コラム「番犬録」第32回 「中傷動画」問題は高市首相のアキレス腱  触れると興奮し大声で吠えた党首討論 皇室典範改正論議でのインチキな「立法府の総意」という建前 「皇族数確保」の問題から「皇位継承」に論点すり替え やはり皇室典範改正は右派勢力の「クーデター」なのかもしれない 象徴天皇制を根幹から揺るがす こんな大事な法案審議を会期末ぎりぎりにするとは 国会を軽んじる高市政権のあまりにもひどい暴挙 印首相は「美しい妹」とは呼ばず 

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 首相就任以来2回目となる7月15日の野党6党首との党首討論。なぜかこれを極端に嫌がる高市早苗首相を党が説き伏せて実現した。しかし、わずか1時間余りの討論。時間的にいっても、とてもかみ合う議論などできるわけもない。そこで、ただひとり、世論がやや忘れかけている高市氏のアキレス腱である「中傷動画」問題を取り上げたのは、中道改革連合の小川淳也代表だ。自民党のだまし討ちだったのに、旧宮家の養子を認めるという男尊女卑の皇室典範改正に衆院で土壇場で賛成して強い批判を浴びたことを挽回するかのようにこの日は、「中傷動画」問題にあえて触れた。 NHKの中継でその一部始終を見ていたが、主なやり取りを確認しておこう(TBS NEWS DIGから)。

 小川 今国会、こういう議論を多々やりたかったが、残念ながら総理の国会出席は歴代総理と比べて極めて少ない。それもおそらく総理の意向が働いている。それから、報道対応も十分ではないと言われている。SNSを通して、ご自身の発信したいことは一方的にされている。そして中傷動画をめぐっては、面識や会見の定義が揺らぐことで、総理が責任回避をしているのではないかという心象を振りまいた。さらに書面の提出をもって国会質問を控えてほしいと取られかねないような場面にも出くわした。

 国会って都合のいいことを聞いてくれる場じゃないんです。厳しい問い、批判的な角度からの質問、これに誠意をもって真摯に答えることで、政治への信頼を生み出す場なんじゃないか。こうした一連の対応は、内閣総理大臣としての資質に疑問符が付きかねない事態に立ち至っていると感じる。

(私のつぶやき=なかなかいいことをいうじゃないか。これで、典範賛成は帳消しにはならないが、小川氏の質問は当たり前のことを指摘していると思うし、高市氏の総理としての姿勢の本質を突いているように思う)

高市 公共放送も入っておりますので申し上げるが、一連の中傷動画、「疑惑」という言葉が使われるのは大変心外だ。私自身は、決して私の事務所も、他の候補を批判することもしてこなかった。過去3回の総裁選挙も、過去30年以上の衆院選でも、そういうことはしてこなかった。中傷動画などをつくることもしていない。第三者にそれを頼むこともあり得ない話だ。

 そんな中で、中傷動画を作ったとされる人物本人が、インターネットの番組で「高市のところから頼まれたわけではない」ということを言っている。私にとって全く身に覚えのないことを追及されたわけでございますので、大変心外でございました。それでも懸命にご通告いただいたことには、確認をして答弁してきた。

(私のつぶやき=「全く身に覚えがない」との答弁に「本当かいな」と思わずのけぞった。「大変心外だ」という言葉をアルトの低い大声で2回も繰り返して強調した。「本当に役者やのう」と思わず、心の中でつぶやいてしまう。朝日新聞は「語気を強めた」と書いているが、その表現では生ぬるい。私には「吠えて」いるように聞こえた)

 高市氏はこれまでも、中傷動画問題を野党から質問されると、いつも逆切れする。「役者」なので、そのふりをしているのかもしれない。だから、審議が中途半端になったり、全く内容がないものになってしまう。本当に「中傷動画・暗号資産」問題などで疑惑が一切ないというならば、なぜ堂々と真正面から追及する野党との議論に応じて対決しないのか。最低限、これまでの週刊文春や週刊現代の報道でこの問題に関与したとされるIT起業家と高市氏の公設第1秘書との接点は明らかにされている。その接点まで否定し続け、これだけ議論すら事実上拒否してきたのは何かやましいことがあるのではないかと勘ぐられても仕方がない。それこそ自己責任である。

 朝日(16日付朝刊)によると、6月22日に首相が持ち出した公設秘書の「陳述書」の発案者は首相本人だという。答弁回避や参考人招致の代わりに苦し紛れに出そうとしたはずの「陳述書」。すでに言い出した時から3週間過ぎたが出てこない。朝日によると、参院で17日に首相が出席する予算委員会を開催することで与野党が合意したという。また、皇室典範改正案の参院特別委での採決がずれ込んだことで1週間から10日程度の国会の会期延長があるらしい。17日の会期末を迎え、国会日程すら定かにならない前代未聞の事態に馬鹿にされた国民は高市政権の危うい手法にもっと怒りの声を挙げるべきだ。

▼国民に対する「だまし討ち」 政権は皇室典範改正案を撤回し審議をやり直せ

 このところ、皇室典範改正問題ばかりを書いている。フェイスブック(FB)友達には、「象徴天皇制」に反対する人々もいるので恐縮だが、私は象徴天皇制は憲法や「戦後民主主義」の在り方に直結すると考える。皇室典範改正案が6月30日、高市早苗政権により国会提出されたので改めて時代遅れで憲法違反さえもが懸念される「男系男子」に固執する政府案の「撤回」を強く求める。

 まず「静謐な環境」の中で与野党の話し合い続けられたとされる「立法府の総意」(これ自体に怪しいところがある)が踏みにじられ、いつの間にか「皇族数確保」の問題からが論点が「皇位継承」にすり替えられた。

 高市政権は「立法府の総意」を受けた形で「骨子案」から「要綱」、「改正案」と段階を踏むごとに、短期間のうちにその内容を微妙に少しづつずらして国民の目を欺いた。なぜこのようなやり方をしたのか、とりあえず、野党の反対を抑えるぐらいしか考えつかないが、「日本のかたち」を変えるような問題で、デュープロセスを無視した結果になったことは、国会の軽視にとどまらず、「国民の総意に基づく」はずの憲法をないがしろにする許しがたい振る舞いである。

 例えば、旧宮家からの養子(15歳以上の配偶者のいない男子)の子(子孫)の皇位継承権に関する規定はこれまでは明確な記述がなかったが、最終段階の条文案になって初めて明るみに出た。

 また、皇族以外の男子と結婚した女性皇族が結婚後も身分を保持する案でも「立法府の総意」では先送りされたはずにも関わらず、その夫と子は皇族としないことになった。

 その理由について、内閣官房皇室典範改正準備室の担当者は、現行の典範15条が皇族以外の者が皇族になる場合を一般女性が皇后となるか、皇族男子と婚姻する場合に限定していることを踏まえ、女性皇族の夫と子については「皇族にはならない」と明言。夫と子は、皇位継承資格を持たず、男系男子による継承が維持されることになるとしている(毎日新聞)。これで、女性・女系天皇の道は閉ざされ、愛子天皇の可能性がなくなったといえる。

 このように、国民から7割以上の支持のある「女性・女系天皇」について、高市政権は議題にも上がらせずに排除して、日本会議など宗教右派がその実現を狙ってきた「男系男子論」を推し進めた。高市氏は「男系男子」による皇位継承が持論で憲法改正と並んで究極の「国論を二分する」肝いり政策が衆院選での自民単独で3分の2以上獲得の余勢をかって今国会で実現しそうである。

 そもそも、旧宮家といっても、80年前に皇籍を離脱した一般人。養子となるのは生まれた時から一般国民として育った人で、誕生時に皇族でない人が養子として皇族になった事例はないと宮内庁が答弁していて、伝統にも合致しないという(前宮内庁編修課長・鹿内浩胤氏)=東京新聞。

 また、近現代だけ見ても明治から令和まで続く今の天皇家に代わり、一般人の養子の子孫が天皇になりうる仕組みだ。皇室と国民の間の長年の信頼と敬慕の念がないがしろにされたと感じる人は多いのではないか(日本経済新聞社説)との指摘も重要だ。

 養子案は、1947年に皇籍を離脱した11宮家のうち、男系男子のいる久邇家、東久邇家、賀陽家、竹田家の四つの旧宮家が対象で若い人々が10人前後(読売新聞)がいるという。政府はまだ対象者に当たっていないというが、本当か。7月1日付の朝日で久邇宮家の3男・久邇朝宏氏が取材に応じ養子案について「(皇室に戻ることは)相当な覚悟が必要。自身の子や孫に打診があってもやめなさい、という」と話している。養子案は「事実上の世襲の貴族をつくることにつながる」と言われる。これは門地による差別を禁じた憲法14条違反の疑いが濃厚だ。

 さらに、養子案には「養子選びの時の政権の恣意が入る恐れがある」との指摘もある。この問題については、養子の受け入れ先となる可能性のある宮家は皇嗣である秋篠宮家を除く常陸宮、寛仁親王妃、三笠宮、高円宮の四つ。これまでに朝日新聞は6月23日の社説で自民党副総裁でこのうち二つの宮家に深く関係し、この問題を進めてきた中心人物の麻生太郎氏について「李下に冠を正さず」の姿勢を求めたいとの厳しい指摘をしている。

 このままでは、悠仁親王が結婚して男児を持たなかった場合、宮家に迎えられた養子の子(子孫 )に皇位継承資格が移る可能性がある。国民の意識とは相当乖離のある皇室典範改正案。やはり、「象徴天皇制」を残すには、「女性・女系天皇」を認める政党に政権交代してでも、皇位継承は「生まれた順番」という欧州王室基準を満たすのが民主主義国家の役割だろう。(7月1日)

▼ 高市首相の「美しい妹」発言は誤訳だったのか

 7月2日にインドであった日印首脳会談後の共同記者発表で高市氏がモディ首相から「美しい妹」と呼んでもらったと親密ぶりをアピールした問題。木原稔官房長官は7日の記者会見で同時通訳とモディ氏の発言が異なっていたことを明らかにした。ただ、「誤訳」かどうかは明確にしなかった(共同通信)。この問題では、SNSでモディ氏は「美しい」とは言っていないなどとの批判が上がっていた。

 2日の首脳会談後の共同記者発表ではモディ氏が発言した後、高市氏は「先ほど、私のことを(モディ氏は)「美しい妹」と呼んでくださいましたが、この拡大会合の前の会合で、お互い兄と妹として、これからお付き合いを続けていくお約束をいたしました」(官邸ホームページ)と述べた。木原官房長官は会見で「日本政府が契約した同時通訳が『美しい妹』と訳したことを受けて、高市氏も『美しい妹』と発言した」と説明している。

 外務省に取材した朝日は8日付朝刊で、外務省によると、当日の同時通訳は、ヒンディー語を英語に翻訳し、その英語を日本語に翻訳するリレー形式で行われていたという。政府関係者は「リレー形式の同時通訳はかなり難しい。シンプルな誤訳だ」と話す、と書いている。

 3日付の朝日朝刊は、会談に同席した尾崎正直官房副長官によると、安倍晋三氏は首相在任中、モディ氏を「兄」と呼んでいたという。安倍氏の後継を自任する高市氏は、安倍氏を兄のように慕っていたとして、自らを「妹」と呼ぶようにモディ氏に伝えたという。

 外交のたびに何かと目立つパフォーマンスをして、高支持率を保ってきた高市氏。同時通訳による「誤訳」なのか、「美しい」は通訳が付け加えたのかはっきりしない。ヒンディー語の専門家も「meri chhoti behen prdahanmantri」は「私の妹である高市首相」と指摘、インド外務省の英訳でも「my younger sister」だったそうだ。記者発表の少し後からこれらの指摘はSNSに上がっていた。

 問題は高市氏が事前に自らを「妹」と呼ぶようにモディ首相側に伝えて、親密ぶりを演出したことにあるのではないか。それにしても本当に「美しい」と言われたとしても、外交の舞台でそれをアピールすること自体が外見や容姿をを重視し、差別にもつながる「ルッキズム」と言われても仕方がない。

 ましてや、モディ氏が「美しい」などと言っていなかったことがはっきりしたわけだから、政府はもっと早く訂正すべきだったのでは。時折、「切れる」と報道されることもある高市氏の怒りをかうことを側近や外務省が恐れたのか。8日の昼までに、まだ、官邸のホーム㌻には首相の「美しい妹」のくだりが載ったままだ。国際的に発信してしまった首相の発言なので訂正、削除はできないのかもしれない。一国の首相として本当に恥ずかしい。

  そこで、 8日付朝日朝刊に載った「リレーおぴにおん」での作家・アイドル評論家、中森明夫氏へのインタビュー記事が面白い。

 「天然か計算か 悟らせない首相」の見出しで、「いささか複雑な思いを込めて申し上げると、高市首相は『うまい!』。アイドル性がとても高いと思います」と高市氏をほめる。その上で「アイドルの世界では、主権はファンの側にある。どんなに完璧な人でも、ファンに選ばれなければアイドルにはなれません。『自分が推してあげなければ!』というファンの主体的な思いを引き出せるかどうかの勝負で、そのためには、アイドルには『余白』や『隙』がないといけない。自己言及が過ぎると、ファンは想像力をはたらかせられません」と指摘する。

 さらに「その点、高市さんは余白だらけです。まず、自分で『女性初の』みたいなことをほとんど言わない。だから『苦労してきたんだろうな』と、各人各様、自分好みの物語を投影することができる。唐突に関西弁を差し込んだり『風呂』『食う』と言った荒っぽい言葉も、おそらく意図的に使っている。わざと『隙』を見せているのだと思う。どこまでが『天然』でどこからが『計算』なのかは悟らせない。一流のアイドルの所業です」という。

 そして、「政治は当然ながら、自分を推してくれる人たちだけのためにあるのではない。首相を筆頭に、昨今の政治家はどうもそこをはき違えている。かなり危ういと思います」と締めくくっている。聞き手は朝日の高橋純子編集委員。

 今回、インドで、アイドルとしての高市氏は得意なはずの「計算」ー親密さの演出ーが丸見えになってしまった。それだけにとどまらず、国際舞台で「差別的」と見られても仕方がない言葉を発してしまったのではないか。私は「アイドル政治」などは見たくもないし、それを無意識に受け入れてしまうファンの側にも問題があると考えるが、どうだろうか。(7月8日)

▼これで「戦前回帰」や「復古主義」が一層進む

 7月10日午後の衆院本会議。なぜか、旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎えるとの皇室典範改正案が衆院を通過した際の、議場の自席に座っていた高市氏の「してやったり感」にあふれた表情をとらえた毎日の写真をフェイスブック(FB)で見て「これで戦前化が一層進む」との思いを強くした。女性・女系天皇への道を閉ざす改正法案は、参院の審議を経て17日に会期末を迎える今国会で成立する見通しだそうである。

 21年12月の「皇位継承論議」を「皇族数確保」にすり替えた有識者会議報告書から4年半。昨年10月、「男系男子」による皇位継承にこだわる高市政権が誕生後、今年2月に自民単独で3分の2以上を獲得し、養子案に賛意を示す会派が衆参両院の議席数で約8割に達するという「民意」に勢いを得た政権は皇室典範改正作業を一気に加速させた。元々、旧宮家の男系男子による皇位継承は日本の最大級の右派団体、日本会議の憲法改正と並ぶ悲願だったことを再確認しておく必要がある。それがまもなく実現する見通しとなってきた。

 この日の審議は委員会を入れてたった3時間余り、「国のかたち」を変える可能性のある重要法案がこんなに簡単に決まっていいのか。衆院で野党第1党の中道改革連合が木原官房長官から「養子の子孫については(立法府の)取りまとめに記述がないことから、現行の皇室典範に基づいて判断する。立法府における将来の検討を先取りしたり、縛ったりする趣旨のものではない」との答弁を受けて、中道の小川淳也体表は「答弁により一定の担保が取れた。苦渋だが賛成したい」(朝日)として、土壇場で賛成に回った。

 中道はこれまで妥協案として「女性天皇の是非や女性宮家創設の検討」などを附帯決議に盛り込むよう求めていたが、自民は拒否。それにも関わらず賛成に回った。そもそも附帯決議には法的拘束力はない。木原氏の答弁は「『縛る』までもない、皇位継承資格を決めてしまったのだから後で何を言おうがご自由にどうぞ、という趣旨なのに」と読売は11日の社説で中道の対応も厳しく批判した。今回の対応で中道の支持率はまた下がるだろう。公明への遠慮なのだろうが、なぜ「反対」と素直に言えないのか。

反対したのは、共産党とれいわ新選組だけだった。まだ、救いなのは、中道の早稲田夕季氏、有田芳生氏、野間健氏、神谷裕氏が本会議採決前に退席し、改正案への不満をのぞかせた。自民の船田元・元経済企画庁長官は自身のホームページ(HP)やFBに「改正案は国民の総意から逸脱したものと言わざるを得ない。国民の総意に基づかない内容であれば、憲法の精神に反することになりはしないだろうか」と書いて、村上誠一郎前総務相ともども本会議を欠席した。船田氏は海外出張、村上氏は「風邪のため」とした。また、自主投票としたチームみらいの宇佐美登氏は「総合的判断」を理由に退席した(以上、毎日)。この7人の議員の名前は覚えておく必要があるだろう。

 10日の国会審議で今後の展開で重要なことが野党から質問され担当当局が答弁しているので、簡単に書いておく(いずれも毎日新聞の「主なやり取り」から」)。

 ー(皇族以外と結婚し、身分を保持した女性皇族の)配偶者と子は警備の対象となるのか=石川泰三・警察庁警備運用部長 皇族とならないとされているので、皇宮警察による護衛の対象とはならない。

 ー配偶者と子は皇族ではないが、女性皇族と一緒に住むことが必要だ。御用地なのか、それとも民間なのか=末永洋之・内閣官房内閣審議官 家族として御用地に居住いただくことは可能と考えている。(ご希望があるならばどうぞとの言いよう)。

 ー養子となる意思をどのように確認するのか=緒方禎巳宮内庁次長 当事者の自由な意思が重要であり、尊重されなければならない。確認する場合は、当事者のプライバシーに関することであり、意思確認に当たっては、情報の管理、プライバシーに十分配慮したい。

 さらに、緒方宮内庁次長は1947年に皇籍離脱した旧11宮家の皇族男子と現天皇とは「36親等から38親等の隔たりがある」と答弁している。

 旧宮家は静岡福祉大名誉教授・小田部雄次氏によると、明治から戦前・戦中にかけて天皇家を支えるために設置され、天皇とその直系子孫に次いで高い社会的地位にあった皇族を指す。明治以前は伏見宮、桂宮 、有栖川宮、閑院宮の4親王家があったが、大正期には伏見宮以外は後継ぎが途絶えた。伏見宮の男子の子弟がそれぞれ宮家を創り、近代皇族として一大勢力を築いた。戦後は11宮家が皇籍を離脱し、現在、旧宮家と呼ばれるのはその直系子孫たちだそうである。(5月14日、週刊ポスト)

 週刊ポストによると、養子案推進派の日大名誉教授・百地章氏(憲法)は現在、男系男子の子孫が続いているのは、賀陽、久邇、東久邇、竹田の四つで、現在分かっているところでは、20代、30代の未婚の男系男子は11人。賀陽家に2人、久邇家に1人、東久邇家に6人、竹田家に2人としている。改正案の養子の条件は15歳以上の配偶者や子のいない男系男子で、その子や子孫に皇位継承権があるという。

 改正案が成立すれば、悠仁親王に男子が生まれなければ、これらの人たちの子や子孫から天皇となる可能性がある。政府はまだ対象者に当たっていないとするが、現天皇と600年以上も昔の室町時代のつながりしかない人たちが国民に天皇として受け入れられるのか、また、この人たちの中に人権を制約されてでも引き受ける人が何人いるのか。やはり「象徴天皇制」を存続させるには、どう考えてみても女性・女系天皇も含めた「長子皇位継承」の検討しかないのではないか。このままでは「象徴天皇制」は崩壊する恐れがある。

 7月9日の報道ステーションの報道で気づいたのだが、日本会議の関連団体とみられる「皇室の伝統を守る国民の会」が旧宮家からの男系男子による皇位継承を訴える地方府県議会での意見書採択運動を続けている。「皇室の伝統に基づく安定的皇位継承の国会論議促進を求める意見書」という。すでに、自民党議員を中心とした「日本会議国会議員懇談会」と昨年4月に国民大会を開催するなどの地方での草の根の運動を続けている。HPによると、今年7月10日現在で全国34府県議会で意見書が採択されている。

 報道ステーションによると、ある自民党関係者は「地方議会の意見書は本来、野党が世論を味方につけるための常とう手段だった」とし、「養子案では世論調査で賛否が拮抗する状態が続いているのでこのような運動を始めた」という。元号法制化などで日本会議は地方での意見書採択運動を展開して成功しており、野党というよりは日本会議の得意技である。

 日本会議がそれほどの思いがある皇室典範改正問題。自民党議員の多数が加入する日本会議は高市氏の政権基盤でもある。皇室典範改正の成功体験で、「国旗損壊罪」だけでなく、「憲法改正」を中心とした「戦前回帰」や「復古主義」への動きが高市政権の中で加速しないか。とても心配である。こういう意味で、皇室典範改正は右派勢力による「クーデター」なのかもしれない。(7月11日)

▼「中傷動画・暗号資産」問題の予算委審議はいつやるのか

 高市氏のわがままを許すめちゃくちゃな国会運営。大きな声を挙げない野党にも問題はあるが、高市氏の責任が一番大きい。7月17日の特別国会会期末まであと3日。日本の「国のかたち」を変える皇室典範改正案の参院審議入りは15日に決まった。「愛国心の醸成」(提案の維新議員)などと述べて運用次第では、思想・信条を処罰する恐れもあることが明らかになった「国旗損壊罪」創設法案も9日に参院内閣委で審議入りして以来、審議の行方が不透明なまま時間ばかりが過ぎていく。

 皇室典範改正案は13日、15日に特別委で審議入りする日程に立憲が合意し、同日中に採決、17日までに与野党の賛成多数で成立というのが政権のもくろみだ。改正案は旧宮家の男系男子の養子を認め、その子や子孫に皇位継承権を与えるという「男尊女卑」だけでなく、現皇室の皇統を変え、「象徴天皇制」を根幹から揺るがす可能性のあるとんでもない改正案だ。

 このような重要法案にもかかわらず、高市政権は衆院でわずか3時間の審議で法案を通過させた。与党が少数派の参院では委員を持たない会派にも希望に応じて質疑に立つことを認めたものの、質疑時間も最大3時間20分とすことを確認した(朝日)という。これでも十分な熟議からは程遠い。

  朝日によると、立民はこの法案に「反対」の意思を示していたが、「立法府の総意ではない」との立場から「養子案」を削除することを柱とした修正案を提出する。立民の水岡俊一代表は13日「立法府の総意でもなく、政府のだまし討ちの法案に主要政党がこぞって賛成するようでは、立法府に対する国民の信用を失いかねない」と主張する。だからと言って、「修正案」提出だけでいいのか。賛成する野党が多く、15日の特別委で即日採決の可能性が高いからといって、あきらめるのが早すぎないか。衆院での審議で中道改革連合は土壇場で「苦渋の決断」だとして賛成に回った。国民からみたら、立民の対応もあまり違いがないように見える。

 木原官房長官は13日夜、記者団に対し、高市氏が国会の会期内に衆院予算委の集中審議に出席すると明らかにした。また、会期延長について「その必要性はない」と述べたという(NHK)。党首討論が17日説が報道されていた。いずれ分かることではあるが、あと3日間でどうするのだろう。1週間延長説も出ているようだ。いっそのこと廃案になればよいと思うが、それも期待できない。

  高市氏の予算委集中審議。参院ではやらないのか。首相の公設秘書らの参考人招致はどうした。そして、6月22日に高市氏が「答弁」の代わりに唐突に持ち出した「中傷動画・暗号資産」問題での公設秘書の「陳述書」は3週間過ぎてもまだ国会に提出されていない。大きな声で首相が大見得を切ったこの問題もどうなったー。

 マスメディアの追及の姿勢も弱い。このままでは、国会答弁をできるだけ避けてきた高市氏の逃げ勝ちになってしまう。例えば、朝日は当初は「中傷誹謗動画問題」としていたのを、いつの間にか「中傷動画報道」問題とレベルを下げている。「文春砲」も一部の動画に時系列的な誤りがあったとして以来、「今後も取材を続けていく」と決意を表明したが、その後の報道は弱い。いまは、「サナエトークン」問題で週刊現代や現代ジャーナルを足場に追及を続けるジャーナリストの河野嘉誠氏や「サナエタオル」問題を取り上げ始めた週刊ポストの報道に期待したい。

 それにしても、大手メディアはどうした。高市氏は、元検察官の郷原信郎弁護士が「高市さんの存在自体が地雷原」と自身のユーチューブ番組で指摘するなど疑惑が多すぎる人物である。その疑惑を追及せずに済ますことは許されない。(7月14日)