「森友問題で新展開」まるで人ごと、白々しい首相の言葉 改ざん指示を疑われているのは?

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 いったんは消えかかっていた森友学園をめぐる公文書改ざん問題が再び、ク ローズアップされてきた。

 3月18日発売の週刊文春で元NHK記者相澤冬樹氏が放った12ページにわたるスクープ 記事。「森友自殺財務省職員 遺書 全文公開『すべて佐川局長の指示です』」が世間に与えたショック度は大き い。この日、財務省近畿財務局の赤木俊夫さん=当時(54)=が2018年3月に自殺したのは、公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が国と当時の財務省理財局長(元国税庁長官)を相手に総額1億2千万円を求める民事訴訟を大阪地裁に起こした。このニュースを週刊文春の後追いなが ら、朝日新聞や東京新聞などは1面トップで扱い、NHKや民放も大きく報道した。なぜか、読売新聞は第2社会面の扱いだったが、テレビの情報番組やネットも取り上げたため、広く国民に知れ渡ることになった。

「すでに終わった話」にしたい政権

 野党の国会での追及も始まったが、安倍政権は「今さら、という話だ(政権 幹部)」と冷ややか(朝日新聞19日付朝刊)だそうだ。このため財務省は「佐川氏が文書改ざんの方向性を決定づけたと認められる、とした、内部調査報告書 の内容と手記は大きな齟齬がない」との認識を示した。大阪地検が弁護士らから告発を受けた関係者36人すべてを不起訴処分にしていることも強調され た。

 正直なところ、政権内には、「また嫌なことを蒸し返された」との動揺は あるものの、「すでに終わった話」として、しらばっくれるつもりだろう。政権にとって、本音は新型コロナウイルス感染の問題が危機的なときなのに、何でいまさら 、と いうところだろう。直近の朝日新聞と共同通信の世論調査で、なぜか、安倍内閣の支持率が逆転して不支持を上回ったことも、国民の支持率を気にする政権には追い風となっていた。

 赤木さんの手記や遺書では「決裁文書の改ざんはすべて佐川氏の指示で、 近畿財務局の現場の抵抗にもかかわらず行われた」とし、赤木さんは強く抵抗 したが、複数回改ざんを強要されたという。さらに「森友事案は、すべて本省 の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常では あり得ない対応を本省(佐川)は引き起こした」と告発している。その上で 「私の大好きなお義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さ こんな 人生って何?・・・さようなら」(週刊文春)と結ばれている。

公文書改ざん問題のきっかけは首相発言

  公文書改ざん問題の出発点は17年2月17日。その前に、森友学園に格安の国有地が払い下げられいた、との朝日新聞の報道を受けて、安倍首相が国会で「私や妻が関係していれば、首相も国会議員もやめる」と大見得を切ったこ とにある。このあとに、公文書から昭恵夫人らの名前が出てくる記述などが消された。このことを忘れてはならない。森友学園の小学校開設に際し、首相の昭恵 夫人が当初、関わっていたことは同学園の籠池泰典氏の証言からもうかがうこ とができる。

 朝日新聞によると、3月18日夜、首相は官邸で記者団に「ご冥福を改めて お祈りしたい。改ざんは2度とあってはならず、今後もしっかりと、適正に対応していく」と述べた。首相の責任を問う声も出たが、それには答えず官邸を立ち去った、という。さらに、翌19日、参院総務委員会で、森友の再調査を拒否した上で、首相は赤木さんの手記を読んだことを明かし、「職務に精励していた方が自ら命を絶たれたことは痛ましい出来事であり、胸が痛む思いだ」 と語っていることが伝えられている。

 毎日新聞は3月20日付朝刊社説で、首相の「2度とあってはならない」との発言について「人ごとのようだ」と書いた。広島の中国新聞も「まるで人ごとのような平然とした態度に、あきれてしまう」と首相の発言を批判した。問題や責任を佐川氏一人だけに負わせてはならない。勝手に佐川氏が忖度したとはとても思えない。では、佐川氏に指示したのは、誰なのか。いまのところ、 証拠は出ていないが、官邸なのか?全く不明である。残念ながら、政権は再調査はしないだろうし、大阪地検特捜部が再捜査する可能性も薄い。  

執念深く真相追及を

 週刊文春にこのスクープ記事を書いた大阪日日新聞記者、相澤冬樹氏はずっとNHK記者として森友事件を取材してきたが、取材をめぐり記者を外されたため18年夏に NHKを辞めた。著書に「安倍官邸VSNHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋)がある。週刊文春によると、このことを知った赤木さんの妻の方から、相澤さんに面会を求め、相澤さんに手記を見せたと いう。しかし、妻からはすぐに公表する承諾は得られず3月7日の赤木さんの 3回忌を機に妻は公表を承諾したという。

 首相の言葉は 確かに「まるで人ごと」のように聞こえる。私はそれにあえて「白々しい」を 付け加えたい。赤木さんの無念を晴らすためにも、メディアは執念深くこの問 題の真相を追い続けてほしい。