10月14日の衆院予算委。首相の国会出席を減らそうともくろんだ日本維新の会の藤田文武共同代表の首相の国会出席の長さについての質問に対して、高市早苗首相が放った答弁が海外メディアでも話題になっている。
藤田氏は「首相が国会に長時間拘束される状況は国際的に普通ではない」と見解を求めた。これに高市氏は「国会の運営は国会で決めること」と断りながら「腰を据えて戦略的に考える時間を取るのは簡単ではない。山のように書類を持って帰り、夜中に読んでいる」と述べた。ここまではこれまで何度も高市氏が「やってる感」を出すためにアピールしていたこと。
その上で、高市氏は「化粧や入浴、食事の支度や後片付けなどを例示しながら、男性の首相よりも3~4時間、余分な時間を使っているかもしれない。国会出席の際に化粧直しの時間も確保されていなかった」とし、「女性首相であることに秘書官たちも慣れていなかった」と明かした(15日付朝日新聞)。
前川喜平元文科事務次官は18日付の東京新聞の「本音のコラム」で「だから国会に出席する時間がないと言いたいのか?」とし「高市氏は7月のX投稿で総理就任以来、0時間ー3時間睡眠が常態化と言っていたが、もし本当に睡眠時間も削って入浴、炊事、化粧などに3,4時間も使っているというなら、危機管理能力どころか、時間管理能力の欠如も問われる」と皮肉った。ニューヨークタイムズは16日付記事でこのことを「日本のリーダー、メイクや家事で何時間も取られると発言。意見が百出」との見出しで報じた。
確かに、国際的に日本の首相が国会に拘束される時間は欧米に比べて長いようだが、その 「効率化」が必要だとしても、首相が国会の予算委員会などに出席して説明責任を果たすことは当然である。高市氏の委員会出席はこのところの歴代首相と比べても出席時間が圧倒的に少ない。憲法上、国会は国権の最高機関であり、野党による行政監視機能は絶対に必要だ。党首討論の定例開催さえ約束が守られていない。
高市氏は5日に召集された臨時国会を前に通例は閣僚経験者が就く自民党の衆院国会対策委員長に「国会の効率化」が持論の村井英樹元内閣官房副長官を抜擢した。
「この首相を利する一連の動きには、永田町における人間関係が存在していた」とこの人事の内幕を暴露したのは週刊新潮10月15日号の「高市首相“答弁減らし”で世論醸成の出来レース」という記事。この記事に注目したので少し紹介する。
週刊新潮によると、「総理の予算委出席は原則不要」「答弁は党首討論に集約する」といった民間シンクタンク、ネクストジャパン・イニシアティブ(NXJI)リサーチ」がまとめた「国会改革の提言」が出たことを日経新聞が9月22日付で報じ、翌23日に村井氏が、記事を引用する形でこの提言をSNSで紹介、世間の耳目が集まったという。24日にNXJIが正式発表し、メディア各社が報道した。提言のタイトルはズバリ「総理の時間の使い方 激動する時代の官邸マネジメントの在り方」というものだった。
シンクタンクと村井氏の動きが首相にとってこれ以上ない「援護射撃」となった。永田町関係者によると、NXJIリサーチの所長は村井氏と衆院当選同期の小倉将信氏。岸田文雄内閣で小倉氏がこども政策担当大臣、村井氏は官房副長官という要職を務め、2人は24年総裁選では小泉進次郎氏陣営で中心的役割を果たしたという。この提言には岸田元首相や野田佳彦元首相のほか小倉氏の盟友である村井氏もインタビュー協力者として名を連ねている。提言を執筆したのは元NHK解説委員の増田剛氏だとされているという。
メディアの裏側を知り尽くした元ベテラン記者は「総理の時間は希少な統治資源」と位置付ける。だが、小倉・村井コンビの意向が色濃く反映された“出来レース”のにおいも漂う、と週刊新潮は書いている。少なくとも、SNS投稿が村井氏の異例の「出世」を決めたことになる。
党内基盤に乏しい高市氏にとって、財務官僚出身の村井氏は新しい「側近」となったらしい。新国対委員長となった村井氏は46歳。野党対策を任されることになったが、どれだけ実力があるかはまだ分からない。「国会改革」という美名のもとに、国会出席をできるだけしたくない高市首相に都合の良い仕組みとならないか、心配のタネが増えた。高市政権下で「改革」という言葉が出てきたら要注意。高市氏はとにかく、民主主義を破壊することは得意だからである。
▼2年前の地元会合で「国交省にやらせる」と説明 腰が引けていた朝日が報道
なぜか当初は簗和生農相の自治体予算カット問題で腰が引けていた朝日新聞が10月10日付朝刊で独自取材に基づく報道を始めた。
高市氏が国会の代表質問でお仲間の簗氏の更迭を否定、かばい続ける中、他の大手メディアも週刊誌とともに調査報道で簗氏の責任を徹底追及してほしい。13,14の両日には首相出席の衆院予算委員会がある。参院は16日と19日。参院の野党6党は簗氏の問責決議案提出の検討を始めた。自民党内にも辞任を求める声が上がっている。簗氏は追い詰められてきた。
10日付の朝日は「簗氏『国交省にやらせる 予算配分巡り 2年前の地元会合』」との見出しの記事を1面に大きく掲載した。
朝日によると、簗前農水相は、国からの道路予算を2月の衆院選で自分を支持しなかった首長のいる自治体について支持者との懇親会で「カットした」と発言。その後に国交省への予算削減の働きかけは否定している。
しかし、2年前の24年12月22日、簗氏の地元・衆院栃木3区にある大田原市の事務所で地元県議や町長、後援会幹部らが出席する、衆院選の総括会で予算について国交省に働きかけると説明していたことが分かった。複数の会合出席者が簗氏からこういった発言があったことを認めた、という。
24年の衆院選は簗氏が辛勝だったこともあり、その反省と支持拡大への活動方針を説明する中で、簗氏は「道路、都市事業、河川関係で皆さんからご要望いただいて、予算の個所付け(予算配分のための調整)を国土交通省にやらせます」と述べた。さらに「大臣を目指している立場になる。簗和生がいなくなると大変なことになるよと、そう思ってもらわなければいけない」との発言もあった。簗氏は17年8月から18年10月まで安倍晋三政権で国交省政務官だった。だから、出席者の一人は「国交省に働きかけ、予算を持ってきてくれるという趣旨で受け止めた」と話している。
こういうことを支持者にアピールし、官僚や秘書らには高圧的態度を取るといわれる簗氏だから、今年の衆院選で対立候補を応援した自治体首長のいる自治体への「予算カット」をいくら否定しても、国交省に働きかけた可能性は大きい。
そもそも、まだ予算の調整段階の2月に国交省の黒田昌義官房長を議員会館に呼び出して何らかの働きかけをしなかった方が不自然である。
国交省はこの時の記録はないとし、「予算減額の働きかけはなかった」と主張するが、官僚経験のある元総務相の片山善博氏は「議員とのやりとりを、役所は文書に残しているはずだ」(10日付朝日)という。
簗氏に呼び出された黒田氏はなぜこのことを事務次官にまで報告したのか。高市氏に近い簗氏から異例の「予算カット」要求があったからではないか。
国交省内の聞き取り調査で、黒田氏が「メモはとっていない。はっきりと覚えていないくらいだから、働きかけや圧力はなかったと思う」と言ったらしいが、これを「国交省も働きかけ否定」の根拠とするのは、おかしいし、誰も納得しないだろう。いずれにしろ、黒田氏の証言も予算委での焦点だろう。
繰り返すが、高市氏は例え簗氏の国交省への働きかけがなかったとしても(私はあり得ないと考えるが)、「予算の公平性」をないがしろにした簗氏の発言は「不適切」を超えて、民主主義にとって言語道断であり、到底、許されるものではない。高市首相は一刻も早く更迭すべきである。(10月10日)
▼「法の支配」の守り手のICC制裁 一方で米国内で進むアジア人排除
国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長への制裁から、自分ではなく、元裁判官のナビ・ピレイ氏がノーベル平和賞を授賞したとの腹いせでICC本体への制裁にまでエスカレートさせたトランプ政権。
その一方で、10月12日の東京新聞は在米の日本人ジャーナリストと学者の2人のICE(国土安全保障省移民税関捜査局)によるアジア人に対する行き過ぎた取り締まりの恐怖を伝えている。記事を読みそのひどさに驚く。
ひとりは、元共同通信記者で米国メディア事情の報道に定評のある津山恵子氏。シリーズ「言わなければならないこと」で米国の現在の状況をこう紹介する。
「(トランプ政権による)不法移民対策では、昨年1年間で米国市民も170人が拘束されている。非白人市民は怯えている。私もニューヨーク在住23年で初めて、そうした恐怖を感じている」。
その上で「トランプ型の『◯◯ファースト』は自己中心的だ。関税問題も多様性撤廃もそう。多様さの排除は排外主義にもつながり、一部の白人富裕層だけが優遇されている」と指摘。
「トランプ型の『分断を呼ぶポピュリズム』が世界に広がる中、『自由』や『平等』が非常に危うい。やはり選挙で『きちんと考える有権者』になることが大切だ」と訴える。
カリフォルニア州立大でジャーナリズムを教える大矢英代氏は「本音のコラム」で「先週、米国メディアは、トランプ政権がカリフォルニア州で大規模な移民摘発作戦を開始した、と報じた。少なくとも45日間続く見込みで、ICE職員には『犯罪歴の有無にかかわらず、不法移民はすべて逮捕するよう指示した』SNSで、私が暮らす街の動画を見つけた時に『ついにここにも来たか』と背筋が凍った」と、その恐怖を語っている。
そして「報道以降、私も通勤中にバックミラーで後続車を気に掛けるようになった。万が一に備え、滞在許可証とパスポートを携帯することにした。アジア人の私もいつどこで標的になるか分からない」とその恐怖を語っている。
国民の選択の結果とはいえ、トランプ政権によって落ちるに落ちた米国民主主義。
「排外主義とは一線を画す」と言いながらも、高市早苗政権下で着々と進む外国人に対する厳格化政策を見ていると、米国で起きていることはひとごとではない。(10月12日)
▼演技がうまい「高市劇場」
9月30日号の週刊文春や週刊新潮の報道から始まった簗氏の「道路予算とんでも発言」「衆院選での無料バス」問題は2週間後の簗氏の事実上の更迭でようやく一定の区切りがついた。
10月14日夕、衆院予算委後に簗氏からの辞表を受理した高市氏はどのような責任を取るのかは官邸で記者団のぶら下がりに応じ「任命責任はもとより内閣総理大臣である私にある。大臣が辞任する事態に至ったことについて重く受け止めている」と悲しみを込めたような神妙な顔つきで述べた。私はその画面をテレビで見て、演技がうまいなと感じた。またもや世論受けを狙った「高市劇場」にも見えた。
前日の夜に高市氏が簗氏と電話した際に、14日夕に辞表を出すよう促していたと考えるからである。新聞もそこは察していたと思う。だから15日付朝刊の見出しのほとんどは「辞任」ではなく、「更迭」だった。国民への謝罪はなかった。不祥事で閣僚が更迭された場合、首相は必ず「任命責任は私にある」というが、この言葉は軽く、すでに慣用化されており、明確な形で責任を取ったことなど見たことない。
簗氏の場合、旧安倍派の裏金問題で1746万円もの不記載が発覚した「裏金議員」で、朝日の世論調査でその起用に約7割が反対している。そういうことを分かりながら、高市氏は簗氏を抜擢した。
右派的な思想信条が近いのと、高市氏が政調会長時代に農水部会長だったことなどから「お友達」の起用にこだわった。改造内閣前に高市氏が行った議員へのアンケートでの内容も評価した結果だと、高市氏は自分の判断を自賛。2月の総選挙時には応援演説で「私の大事な簗ちゃん」「私の知恵袋」とまで絶賛した。
高市氏は13日の衆院予算委で、簗氏が衆院選で自身を支持しなかった首長の自治体の道路予算をカットしたことについて、「本当にダサい」と発言。これまでの「襟を正し、職責を全うしてほしい」「人一倍働いてほしい」となどと簗氏を擁護し、更迭を強く否定していた発言をひっくり返した。
一国の首相が国会答弁で「ダサい」などという言葉を使うこと自体、非常に品格に欠ける発言だと思う。自分の作った内閣に傷が付くことやスキャンダルによる「閣僚辞職ドミノ」を恐れてか、簗氏をかばうふりをし続けて、自己保身のために更迭の判断が遅れに遅れた。高市氏のこの「ダサさ」の方が簗氏よりも一枚上手かもしれない。
そもそも、「ダサい」という言葉は「格好悪い」ということだが、簗氏のしたことはとてもそのように緩い表現では済まない。高市氏のこのような誤った認識が更迭への判断遅れを招いたともいえる。
高市内閣では、やはり「裏金議員」の関芳弘文科相が衆院議員会館で規程に反した政治資金パーティーをしていたことが発覚、謝罪に追い込まれている。連立相手の日本維新の会から初入閣した中司宏行政改革担当相の大阪府枚方市長時代の談合・収賄問題で実刑を受けた市議から「市長も金を受け取っていた」との告発報道が週刊現代により続いている。
一番大きいのは、これらのことより、前の特別国会での秘書の「陳述書」により、あいまいとされたままの暗号資産「サナエトークン」問題だ。この疑惑を高市氏は否定し続けているが、政策第1秘書が絡んでいたとすれば、首相を巻き込むスキャンダルとなる可能性がある。
高市氏は前の特別国会で、週刊誌による総裁選や衆院選での他候補を中傷する動画投稿疑惑への秘書らの関与を全面否定し「週刊誌は全く信用しない」とまで述べている。今回はその週刊誌にかえりうちにあったことになる。
これらの問題をこれで幕引きにしてはいけない。国土交通省への簗氏の働きかけはあったのかはまだ解明されていない。「台湾有事発言」により悪化するばかりの日中関係。赤根智子所長にまでその手を伸ばした国際刑事裁判所(ICC)制裁をめぐる米トランプ政権との確執。そして、ロシアでの北海道新聞記者の拘束問題。高市政権の外交問題は難問山積だ。
政治のトップリーダーとして持つべきバランス感覚に欠け、側近の言うことにすら耳を貸さず、独裁色を強める高市首相。こういう人物に日本の運営を任せていいのか、とても心配である。それにしても、直近のNHK世論調査で簗氏の問題が発覚後も2ポイントしか下落せず、51%の支持率はどうしてなのか。私にはとても理解できない。 (10月15日)
▼ 国会で久しぶりに「辻元節」がさく裂
10月16日の参院予算委。高市氏は冒頭、簗氏を事実上更迭したことについて「任命責任は私にある。申し訳ない」と謝罪。この後、立憲民主党・辻元清美氏が2週間前の2日夜にあった主要7カ国(G7)のオンライン首脳会議に欠席したことを追及した。
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かつて「総理、総理」と首相を追い詰めた「辻元節」を久しぶりにさく裂させた。これに対して、高市氏は「会合に必要なディスプレイなどの準備が整わなかった。会議が開かれていた時間帯は公邸で所信表明演説を書いていた」などと苦しい弁明に追われた。
ANN(テレビ朝日系)や毎日新聞電子版によると、辻元氏は「どのように責任を取るつもりか」などと「予算カット」問題で首相を追及した後で最後にG7オンライン会議欠席の問題を持ち出した。
「外交大事ですよ。なぜこの会議に欠席したんですか」と質問。これに対して、高市氏は「当日の開催直前に結局(会議の開催)時間も確定しましたので、まず事務的な準備が整わないと、オンライン会合に必要なかなり大きなディスプレイを使いますので、これを業者・事業者に頼みますので、整わないということで」と言い訳した。
ここで辻元氏「(首相は)世界の真ん中で咲き誇る日本外交とか言っているが、私は、総理自らの判断で世界の隅っこに追いやられるんじゃないかと心配しているんです」と追い打ちをかけた。
ここで負けじと、高市氏は「必ず本人が出席すべきとされているものもあります。そして、日本にとっても、アジアにとっても重要な議題、特にアジアの代表というぐらいの気概で臨んでおります。そういう会議には必ず出席しております」と開き直った。また、高市氏は「議題が欧米間のディーゼル価格などの対応だった」とも述べ、遠藤和也外務審議官を代理出席させたとも説明している。外務省の事務方は、ここ数年の岸田文雄氏や石破茂氏が首相の時はG7オンライン会議にはすべて出席していると答弁した。
G7加盟7カ国のトップ7人のうち、高市氏と英国のバーナム首相が欠席した。バーナム氏は父親の葬式で出席できなかったという。
高市氏は「議長国のフランスが当日急遽設定したもので、代理出席が認められていた」とXで投稿。このことを報じた6日付朝日によると、オンライン会議は2日午後9時半から約30分。高市氏はこの夜、麻生太郎副総裁らと会食の後、会議の時間帯には公邸にいた。SNSなどでは高市氏は6月のフランスで開かれたG7で、首脳の誰にも相手にされない「独りぼっち」動画などが拡散されていた。
辻元氏は最後に「(高市内閣は)危機管理が本当にできていない。誰か総理に(出席した方が良い)と進言する人はいないんですか」ときつーい一発を放った。
このやり取りで判明したことは、2日に急きょ、フランスが会議を設定したわけでなく、事前に連絡はあり、会議の時間帯がその日になって色々動いたらしい。おそらく高市氏は議題が欧米間の問題だったので自分は出ないでいいと考えたのだろうが、少なくとも「議長国のフランスが急遽設定」の首相のX投稿は正確ではない。直接、日本と関係のないテーマでも、高市氏は正式メンバーであり、出席すべきは当然である。
そもそも、臨時国会での所信表明は3日後の5日であり、演説原稿を書いていたから約30分の会議に出られなかったという言い訳は通用しにくい。ましてや、「ディスプレイの準備が整わず」などというのは問題外である。「本音は出たくなかった」からと言われても仕方がない。これも、高市氏の首相としての資質が問われるべき問題であり、マスメディアの追及が甘い。 (10月16日)