味あいもあるが、首相の座を維持するための法案でもある。

 そこには、衆院予算委審議を止めるまでの必然性は見当たらない。国会答弁が嫌で嫌で仕方がない高市氏に自民党が気を遣い、(あるいは首相側が要求した可能性も)これに野党が同意してしまったとしか思えない。

 27日の衆院予算委でも、肝心な木下秘書や起業家の松井健氏が出席する参考人招致や証人喚問でなければ、「記憶がない」という表現ばかりの「陳述書」が中心となり、高市氏は「陳述書」提出を理由に逃げ切る気だろう。野党側に何か新たな追及材料があれば別だが、あまり期待できない。これを事実上の幕引きにしてはいけない。

 事実上の特別国会閉幕翌日25日の朝日新聞朝刊は、高橋純子編集委員の「多事奏論=最低最悪(仮)の国会 数で押し切る『やましさ』は?」が相変わらずの鋭い切り口で今国会での高市政治を総括している。

 その冒頭部分だけ紹介しておく。

「言葉を探している。審議時間が少ない。まともに答弁しない。そもそも首相が出てこない。そんな途方もないないないづくしのなか、戦後日本が大事に守り、育んできた『自由』『平等』といった価値を毀損する法案をバカスカ成立させたこの、ありえない国会を論評するのにふさわしい言葉を。『最低』では不十分。『最悪』でもだめ。『最低最悪』で少しは近づいた気もするけど、まだ足りない」と高市氏の極端な「国会軽視」を断罪する。

 その上で「ひょっとすると、現存する日本語ではもう追いつかないところまで事態は進行してしまっているのかもしれない。恐れ入谷の鬼子母神、ウソを築地の御門跡」。

 一方、毎日新聞の同じ日の朝刊、高橋氏と並んで私がいつもその感度に注目する伊藤智永専門編集委員が「土記=サナエ推しの政治責任」でこう書く。

 高市首相に仕える政府高官がポツリと漏らした。「考えるのがつらい」。そのことを別の高官がこう解説する。「そんなことも分かっていないのって驚かせることが多く、知っているつもりで目配り不足で間違っているのに、資料読むだけで誰の説明も聞かないから」。確かに、そうならば高市氏を支える高官は「つらい」はずである。深く同情する。

 「自民党職員が昔『条件の不利な自分はウソをついてもいいと信じている人』と高市氏を形容していた」と「土記」は続ける。

 確かに、時々、問題となる米国時代の過去の履歴。総裁選当時の「シカを外国人が蹴った」発言や今回話題となった「0~3時間しか寝ていない」の高市氏のX 発信も「ウソ」とは断定不可能だが、真偽不明だ。何度も言うが、高市氏のXフォロワーは約290万人。国会答弁を嫌い、記者会見もしない。時々しているように見えるのは、マイクのあるテーブルの前であたかも記者会見をしているように演じているからだと思う。「偽装会見?」。

 「それを無邪気な『サナエ推し』が盛り立て、健康な議論を封じているなら、そこには紛れもない政治責任が伴う」というのが伊藤氏の結論だ。

 1日前の24日付の朝日朝刊。久しぶりの長谷部恭男・早大教授(憲法)、加藤陽子・東大名誉教授(日本近現代史)、杉田敦・法政大教授(政治理論)、おなじみトリオの「考論=国会軽視内閣を憂う」で杉田氏は以下のような重要な指摘をしている。

 ここで加藤氏も今回成立した違憲立法と言われる「国旗損壊罪」について、「(法律の保護法益である)『国民の感情」は極めてあいまいで、議員立法で内閣法制局の厳密な審査を経てない点などを含め、戦前の治安維持法を想起させる」と論じている点もとても大事なので付け加えておきたい。

 杉田氏は「歴史的に見て、人気投票によって作られた権力は独裁的になり、議会を必ず邪険にします。高市さんは、ナポレオンなど典型的なポピュリスト指導者の轍を踏んでいます」とする。杉田氏の言葉は未来のことを言っているのではない。今のことをこう断言する。

 選挙で大勝ちしたのだからなんでもできると思っている節がある高市氏の乱暴な政権運営を見ていると、支持率こそ落ちてきてはいるが、「高市独裁」の始まりでなければいいがと思わざるを得ない。それを支えているのは国民である。もう、いい加減いしてほしい。

▼ 「立法府の総意」という欺瞞

 久しぶりに朝日7月18日付朝刊の改正皇室典範について論評した「天声人語」が私の胸を打った。読んでいない方もいると思われるので要旨を紹介する。

・男性だけだった日本の首相にも、昨秋、女性が就いた。21世紀だから、当然だろう。驚いたのは、その人がトップの政権でこれほど女性排除の論理に満ちた法律ができたこと。

・男系男子に固執した養子制度を導入するだけではない。将来にわたり女性・女系天皇の誕生を遠ざける内容も盛り込まれた。これを「国民の総意」と言うには無理がある。

・明治の時代にできた制度なのに仰々しく「伝統」だからとは言えない。「皇位の継承は2600年以上」とは神話に基づく話だ。時代錯誤の吹聴をするわけにはいかない。

・きのう参院本会議のさなか、都内各地には驟雨が降り、雷鳴が轟いた。むっとした夏の風がほおをなでていく。いま私たちの国が失おうとしているもの、その大きさを思う。

 衆参計6時間余りのこの問題についての国会論議での木原稔官房長官の答弁をみると、「立法府の総意」や2021年の「有識者会議」の結論にのっとっている、との言い訳が目立つ。まるで決めたのは高市政権ではないかのような言いぶりにあきれる。

 本会議での採決後の17日夜、高市氏はさも正式な記者会見のように装った形でマイクの前に立ち「皇室典範改正は皇族数減少の現状に鑑み、一刻の猶予もない喫緊の課題と意識してきた。長年にわたった検討に結論を出し、実現に至ったことは感慨深い」と目をキラキラと輝かせて満足げに語った。肝いり法案のはずなのに、国会答弁は官房長官任せ、記者団からの質問もほとんど見られない。現天皇からの皇統や「国のかたち」が変わり得る重要法案が成立したのだから最低限、記者会見は必要だった。

 17日の参院予算委での論議。立憲民主党の蓮舫氏は旧11宮家の男系男子皇族の養子に迎えることに「本来、急ぐべきは、皇族数減少にもつながっている男系男子へのこだわりではなく、長子優先、女性天皇実現も可能とする議論ではないか」と政府案に真正面から異議を唱えた。

 これに対して、高市首相は「皇室典範は皇統に属する男系男子がこれを継承すると定めている」とひとこと。これは現行の皇室典範に書かれて条文を示しただけで、蓮舫氏の質問にまともに答えているとはとてもいえない。高市氏の男性に媚びたように見える「男尊女卑」の体質を国会答弁の形で議事録に残すのが嫌だったからかとつい勘ぐってしまう。

 さらに、蓮舫氏は「今上天皇と旧宮家の隔たりは36から38親等。血筋をたどると親戚とはもはやいえないのでは。05年の有識者会議報告書でも遠い血筋と断言している。だからこそ、天皇の一親等直系長子の内親王殿下への皇位継承を認めることこそ、憲法に規定する世襲の原則に沿うものではないか」と見解をただした。

 高市首相は「明治天皇の時代に、32親等の隔たりのある皇族の男系男子が養子となられた例がある」と述べて男系であっても女性天皇に否定的な考えを示した。(以上、朝日から)

 このことは私も初めて聞いた。立民の辻元清美参院議員は早速、宮内庁に直接確認し、「調べてみると、確かに2例ある。しかし、どちらも旧皇室典範制定前の事例で、制定後はこうした養子縁組は廃止された。また、皇位継承とは関係のない養子縁組だった」とフェイスブックに投稿している。高市氏は秘書に調べさせたのだろうが、「32親等」は皇位継承問題とは全く関係がないということになる。辻元氏の「議論を横にそらしたのでは」との指摘に納得する。

 さらに、蓮舫氏は「朝日、読売など全国紙が社説で養子案や政府の姿勢を厳しく批判している。他方で、旧統一教会の機関誌の『世界日報』、自民党の支援団体である日本会議は旧宮家の皇籍復帰を歓迎。大手メディアの論調より世界日報や日本会議の方が国民の理解と支持に近いのか」と追及。高市氏はこの質問に対しても「様々な報道がなされているのは承知しているが、報道機関の考えについて所感を言うのは控える」(以上、産経新聞のWEB版から)と逃げた。

 表面には出ないが、「男系男子による皇位継承」は日本会議など右派団体の以前からの悲願であり、地方での草の根の意見書採択運動が続いているのは周知の事実である。

 在京新聞でも、産経を除いて普段は政府寄りの読売新聞、日本経済新聞が今回は朝日、毎日新聞、東京新聞や地方紙と同様に政府案を強く批判する論調を展開してきた。これは、最近は珍しいことである。それほどひどい法案だったことになる。そういう意味で、残念ながら、皇室典範改正問題は「オールドメディアの敗北」と言われるかもしれない。

 「立法府の総意」だったのか。結果として13党派中、5党も反対があったのだから、とても「総意」などとは言えない。それだけではない。態度がはっきりしない中道に賛意を促すため“策略”がめぐらされていたー。

 毎日18日付朝刊「崩れた『立法府の総意』」によると、7月上旬、森英介衆院議長ら衆参正副議長と木原官房長官らは都内でひそかに会談した。10日に典範改正案の審議を控え、調整を図るためだ。正副議長側は養子の子の皇位継承資格や女性皇族の夫や子の身分をめぐる質問に対する答弁で、木原氏にある文言を含めることを強く要請した。

 その文言とは「将来の検討を先取りし、縛るような趣旨ではない」。

 6月30日に国会提出された改正案では、養子の子には皇位継承権があることなどが明示された。「立法府の総意」では示されず、野党側が反発した。ひみつのこの会談で木原氏は沈黙の後、「分かりました」と答えた。

 この文言は立民身の福山哲郎参院副議長が中心となって森氏と協議したという。野党から、見直しの余地を残す答弁と受け取られ、中道が賛成に回る一因になった、と書かれている。元々与党だった公明党の姿勢もあるが、野党第1党の中道が土壇場で賛成したことは大きい。そもそも、「立法府の総意」など出来レースだったことにならないか。福山副議長はこの日、賛成票を投じたと明かした。

 さらに、明治時代の旧典範を含めて皇室典範が養子を禁じているうえ、05年の前の有識者会議報告書が排除したはずの旧宮家からの養子案が今回の改正皇室典範でなぜか復活し、実現してしまった。その大きな理由のひとつには、「皇族数の確保」という目的を掲げながら、21年の有識者会議の報告書が悠仁親王までの流れを前提にしていることにもある。「皇族数確保」はダミーだったともいえる。

 報告書は「皇族数が減少する中で、皇族が養子を迎えることを可能とし、養子になった方が皇族となり、皇族の役割、皇室の活動を担っていただく、ということはとりうる方策である」として「その場合、皇族が男系による継承を積み重ねてきたことを踏まえると、養子となり、皇族となる者も、皇統に属する男系の男子に該当する者に限ることが適切であると考える」と踏み込んでしまっている。旧宮家からの養子案はすでにこの時からの既定路線だったといえる。だから、木原官房長官は21年「有識者会議」の結論を答弁で持ち出すのだ。

 やはり「立法府の総意」は出来レースであり、結論は初めから分かっていたということにならないか。全く国民を馬鹿にした話である。(7月18日)

▼小泉防衛相は被爆体験者の声を聞いたことがあるのか

 「ひとたびは焼け滅びたる街を埋めビルの群れ建つ墓標かと思う」

 7月20日付朝日文化欄に載った「語る 人生の贈りもの」シリーズの被爆体験者、切明(きりあけ)千枝子さんがかつて詠んだ短歌である。その意味を解くとー。

 唯一の戦争被爆国「日本」、広島の平和の象徴、原爆ドームのある平和記念公園。そこは原爆が落とされる前は広島有数の繁華街だった。81年前の8月6日、大きな旅館や映画館があっという間に壊滅した。

 でも、それを片付ける力は戦後の広島にはなかったんです。だからね、ご遺骨も拾いきれないまま、がれきの上に土を盛って、木を植えて公園にしちゃったの。私はいつも「あれは戦争公園だ」と思っている、と切明さん。

 (だから)、公園を歩く時には、心の中で「ごめんね、踏んづけてごめんね」って謝りながら歩きます。平和公園ばかりではありませんよ。広島の街中、穴を掘っちゃご遺体を埋めていました。みんなあの惨禍を忘れていますがね。

 だからといって、なかったことにされてはたまらないぞという気持ちがあります。また戦争をしないという保証はどこにもない。

 切明さんは、女学校時代の15歳の時、爆心から約1・6キロの地点で被爆。96歳の今も被爆体験を語り続ける。

 被爆から長い年月が過ぎ、まもなく来月の6日に81回目の記念日を迎える広島。切明さんのような「語り部」は少なくなる一方だ・・・。

 派手なパフォーマンスが売りで昨年10月の自民党総裁選で大方の予想を覆して高市氏に敗れた小泉進次郎防衛相。45歳の若さだが、高市後の宰相の座を虎視眈々と狙う。元々「タカ派」なのかわからないが、このところ「原潜導入の是非」に踏み込むなど、タカ派イメージ売り込みに余念がない。

 その小泉氏。19日までに公開されたインターネット番組「言論テレビ」で、私から見れば、防衛相としては踏み込みすぎの「とんでも発言」をした。言論テレビは日本会議の論客でジャーナリスト,櫻井よしこ氏が司会をつとめる。

 20日の毎日などの報道によると、小泉氏は、防衛力強化のために、核兵器に関する議論の必要性に言及。国内において議論するのが難しい課題だとした上で「触れざるを得ない」と述べた。ロシアのウクライナ侵攻後の欧州の動向に触れ、安全保障環境の変化を踏まえ「あらゆる政策をタブーなく議論し、進めなければいけない」とも語ったと報じている。

 高市氏はその編著書で「非核3原則」は「持たず、作らず、持ち込ませず」のうち、「持ち込ませず」について「邪魔」とまで書くなどその見直しが持論だ。高市政権が年内に予定する安保関連3文書の改定で、これに踏み込むかが焦点となっている。小泉氏の発言はこのことを念頭に置いたものだろう。

 核兵器に関する議論が「タブー」となっているのは、唯一の戦争被爆国で2度と核兵器による惨禍を起こさせない、という日本の決意を表したものではなかったか。現職の防衛相である小泉氏の発言は微妙な言い回し方ではあるが、ひと昔前ならば、「とんでも発言」として、マスメディアから追及を受けてもおかしくない内容だった、と私は思う。

 切明さんのような被爆体験証言者の心からの叫びは、このように心ない政治家により少しずつ裏切られていく。 (7月20日)

▼連休中も睡眠不足で「書類の山と格闘」 支持率落ちXでアピールする高市首相 

 7月21日の毎日朝刊がこのところ世論調査で支持率大幅減の高市首相に“猛烈パンチ”を放った。「高市首相『0~3時間睡眠が常態化』 Xで多忙ぶりアピール」との見出しできつい一発をかました。

 毎日の記事によると、高市氏は20日夜、自身のXに、7月に入ってからの週末は経済財政運営の指針「骨太の方針」などの「分厚い資料を早朝から深夜まで読み続けた」などと記し、睡眠不足の状態で「書類の山と格闘」して過ごす多忙ぶりをアピールした。

 18、19日の土日については「文書の最終案を読み込んだり、数千通も溜まってしまったメールの処理で20日の明け方まで仕事に追われた」と紹介。首相就任以来の睡眠時間は「0時間~3時間睡眠が常態化」していると説明した。「久々に5時間も睡眠が取れた」とも。20日午後は「私的に使える貴重な時間になった」として「昼からは手付かずだった大量の洗濯後のハンカチやインナーのアイロンかけとお裁縫を一気に処理した」と投稿した。

 高市氏のXのフォロワーは約290万人といわれる。あくまでも皮肉だが、このXでさぞ、高市氏を推す熱心なファンの心は癒されたのではないかー。またもやらかしたパフォーマンス。このような密室内で本当は何をしていたのか分からない状態での検証が不可能な言葉を平気で使う。「休みにもちゃんと働いていますよ」とのアピールなのだろうが、首相としてのそのセンスを疑う。猛暑が続く中、もういい加減にしてほしい。

 高市氏がXに投稿した20日には、朝日聞、毎日、ANN(テレビ朝日系列)の世論調査結果が出た。朝日の内閣支持率は53%で6月調査から7ポイント下落、不支持率は35%。毎日は支持率41%と不支持率44%を下回った。ANNも6月から10・9ポイントマイナスの49・2%と5割を切り大幅に支持率を落とした。1週間前の時事通信調査でも支持率は49%だった。毎日はこの大幅支持率下落は17日に成立した改正皇室典範への不満が浮き彫りになった、と分析している。昨年10月の首相就任以来、60から70%もの高い支持率を維持してきた“支持率頼み”の政権の土台が揺るぎ出したと少なくとも思いたい。

 18,19,20日の3連休の朝日の「首相動静」を見ると、いずれも「午前中は公邸で過ごす。午後も公邸で過ごす」となっている。総裁就任時に「働いて、働いて」と「働いて」を5回も繰り返した高市首相が20日の各社の厳しい世論調査結果を見て、少しでも挽回を図ろうとして放ったXでの一方的な反撃アピール。この首相メッセージ、支持者の心に本当に突き刺さったのだろうか。

 改正皇室典範では36~38親等も遠いほとんど一般人の旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族とし、その子や子孫に皇位継承権を与えるという「国のかたち」を変えかねない「国民の総意」を無視した野党も巻き込んだ改正を強行。表現の自由を奪いかねない違憲の「国旗損壊罪」創設法を自分の肝いりだとして成立させた。今後、市民の自由な表現活動を萎縮させる「スパイ防止法」や年末には防衛費大幅増強と「非核3原則」を見直す可能性もある安保関連3文書の改定が控える。さらに、憲法9条の改正も日程に入っている。

 その上、「中傷動画・暗号資産サナエトークン」問題も、24日の衆院予算委で何をやるのか不明だが、今のままでは25日までの延長国会で真正面からこの問題を審議する予定はない。6月22日の国会であれだけ強く言い切った公設秘書の「陳述書」も1か月がすぎてもまだ出ていない。このまま逃亡を図る気だろう。

 虚飾にまみれたパフォーマンスはもうたくさんである。高市政権の間違った経済政策もあって上がり続ける「物価高を何とかしてほしい」というのが国民の真実の声だ。全国各地で若者が「高市やめろ」の声を挙げ始めているのがせめてもの救いだ。 (7月21日)

▼ やっと出た公設秘書陳述書  なぜ首相は「面識がない」との答弁を続けたのか

  6月22日の衆院予算委での「中傷動画・暗号資産サナエトークン」疑惑で中道改革連合の後藤祐一氏への答弁を回避する代わりに高市氏が「近日中に公設秘書の陳述書を出す」としていた問題。憲法上の「首相の答弁責任」を無視した奇策からちょうど1か月となる7月22日、高市氏は衆院予算委員長に宛て、公設第1秘書で奈良事務所所長の木下剛志氏の陳述書をを提出した。延長された25日の国会閉会予定日ギリギリになっての提出。24日には、首相出席の衆院予算委があり、ここでの野党からの厳しい追及は必至だが、これで問題を幕引きしたい、との首相側の意図も見え見えだ。「閉会中審査」を含めて国会で真相を究明すべきである。

 木下秘書の陳述書には、「中傷動画」疑惑には「高市陣営で他の候補者を誹謗中傷するような動画を作成・発信するようなことは行っていない。第三者に依頼したこともない」などと改めて関与を否定。首相の名前が入った暗号資産「サナエトークン」の発行をめぐっては「当方は、暗号資産として発行するという説明は1度もない」と強調した。

 この陳述書に国民民主の玉木雄一郎代表は、木下秘書と起業家で技術者の松井健氏との関係について「やはり具体的な接触があったことが明らかになった」と指摘。「(首相は)なぜ秘書も含めて面識がなかったと答弁したのか」との疑問を呈した(朝日)。首相は国会で一貫して、自分を含めた秘書と松井氏の接点すら否定し続けてきた。これを野党は「虚偽答弁」だとしていた。

 また、中道の小川淳也代表は「核心部分は『記憶がない』に終始し、疑惑の解明、終結には程遠い」(朝日)としている。いずれにしろ、木下秘書の「陳述書」で、これまでの、週刊文春や週刊現代の報道では必ずしも明確になっていなかった部分もある。あくまでの木下秘書側の一方的な言い分だが、22日の産経WEB版が全文を掲載しているのでざっとだが、少し紹介しておく。(原文は「ですます調」だが、「である調」に直し、要約した)

 【中傷動画】昨年秋の総裁選のころ、私が信頼する学者の方(おそらく、藤井聡京都大学大学院教授で高市氏と親しい)から、SNS関係に精通し、いろいろな政治家をネット上で勝手連的に応援している方々を紹介したいという話があった。事務所のネット戦略に参考になることがあるかもしれないなどと思い、(松井氏と)総裁選前に短時間のオンラインミーティングを持った。やり取りの詳細は記憶していないが、SNS戦略に関わった経験があるとも聞いていたので、そのような経験を聞きながら、総裁選の情勢についての意見交換をしたのだろうと思う。

 しかし、結果的に、このオンラインミーティングでは、特に参考になる話を聞くことはできなかった。私の側から、他の総裁選候補を誹謗中傷する動画を作成したり、発信することをお願いしたことはない。高市陣営の広報戦略については、この方とは全く関係のない企業3社と契約を結んでいた。

 松井氏に対して、衆院選挙期間中に誹謗中傷動画の作成を依頼したり、作成への謝意を伝えるようなメールやショートメッセージを送ったとの指摘を受けている。選挙期間中は毎日大量のやり取りをするので、考える限りの確認を行った結果、私の側には、そのような記録は見つからず、記憶もない。

 【サナエトークン】「サナエトークン」の発行に関わっていたとされるNoBorder社は、元々信頼できる方から紹介を受けた方が代表を務める企業。昨年12月、企業側から声掛けがあり、オンライン会議を持った。会議での話題は、主に、この企業が検討している「NoBoderアプリ」の説明と、その中で勝手連で内閣や自民党を応援するプロジェクトである「Japan is Backプロジェクト」として「国民の声を広く聞くための企画」を展開することについての紹介だったと記憶している。

 その会議の中で「NoBoderアプリ」内でポイントを付与するというアイデアが紹介された記憶がある。会議の中で「暗号資産」という言葉が使われたのではないかとの指摘も受けており、説明した当該企業の方がそう言っているというのであれば、そうなのかもしれないとは思うが、私には「暗号資産」という言葉を聞いた記憶はない。専門的、技術的な説明が多く出され、私自身インターネットに関する技術については詳しくないこともあり、説明内容を詳しく覚えていないというのが正直なところだ。少なくとも「サナエトークンという暗号資産を発行する」という話はなかった。

 このオンライン会議(昨年12月17日)に松井氏が出席していたとのことだが、主に説明していた方は確か「中村氏」という名前の方だった。松井氏が出席していたのかどうかはっきりとした記憶はない。この会議の音声が公表されており、私の声に似ていると思う。公開された動画では私と松井氏がやり取りをしている印象を受けるが、この会議に松井氏が出席したかどうか記憶がない。

 1月30日、先方から提案書の送付を受けた。2月の衆院選が終わってから読んだが、提案書の中には「国民の声を広く聞くための企画」の具体案として「ビーナス号の活動と民間のテクノロジー共創」や先方の「国民の声を広く聞く企画」(ブロードリスニング)で収集した「国民の声贈呈式」といった説明があった。先方のイベントと、総裁選時に奈良県の自民党青年局有志の運転で全国を回っていた街宣車であるビーナス号とがコラボレーションできないかということ、ブロードリスニングで得た国民の声を政策に反映した提言書を自民党や官邸に持ち込むイベントをしたいということの2点だった。この資料はNoBoder社からこの企画に関して受け取った唯一の資料だ。

 おそらく2月ごろ、「サナエトークン」という言葉を聞いたことを覚えている。まだ企画の中のアイデアの一つというくらいの認識だった。特に問題があると思っていなかった。その後、NoBoder社側から、「Japan is Back」プロジェクトをスタートさせるので、チームサナエ(奈良県の)自民党青年局有志が運営)のアカウントでも応援するメッセージを出してほしいとの依頼を受けた。先方から文案の提示があり、このプロジェクトを応援するメッセージであると受け止めていた。その中に「コミュニティ提案により実現した『SANAEトークン』という新たなインセンティブ設計も注目されます」という一文もあった。あくまでも当該企業が取り組んでいる企画であり、事務所が関与するものではないという認識だったので、深く考えることもなく、、この部分は言われるがままにリポストに応じた(「サナエトークン」リリース時の2月25日)。

 しかし、「サナエトークン」が暗号資産として発行されたことは事実であり、そのことを知った後は強い不信感を持ち、この企業とのやり取りを一切断った。3月2日、高市氏から「サナエトークン」についての問い合わせがあり、「サナエトークン」という暗号資産が発行され、取引がなされるということについて、当該企業から事前に説明を受けたことはなく、承認をしたこともないことを伝えた。

 木下秘書がこの問題で「陳述書」という形であれ、特に「サナエトークン」問題の詳細な経緯を説明したことにはそれなりの意味があると思う。3月2日の首相のX発信で価値が急激に下がり被害者が出ている。金融庁は「サナエトークン」が無届だったことを明らかにし、資金決済法違反(無登録の暗号資産交換業)」の疑いが出ている。

 この問題では、週刊文春が松井氏の証言を基に記事にし、週刊現代はジャーナリストの河野嘉誠(よしのぶ)氏がWEB版の現代ジャーナルを舞台に木下秘書に取材して特に「サナエトークン」問題を報じてきた。

 現代ビジネスによると、4月3日、週刊現代編集部は「週刊文春報道によると、昨年12月17日に木下氏がノーボーダーの松井氏らとリモート会議をしたということです。そこで松井氏から『サナエトークンは売却できる暗号資産』という説明を受けた後、木下氏は「すごくいい」と発言したと報じているが、これは事実か」との質問を高市事務所に送った。

 この質問への木下氏の回答書は「会議はノーボーダー側からの求めに応じて行ったもの。ノーボーダー側の独自の取り組みとして国民の政治に対する声を集める『ブロードリスニング』に関する企画について話を聞いた。詳細は記憶していないが、最新のインターネット技術の活用を検討しているという話の中で、参加者へのインセンティブとして暗号資産を配布するというアイデアについて説明があったのではないかと思う」と書いている。

 そして、今回の陳述書はこの点に関して「 少なくとも『サナエトークンという暗号資産を発行する』という話はなかった」としている。

 これだけとっても、食い違いがある。やはり関係者の国会参考人招致 は絶対に必要だ。

 「サナエトークンと中傷動画問題をめぐる一連の騒動は、松井氏という複数の投資トラブルが取りざたされる人物に、高市事務所が入り込まれ、振り回されているインテリジェンス問題でもある」との河野氏のこの見立ては現実味を帯びてきているように見える。(7月23日)