「米大統領選」民主党副大統領候補に初の黒人女性 4年後有力大統領候補に浮上の可能性も トランプ大統領は郵便投票の拡大阻止に躍起

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 11月3日に迫った米大統領選で政権奪還を目指す民主党は、オンラインで開催された党大会で大統領候補ジョー・バイデン前副大統領、副大統領候補にアジア系の黒人女性カマラ・ハリス上院議員を指名した。一方、共和党は、大統領候補のトランプ大統領を、副大統領候補にペンス副大統領をそれぞれ示した。バイデン氏が勝利すれば、ハリス氏は黒人、アジア系、女性のいずれでも初の副大統領となる。白人男性が中枢を占める共和党トランプ大統領陣営に挑む。焦りを隠せないトランプ氏は、ハリス氏が昨年の討論会でバイデン氏を非難したことをとり上げるなど、人格攻撃に躍起となっている。

鋭い舌鋒でトランプ政権追及

 バイデン氏が10人近い有力候補者の中からパートナーとして選んだハリス氏は、1964年10月20日、米西部カリフォルニア州オークランドで、ジャマイカ出身の黒人の父とインド出身の母との間に生まれた。米国の副大統領候補者としては初めての黒人、アジア系でもある女性。ベトナム反戦や公民権運動の最盛期、警官隊の放水を受けるデモ学生だった両親をベビーカーから見て育った。司法界出身で、サンフランシスコ地方検事やカリフォルニア州司法長官などを経て、2017年から同州選出の上院議員になった。白人からも一定の支持を得ている。

 ハリス氏は鋭い弁舌が評価されている。議会での厳しいトランプ政権追及で注目され、大統領選の党候補選びでは、討論会でバイデン氏の過去の人種問題を巡る対応を鋭く批判。一時は支持率2位に浮上した。差別発言も含めて徹底攻撃を繰り返してくるトランプ氏を打ち負かせるか。人種問題を前面に、失言癖もある大統領候補となるバイデン前副大統領を支える。

 朝日新聞は「民主党の候補者討論会では、人種差別撤廃のためのバス通学制度にバイデン氏が反対したとして、激しく批判。『ある少女は毎日そのバスで学校に通っていた。その少女は私だ』と詰め寄り、一時は支持率が跳ね上がった」と書いている。

焦りにじませるトランプ氏

 ハリス氏は55歳、バイデン氏は77歳。4年後には81歳になるバイデン氏が大統領に当選しても2期続けるのは難しいとみられ、ハリス氏が次の大統領選の本命になるとの予測が早くも出ている。

 中道のバイデン氏は左派も多い民主党を「反トランプ」で団結させようとしており、現時点ではバイデン氏がリードしている。両者は9~10月の討論会で直接対決する予定で、トランプ氏は失言癖のある高齢のバイデン氏から失策を引き出そうと攻撃を続けている。

 選挙情勢が不利になってきたトランプ氏は、ハリス氏が副大統領補にすぎないのに、直ちにハリス氏の攻撃をはじめた。米大統領としては恥をさらすような醜い言葉でハリス氏を攻撃した。

 トランプ氏はハリス氏について「急進的な左派として失敗したのに、フェイクニュースメディアは無条件に受け入れている」とツイッターで攻撃、バイデン氏とハリス氏のコンビに注目が集まっていることに焦りをにじませた。

 民主党の大統領候補選びで善戦したハリス氏は党内では穏健派とされているが、トランプ氏は米国内で抵抗感が根強い「急進左派」のレッテルを貼って、勢いを食い止めたい考えとみられる。

郵便投票拡大巡り攻防

 さらにトランプ氏は、民主党に有利とも言われる郵便投票の拡大阻止に躍起となっている。郵便投票は「不正を生む」と主張し、米郵政公社(USPS)への郵便投票の緊急支援補助金250万ドル、または警備費用の緊急増加対策費350万ドルの支出の署名を拒否する、と表明した。対する民主党は、USPSを守る法案提出に動きだし、攻防が激化している。

 米メディアによると、USPSのデジョイ総裁は与党共和党に献金し、トランプ氏に近いとされる。USPSでは今夏、リストラの一環として職員の超過勤務を禁じ、既に一部の郵便ポストを撤去。民主党内には郵便投票への妨害行為との見方が強まっているが、トランプ氏は総裁について「郵便局を再び偉大にしようとする素晴らしい人物だ」と評価している。 

 民主党が多数を占める米下院本会議は22日、USPSに250億ドル(約2兆6千億円)を拠出する法案を民主党と一部の与党共和党の賛成多数で可決した。新型コロナウイルス感染を防ぐため11月の大統領選では郵便投票を拡大する州が大幅に増える見込みで、これに対応できる態勢を整えるための措置。共和党が多数を占める上院を通過するかどうかは不透明で、トランプ氏は拒否権を行使する方針だ。