簗和生農相が衆院選で自身を支援しなかった首長がいる自治体の26年度道路予算を大幅カットし たとされる問題。週刊誌報道で発覚してから1週間が経過した10月6日、ようやく国土交通省が省内の調査結果を発表した。
この問題、新聞各紙、NHKはじめ民放など大手メディアも大きく報道し始めた。臨時国会の代表質問も始まり、8日の立憲民主党の田名部匡代幹事長の質問に、高市早苗首相は「発言は不適切と考えた」と述べた。その上で「襟を正して職責を全うしてほしい」として、簗氏を続投させる考えを示した。
高市氏は簗氏をどうしても更迭する気はないらしい。この問題で野党は厳しく追及してほしい。
国交省調査はあくまでも身内の調査にすぎない。野党だけでなく、ようやく動き出した大手メディアも、簗氏に象徴される自民党の「利権体質」をこの際、調査報道によって徹底的にあぶり出してほしい。
国交省調査により、簗氏の疑惑はかえって深まった。簗氏は7日の記者会見で、調査結果を受けて「働きかけがなかったことが確認された」などと開き直り始めた。
例え簗氏が主張するように問題発言が「誇張」であったとしても、自治体への恫喝と受け止められかねない発言自体が大問題なのだから、高市氏は自己保身による責任回避をやめ、直ちに簗氏を更迭すべきである。
簗氏は、1700万円を超す「裏金議員」である上に、高市と自民党内の右派グループ「保守団結の会」で活動を共にした仲間。高市氏が政調会長時代、農水部会長として支えた。
自分に考え方が近い、お友達を閣僚に抜擢した高市氏には、任命責任だけでなく、「予算執行の公平性」という民主主義の根幹を揺るがす問題について、今後も簗氏を閣僚を続けさせることにより、結果としてそのことに加担したことになる責任もある。
首相は軽く考えているようだが、その責任は重大である。首相の姑息な「逃げ切り」のもくろみを許すべきではない。
デイリー新潮や週刊文春電子版は、簗氏が自民党筆頭副幹事長だった5月の自民党大田原支部の懇親会で、栃木県那須烏山市と那珂川町の26年度の道路予算について、(首長が同じ自民党員の相手候補者を支持したことへの報復の形で)大幅にカットした」と発言したと音声付きで報道した。
国交省によると、衆院選挙が終わリ、予算決定前の2月中旬ごろ、黒田昌義官房長(当時)が簗氏の議員宿舎に呼び出され、那須烏山市と那珂川町の予算配分額を聞かれた。簗氏と当選同期で旧安倍派、現在は地球未来戦略担当首相補佐官の佐々木紀副大臣(当時)も同様の問い合わせを受けた。
問い合わせ内容について、黒田氏は省内の聞き取りに「細かいメモもなく、はっきり覚えていない」「働きかけや圧力を受けたことはなかったと思う」と答えたという。佐々木氏も「簗氏から予算削減の働きかけも圧力もなかった」としている。
黒田氏は簗氏から問い合わせを受けたことを事務次官らに報告した。予算配分が決まった4月7日の後、佐々木氏が26年度の配分結果を簗氏に説明した(7日付朝日新聞)。
7日付の東京新聞によると、この2市町以外に関する簗氏の問い合わせは確認されていない。道路予算の25年度との比較減額幅は那須烏山市の継続事業が64%、那珂川町が54%だった。国交省の担当者は会見で、前年度から50%以上減額の自治体が全国に1割程度あるとしつつ、2市町の減額理由は「総合的に勘案した」(官僚のよく使う言葉)と述べるにとどめた。その上で、2市町内で行われている県事業も含めた道路予算配分額は増えているとも強調した。
逆に簗氏を支持した市長のいる3自治体の予算配分額は増えていた。簗氏を支持した首長のいる自治体は増額し、相手候補を支持した首長のいる自治体は大幅減額。あまりにもわかりやすい構図だ。まだ、疑惑段階ではあるが、状況証拠は一応そろいつつあるように見える。
簗氏は5日になってやっと、発言を撤回、謝罪した上で、6日の閣議後記者会見で「党の会議ということもあり、非常に高揚感がある中、そういった発言につながった。少し誇張した表現をしてしまった」と発言の背景を釈明している。
高市氏はこの問題で会見もせず、都合が悪いからか、自分のXでも発信していないので簗氏に具体的に何を言っているのかは分からない。
簗氏によると、問題発覚後に閣議の後で何度か簗氏と会い「全力で仕事をするよう」と簗氏の続投を支持しているという。本当は、高市氏はキレる人のようだから、かなり怒っていたのだろうと思う。
高市氏は衆院選の際に選挙カーから簗氏を「私の大事な簗ちゃん」「知恵袋の簗ちゃん」と呼んでいる姿がテレビのニュースで毎日のように登場する。
政権発足に際して、「裏金議員」にも関わらず、自民党役員として「筆頭副幹事長」につかせて優遇した。 官房長は近い将来、事務次官をのぞめる局長の上の国交省の主要幹部だ。そのような官僚を議員宿舎にわざわざ呼び付けるような政治的な力が簗氏にはあったということなのだろう。
簗氏は、記者会見で問題発言が「誇張だった」と弁明し、圧力を強く否定し、逃げ切る姿勢を示している。 しかし、国交省への簗氏の問い合わせは、2月8日の衆院選投開票日直後の26年度予算配分額が確定する2月中旬に行われている。
なぜ、この時期だったのか。簗氏は国交省政務官だったことがあり、まだ、予算が確定していないことを十分に知っていたはずである。また、簗氏はなぜこの2市町だけ問い合わせたのか。さらに、なぜ、国交省官房長をわざわざ議員宿舎に呼び付けたのか。その具体的なやり取りの内容は明らかになっていない。
「裏金議員」であるこの人にこんなことを言う資格はないのかもしれないが、「事実上の幹事長」といわれることもある萩生田光一幹事長代行は6日の記者会見で、幹事長室の部下でもある簗氏に関して「簗氏が当時、そういう思いで職務に当たっていたとすれば、それはおごりであって決して許されるものではない」と批判した(6日付毎日新聞)。
自民党内にも簗氏の責任を問う声が広がっているようである。7日朝のテレビ朝日のモーニングショーで千々岩森生首相官邸キャップは「(なぜ首相が簗氏を更迭しないのかについて)高市首相は自分の内閣が傷つくようなことはしたくないからではないか」と指摘した。
ただ単に簗氏をかばっているわけではないようだ。自己愛が強く、何よりも高い支持率を維持し、自分が首相であり続けることだけが目的のようにしか私には見えない高市氏。
7日、簗氏陣営が過去2回の衆院選で、支持者を出陣式への会場までのシャトルバスで無料送迎したことが、公選法が禁じる買収にあたる疑いがあるとの文春砲第2弾が出て追い討ちをかけている。その対応次第では一気に世論の支持を失う可能性をはらんでいる問題であることを自覚すべきである。
▼日本の安全保障環境を悪くしている責任は高市首相にあるのではないか
9月25日、ヤフーが配信したデイリー新潮の記事はショッキングな内容だった。
「外交では、言わなくてもいいことをわざわざ言う必要はありません」安倍元首相の懐刀「今井尚哉」内閣参与は“高市外交”をどう見ているかという記事のことである。今井氏と言えば、第1次、第2次安倍晋三政権で首相秘書官、首相補佐官を兼任し、安倍長期政権を支え、「影の総理」と言われた大物経産官僚だ。昨年発足の高市早苗内閣でも首相の強い意向で官邸入りし、内閣参与を務める首相の「ご意見番」である。
月刊総合情報誌「選択」4月号では「高市が『退陣を口にした夜』」という記事で、高市首相はトランプ米大統領の要請に応じて、ホルムズ海峡へ自衛隊を派遣しようとしたが、今井氏に羽交い絞めにされて断念したと報じられ話題となった。
この問題では、高市氏、今井氏双方がいずれも事実関係を否定しいるが、ジャーナリスト、森功氏が月刊日本9月号で書いた「高市早期辞任こそ日本の国益だ」によると、「彼らの立場からすれば記事の内容が事実でもそうでなくても否定するしかありません。私が政府与党の関係者に取材した限り、記事の内容は大筋で合っており、事実関係は大きく間違っていません」と書く。
さらに、毎日新聞の伊藤智永編集委員も同じ月刊日本の「高市は『かわいそうな人』だ」でこの時の模様をさらに詳しく書いている。
伊藤氏によると、同席した別の政府高官が高市氏に自衛隊派遣がいかに愚策か説明したが、トランプ氏のご機嫌を取りたい高市氏は「でも」「だって」とふくれ面になった。そこで思わず、今井氏が「あんた何を考えているんだ。そんなこともわからないのか!」と大きな声を出してしまったのだとか。同席者たちは誰もたしなめたり、止めたりしなかったという。
森氏や伊藤氏のこれまでのジャーナリストとしての記事の正確性からみて「羽交い絞めにしたかどうか」は別としてこの問題は間違いなく存在したと思う。もしも、今井氏が高市氏のこの乱暴な振る舞いを止めなければ、イランとの関係を含めて日本は国際的にとんでもないことになっていた。日本にとって、こんな重大なことをなぜ、大手メディアは検証しないのだろう。そもそも、選択の記事自体、私の知る限りでは現役の記者が書くことが多いと言われる。この記事もその可能性はある。
この今井氏インタビューは9月22日(日本時間23日)の日米首脳会談の直前に行われた。インタビューでの今井氏が危惧する高市氏の外交姿勢とは。少し要約するとー。
僕には安倍政権の中枢で仕事をした経験があるから「あの時はこうだった」「このまま進むと、今度はここが大変なことになるよ」ということを高市氏に伝えている。その僕が今、一番強く感じているのは、世界中の国との関係を簡単に切っちゃいけないということだ。また、外交では、言わなくていいことをわざわざ言う必要もない。場合によっては、「言ってはいけないこと」だってある。
高市氏の(昨年11月の衆院予算委での「台湾有事」の)「存立危機事態」の発言だって、言わなくていいことだし、言ってはいけないことだった。親中だとか反中だとか、そんな生易しい話で外交はできない。中国は巨大な隣国なんです。
今の日本にとって、最も重要な同盟国は米国だ。しかし、それは何でもかんでも米国に頼ればいいということではない。日本として、自分たちの国益がどこにあるかを考えて相手と向き合わなければいけない。
国と国との関係は好き嫌いで決まらない。(中略)一時の感情で外交をやってはいけない。今は関係が悪いから全部切る、相手が気に入らないから話をしないということではダメだ。何かが起きた時にパイプすらないようでは、そもそも相手国に抗議すらできない。関係が悪い時ほど対話のルールを残しておく。それが外交のルールです。
以上のような今井氏の発言は外交を行うにあたっての常識だと思う。おそらく、インタビューの内容を見ると、今井氏はふだんからこのようなことを高市氏に「進言」しているに違いない。
今井氏はまだ現役の内閣参与だ。それにもかかわらず、こういった意見を公表したことは高市氏の態度がいっこうに改まらず、最近では、高市氏と今井氏の距離も報道されていることから、高市氏への「縁切り宣言」ともとれる。耳の痛いことや人の言うことを聞かないのが、高市氏の首相としての最大の欠点だ。今回の役員人事で国家安全保障補佐官として抜擢した尾上定正元空将もなぜかやめた。いまさら、年末の安保3文書改定を前にして昨年の「核保有発言」の責任を取らせたということではあるまい。何か、意見の違いがあったか。政府の説明はない。
今井氏の懸念は今回の高市氏訪米の国連一般討論演説で第2次世界大戦の敗戦国を対象とした国連憲章の「旧敵国条項」の削除に言及したことで現実となった。
「(旧敵国条項は)早急に削除されるべきだ。70年間にわたり、国連の取り組みに大きく貢献してきた日本の誇りと名誉にかけて強く申し上げる」と首相は22日、米ニューヨークの国連本部で訴えた。首相初の国連演説に「旧敵国条項」の問題が入ったのは、高市氏の強い意向があったと28日付朝日は報じている。この条項について、1995年の国連総会で「時代遅れ」とされ、日本政府は「死文化」したとの立場を取る。
同日夕刊の朝日「素粒子」は「やぶをつついて蛇を出す 死文化していた旧敵国条項の削除を不用意に提起し『米中はともに日本の軍国主義に立ち向かった』と米中接近のだしに使われること」と皮肉った。
高市氏は自分の「台湾有事発言」により、日中関係がどんどん悪くなる中で、なぜこのような「いま、言ってはいけないこと」を演説に盛り込んでしまったのだろう。「嫌中」が多いとみられる高市支持者の受けを狙ったのではないか。日本の安全保障環境を悪くしている責任は高市氏自身にあるのではないか。また、日中問題の火種が増えた。あきれるでは済まない。止めない側近も同罪である。そもそも、勇ましいことばかりを言う政治家は国際的にも信用されない。(9月29日)
▼首相は踏み込んだ所信表明演説で日中問題の解決の糸口をつかむべきだ
年末までの11月の中国でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)や12月の米国での20カ国・地域首脳会議(G20)までに、高市早苗首相の「台湾有事発言」に端を発する厳しさを増している中国との外交問題で日本が間違った対応を取れば、日本は(国際的に)“浮いた存在”となり、米国や欧州、中国、ロシアなどから、そっぽを向かれることになりかねない。それは、首相のせいだということもできるが、日本外交の敗北だー。
元外務省アジア大洋州局長や外務審議官(政務担当)を歴任し、2002年と04年の日朝首脳会談や拉致被害者を帰国に導いたことで知られる元外交官の田中均氏が9月30日の自身のYouTube番組「田中均の国際政治塾」でこう警告した。
その実現は高市氏の性格からいって難しいかもしれないが、外交専門家による具体的な提案であり、私は高く評価したい。
日本国際貿易促進協会会長の岩屋毅前外相が同協会の企業関係者計57人と訪中し、北京で28日に王毅外相と、29日に何立峰副首相と会談した。2人はいずれも中国共産党政治局員という高官で高市首相の「台湾有事」答弁問題後、重要閣僚経験者の訪中は初めてとなる。
昨年11月7日の衆院予算委で高市氏が「台湾が武力攻撃を受けた場合、これは日本の存立危機事態になりうる」との答弁が中国側の強い反発を呼んだ。
王氏は「現在、中日関係は厳しい局面に直面しており、再度の『正常化』が必要だ」と指摘。その前提として「日本側にとって喫緊の課題は、台湾問題における指導者の誤った言動を速やかに是正することだ」と訴えた。
何副首相も「一部の日本の政府要人が台湾問題で、中国側の譲れぬ一線に挑もうとしている」と批判した。その一方で「両国の経済・貿易関係は非常に緊密なものがある」とし「今後の両国の発展を推し進めていくことができる」と日中の経済協力に期待を寄せた(30日付朝日)。
普通ならば高市政権は、中国とのパイプ役として、リベラル派で王氏と面識のある岩屋氏を派遣してもおかしくないのだが、心が狭く、好き嫌いの激しい嫌中派である高市氏には、そんなことはできない。もし、そんなことができるならば、高市氏もたいしたものだと評価してもよいぐらいだ。
ここで王氏の発言に私が注目したのは、高市氏を名指しせず、「再度の正常化」を強調。その上で「台湾問題における指導者の誤った言動を速やかに是正することだ」と述べたことだ。
これまで中国側が繰り返してきた「謝罪」や「撤回」という言葉はみられなかった。だからと言って、日中の関係が少しは改善したかというと、そうとも言えない。
習近平国家主席は9月24日の米中首脳会談後の夕食会で、トランプ大統領の「第2次大戦中、米中は同盟国として戦った」に答える形で「(戦時中の)中米の国民は、日本軍国主義の侵略者に肩を並べて抵抗し、反撃した」と日本をけん制。高市氏が一般討論演説で述べた国連憲章の「旧敵国条項」をめぐっても、削除を求める日本に強く反発している。
高市氏の「台湾有事」答弁をめぐっては、答弁3日後に立憲民主党が予算委質疑で「外圧によって撤回となるよりも、国会で撤回するほうがよい」とせっかく、助け舟を出したが、他人の言うことを絶対に聞こうとしない高市氏は「撤回」を受け入れなかった。「台湾有事答弁」の後、側近に「今日は言いすぎてしまった」と言ったとの報道もある。高市内閣の内閣参与、今井氏は「言ってはいけないことだった」とディリー新潮のインタビューに答えている。当初とは変わり、最近はこの問題で両論併記の形で、結果として「高市氏擁護」の論陣を張るマスメディアの責任も重い。
歴代の首相があいまいにしてきたこの問題で、高市氏の答弁が「失言」だったのか、故意に言ったのか、いまだによくわからないが、少なくとも、立民の撤回要求に答えていれば、このような大きな問題にはならなかった。
一国のトップリーダーが大した根拠もないのに何でも「言い切る癖」は危うい。また、このような危ない人物を選んだことにも責任がある。
ウイキペディアでこの問題のその後の経緯をたどると、高市政権は答弁を撤回しない一方で、昨年11月25日、公明党の質問主意書に対して「従来の政府見解を完全に維持している」との見解を閣議決定。
高市氏自身も翌26日の党首討論で、存立危機事態を認定する事例を「具体的に言及したいとは思わなかった」と政府の公式見解を継承する考えを明確にした。これでは、答弁の修正にすらならないし、中国側が納得しないことは自明のことである。
そこで、田中均氏の主張。
王氏の「正常化が必要」という言葉は、正常化について中国側は「日本次第だ」ということを言っている。
だから、10月5日の臨時国会での「所信表明演説」がこの問題解決にとって非常に重要だ。外交当局は11月までのシナリオを考えるべきであるとする。
所信表明で、中国との関係できちんと自分の過去に言った意図をすっきりさせるべきであり、自分の国会答弁により問題を混乱させ日中関係が悪化したことは申し訳ないというべきだ。
そのうえで中国との間で結んだ「四つの政治文書」を日中関係を基本にして着々と拡大していきたいと明確に言うべきである。歴代の政府が是としてきたんだから、高市氏も是とするのは当然だ。
「四つの政治文書」というのは①1972年9月29日の「日中共同声明」②78年10月23日発効の「日中平和友好条約」③98年11月26日の「平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言」④08年5月7日の「『戦略的互恵関係』の包括的推進に関する日中共同声明」。
この政治文書を持ち出しただけで、日中関係は軌道に乗って行くと思う。ただ、高市氏が「対話の窓はオープンだ」と言っている限りは望みはない。(首脳会談で)目をぎょろぎょろする様なことはやめた方がよい。このように相手に媚を売る人は世界で尊敬されるわけはない。(全体は約30分だが、かなり意訳している)
要するに、臨時国会の所信演説で「問題を混乱させたことや日中関係悪化をわびる」ということになるが、反省もしない、人の言うことを聞かない高市氏がこれに応じる可能性はほとんどないのかもしれない。
高市氏がこういう姿勢を示すことに支持基盤の右派陣営が騒ぐ可能性もある。ただ、中国側からボールは日本側に投げられたのだから、せっかくのこの機会を逃すべきではない。田中氏の提案はやってみる価値があると思う。
26,27日付の朝日の世論調査でも「高市氏が中国との関係改善に力を入れる必要がある」は57%と6割近くもあった。
米中が蜜月関係となったいま、この問題に高市政権が何もしないで放置することは、この問題で日本の孤立は避けられまい。
高市氏は明らかに国益を損ねている。だから、高市氏には首相をやめてもらうか、具体的な田中氏提案に乗ってみるしかないように思える。 (10月1日)
▼農相だけでなく次から次に閣僚の不祥事が明らかに
「だから、言ったではないか」-戦前、軍部に抗った反骨のジャーナリスト、桐生悠々のよく知られる言葉である。軍部の横暴を批判することと今回の事態は状況が異なるとは思うが、今回、週刊誌により暴露された簗和生農相のトンデモ発言を聞いて、とっさにそう思った。簗氏だけでなく、閣僚らの不祥事が週刊誌の手で次から次へと暴かれている。
簗氏は今年2月の衆院選で自民党員の保守系候補に敗れ、比例で復活した。その恨みなのか、5月24日の自民党大田原支部の総会後の懇親会で、衆院選で自分を支持せずに、栃木県内の首長が相手候補を支持したとして、「那須烏山市と那珂川町に対して26年度の道路予算を大幅にカットした」などと発言。これを週刊新潮などは、音声付きで報道し、このところ、テレビの情報番組でも連日、大きく取り上げられている。
私が桐生悠々の言葉を取り上げたのは、9月17日に発足した第2次改造内閣で、高市氏は24年の自民党旧安倍派による「裏金事件」で党から処分された裏金(不記載額)1746万円の簗氏を農相に、836万円(同)の関芳博氏を文科相に「みそぎは済んだ」とばかりにそれぞれ起用した。「裏金議員」の閣僚起用は初めてだった。その議員が大臣になって1か月もたたないのに、スキャンダルが発覚したからだ。
「裏金議員起用」には、9月26日、27日付の朝日世論調査では、「大いに問題」が34%、「ある程度問題」も34%と7割に近い人がこのことについて問題視している。いくら支持率が高いからと言って、高市氏のやり方は強引すぎたのではないか。「だから、言ったではないか」ということになる。国民をなめてはいけない。
国民世論の多くが反対しているにも関わらず、「過去に行ったことがなかったとされるわけではないが、その後説明を尽くし、2回の選挙を通じて国政に送り出していただいた。襟を正して重責ある公務に臨んでいただく」と恥じることなく裏金議員の閣僚起用を正当化した。
簗氏は当選6回で選挙応援時に高市氏は宣伝カーから「私の知恵袋簗ちゃん」と連呼するほどの数少ない首相の「お友達」のようだ。党内基盤がほとんどない高市氏にとっては、ぜひとも抜擢したかった人物なのだろう。簗氏は10月2日、2度も記者会見し(1度目の会見で態度が悪いのでさすがに、官邸から注意され異例の2度目のやり直し会見となったらしい)、そのもようをYouTubeで見たが、官邸記者クラブとは異なり、経済部が中心の農水省の記者クラブでは記者たちがかなり厳しい質問をしていた。
簗氏は「予算カット」発言は認めたものの、辞任は否定した。新聞報道では党内にも「辞任すべきだ」との声はあるものの、高市氏はドミノ辞任を恐れてか、簗氏をかばっているそうである。これまでの内閣ならば、簗氏の発言内容から見ても、当然、辞任ものであるが、困ったことに、強気一辺倒の高市首相なので違う対応が予想される。
今後、5日から始まった臨時国会で野党の追及は必至だが、問題は当時、党の筆頭副幹事長だったとはいえ、簗氏は国土交通省への働きかけは否定しており、報復として道路予算をどのように削減したのかが明らかになっていない。
自民党政治の本質は「利益誘導」と元文科省事務次官の前川喜平氏は4日付の東京新聞の「本音のコラム」でズバリ指摘しているが、簗氏のやったことは地元への利益誘導政党の自民党としては、「氷山の一角」だろう。
このところの週刊誌報道は高市政権にターゲットを定めたのか、政権スキャンダルのオンパレードである。週刊新潮10月8日号(1日発売)とともに、週刊文春も簗農相の同じ問題をほぼ同時期にオンラインで報道した。ネタ元が同じだったのではないか。週刊文春10月8日号は、「麻生太郎 愛人会社に政治資金8千万円を垂れ流していた」がトップ記事。この話は以前、やはり文春が書いたように思うが、第2弾があるのかもしれない。
さらに、週刊文春の同じ号には、24年秋の衆院選で今回初入閣の藤井比早之(ひさゆき)総務相陣営の「『運動員買収疑惑』を告発する」との記事も掲載されている。本来は無報酬のはずの応援の複数の地元議員に「労務者報酬」を支払ったとの内容で、それぞれ1万円以下と、額は多くはないが、公選法を所管する大臣の「運動員買収」とは、これもとんでもないことであることは間違いない。
そして、週刊現代10月12日号。「高市改造内閣 維新の新大臣は大林組からカネを受け取った」という高市陣営の暗号資産「サナエトークン」問題を追及し続けるジャーナリスト、河野嘉誠氏の記事を掲載している。日本維新の会から今回、「規制改革・行政改革」担当相として、初めて入閣した中司(なかつか)宏氏のスキャンダルを取り上げた。
中司氏は大阪府枚方市の市長時代、07年に競争入札妨害罪(談合罪)容疑で大阪地検特捜部に逮捕され、13年に最高裁で談合罪で懲役1年6月、執行猶予3年の有罪が確定している。週刊現代によると、中司氏は大臣就任後の記者会見で「私は裁判では一貫して無罪主張で、道から外れたことをしておりません」と冤罪を主張した。
ところが、この談合事件で中司氏と共謀関係にあり、3年の刑に服した元市議が口を開いて、当時は市長だった中司氏を守りたい気持ちもあり、「市長に金銭を渡したことは一切ない」と証言した。しかし、実際は「公共工事だけでなく、枚方市の民間プロジェクトなどでも、お礼として金銭をもらい、私と中司氏で折半することが慣例化していた。こうした関係は95年から10年ほど続き、数十万円の時もあれば、数百万円のときもあった」などと主張している。この元市議の証言が真実かどうかは不明だが、中司氏には閣僚としての説明責任がある。
また、第1次内閣からの留任となった小野田紀美経済安保相をめぐり、22年の参院選の際に公選法が1カ所と定める選挙事務所を2か所設置していた疑いをすでに週刊文春が報じている。10月1日に配信された週刊文春電子版オリジナルは、22年の参院選公示日前に今回国交副大臣に就任した朝日健太郎氏と外務大臣政務官になった生稲晃子氏が明治座で開いた「観劇会」で公選法違反に当たる事前運動を行った疑いがあることを報じている。
そもそも、高市氏自身が抱える「中傷動画」や暗号資産「サナエトークン」問題はその後、どうなった。「しっかりと、秘書に陳述書を作らせます」と野党の追及に苦し紛れに高市氏が述べてから、約1カ月もたって国会に出された「陳述書」は「記憶がない」だらけのお粗末な代物だった。
高市氏には、「ああでもない、こうでもない」とだらだらと野党の追及をかわして逃げ切った「成功体験」がある。だから、これだけ多くの新たな疑惑が出てきても、また特に今回の簗農水相のスキャンダルも「辞任」などさせずに逃げ切るつもりだろう。
このような「疑惑まみれの改造内閣」。野党側の徹底した追及が必要なのはもちろんだが、週刊誌だけに任せず、大手メディアも調査報道で高市内閣と対峙してほしい。
5日の高市氏の「所信表明演説」をテレビ中継で見た。「うまくいっている物価高対策」や「日本列島を強く」など これまでとほとんど変わらない主張ばかり。米中首脳会談によりその関係が大きく変化した中で悪化するばかりの日本の対中政策をどう具体的に改善していくのかや国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長へのトランプ政権による制裁への抗議や撤回などには一切触れない全く内容のない演説だった。
期待などしてなかったが、前回の投稿で紹介した「臨時国会での首相の踏み込んだ所信表明演説で日中問題の解決の糸口をつかむべきだ」との貴重な元外交官の田中氏の進言は無視され、高市氏はせっかくのチャンスを逃したのではないか。(10月5日)