「東京五輪聖火が到着」IOCの開催声明に批判 バッハ会長「異なったシナリオも検討」

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 新型コロナウイルス (Covid-19)が世界的なパンデミックとなり、欧州、米国などで感染が拡大、東京五輪を予定通り開催できるか、不安が高まる中、東京五輪の聖火が3月20日、日本に到着した。しかし、聖火リレーが始まる前に、東京五輪の延期を求める声が国際的に高まり、今後の展開は予断を許さない。

「完全な形で開催を」と首相

 国際オリンピック委員会(IOC)は3月17日、臨時理事会の後に東京五倫の開催について公式声明を発表し「IOCは東京2020オリンピック大会に完全にコミットしており、大会まで4カ月以上あるこの段階にいかなる重要な決断を下す必要はない。この時期に推測を行うことは逆効果になる」として、予定通り7月24日の東京五輪開会式に向けて準備を進めていく姿勢を明らかにしていた。

 声明は「IOCは東京2020オリンピック大会のためにすべてのアスリートがその準備を継続するよう奨励する。各国の国内オリンピック委員会や国際スポーツ団体とともに最新の情報を世界中の選手たちに提供しサポートを続けていく」とした。さらに声明は「IOCは世界中の多くの当局によってとられている多くの対策が新型コロナウルスの状況を抑制するために役立っていることを信頼している」とし、日本の安倍晋三首相がG7サミットの会議後「人類が新型コロナウイルスを征服することを証明するものとして、オリンピックとパラリンピックを完全な形で開催したい、これはG7指導者たちからも支持された」と述べたことを引用「このようなG7指導者の支援を歓迎する」と強調した。

 日本政府と大会組織委員会は、IOCの声明を受けて、予定通り開催準備を進めていく姿勢をとり続けているが、新型コロナウイルスの欧州や米国での深刻な感染の拡大の中で、選手やIOC委員も含めたオリンピックファミリーの間からも、東京五輪の延期を求める意見や、強い不安の声が上がってきている。そんな中で米国の水泳連盟は3月20日に米国オリンピック・パラリンピック委員会に公開書簡を送り、東京五輪の1年延長を働きかけるよう求めた。書簡は「新型コロナウイルスの影響で世界中の選手が練習や準備ができず、多大な重圧やストレスを受けている」と指摘した。またノルウェー・オリンピック委員会も同日、IOCのバッハ会長に対して、新型コロナウイルスの感染が広がっている状況が収束するまで東京五輪を開催しないよう要望する文書を送ったと発表している。

「神学的論議やめるべき」

 選手選出のIOC委員でカナダのアイスホッケー金メダリスト、ヘイリー・ウィッケンハイザー氏はIOCのバッハ会長を「(東京五輪を)あの声明のような確信を持って予定通り進めるというのは人道的に無神経で無責任だ」と公に非難した。

 世界のスポーツ取材記者たちの組織でオリンピック報道に強い影響力を持っている「国際スポーツ記者協会(AIPS)」のジョアンニ・メルロー会長はIOC声明が出た直後にフェイスブックに「コロナウイルスは人々の生活を変化させる津波のような破壊力を持っている。パンデミックになったウイルスは明日奇跡的な薬でも見つからない限り、根絶は難しい。7月に210カ国の代表たちが完璧な健康体で選手村に入れるのか?東京2020はイエスかノーか?真剣なテーマを無視して、無関係な問題に神学的に”天使の性別”について議論するようなことはやめるべきだ」と書き込んだ。さらに「私はコロナウイルスのレッドゾーンの北イタリアのミラノ近くに住んでおり、オリンピックなしに今年の夏を迎えることを恐れている」としている。

 3月19日のAIPSのウエッブサイトには「Dear IOC Tokyo 2020 should be postponed (IOCは東京五輪を延期すべきだ)」との記事が掲載され、メルロー会長はこの記事をフェイスブックで紹介、適切な方法で延期を考え始めることが重要だ述べている。

「クーベルタン男爵も感謝」

 AIPSのルクセンブルク発の同記事は「世界全体で22万の新型コロナウイルスの症例が報告され、死者が9千人に達し、多くのスタジアムやスポーツ施設が閉鎖されている現状の中で、IOCの声明を読んで言葉を失う。今や常識を持って若い人々の世界最大の集まりを別な日程で開けるようにすべきだ。IOCのメンバーの皆さん、先延ばしをやめ、お金のことは忘れて、オリンピズムの価値を思い起こし、世界の市民のために真剣に責任を果たしてほしい。一刻も早く、東京五輪を延期せよ。そうすればクーベルタン男爵もあなた方に感謝するだろう。」と結んでいる。

 このように新型コロナウイルスの世界的な拡大が深刻化する中、東京五輪の開催実施への懸念が高まっていることに、バッハ会長は3月20日、米ニューヨークタイムズ紙とのインタビューで「異なるシナリオは複数検討している」と述べ、延期も含め通常開催以外の可能性に初めて言及した。日本政府と大会組織委員会は決断を迫られている。