「政治とカネ」の問題は田中金脈、リクルート事件、東京佐川急便事件と繰り返されてきた。今回は派閥の政治資金パーティー収入が議員にキックバックされ、裏金化したのではないかとの疑惑に発し、政治資金収支報告書の虚偽記載という刑事事件に発展した。事件はどう展開したのかを追ってみた。
2年前にこの問題を発掘したのは共産党機関紙・赤旗だった。昨年11月、共同通信は「東京地検への告発」報道で先鞭をつけたが、実際に火が付いたのはNHK報道によってだった。しかし、その後は「安倍派裏金1億円超」「松野官房長官に裏金」そして「岸田派立件」などなど朝日新聞が特ダネを連発。文藝春秋の新聞エンマ帖も「見事なまでの朝日のぶっちぎり。歴史的圧勝だった」とする。
【2021年】
≪11月≫
6日 共産党の機関紙『しんぶん赤旗日曜版』は、「2500万円分不記載」の見出しで、自民党の5派閥がパーティー券20万円以上購入していた企業や団体名を政治資金収支報告書に記載していなかったと報じる。
【2023年】
≪11月≫
2日 神戸学院大学の上脇博之教授が東京地検に告発したことを共同通信 が報道。
16日 14、15両日に実施した共同通信の世論調査で岸田内閣支持率が32.3%(前回比7.5ポイント減)と急落。
18日 NHKが、自民党派閥が政治資金パーティーの収入4000万円を過少申告していると報道<上脇教授の告発に沿った内容>
19日 新聞各紙が、ほぼ同じ内容の政治資金過少記載を一斉に報道<NHKの後追い>
20日 17~19日の読売新聞調査で岸田内閣支持率が24%(同10ポイント減)、18、19両日の朝日新聞調査では25%(同4ポイント減)、同じ日に実施した毎日新聞調査では21%(同4ポイント減)といずれも急落。
岸田文雄首相が記者団に対し「それぞれの政治団体が責任をもって適切に対応すべきものだ」と語る。<他人事のような発言>
松野博一官房長官は「政府として政治団体の活動にコメントする立場にない」と応答<辞任までこの趣旨の答弁を繰り返し、国民の不信感を増大させた>
21日 2023年度補正予算案を審議する衆院予算委員会が始まり、立憲民主党の大西健介氏が衆院予算委員会で「売上総額を過少にして裏金を作っているのではないか」と質問し、初めて〝裏金疑惑〟を質す。岸田首相は「対価の支払い総額は変わっていない。裏金うんぬんは当たらない」とかわす。
22日 2023年度補正予算案を審議する衆院予算委員会で、野党の追及が始まる。岸田首相は相変わらず「政府とも自民党とも別の政治団体」と他人事のような答弁をしつつも「国民の信頼という観点から重大な危機感を持たなければならない」とも答弁。各派閥に対し説明させるよう茂木敏充幹事長に指示したことも明らかにした。<首相の指示を受け、自民党各派閥は相次いで「不記載」を認め、記載を訂正したと発表したが、これは〝事務的ミス〟で切り抜けようという思惑がありありだった>
24日 24日付朝日新聞が、自民党支部への企業献金34億円が法で禁止されている議員への事実上の献金となり、法の抜け穴になっていると指摘。
総務省が2022年(昨年)分の政治資金収支報告書を公表。上脇教授が告発したのは2018~21年の5年間分だったが、新たに22年分でも不記載が見つかったことで、不記載が常習化していたとの疑惑が強まる。<各紙は25日付で報道>
25日付読売新聞は、自民党6派閥の政治資金パーティーの2022年分の収入は9億円強で、収入総額約12億円の8割を占めると報じる。
25日付熊本日日新聞(共同通信)は、全政治団体の2022年のパーティー収入は82億円。ただコロナ期間中の21年は61億円、20年63億円と通常の70~80億円の水準から大幅減となっていた、と報じる。<安倍晋三前首相が一時、キックバックの停止を指示し、死亡後に高木毅事務総長が撤回したナゾもここにありそうだ。安倍氏はコロナ期間中の派閥側の減収を食い止めるために22年パーティーではキックバックをやめようと策し、派閥幹部も合意していたのではないか。22年は結果的に増えてはいたが…>
25日付読売新聞は、不記載のメカニズムを報道している。パーティー券を買った政治団体側と支出額と買ってもらった派閥側の収入が一致しないのは、複数の議員を経由して払い込まれたからで、議員が購入者名を知らせず、派閥側に納入すれば、派閥側は「20万円超」の記載義務が生じたか認識できない。これは「名寄せ」をしなくてはならないが、デジタル化とも絡むが現状ではいくらでも不記載。過少記載が起きてしまうという。
29日 29日付熊日(共同通信)は、安倍前首相の政治団体「晋和会」(安倍昭恵氏が代表となる)が自民党山口県第4選挙区支部の残存政治資金1億8000万円の寄付を受け取っていたことが2022年政治資金報告書から分かったと報じる<死後3週間後に議員でもない昭恵さんに資金を提供することは不自然。政治資金が個人資産扱いされている実態が浮かび上がる。無税の相続ともみられる。他紙が報じていないのも疑問>
30日 安倍派の塩谷立座長が、キックバックについて「そういう話はあったと思う」としつつも、裏金化については「ないと思う」と発言したが、その後にキックバック発言を撤回し「あいまいな話で誤解を与えてしまった」と釈明。<衣の下の鎧を見せてしまった。キックバックを認めた発言が正直な発言であり、撤回した発言はこじつけ発言と誰もが受け止めるだろう>
≪12月≫
1日 1日付朝日新聞が、「安倍派 裏金1億円超か」「ノルマ超分 議員に還流」と報じる。<〝裏金〟が大々的に取り上げられた初めての記事。パーティー収入疑惑は新たな次元に発展した。なぜ裏金になるかのメカニズムとして、派閥側が議員に〝ノルマ〟を課し、それを超過した分を議員に還流=キックバックしていたことを報じる。派閥側の収支報告と議員側の収支報告のつじつまが合わなくなり、事務的ミスとして修正しようにも派閥側は収拾困難になる可能性がある。逆に、もし簡単に記載ミスを発見できるとすれば、それは裏帳簿がないとできないわけで、どちらにしても窮地に陥る>
2日 2日付熊日(共同)は、「安倍派裏金1億円超か」と報じる<1日付朝日新聞の後追い記事>
2日付読売は、「安倍派不記載 数億円か」。<見出し額は大きいよう見えるが、これは派閥側と議員側の往復を合計した額で「5年間で1億円以上が裏金になった」としており、実態は朝日報道と同じ内容とみられる>
2日付朝日は、「裏金化 安倍派議員側も/パー券ノルマ超分 派閥に納めず」と報じる<新たな手口として議員が企業にパーティー券を売っても派閥側に申告せず、勝手に裏金化していたケース。ここでも朝日が一歩先んじた>
岸田首相が、訪問先のアラブ首長国連邦(UAE)の首都ドバイで、安倍派の裏金疑惑について「国民から疑念を持たれていることは大変遺憾。党としても対応を考えていく」としながらも、「政治団体の事情を知る人間が説明すべき」と語る。<派閥任せの姿勢をのぞかせる>
石破茂元自民党幹事長は「(法に)反することがあったら、政治集団なんて解散したらいい」(インターネット番組で)
3日 3日付朝日は、「二階派も不記載 1億円超か」と報道。<その後、家宅捜索が入った際、安倍派と二階派が対象となったことを見ると、朝日は検察の本筋を正確に把握していたようだ>
3日付熊日(共同)と読売は、2日付朝日の後追いの域を出ない記事を掲載。
4日 4日付熊日は、「二階派も報告書不記載/億単位の可能性も」と報じる。<朝日の後追い記事>
自民党役員会。岸田首相は「党として対応を考える」としたが、具体的な指示はなし。
石破茂元自民党幹事長は「総裁として派閥の長や事務総長に『いついつまでに明らかにしなさい』と指示するのが、党への信頼つなぎ留めになる」と首相の対応を露骨に批判(テレビ番組で)
河村建夫元官房長官が「官房機密費を陣中見舞いに持っていくことがあった」と証言(5日付朝日)
5日 5日付熊日は、「安倍派『還流』10人以上か/複数議員1千万円以上」と報じる。<次第に安倍派幹部に焦点が当たり始める>
5日付朝日が、安倍昭恵さんの2億円資金移動疑惑を報じる。<11月29日付熊日(共同通信)の後追い>
公明党の石井幹事長が、自民党の茂木敏充幹事長に対して「国民は非常に厳しい反応だ。しっかり対応してほしい」と苦言。
安倍派事務総長経験者がコメント。<いずれも逃げ腰の説明>
・松野博一官房長官「政府の立場としてコメントは差し控えたい」
・西村康稔経済産業相「今は政府の立場で、派閥を管理する立場ではない」
・高木毅党国対委員長「(地検の事情聴取)まだ全くそういう話はない」
共産党が企業や団体によるパーティー券購入を禁じる政治資金規正法改正案を参院に提出。
6日 6日付各紙は、安倍派の議員秘書に対する任意聴取を始めたと報じる。
6日付熊日は、「『裏金』数千万円受領も」と報道。<これまで「1千万円超」とされていたのが「数千万円」に額がはね上がった>
岸田首相が茂木幹事長らと協議。当面の間、派閥パーティーを自粛するよう指示。
7日 7日付熊日は「『裏金』9千万円超議員も」と報じる。<その後、9千万円超受け取った議員が誰か、そもそもそういう議員がいるかの報道はない。誤報の可能性も>
7日付読売は、「還流『事務総長に報告』/安倍派会計担当が検察に説明」と報じる。<これが事実なら事務総長だった議員も立件される。今後の捜査の焦点だ
岸田首相が、首相在任中は派閥(岸田派、宏池会)を離脱すると表明。<首相の派閥離脱は事実の慣例だったが、岸田氏はそれに反して派閥に居続けたが、派閥に裏金問題が浮上したため、あわてて「離脱」を表明したのは「場当たり的」と評された>
8日 8日付朝日が、「松野官房長官に裏金か」と報じ、いよいよ政権中枢に及んだ。
8日付熊日は、「安倍派事務総長側にも還流」として松野官房長官を含む事務総長への「還流」を報じる。<松野氏に焦点を当てた記事でなく、「裏金」の用語も避けている。ただ、国会閉幕(13日)後の議員への事情聴取にもいち早く触れている>
9日 9日付朝刊各紙が、一斉に「松野氏側に1千万円超還流」を含め安倍派幹部への裏金を報道。「松野氏の交代不可避」(朝日)、「松野氏に交代論」(読売)など松野氏の去就に一気に焦点が当たった。
10日 10日付朝刊各紙は一斉に、「松野官房長官の事実上の更迭」を報道。
11日 (休刊日)
12日 12日付朝刊各紙は一斉に、安倍派の閣僚・副大臣・政務官15人の更迭を報道。併せて自民党の萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長らの交代も報じる。
12日付朝日は、「安倍派裏金 5億円か」と安倍派の裏金総額を初めて報じ「派閥側の立件、不可避」とした。
松野官房長官に対する不信任案は衆院本会議で否決。
裏金疑惑が岸田派に波及(13日付各紙)/岸田首相は「事務局で調査し、適切に対応する」と表明。
13日 13日付読売は、更迭人事が閣僚・副大臣に縮小し、政務官は見送るなど「安倍派一掃は見送り」と報じる。
13日付読売は、安倍派が所属議員への資金還流の記録を作成していたと報道。<安倍派議員の言い逃れが難しくなるか>
閣僚4人の後任人事が固まる。
・松野博一官房長官⇒林芳正氏(岸田派)
・西村康稔経済産業相⇒斎藤健氏(無派閥)
・鈴木淳司総務相⇒松本剛明氏(麻生派)
・宮下一郎農相⇒坂本哲志氏(森山派)”
岸田内閣不信任案を否決。野党は一致して賛成。
第212回臨時国会が閉幕。
岸田首相が国会閉幕にあたっての記者会見で、政治資金パーティー問題で「火の玉になって」と表明。
14日 林官房長官など新閣僚4人の認証式。
自民、公明両党が2024年度与党税制改正大綱を決定。
15日 安倍派の鈴木淳司前総務相が、キックバックの事実を認め、「60万円」と明かす。<ほとんどの議員が口をつぐむ中で裏金の事実を認めたのは異例>
16日 16日付読売が、安倍派の議員への任意聴取を開始したと報じる<朝日、熊日は17日付朝刊で後追い>
18日 18日付熊日は、共同通信の世論調査(16,17両日)で岸田内閣支持率が22.3%と最低になったと報じる。
18日付読売は、同社の世論調査(15~17日)で内閣支持率が25%と横ばいと報じる。
18日付読売は、東京地検が高額の還流を受けた議員を任意聴取し週内にも強制捜査に乗り出すと報じる。同日付熊日は、強制捜査を「週前半にも」とした。
岸田首相が「国民の信頼回復のため新たな枠組みを立ち上げる」と表明。
19日 東京地検が安倍派と二階派事務所へ家宅捜索に入り、強制捜査に乗り出す。派閥事務所への家宅捜索は2004年の旧橋本派1億円ヤミ献金事件以来のこと。
20日 自民党の役員人事が固まる。(22日総務会で正式決定)
・萩生田光一政調会長⇒渡海紀三朗氏(無派閥)
・高木毅国対委員長⇒浜田靖一氏(無派閥)
小泉龍司法相が二階派を離脱。
21日 21日付朝日は、安倍派裏金が改選を迎える参院議員には全額キックバックされていたと報じる。
22日 22日付各紙が、松野前官房長官、高木毅国対委員長、世耕弘成前参院幹事長に任意聴取を要請したと報じる。
22日付読売は、今後の捜査の焦点は松野氏ら派閥幹部と会計責任者との共謀の立証になると指摘。
自民党の渡海紀三朗政調会長が、政治改革大綱の見直しに言及。
自見英子地方創生相が二階派に会派離脱届を出したのに対し、二階会長は「礼儀知らずだ」として辞表受け取りを拒否。
23日 23日付朝日は、「裏金還流 安倍派幹部把握か/22年 廃止決定後に撤回」と報じる。安倍派の動きは次の通り。
・2021年11月 首相を辞めた安倍晋三氏が安倍派会長に復帰
・2022年4月 安倍派パーティー直前に還流取りやめを提案
・2022年5月 安倍派パーティー開催
・その後 西村康稔事務総長が還流取りやめを通達
・2022年7月 安倍氏銃殺
・2022年8月 事務総長が西村氏から高木毅氏に交代
・その後 高木事務総長が還流取りやめ方針を撤回
・2022年9月 還流を実施
23日付熊日が安倍派裏金の3パターンを報じる。
①議員が売ったパーティー券代を派閥側に現金で持参し全額入金⇒後に派閥側からノルマ超過分をキックバック(還流)<ノルマ超過分は議員側も派閥側も不記載>
②議員が売ったパーティー券代は派閥口座に直接入金⇒派閥側からノルマ超過分を現金でキックバック(還流)<議員側は現金で受け取ったノルマ超過分を不記載>
③議員側はノルマ分のみ現金で派閥側に入金。ノルマ超過分は手元でプールし直接裏金化<厳密にはキックバックなし。ノルマ超過分は派閥側が把握せず、議員側の不記載>
24日 24日付熊日と読売は、安倍派の参院改選議員に対しては参院選の年は全額還流していたと報じる。<21日付朝日の後追い>
〃 24日付熊日は、「政治とカネ」の問題が過去の政権に及ぼした影響をまとめて報じる。「退陣の引き金も」と指摘。
・1974年 田中角栄内閣:田中金脈問題
・1989年 竹下登内閣:リクルート事件
・1993年 宮沢喜一内閣:佐川急便事件
・2007年 第1次安倍晋三内閣:事務所経費問題(松岡利勝農相自殺)
・2010年 鳩山由紀夫内閣:政治資金虚偽記載(小沢一郎)
25日 25日付熊日が「安倍派・塩谷座長を聴取」と報道。安倍派が「二重帳簿」を作成していたことも判明。
25日付読売は「松野、高木、世耕氏 任意聴取」と報じる。安倍派はパーティー券の購入者を全部は把握していなかったことも判明。
岸田首相が麻生太郎副総裁らと会談し、政治改革に向けて党の新組織を年明けに設置するよう指示した。
26日 26日付朝日と熊日は、松野、高木、世耕氏を任意聴取したことを報じる。<以上は、読売の後追い>/朝日は加えて「萩生田光一氏の任意聴取」も報じる。
26日付朝日は、政治資金収支報告書が紙ベースで行われており、デジタル化の必要性を訴える声が上がっていると報じる。
岸田首相が内外情勢調査会で講演。「政治資金パーティーの資金の透明性を必ずやらなければならない」と発現。
27日 27日付熊日は「萩生田前政調会長を聴取」と報じる<26日付朝日の後追い>
27日付読売は「安倍派還流 20年前から」と報じる。
自民党安倍派の池田佳隆衆院議員の議員会館事務所が家宅捜索を受ける。裏金は4000万円超とみられる。議員に対する強制捜査は初めて。
28日 自民党安倍派の大野泰正参院議員(大野伴睦の孫)の事務所家宅捜索。強制捜査は2人目。
自民党を離党した柿沢未途衆院議員が公選法違反(買収)容疑で逮捕される。
30日 30日付朝日は、「西村氏も聴取」と報道。<これで安倍派の座長+「5人衆」の幹部6人全員が聴取される>
31日 31日付熊日、読売は「西村、下村氏を任意聴取」と報道。<朝日の後追い>
【2024年】
≪1月≫
1日 1日付朝日は、安倍派でのパーティー券売り上げを派閥に納めず、自分の懐に入れていた「中抜き」裏金が8000万円に上ると報じる。キックバックと中抜きで合計6億円近くとなる。中抜きでは下村博文氏の500万円が際立つ。
1日付読売は、安倍派の不記載が還流分(キックバック)とプール分(中抜き)合わせて5億7000万円になると報じる。
1日付熊日は、裏金事件で安倍派と二階派の会計責任者の刑事責任は免れないと報じる。
岸田首相は年頭所感を発表し、「先頭に立って国民の信頼回復に全力を尽くす」と決意表明。1月に予定していた南米訪問を見送る。
2日 (休刊日)
3日 3日付熊日は「議員側8000万円プールか/安倍派の裏金6億円規模に」と報じる。<1日付朝日の後追い>
4日 岸田首相が年頭記者会見。自民党内に総裁直属の「政治刷新本部」(仮称)を来週発足させると発表。
5日 岸田首相が自民党役員会で、政治刷新本部の設定を指示。最高顧問に麻生太郎副総裁と菅義偉前首相を起用。
7日 7日付朝日が、「安倍派 池田議員逮捕へ」といわゆる〝前打ち〟報道。7日付読売は、「二階元幹事長 任意聴取」と報じ、同日付熊日は二階氏に加え、二階派事務総長だった平沢勝栄氏も聴取したと報じる。
7日付各紙は、買収容疑を否認していた柿沢未途衆院議員が一転して容疑を認める方針に転じたことを報じる。
東京地検特捜部が、安倍派の池田佳隆衆院議員と政策秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕。裏金総額は4826万円。<初めての議員逮捕。通常逮捕の目安は1億円以上で、それ以下では在宅起訴がせいぜいだが、池田事務所は資金データの意図的な破壊・改変(罪証隠滅)が行われている疑いがあり、一転して逮捕に踏み切った(8日付朝日)>
岸田首相は池田議員逮捕について「大変遺憾だ」と語るが、具体策なし。自民党は持ち回りの党紀委員会で池田氏の除名処分を決めた。
8日 8日付産経は、東京地検特捜部場立件した主な政治資金規正法違反事件を掲載。
<平成の事件>
・15年 坂井隆憲:裏献金、1億6800万円、議員逮捕起訴
・16年 旧橋本派:ヤミ献金、1億円、元議員在宅起訴
・21年 鳩山由紀夫:偽装献金、4億円、元秘書在宅起訴・略式起訴
・22年 小沢一郎:虚偽記入、7億5000万円、元秘書起訴
・27年 小渕優子:架空寄付、3億円、元秘書在宅起訴
<令和の事件>
・2年 安倍晋三:不記載(桜を見る会)、3000万円、秘書略式起訴
・4年 薗浦健太郎:不記載、4900万円、議員略式起訴
・6年 池田佳隆:不記載、4800万円、議員逮捕・起訴
9日 9日付熊日と読売は、池田容疑者が記録媒体を破棄するなど証拠隠滅を秘書に指示したと報じる。<8日付朝日の後追い>
9日付熊日は、安倍派内で解体論がくすぶっていると報道。
立憲民主党が「政治改革本部」を設置。
BSーTBS番組「報道1930」が「赤旗のスクープから始まった『裏金問題』」を報道。
10日 10日付読売は、「西村氏ら派閥幹部を再聴取」と報じる。
〃 自民党臨時総務会で「政治刷新本部」の新設を正式決定。メンバー最多は安倍派の10人(11日付朝日)<メンバー構成に疑問符。週刊文春は木原誠二幹事長代理が「あて職ですから」と釈明したという>
11日 11日付熊日は「西村氏ら派閥幹部を複数回聴取」と報じる。<10日付読売の後追い>
自民党刷新本部が初会合。菅義偉前首相は派閥解消を訴えたが、茂木敏充幹事長は意義を強調したほか、政治資金規正法改正問題も方向性が出なかった。
12日 12日付読売は、安倍派が収支報告の不記載分の一斉訂正を検討していると報じる。
12日付熊日は、二階派の不記載額は数億円、派閥側に納めず議員側がプールした額は1億円に上ると報じる。<基本は12月3日付朝刊の後追い、不記載額とプール額を切り分けた>。 12日付朝日で、野口雅弘成蹊大学教授は、マックス・ウェーバーが金持ち支配をプルトクラシーと呼んだと紹介。
13日 13日付朝日は、自民党政治刷新本部のメンバー10人のうち9人が裏金に関与しており、刷新本部の正当性にも疑問と報道。
13日付熊日は、安倍派と二階派の会計責任者を立件する方針を固めたと報じる。<両派に関しては正しかったが、岸田派会計責任者を報じていない>
14日 14日付熊日は、安倍派幹部議員の立件見送りを報じる。会計責任者との共謀を立証するのが困難と判断したという。<安倍派幹部の立件見送りの見通しは正しかったが…>
14日付熊日と読売は刷新本部の安倍派議員9人に裏金の疑惑と報じる。<13日付朝日の後追い>
15日 15日付読売は、安倍派幹部が同派の還流は「会長案件だった」として会計責任者との共謀を否定していると報じる。
16日 16日付読売が、「安倍派7幹部 不起訴へ」と打ち出す。<14日付熊日の後追い。朝日は安倍派幹部不起訴に慎重>
自民党政治刷新本部第2回会合。「安倍派は解散を」と所属議員が主張。
17日 17日付読売は、自民党が政治資金規正法改正について、パーティー券の購入者公開額を引き下げるとの方針を固めたと報じる。
自民党政治刷新本部第3回会合。有識者から意見聴取。
自民党茂木派が政治資金収支報告を訂正。100万円弱の訂正。
柿沢未途衆院議員が東京都区長選めぐる買収罪で起訴。
18日 18日付朝日は、「岸田派を立件へ」と報じる。<裏金疑惑の岸田派への波及に衝撃が走る。安倍派について16日付読売の後追いはなく、「詰めの捜査をしている」と含みを残す>
18日付熊日は、「大野、谷川氏 立件へ」と報じる。
18日付毎日は、田名角栄元首相の下で23年間、秘書を務めた朝賀昭氏(80)のインタビューを掲載。「派閥運営のための資金作りを所属議員にさせていたことがオヤジの時代と決定的に違う」「派閥の領袖が資金を集めて子分である所属議員に配っていた」と証言。
政治刷新本部の改革案について、18日付読売は、「規正法 議員の罰則強化/公民権停止 念頭」と報じ、同日付熊日は「自民派閥 人事推薦禁止へ」と報じる。
岸田首相が「岸田派を解散」の方針を表明。<自民党には寝耳に水。衝撃と困惑>
19日 19日付朝日が「安倍派幹部 不起訴へ/大野、谷川議員 立件方針」と報じる。<安倍派に対する処分について慎重だった朝日がやっと「不起訴」報道に踏み切る>
19日付熊日が「岸田派不記載も立件」とし、同日付読売は「(岸田派を含む)3派閥 きょうにも立件」と報じる。<18日付朝日の後追い>
東京地検特捜部が、自民党裏金事件で、安倍、二階、岸田3派閥の会計責任者ら8人立件。議員は大野泰正を在宅起訴、谷川弥一を略式起訴のみで安倍派幹部は立件されず。政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で。 安倍派、二階派も解散決める。立件された3派閥はすべて解散。残る麻生派、茂木派、森山派は慎重姿勢。
西村康稔前経済産業相が記者会見で「(還流は)会長と事務局長の間で慣行的に行われていた」と主張。
立件を免れた議員が相次いでキックバックを受けた事実を認める。安倍派の江島潔、石井正弘。
20日 キックバックを受けた議員の告白続く。安倍派の永峯誠、若林健太郎、藤原崇の各氏。元二階派の長崎幸太郎山梨県知事も。
21日 21日付朝日が「自民党派閥の『解散表明』と『復活』の歴史」を掲載。
・1989年5月:リクルート事件を受けての政治改革大綱で「派閥の弊害除去と解消への決意」を表明し、派閥・閣僚による政治資金パーティーの自粛を打ち出す。⇒ ほとんど実現せずに空文化。
・1994年8月:野党転落を受けた党改革本部が年内の派閥解消を打ち出し、小渕派、宮沢派、三塚派など5派閥が事務所閉鎖で合意。⇒ 派閥解散から半年後に「政策集団」として活動再開
・2024年1月:派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で政治刷新本部を設置。岸田派、安倍派、二階派が「解散」表明。
岸田首相が麻生太郎副総裁と会食。<派閥解消をめぐり相談もなく解散を打ち出した岸田首相への不快感を隠さない麻生氏をなだめ、関係の修復を図ったか>
自民党の茂木敏充幹事長はNHKの政策討論会で、使途の公表義務のない政策活動費のあり方を問われ、「政策活動費もあるが、より大きな額の政党助成金も議論すべきだ」と述べる。<22日付朝日はポジティブにとらえた記事となっているが、実際は政党助成金を持ち出せば、野党が嫌がるのを見越して、政治活動費の議論も封じる狙いだろう>
元安倍派の馳浩石川県知事が819万円の還流を認める。
22日 22日付朝日の世論調査(20,21日実施)で、内閣支持率は23%と2012年の政権復帰以来最低の昨年12月と同じ最低。派閥解散によって「信頼回復せず」が72%。
22日付読売の世論調査(19~21日)で、内閣支持率は24%と2012年の政権復帰来最低だった昨年11月と同じ最低。政治刷新本部に「期待せず」が75%。
自民党政治刷新本部会合で、中間まとめの原案を提示。派閥は存続を前提に「お金と人事から完全に決別する」とした。
略式起訴された谷川弥一衆院議員が議員辞職願を提出。
萩生田光一前政調会長が記者会見。収入の不記載額は2728万円と明かす。
23日 自民党政治刷新本部の全体会合で党改革の中間まとめを了承。
岸田派が解散を正式決定。66年の「宏池会」の歴史に幕。
25日 自民党総務会で、政治改革の中間まとめを正式決定。
自民党森山派が解散を決定。
自民党茂木派の小渕優子選対委員長が茂木派退会を表明。
26日 東京地検特捜部が自民党安倍派の池田佳隆衆院議員とその秘書を起訴。裏金事件の捜査は立件10人で終結。
自民党安倍派の松野博一前官房長官が辞任後初めて記者会見し、1051万円のキックバックを受けたと明かす。議員辞職や離党は否定。
自民党の参院茂木派の青木一彦参院議員(参院のドンだった青木幹雄の息子)と関口昌一参院議員会長らが茂木派退会を表明。<小渕優子に次ぎ茂木派離脱ドミノ>
政府が「岸田首相が国賓待遇で訪米し、4月10日に日米首脳会談を行う」と発表。
市民団体「検察庁法改正に反対する会」が安倍派議員7人を検察審査会に職権での審査を請求。
27日 27日付朝日は、「再選へ『6月解散』論」の一方で、「党内では『立て直し困難』」との見方がある」と報じる。
27日付朝日は、退会が相次ぐ自民党茂木派内に解散論が出ていると報じる。
麻生太郎副総裁が、飯塚市での国政報告会で麻生派(志公会)を政策集団として存続させる意向を表明。
28日 28日付朝日が、茂木派が派閥解散を検討と報じる。政治団体の届け出を取り下げるという。
麻生太郎副総裁が福岡県芦屋町での講演で、上川陽子外相を「新しいスター」と持ち上げる一方、「そんなに美しい方とは言わないが…」と発言。<容姿をあげつらう〝ルッキズム〟として批判浴びる>
安倍派の塩谷立座長が、地元・浜松市での記者会見でやっと自らへの還流額が234万円だったことを明かす。安倍派内からも責任を取るよう求められているものの、自らの辞職や離党は否定。
29日 29日付読売と熊日は、茂木派の運営転換を検討していると報じる。政治団体は存続するという。<28日付朝日の後追い>
衆院予算委員会が裏金問題で集中審議。岸田首相が連座制規定について各党協議にゆだねる考えを示す。
30日 岸田首相が施政方針演説。裏金問題について「極めて遺憾で、心からおわびする」と表明し、党の政治刷新本部による改革に「先頭に立って必ず実行する」と約束したが、政治資金規正法改正は与野党協議にゆだねる考えを示す。
野党側が衆院予算委員会の審議入りの条件として、自民党全議員に対して裏金の有無に関する調査を2月5日までに行うよう要求。
上川陽子外相が記者会見で、麻生発言について「どのような声もありがたく受け止めている」と受け流す。
自民党が事件に関与した議員にたいする事情聴取を森山裕総務会長を中心に行うことになる。
31日 31日付読売によると、東京簡裁が26日付で谷川弥一前衆院議員に罰金100万円、公民権停止3年の略式命令。
衆院代表質問。立憲民主党の泉健太代表が政策活動費の廃止を求めたのに対し、岸田首相は説明を拒む。
自民党安倍派が2020~22年の過去3年分の政治資金収支報告書を訂正。計2億9744万円。訂正対象となった小森卓郎・総務政務官と加藤竜祥・国土交通政務官が辞任。
石破茂氏が勉強会「水月会」を再開。
(了)