<米中間選挙まで1カ月>民主、共和両党真正面から激突へ 支持率史上最低レベルのトランプ氏 神格化宣言も効果望めず 民主党優勢も何が起こるか予測難しく

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 米国の上下両院議会議員を改選する中間選挙投票日が1カ月後の11月3日に迫っている。中間選挙では大統領は投票の対象ではないが、政権4年の半ばにきて、議会選挙の形で有権者の審判を仰ぐことになる。各種の世論調査によるとトランプ氏の支持率は30%台半ばと史上最低レベルで、下院は共和党敗北、上院も危ういの見方が日々強まっている。 

 だが、2000年大統領選挙は不正選挙だったと一方的に主張して、いまだにその敗北を受け入れていないトランプ氏とその強固な支持勢力が今回も敗北を受け入れず、大きな混乱が起こるとの懸念も重くのしかかっている。

新政権1年、支持率低下始まる

 トランプ氏は9月末の習近平・中国国家主席との首脳会談を成功させて、支持率挽回の足掛かりにしようと狙っていることは見えていた。異例の空港への出迎えに始まり、会談では貿易拡大を目指す関税の相互引き下げや激しい競争関係にあるAI開発での対話ルートつくなどで合意した。トランプ氏は第2次世界大戦で米国と中国が同盟国だったと歴史を持て遊んでまで「親中派」ぶりを演じた。関税戦争を仕掛けて手痛い反撃を受けた食らった経験に学んだのだろうか。

 しかし、米メディアにはこの会談が中間選挙戦にプラスになったとする報道は見当たらない。これはトランプ氏の人気度が一喜一憂するものではなくなっているからだと思う。トランプ第2次政権が2025年1月に始まった時の支持率は47%、半年を過ぎて間もなくの昨年夏ごろには既に40%を割り込んで30%台入り、それから1年の今年夏には30%台半ばをさまようようになっている。

世論調査は「でっち上げ?」

 トランプ氏は支持率の低下は民主党系の世論調査機関のでっち上げと言ってきた。しかし、トランプ氏不支持の理由がどこにあるかははっきりしている。低所得層から中間層まで生活物資の値上がりに苦しめられている。その一方で庶民生活の防衛、底上げに直接つながらないことには執心だ。

 パナマ運河の管理権を欲しがったかと思うとデンマーク領のグリーンランドを米国領にすると言い出し、麻薬シンジケート退治の大義を掲げて中米カリブ海に空海の戦争部隊を送り込み、麻薬を積んでいるかの証拠もないまま船舶を攻撃して100ほどの生命を奪い、世界最大の石油埋蔵国とされるベネズエラの独裁政権を打倒して事実上の植民地化しようとしている。 

 一方的に仕掛けたイラン侵攻は既に8カ月目に入り、識者やメディアの警告通りにドロ沼化して中東湾岸地域に戦火が拡大、ガソリン高騰を引き起こして世界中に大混乱を広げてしまった。米軍の予備弾薬庫は空になりそうだという。

 その間も大宴会場を増築するなどホワイトハウスの大改築をはじめ、公共施設には自分の名前札を張り付け、アーリントン墓地近くに(自分の名をつける)大凱旋門をつくろうとして反対されると兵器庫にも使うと言い逃れ。メキシコ湾を一方的にアメリカ湾に改名するといったたぐいの「米国第一」を乱発して近隣諸国の神経を逆なでする。

 隣国カナダに対しても「米国の51番目の州になった方がいい」と嘲笑して猛烈な反発・抵抗に遭って、また一つ、友好国から背中を向けられた。

 1期目のトランプ氏は歴代政権が愚かな戦争をしてきたと強く批判してきた。2期目のトランプ政権は遠慮なく戦争を振りまわす政権に代わっていた。

不人気の原因自らにあると認識せず

 トランプ氏は中間選挙で追い込まれていることをようやく認めて、陣頭指揮で人気回復に乗り出したのだが、本人はこの事態をもたらした原因が自分にあるという認識は全くないように見えるから奇妙だ。

 トランプ氏は党規約にはなく、前例もない中間選挙に備える共和党大会を招集した(9月9~10日)。トランプ氏に近いとみられると票が減ると、同党候補者は半分しか出席しなかったとされる。だが、トランプ氏は全党員がトランプ氏に投票すると思って投票に行って党候補者に票を投じるよう要求し、上下両院の多数を維持したらすべての成人にトランプ経済の繁栄の配当として5千ドル(約77万円)の配当金を配ると発言した。

 これに喜ぶ党員も少なくないだろうが、米報道によるとこの配当金の総額が1兆2千万ドルかかるとわかった。8か月目に入った対イラン戦争の戦費など史上最悪の4兆ドルもの政府負債を抱えている中で、「そんな大金、どこから出せるのか」「選挙では許されない票の買収ではないか」などの声が上がっている。

苦境脱出へ自らを神格化

 この党大会でトランプ氏はもう一つ、注目される動きをしていた。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、J・ボウイ氏は入手したビデオをもとに、次のように報道した。

 トランプ氏は党幹部を集めた席で党大会招集の目的は自分を「神の子」だと宣言することだとして、自分は神からこの地(米国)に楽園をつくる任務を与えられて1946年6月14日(自分の誕生日)に生まれたと話した。そして全員に右手を上げさせ、米国史上最高の大統領(最近は自分をこう呼ぶようになっている)への忠誠を誓わせた。自分を神格化して苦境から脱出しようというのだろう。

 報道によると、トランプ氏は共和党候補で苦戦している35人の選挙区に応戦に行くからその日程をつくるよう側近に命じたという。共和党候補の多くはトランプ支持派とみられると選挙には不利になるとみて、「トランプ離れ」が広がっていると伝えられている。トランプ氏がその候補の地元に押しかけ応援に乗り込んだらどんな事態が起こるのだろうか。

念入りな中間選戦略

 こうしたトランプ氏の選挙対策を見ると、トランプ氏および共和党の中間選挙戦略がどこにあるのか分からないのだが、トランプ氏の世論調査の支持率が30%台に落ち込んだ2025年夏ごろ、トランプ氏とその周辺は1年後の中間選挙に危機感を覚えて、トランプ氏の陣頭指揮による中間選挙対策に取りかかっていた。トランプ氏自身が先頭に立って進めてきたこの1年の中間選挙対策は念入りだった。

「民主党は不正投票の党」との発言繰り返す

 2020年大統領選挙は民主党候補のバイデン氏がトランプ氏を破って当選した。しかし、トランプ氏は自分が当選したのに、バイデン陣営が投開票の不正によって大統領のポストを盗んだと、裏づけるような事実や証拠を一切示すことなく主張し続け、支持者にはこれを信じることを要求している。

 最近の十数年、全米レベルの選挙の得票では、民主党が共和党を上回ることが多かったが、投票に不正があったと問題になることはなく、選挙結果は信頼されてきた。しかし、トランプ氏はことあるごとに「民主党は不正投票の党」を意味する発言を繰り返してきた。

 嘘でも繰り返して、民主党は不正選挙の党だと思わせるためだ。裏を返せば、民主党が勝っても認めないという宣言と受け取れる。

選挙実施権限を州から取り上げも最高裁認めず

 「合州国」の米国では、連邦政府に関わる選挙でも選挙実施の実務は州政府が担っている。トランプ氏はその選挙実施の権限を州から取り上げて連邦政府が握ろうとしたが、最高裁が認めなかった。

 選挙戦の選挙区割りは4年に1回の国勢調査の結果をとり入れて区割を修正することになっているが、トランプ氏は強引に次の国勢調査を待たずに共和党候補者が有利になるよう線引き変更を強行した。これは共和党に10議席近い議席増をもたらすともいわれる。

 米国では近年は投票の3分の1が郵便投票だが、トランプ氏は郵便投票を民主党支持者がより多く使ってきたとして、その条件を厳格化して使いづらくしようと執拗に試みたが、これも最高裁が認めなかった。

米軍の私兵化

 最も劇的だったのは、米軍の最高幹部の総入れ替えだった。トランプ新大統領は就任と同時に、米4軍の将軍・提督数百人のほぼ全員を解任、代わって自分に忠誠を誓った将校を抜擢して新しい軍トップチームを再編成した。これには重要な背景があった。

 第1次トランプ政権のとき、黒人青年が白人警官の過剰な取り締まりで窒息死した事件で、抗議デモが全国に広がり、ホワイトハウスがデモに取り囲まれた。トランプ氏は米軍に治安出動を命じた。米軍トップは、米軍首脳は憲法に忠誠を誓っているが、大統領の政治的な要請には応じられないと動かなかった。トランプ氏はその報復をしたのだ。トランプ氏は自分に背いた相手には、いつか必ず報復するといわれている。.

 トランプ氏は「不法移民」の摘発・国外追放をめぐって衝突が起こると、知事の指揮下にある州兵(予備役)に直接命令を下して現場に出動させた。中間選挙が暴力的衝突に転じた場合は直ちに州兵を投入する予行演習と受け取られた。

「大統領は全能」 強権国家の道疾走

 トランプ氏は1期目に共和党保守派中心の政権をつくったものの思うようにやりたいことができなかったという経験から、民主党バイデン政権の4年間をはさんだ第2期政権は議会も法律も無視、時には憲法すら無視して大統領行政命令を乱用し、「大統領は全能」かのごとき強権国家の道を疾走してきた。

 中間選挙で共和党が多数を維持してきた上院と下院のどちらか一つでも民主党に奪われると、法律や決議などの成立に必要な両議会の議決が得られなくなる。下院は調査権限も持っている。両方を民主党に奪われると、相手党の政策を阻むことはほとんどできなくなる(レームダック化:無能のアヒルの意)。「クーデター」で握った「トランプの米国」を逆戻りさせるわけにはいかない。何としても中間選挙で負けることは許されないのだ。

 民主主義国家のモデルとされてきた米国がいかにして、いつ元の道に戻れるかに、この中間選挙の結果にかかるところが大きい。

トランプ勢力の支持構造に大きな変動

 米主要メディアの報道によると、トランプ氏勢力の構造はこの2年間で大きな変動が起こっている。トランプ政権を押し出したのは、グローバリゼーションに取り残された低所得層あるいは低学歴で、民主党、共和党を問わずこれまでの政権に不満を抱く人たちだった。しかし、本来はそうした人たちの党であった民主党への不満の方がより強く、トランプ氏はこれをうまくついて政権を握った。

 2期目のトランプ政権は一度手にしたその財産を自ら手放した。ニューヨーク・タイムズ紙(国際版)、ワシントン・ポスト紙(電子版)、ロイター、ブルンバーグ両通信などによれば、いわゆる「不法移民」の過酷な摘発、国外追放は、トランプ氏の2024年大統領選勝利をもたらしたヒスパニックと呼ばれる中南米からの移民社会に強い恐怖と反発を引き起こした。

 同様に黒人社会も2024年選挙で大きくトランプ支持に回ったとみられているが、トランプ政権が黒人票を分散させるために国勢調査を待たずに勝手に下院選挙区の線引きを都合よく引きなおしたことも強い反感を招いている。この票も今回は失うとみられている。

 中間選挙は双方がこのまま正面からぶつかり合うしかない。その結果、何が起こるかの予測は難しいが、どんな事態でも起こり得るというしかないだろう。

(10月1日記)