コラム「番犬録」第23回 米・イスラエルのイラン攻撃、一刻も早い停戦を 授業中のイランの子どもたちを殺したのは誰だ 米国とイスラエルこそ「ならず者国家」では 媚びすぎの日米首脳会談 「ゴマすり作戦」でうまくいったのか 「大成功」と騒ぐが、その結果まだ分からず 高市首相が踏み込んだ発言の可能性も  憲法9条をたてに自衛隊派遣を断ったのか 改憲の必要性を説いたのでは 自衛隊が熊本で長射程ミサイルの発射機を抜き打ち搬入 

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 3月20日(日本時間)の日米首脳会談で懸念されたのは、政府やメディアのスタンスと異なり、トランプ米大統領にホルムズ海峡への自衛隊派遣要請をされることなどではなかった。むしろ、高市早苗首相の方からこの問題で何か踏み込んだ発言をしてしまうことだった。政府やメディアは「大成功」と騒いでいるが、その結果はまだ分からない。

 23日付の朝日新聞朝刊は、高市氏が非公開の会談の際にトランプ氏に「ホルムズ海峡への自衛隊派遣には憲法9条の制約がある」と伝えていたことが明らかになったと報じた。

 茂木敏充外相が19日のフジテレビの番組で、このことに言及。「首相は日本には法律的にできることと、できないことがあるときちんと説明し、トランプ氏もうなずいていた」と明かし、首相の説明は「憲法9条があり、その下で様々な事態認定がある。そういったことを含めて日本には制約がある」との趣旨だったという。

 トランプ氏も米FOXニュースが20日、電話インタビューで「日本の艦船派遣には憲法上の制約がある。もし我々が必要とすれば、日本は味方してくれると思う」と語ったを報じており、その整合性はある。

 高市氏が憲法9条を持ち出したことを「やはり9条の存在が役に立った」と高く評価する識者もおり、私もその一人だ。だが、茂木氏が語った文脈からみると、高市氏は9条をたてに自衛隊派遣をきっぱりと断ったとはとても読み取れない。

 むしろ私の推理に過ぎないが、高市氏はトランプ氏に自分としては自衛隊を出したいとの意向を示したのではないか。その上で、自衛隊派遣の制約がある憲法9条の改正の必要性を説き、その理解を求めたのではないか。これまでの憲法改正や防衛力増強に前のめりな高市氏の政治姿勢を考えると、そういう結論になる。

 茂木氏の「様々な事態認定」という言葉がそのことを示している。これらは「集団的自衛権」を容認して、「重要影響事態」「存立危機事態」など15年に成立した平和安全法制にある用語であり、安保法制はかなり自衛隊の役割を広げたものの、今回のようなトランプ氏の要請には応えられない。だからこそ、憲法改正が必要で、できるだけ早く改正したいとでも訴えたことも考えられる。

 茂木氏は番組で「具体的にこれはできる、できないと話はしていない」としているが、会談の約1時間の非公開部分では高市氏が何を言ったのか不明だ。密約みたいなものがあるかもしれない。19年のイラン周辺の緊張の高まりを受けて海上自衛隊の艦艇を派遣したときに根拠として使われた防衛庁設置法の「調査・研究」などの規定を使って、停戦前でも何か自衛隊ができることを話した可能性は捨てきれない。茂木氏は「仮に完全に停戦になったときには、機雷掃海なども出てくるかもしれない」とも話している。

 一方、イランのアラグチ外相が20日、日本のメディアとしては初めて、共同通信の電話インタビューに応じた。封鎖状態のホルムズ海峡について「日本側との協議を経て日本関係船舶の通過を認める用意がある」と明らかにした。メディアの報道によると、ペルシャ湾には日本のタンカーなどの船舶が45隻(59隻説もある)留め置かれており、22日ごろにはペルシャ湾からの最後のタンカーが日本につき、この後の見通しはたっていないという。9割以上を中東の油に依存する日本にとっては大変な危機である。

 フジの番組で茂木氏は「みんなが通れる状態を作ることが極めて重要」とし、日本船舶が他国に先行して通過することには原則、慎重な姿勢を示したという。「他国」というよりは、トランプ氏への過剰な配慮があるのだろうが、とりあえず、日本のタンカーなど船舶通過をイランに認めさせることが日本にとって重要なのではないか。これまで日本が築いてきた「外交資産」を国益上、利用するのは当たり前である。きょうのモーニングショーでコメンテーターの玉川徹氏が「日本に来た油を韓国やベトナムなどに配る方法もある」と言っていたが、大賛成である。

 読売新聞と日本テレビ系のNNNの世論調査で「日米首脳会談」について「評価する」は69%、「評価しない」は19%だった。私にとって、予想通りの残念な結果となった。高市氏の「ゴマすり外交」と一部を除くが、メディアの「大成功」との翼賛報道の成果なのだろう。ただ、イラン情勢を踏まえ、中東に海上自衛隊を派遣することについては、「賛成」は24%、「反対」は67%。日本の世論もまだ捨てたものではない。米国とイスラエルのイラン侵略をやめさせ、一刻も早い停戦を強く求めたい。

今回はイラン戦争と高市首相訪米を中心にフェイスブックに投稿した。

▼「世界の警察官」から「世界の暴力団」に

  今や「ならず者国家」はトランプ氏の米国とネタニヤフ氏のイスラエルなのではないかー。

 その特徴は国際法や国連憲章などを全く無視し、適当ないいがかりともいえる理由を付けて主権国家に突然、大きな軍事力を使って侵略する。イランでは、イスラエルの実行部隊が最高指導者ハメネイ師を娘や孫まで巻き込んで爆殺した。米メディアなどによりその実態が判明している。米軍は授業中だったと報じられるイランの小学校を爆撃して170人以上の子供たちや職員を殺害した(米紙、ニューヨークタイムズが報道)。

 かつて、米国は、北朝鮮やイラク、アフガニスタンなどを「ならず者国家」と呼んで非難した。それがいまやどうだろう、「法の支配」も投げ捨てて、自分の気に入らない国だからといってやりたい放題殺しまくる。とても「民主主義」を標ぼうする国とは思えない。

 イランが宗教的な権威主義国家であり、かなりの国民が現体制を好ましく思っていないとしても、国の体制をどうするかはイラン国民が決める問題である。「イランはイラン人の手で」という問題なのだ。元文科省次官の前川喜平氏が今日(3月8日付東京新聞)の「本音のコラム」で言うように、特に米国はベネズエラ大統領夫妻の拉致に続いて今回の侵略で「世界の警察官」から「世界の暴力団」へと変身した。

 だからと言って、米国の同盟国は報復を恐れてか、正面切ってトランプ氏を批判しない。わが国で人気者のはずの高市早苗首相などは国際法違反をおかした米国やイスラエルではなく逆にイラン側を非難する始末である。3月19日、訪米して高市氏はトランプ氏に何ていうのだろう。親米で口の軽いこの人のことだから、「米国支持」に踏み込み、余計な約束をさせられるのではないかと心配である。

 今の事態は誰の目から見ても、米、イスラエルによる明らかな国際法違反の無謀な侵略であるのに、「国際法違反」という言葉を出すことすらはばかられる状態だ。ますます傲慢さを表し、この世界を支配するつもりの「王様」であるかのように振る舞うトランプ氏を批判するトップリーダーはいない。かつて、最後は人民戦線内閣側が負けはしたが、独裁者フランコと戦った経験のある政党の末裔であり、「戦争NO」と訴え、トランプ氏と鋭く対立したスペインのサンチェス首相だけが唯一の頼りである。これまで煮え切らない態度を示していたフランスのマクロン大統領もサンチェス氏に「連帯」を表明した。

 こんな世の中が続いていいはずはない。スペインを中心にして、ミドルパワー(中堅国)を訴えるカナダのカーニー首相も巻き込んで世界中でトランプ、ネタニヤフ批判の世論の輪を広げ、まず、米国の良識ある世論に訴えるしか、この事態を止める方法はないのかもしれない。日本もこのような流れに乗るべきだと考えるが、米国ベッタリの高市氏では到底、無理だろう。

 トランプ氏はまだ、今後の情勢がどうなるかわからないのに、イランに「無条件降伏」を迫り、その一方で次のターゲットとしてキューバを口にし始めた。ネタニヤフもイランの次は邪魔者のトルコを狙うという報道も出ている。2人ともまるで「戦争屋」のようだ。

 また、エプスタイン氏の少女性的虐待問題に絡んで米司法省は6日までに、トランプ氏から未成年だった時に性的虐待を受けたと告発した女性の資料などを追加公開した。トランプ氏ピンチである。真偽のほどは不明だが、そのことを示すとみられる写真がSNSで広がっている。

 トランプ氏がネタニヤフ氏のイラン攻撃の誘いに乗ったのは、エプスタイン問題だと指摘する専門家もいる。ネタニヤフ氏もパレスチナのガザ侵攻問題で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出され、国内的には汚職問題で20年から裁判が続いている。今後も民間人にも大きな被害が出る可能性が高い悲惨なイランの実情を考えるうえで、このような犯罪に関与した疑惑を持たれている2人の指導者がイラン侵略を進めている事実を確認しておいた方がよいだろう。

 少し前には国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が「イランが核兵器を製造している証拠はない」と断言。イラク戦争の口実にされた「大量破壊兵器」のと同様、イスラエルによる戦争の大義も怪しくなってきた。90年近くも前にナチスドイツと戦った米国。「ホロコースト」で約600万人ものユダヤ人が虐殺された経験を持つイスラエル。当時の人が生きていれば、この事態をどう思うだろうか。一刻も早く、世界中の人々にとって「悪夢」でしかないこの戦争が終わってほしい。(3月8日)

▼住民無視の抜き打ち搬入 長射程ミサイル第1弾を熊本に

「敵基地攻撃能力(反撃能力)」を有する国産の長射程ミサイルの発射機などが3月9日未明、熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地に搬入された。

 朝日と東京新聞の10日付朝刊によると、岸田文雄政権時代に決まった全国への配備計画の第1弾だが、防衛省側が約束していた地元への事前通知はなかった。小泉進次郎防衛相は「必要な準備が整ったら事前に九州防衛局から知らせる」と説明していたが「抜き打ち」搬入となった。このことに、地元住民は強く反発、熊本県知事や熊本市長も「大変残念だ」と話している。

 木原稔官房長官は9日の記者会見で「装備品の搬入にかかる詳細は、答えを差し控える。今回だけではない」と説明。今月31日に正式配備することや、17日に県や市、自治会などを対象に説明するとしている。かつて、秋田県や山口県での地上配備型システム「イージス・アショア」配備で地元説明会を重ねたが、秋田で新屋演習場を選ぶ根拠とした地形調査のずさんさが地元紙、秋田魁の報道で暴露され、防衛省職員が居眠りするなど不誠実な対応が問題となり、計画撤回に追い込まれた苦い経験がある。このことが今回の防衛省の「住民無視」ともいえる対応につながったとみられる。

 「装備品の搬入」と「正式配備」を使い分ける姑息な手法も住民の反発を強める理由だ。熊本の健軍駐屯地は市街地にあり、目と鼻の先には市民病院があり、半径2キロの範囲に小中学校20校が集中する。配備されるミサイルは「12式地対艦誘導弾能力向上型」と呼ばれるもので、射程は1000キロ程度。九州から中国沿岸部や台湾周辺の海域が射程に入るとされる。かなり前のデータだが、1セットで27億7千万円という報道もある。

 第二弾として、静岡県の陸自富士駐屯地に「防衛用高速滑空弾」の搬入が予定されている。このあと、北海道、宮崎、茨城の自衛隊基地にも配備が予定されている。イランへの米、イスラエルの攻撃を見ていると、高価なミサイルよりもイラン側からの安価なドローンがそれなりに「活躍」しているように見える。ミサイル基地があるだけで、その都市は真っ先に攻撃される可能性が高い。

 平和憲法のもと、「専守防衛」のはずの日本で敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイル配備はいいのか。総選挙の圧勝で「高市一強」となって国会審議を軽んじる高市政権の下で自民、維新が殺傷能力のある武器輸出を提言するなど、このところ防衛力の増強策が次々と進む。世論調査での高支持率が続く中、識者の間では、高市政権は「非核3原則」の見直しだけでなく、まさかとは思うが、「核保有」すらやりかねないとの議論も起きている。日本の行方がとても心配である。(3月10日)

▼「法の支配」無視の共犯者とみられかねない危険性も

 媚びて、媚びて、媚びて、媚びて、媚びて参りました。これが私のしたたかな外交です-。高市氏が訪米でトランプ大統領に示した「ゴマすり作戦」。政府はホルムズ海峡への自衛隊派遣をトランプ氏からあからさまに求められなかったことに安どしており、首脳会談はうまくいったとみているようだが、本当にそうか。

 英独仏伊などのNATO(北大西洋条約機構)諸国首脳がそれぞれニュアンスは異なるものの、米国からのホルムズ海峡への艦船出動を断る中で高市氏だけが「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルド(トランプ氏)だけだと思う」と持ち上げた。

 ホワイトハウスで出迎えを受けた高市氏はオーバーなゼスチャーでトランプ氏に飛び込むようにハグし、夕食会では「強い日本、強い米国、豊かな日本、豊かな米国。私たちはこれらを実現するための最強のバディ(相棒)だと確信している」とアピールした。さらに、13年に安倍晋三元首相が訪米の際に使ったフレーズ「ジャパン・イズ・バック(日本は復活した)」を引用。「日米同盟の新たな歴史の1ページを作っていこう」と呼びかけた。ただし、少なくとも、会談の公開部分では、トランプ氏から「サナエ」とファーストネームで呼ばれることはなく、「片思い」だったのかもしれない。

 奇襲攻撃で最高指導者を殺害し、一方的にイランと戦争を始めた米国とイスラエル。国連の安保理決議もない明らかな国際法や国連憲章に違反する行為であり、「主権国家」に対する「侵略」である。それもスイスでの交渉のさなかだった。交渉はうまく進行していたとの報道もある。米国は「切迫した核の脅威の除去」を先制攻撃の理由に掲げてきたが、米国の情報機関を統括するギャバード国家情報長官は3月18日に、昨年6月に米国がイランの核施設を爆撃して以来「イランは(核開発に必要なウランの)濃縮能力を再建することは試みていなかった」との声明を米議会に出して、政権の先制攻撃の理由と矛盾する見解を示している(3月20日付朝日朝刊)。

 激化するばかりの米国、イスラエルのイラン攻撃のさなかという高市氏には当初、予期しなかった最も悪い状況下で行われた日米首脳会談。もとはといえば、今回の会談は、昨年11月の高市氏の国会での「台湾有事は存立危機事態」発言により日中関係が悪化、「撤回」を執拗に求める中国に対して、何とか打開を図ろうとトランプ氏の訪中前に日米の考え方をすり合わせることに狙いがあったとされる。ただ、私は「すり合わせる」というよりも、高市氏のホンネは、少しづつ中国寄りの姿勢をみせてきたトランプ氏に中国への認識を改めてもらい、自分の発言の正当性を認めさせるということにあったのではないかと考えている。

 首脳会談中の記者からの質問に高市氏は「日本は中国に対してオープンだ」といつもの言葉を繰り返し、トランプ氏は「日本のすばらしさを(習近平氏に)話す」と応じた。これを「成果」と評する人もいるだろうが、いくら、トランプ氏が習近平氏に日本のすばらしさを強調しても、中国側が納得するとは思えない。これは成果というよりは逆効果にもなりうる。自分の発言は自分で責任を持つべきで、発言撤回する方が先だろう。

 そんな中で、18日、米国家情報長官室は世界の脅威に関する年次報告書を公表。共同通信の報道によると、高市氏の国会答弁について、現職首相として「重大な方針転換」だと指摘。そのうえで、反発する中国が対日圧力を強め予期せぬ「事故」のリスクが高まっていると警告した。

 さらに、高市氏の答弁について、日本の制度上「重みをもつ」と指摘し、中国の制裁的な動きは「さらに強まる」と予測。日本の反応を試すために尖閣諸島周辺での軍や海警船による活動を強化し、誤算や偶発的事故がさらに緊張を高める恐れがあるとした。共同の記事は「日本政府は(高市発言は)従来の立場を変えるものではないと説明してきたが、トランプ政権と認識のずれがある可能性がある」と書いている。

 「絶対に謝りたくない病」とメディアで指摘されることもある高市氏。中国への対応が「毅然としている」と国民の支持を広げた側面があることも確かである。今回訪米での高市氏のさまざまな振る舞いも、私にはまたやらかしたというその場しのぎのパフォーマンスにしか見えず、国際社会からは、トランプ氏の「法の支配」無視の“共犯者”とみられかねない危険性もあると懸念する。さすがに、米国やイスラエルによるイラン攻撃は世論調査でも8割以上が反対だが、また高市氏の対応が「高市ファン」だけでなく、国民受けする可能性もある。非公開部分の首脳会談で高市氏がトランプ氏に何を約束したかは不明だが、このひとのことだからやはり心配である。(3月21日)