「コロナは陰謀」から一転「戦時」に トランプ氏、FOXニュース進言受け入れ?

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 「新型コロナ騒ぎ」は政権潰しを狙う民主党や左翼がでっち上げた陰謀と非難して、「万全の対策を取っている」「間もなくおさまる」などと楽観論を振りまいてきたトランプ米大統領。だが一転、脅威は本物と認め、「戦時大統領」と自分を呼んで感染防止に取り掛かっている。ワシントン・ポスト紙電子版によると、トランプ氏と歩調を合わせてきた保守派メディアのトークショー・ホストがさすがに「このままでは危険」と、大統領に新型コロナウイルス感染対策を急ぐよう進言したのがきっかけになったというのだが・・・。

「陰謀説」煽った保守系メディア

 トランプ氏と側近たちの「陰謀説」を煽ってきたのがFOXニュースなどの保守派メディアのニュース番組ホストたち。「インフレンザで16万人死亡した(2017年)ことがある」「コロナの死亡率は普通のインフレンザよりはるかに低い」―と危機感に水を差したり、大統領を弾劾にかける新たな陰謀とか、メディアは暴動を引き起こそうとしているなどとの非難まで出ていた。

 これを信じていつも通りに外出する人もいる中、ワシントン郊外で2月末にある保守政治団体の大きな会議が無防備で開催され、トランプ大統領も出席。その出席者の中からコロナ感染者が出て接触者5人が隔離された。それでも会議に出ていた共和党議員や、トランプPRのリーダー役、FOXニュースの人気ホスト、ハンニティ氏は、これも「でっち上げだ」と一蹴した。

 しかし、同じくFOXニュースのホスト、カールソン氏は3月上旬の週末、密かにフロリダの静養先にトランプ氏を訪ねて、コロナ対策をきちんとするべき時と忠告した。カールソン氏は雑誌『ヴァニティ・フェア』の取材に、こう答えている。

トークショウのホストに過ぎない自分がするべきことか迷いもあったが、(新型コロナウイルスのまん延で次々に死者が出ているのに大統領が対策を講じていなことに危機を感じて)できることは試みる道義的義務があると思った。

 ジャーナリストの役割

 この間にも新型コロナウイルス感染は全米に急速に広がり、カリフォルニア、ニューヨークなどでは州や市当局が独自の対応策に乗り出していた。トランプ氏はカールソン氏の訪問を受けてから数日後の3月11日、ようやくテレビ演説で、英国を除く欧州諸国からの入国禁止を発表。  

 しかし、なおも煮え切らない姿勢を引きずりながら、13日に国家非常事態宣言を、16日に感染は制御できていない、景気は後退などの現実を認めた。18日には自らを「戦時大統領」と呼んで巨額の経済危機対策を打ち出すなどしたが、後手後手の対応。一方で新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んで、世界的あるいは米国でのまん延の責任を中国に押し付ける構えだ。

 カールソン氏は昨年にはトランプ氏にイランで軍事行動をとらないよう意見具申し、トランプ氏は作戦はやめなかったが、抑制的なものに止めたといわれる。トランプ氏がコロナ対策へ重い腰を上げたのに、カールソン氏の忠告がどの程度の役割を果たしたのかは分からない。同氏は今はトランプ氏の「中国攻撃」を後押ししている。

 米メディアの中にはカールソン氏は「道義的責任を果たした」との評価もある。だが、ジャーナリストは政治的助言をすることはない、いやすべきではない、それは腐敗につながる、言いたいことは自分の記事やコメントを通して言うべきではないか―といった批判が向けられている。