<政治資金パーティー問題>「開けられた闇のバンドラの箱」 裏金疑惑逃げる安倍派 岸田首相は実体解明の先頭に立て

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 「自民党の深い闇のパンドラの箱がついに開けられてしまった」。ある自民党関係者はテレビ局の取材にそう話した。自民党派閥の最大の収入源である政治資金パーティーの不透明な金の流れを巡る疑念が浮上した。売り上げの一部を議員側にキックバックした疑いのある自民党最大派閥、清和政策研究会(安倍派)をはじめ、各派閥は所属議員にパーティー券の販売ノルマを課し、ノルマを超えた分をキックバックさせてるという「組織ぐるみの金集め」の実態が明らかになりつつある。永田町が注目しているのは安倍派が突出していることだ。

安倍派に甘かった検察の本気度        

 これまで政界の一部には、「この種の問題では、安倍派に対して検察はどこか甘いところがある」といわれてきた。安倍派はこの二十年近く自民党の中枢にあったが、安倍首相時代の官邸は検察人事にも口をはさむことがあったといわれる。今回の疑惑の捜査に検察は本気度があるといわれる。

 
ある検察関係者は「法と証拠に基づく捜査で、こうなったのでしょうが、法務・検察の組織に何か意識変革みたいなことがあるのではないか」と言う。徹底解明が待たれるところだ

 一方野党の立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党は、事態究明を打ち出している。協力体制が作れるかが注目点だが、久ぶりに野党が勢いづいている。 

 立憲民主党の枝野幸男前代表は名古屋市での講演で、自民党安倍派がパーティー券のノルマを超えた販売利益を議員側に還流していたとされる問題に関し「リクルート以来の大疑獄事件になってもおかしくない。検察の腹の据わり方が問われている」と述べた。
           
 世論は強烈な物価高の中にあるので、税金の使い方にはひと際、シビアになっている。年明けの国会は冒頭から自民党の裏金疑惑をめぐる論議が、焦点になりそうだ。岸田首相(自民党総裁)は派閥任せではなく、党本部主導で実態解明の先頭に立つべきであろう。

一つの懸念

 そこで一つ懸念がある。それは日本人の特性である。日本人は疑惑解明など大きな問題があると、一気呵成になって、同じ方向に走り出してしまいがちなことだ。巨悪は剔抉(てっけつ)しなければならないが、そうなると、もう一つ大きな課題である国民生活への対応が、おろそかになりかねないことである。

 先ず強烈な物価高がある。4万品目近く値上がりし、なかには2回も3回も値上がりしたものがあるという。円安や非正規社員の活用で人件費を抑えた一部企業は潤っているが、名目賃金は上がっても、物価や社会的な負担が増えているので、実質賃金はこの十年以上マイナスが続く。

税金の無駄遣いにも批判の目

 コロナ禍と東京五輪が重なって、大阪・関西万博も含めた予算(税金)の使い方をはじめ、企業対する補助金や補給金、租税特別措置などが、あまりにもルーズになっているといわれる。特に大阪・関西万博はひどい。350億円を投じる木造大屋根「リング」に登り建設現場を確認。無駄遣いと指摘されている。

 共同通信によると、会場となる大阪湾の人工島・夢洲(同市此花区)へのアクセス鉄道や道路の整備など、万博開催に伴う事業で計約1千億円を負担することが今月になって分かった。これらの費用は会場整備費と同様に当初見込みからの上振れが相次ぐ。税金の負担は総額1700億円を超える見通しだ。一方、国は会場整備費とは別に、パビリオン建設などで約837億円を負担することが明らかになったばかり。公費負担の全容は見えない。

 また省庁は、特別会計のほかに基金など財布を増やして、国会で十分議論をしないで税金を使えるルートを作り、財政規律を乱しているという指摘や批判が、新聞の投書欄やSNSなどでもよく見かける。

 岸田政権は、8年近く続いた長期政権を、菅義偉政権を挟んで引き継いのだから、これを機会に税金問題がかかわる「モリ、カケ、サクラ」をはじめ旧統一教会との関係などの検証を行うことは避けられないだろう。アベノミクスの功罪、日銀のゼロ金利政策の評価、戦略特区や東京五輪など岩盤規制改革などが利権政治の温床にもなっているとされ、税金の使い方のチェックも欠かせない。

安部政治の検証しない岸田首相

 裏金疑惑の解明は大事だが、国民生活にかかわる課題も緊急性がある。岸田氏はこれまでも安倍政治を継承するとは言っても、功罪を検証することに関心を示していない。憲法は83条から86条まで、財政を処理する権限は国会の議決が必要なこと、新たな税を課する場合は法律によること、国費を支出し、国が債務を負担する場合は、国会の議決によることーとあるのに、原理原則がないがしろにされている感じである。

「先憂後楽」

 岸田首相は閣僚など特別職公務員の給料をこの時期に引き上げた。岸田氏や政府の関係者は、「民間賃上げに波及させたい」とか「働く人の給料を上げるのを先導するためだ」と、答弁しているが、この説明はおかしい。東洋哲学には、「先憂後楽」という教えがある。天下の人びとに先んじて憂い、天下の人びとに後れて楽しむという言葉で、政治のリーダーはまず多くの国民に不安や心配事がないかを心配することを先にしなさいという意味である。

大平正芳氏の言葉をかみしめて

 岸田氏が会長の宏池会二人目の首相だった大平正芳氏は、首相になる前の夜回りで、政治家の役割を聞いたら「明日、枯れる草花にも水をやることだ」と言っている。政治は弱い立場にある人にも心がけることが大事だということを言ったのだと思われる。岸田氏は行住坐臥、先輩の腹に染みるこの言葉を服膺(ふくよう、心にとどめて忘れず行うこと)してほしいところである。

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