「新型コロナ禍」米襲う世界最悪の感染 トランプ政権の大失政 WHOと中国への責任転嫁に必死

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 裕福で、医療技術も高く、普及している超大国米国で、新型コロナウイルスの感染者、死者数がともに増え続けている。米国の新型コロナの感染者、死者がなぜこれほど多いのか。対策実施に大きく遅れをとったトランプ政権の大失政が原因だが、トランプ大統領は国内の批判や追及を避けるため、中国とWHO(世界保健機関)に責任転嫁しようと必死だ。

 新型コロナの米国の死者は5月27日、10万人を突破した。死者数が2番目、3番目に多い英国とイタリアはいずれも3万人台。世界の死者計約35万人のうち3割近くが米国に集中し、突出して多い。感染者数は約169万人で、いずれも世界最多。米ジョンズ・ホプキンズ大が集計した。米国での感染は3月にニューヨーク州で爆発的に増加した後、全米50州に拡大した。米国内の死者数は同州が最も多い。

事態の重要性理解できず

 トランプ政権が、中国とWHOが毎日発表してきた武漢についての感染者数と病院急設、医療従事者の集中派遣の事態に対応していれば、米国でこれほど感染者が増加することはなかったはずだ。上記に紹介したジョンズ・ホプキンズ大学の「Timeline of Event」から、公表された事実の記録の一部を紹介する。

1月6日:武漢の医師と看護師が患者13人の手術

1月7日:この病原を新型コロナウイルスと判定

1月13日:潜伏期間14日と判定

1月14日:肺炎専門医が人間から人間への感染発表

1月23日:武漢に交通遮断令施行 厳しい封鎖状態に

1月23日:武漢当局、10日以内の新病院建設を発表

1月23日:数百人の医学スタッフ、器具、食料を武漢に送りこむ

1月28-29日:数千人の医療従事者が武漢入り

2月3日:最初の急設病院開業。他の病院も続々開業

2月9日:さらに318人の医療従事者が武漢入り

2月19日:1、299人の医療従事者が武漢入り、市内の下水処理に従事

2月29日:中国とWHOがCOVID-19(新型ウイルス)についての合同調査報告書発表

3月11日:WHOのテドロス事務局長がCOVID-19の世界的流行(パンデミック)を宣言

3月12日:中国の感染者80,700人。(坂井注:20年5月25日現在、中国の感染者は82,985人で世界14位、死亡者は4,634人)

 以上のような経過が、中国とWHOによって把握され、全世界に警告されていたのだ。日本のメディアでも、武漢の封鎖(交通遮断令)はじめ中国当局の取り組みが報道された。

 ところが米国では、トランプ政権が事態の重大さ、そして米国にも危険が迫っていることを理解できなかったのだ。1月23日の武漢封鎖の段階で、トランプ政権は、なんの行動もとらなかった。米政府が全米で行動を開始したのは1カ月半後の3月7日。米国の感染者402人、世界で10位が確認された時点で、WHOがパンデミックを宣言する11日の4日前だった。すでに中国では感染者が8万人を超え、韓国、イタリア、イラン、イタリア、スペイン、ポルトガルなどで感染者が急増しつつあった。以後、米国の感染者が急増、3月22日には中国1位、米国3位になった。3月27日には、米国が1位の10万人台となり、さらに急増しだした。トランプ政権が、武漢封鎖を重大な危険信号だと理解できていたら、米国のその後は全く違っていたはずだ。せめて2月中に全米で行動を起こせば、事態は大きく変わっていただろう。

危険な人気取りの強硬策

 いま、11月の大統領選挙が半年後に迫るなか、全米の都市封鎖が解除されつつあるが、感染が収まる兆候もないままの危険な人気取りの強行策だ。 

 5月18,19日、ジュネーブで開かれた世界の流行病対策の中心である国連のWHOの年次総会とその前後、トランプ氏は、ワシントンでは自分と腹心のポンペオ国務長官、ジュネーブの会場ではアザール厚生長官が、コロナウイルスの大流行は中国とWHOの責任だと非難。トランプ氏自身は18日に公開したテドロスWHO事務局長への書簡の中で「WHOが30日以内に大幅な改善に取り組まねば、拠出金の停止を恒久化し、WHOへの加盟を見直す」「パンデミックへの対応であなたとWHOの度重なる失敗は世界に非常に大きな犠牲を与えた」「前に進む唯一の方法は、中国からの独立を実際に示せるかにかかっている」と非難した。この書簡の公表に先立って記者団に「WHOは中国の操り人形だ」「中国の(拠出金)は昨年4千万ドルだったが、米国は年4億5千万ドル払ってきた。4千万ドルに減らそうと考えていたが、それでも多すぎるという人もいる」と語った。

 一方、アザー長官は5月18日、会議場での演説で「ウイルスが制御不能になって拡大した理由の一つに、WHOの失敗がある」「WHOは世界が必要とする情報を得ることに失敗し、そのせいで多くの人が命を落とした」「少なくとも一つの国が感染拡大を隠そうとして、透明性の責任についてごまかしてきた」と述べた。国名を挙げないまでも「一つの国」が中国を指していることは、参加者の誰にも明らかだった。

対応遅れの責任自覚か

 アザー氏はさらに「WHOの働きは透明でなければならない。パンデミックへの対応に関し、すべての面で独立した検証にかけることを支持する」「現状は容認できない。WHOは大幅に透明性を高め、もっと説明責任を果たさなければならない」と主張した。

 トランプ政権がWHOと中国への攻撃に必死なのは、トランプ政権が流行の兆しを十分知りながら、ほぼ1カ月、対応に遅れ、WHOが公式のパンデミックへの警告を発してからも、緊急な対応に遅れた責任を自覚しているからに違いない。