またも地震発生でまき散らかされた「ヘイトデマ」 スラップ訴訟では原告が「ヘイト」断罪され敗訴 愛知知事のリコール運動応援団とDHCのつながり

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 東日本大震災から10年の今年2月13日夜発生した最大震度6強の地震は、幸い巨大津波には見舞われなかったものの、時間が経つにつれ各地の被害が明らかになり、東北住民に改めて恐怖を与えている。地震そのものの評価は別の機会に譲るが、問題なのは「朝鮮人が福島の井戸に毒を入れるのを見た」といった類いの民族差別的な「ヘイトデマ」が地震発生直後からSNSで連日まき散らかされていることだ。東日本大震災でも、熊本地震でも同じだった。

 同じような考え方を持つ特定の人びとによる扇動行為といえる。その頂点にいる訳ではないだろうが、テレビ出演などで有名なため発言への影響力が大きいのが明治天皇の玄孫で作家の竹田恒泰氏である。その竹田氏が差別発言をツイッターで批判されたため、戦争史研究家の山崎雅弘氏に対して名誉毀損だとして起こしていたスラップ訴訟で、このほど敗訴した。最近では1月31日付けで本ブログに記した「DHC相手のスラップ訴訟に完全勝訴」に次ぐ動きである。そして両者には共通項がある。

明治天皇の玄孫の竹田氏が訴えたスラップ訴訟

 竹田氏が山崎氏を訴えた訴訟はどんなものだったのか。勝訴した山崎氏のブログや各紙の裁判記事を基にみてみる。発端は2019年11月、富山県朝日町の教育委員会が中高生らを対象に、「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」と題する竹田氏の特別講演を行おうとしたことに対して、山崎氏が「町内の中・高生に自国優越思想の妄想を植え付けさせる」「この人物が教育現場に出してはいけない人権侵害常習犯の差別主義者とすぐわかる」などと投稿した(2月6日の東京新聞TOKYO Web)。竹田氏はこれを「誹謗中傷し、人格攻撃を繰り返し、侮辱する行為だ」と主張し、550万円の損害賠償を求めて東京地裁に訴えた。講演そのものは、その後「開催妨害の予告があった」として朝日町が中止している。

「攻撃的、侮辱的発言繰り返した」と認定した判決

 東京地裁は判決で、山崎氏のツイッター投稿を「公正な論評であり、違法性を欠く」として原告側請求を棄却したが、山崎氏の投稿や判決を報じた各紙をみると、興味深いのは裁判所が竹田氏のツイッターなどをかなり詳しく引用して、原告の請求を棄却したことだ。

 東京新聞によると、判決は、竹田氏が『笑えるほどたちが悪い韓国の話』と題する著書を出したり、「韓国人はゆすりたかりの名人」「韓国が慰安婦の像を作るなら、日本は嘘をつく老婆の像を作ったらどうだ」などと投稿したことに触れ、「竹田氏が元従軍慰安婦に攻撃的・侮辱的な発言を繰り返し、在日韓国・朝鮮人を排除する発言を繰り返していることに照らせば、発言を人権侵害の点で捉える相応の根拠がある」と指摘。そのうえで、名誉侵害には当たらないと判断し、竹田氏の請求を棄却した。

 下級審とはいえ、ここまで差別発言を厳しく認定した判決は少ないだろう。竹田氏側がどう出るか分からないが、上級審でも180度ひっくり返すのは難しいのではないか。ただ気になるのは、先に書いたDHC相手の澤藤統一郎弁護士の裁判といい、今回の山崎氏の裁判といい、全国紙がほとんど扱っていないようにみえることだ。

不正発覚の愛知のリコール運動応援団はDHC制作番組に出演

 民主主義を根本から破壊させそうなのに、なぜか大騒ぎになっていない事件が他にもある。美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長と河村たかし名古屋市長らが昨年行った、大村秀章愛知県知事に対するリコールの署名不正事件だ。このリコール運動の応援団に、竹田恒泰氏は百田尚樹、有本香、武田邦彦氏らと名を連ね、高須院長と並んで会見写真に応じている。皆、制作会社の「DHCテレビジョン」=化粧品会社ディーエイチシー(DHC)の子会社=が制作、ネット配信している「ニュース女子」の中心コメンテーターだ。

 高須氏らの知事リコールでは集めた署名の9割近くが不正であることが、愛知県選管などで明らかになったが、最近、署名の一部が佐賀県内でアルバイトを集めて作成されたことが判明した。西日本新聞と中日新聞のスクープだが、隠しきれなくなったリコール団体の事務局長が事実を認める事態となっている。その事務局長は元愛知県議で、次の衆院選挙に日本維新の会公認で立候補を予定している。

 さらに維新は、リコール運動で自分たちの所有する宣伝カーを貸与していたことが、名古屋市民の調査で分かった。国政政党である維新の責任は重大だが、松井一郎・日本維新の会代表は真っ当な説明をしていない。ただ、詳しくフォローしているのは地方紙であり、朝日、毎日、読売のいわゆる3大全国紙は逃げ腰だ。そこに他のニュースにも通ずる問題がある。