岸田文雄首相は「裏金問題」の発覚以来、内閣支持率が最低を記録するなど気息奄々の政権運営が続いていた。それでも再選に挑むのではないかとの観測もある中で、終戦記念日前日の8月14日、突然、退陣を表明した。最後の〝蜘蛛の糸〟と頼った麻生太郎副総裁からの支持を得られなかったためだろう。自民党内からの退陣圧力による「追い込まれ退陣」というより、「捨てられ退陣」だったように思う。自民党内は「ポスト岸田」に走り出した。
世論調査で「次の自民党総裁」1位は石破茂氏
≪2024年7月≫
1日 自民党元幹事長の石破茂氏が菅義偉前首相、武田良太元総務相(二階派事務総長)と会食。/前経済安全保障担当相の小林鷹之氏(二階派)が『正論』で「首相を目指す。時が来たらチャレンジしたい」と表明。
3日 岸田首相が岸田派重鎮の宮沢洋一税調会長と面会。
4日 経済安全保障相の高石早苗氏を応援する「なにわ早志会」(大阪府内の地方議員の政策勉強家)が発足。
5日 岸田首相が松戸市立保育園を視察。地方行脚をスタートさせる。
6日 森山裕総務会長が「岸田降ろしは加速していない」と岸田首相再選支持を示唆。
7日 東京都知事選で自民党が〝ステルス応援〟をした現職の小池百合子氏が当選。東京都議補選は2勝6敗(選挙前5議席)
8日 安倍晋三元首相暗殺から2年。/高市氏が『日本の経済安全保障』を出版。
14日 自民党幹事長の茂木敏充氏が麻生副総裁と会食。
22日 共同通信世論調査で岸田内閣支持率は24.6%と前回比2.4ポイント微増。次期衆院選では「与野党伯仲を望む」が51%(22日付熊日)/岸田内閣支持率は25%と横ばい(前回6月調査23%=政権発足以来最低)。「次の自民党総裁」は①石破氏25%、②前環境相の小泉進次郎氏15%、③デジタル担当相の河野太郎氏8%(22日付読売新聞)
「若手議員から期待集める」小林鷹之氏
23日 小林氏が2009年総裁選で3位と敗れた西村康稔・前経済産業相と会食。指南を受ける。
24日 元総務相の野田聖子氏がかつて推薦人となった浜田靖一国対委員長、渡海紀三朗政調会長と会食。
30日 「小林鷹之氏が『コバホーク』と呼ばれて若手議員からの期待を集めている」(30日付朝日)
31日 「高市早苗氏が『安倍氏の後継』を公言するが、後ろ盾を失い苦しい」(31日付朝日)/デジタル担当相の河野氏が日本原子力発電東海第2原発を視察<「反原発」のイメージ払しょくする思惑か>
異端児の切れ味消え麻生派にしがみつく河野太郎氏
≪2024年8月≫
1日 「河野太郎氏は『異端児』としての切れ味が消え、麻生派にしがみついている」(1日付朝日)
2日 「岸田首相が、高濃縮ウランやプルトニウムの生産禁止の条約に向けた首脳級の国際会議を9月下旬に開催を目指す」(3日付朝日)<まだ総裁再選をあきらめていない?>/岸田首相が麻生氏と党本部で1時間会談。
3日 「元官房長官の加藤勝信氏が『首相への意欲を胸に秘める』ものの『評価は永田町と霞が関止まり』(3日付朝日新聞)/小林氏が萩生田光一政調会長と会食。萩生田氏は「党への風向きが悪いときは推されるが、後になって足を引っ張られることもある」と忠告。
「川上氏への風やむ」
6日 「野田聖子氏について『裏金事件への切り込み不足』『「にぎやかし要員』」(6日付朝日新聞)
7日 岸田首相が自民党憲法改正実現本部会合に出席し、自衛隊明記に向けた論点整理を突然指示。<岸田さんまだあきらめてないな>/「上川氏への風はやんでいる」(7日付朝日新聞)
8日 名古屋駅で、若手議員が「衆院解散はありますか」と聞いたのに、岸田首相は「その時は解散権を誰が持っているかね」と答える(15日付熊日)<なかなか意味深>
9日 岸田首相が長崎の平和祈念式典に参列。被爆者とされていない「被爆体験者」に対する救済検討を同席した武見敬三厚労相に直接指示。9日からのモンゴルなど中央アジア5か国訪問の外遊取りやめを発表。政府専用機は長崎空港で待機していたが、羽田に直帰。/河野氏が麻生氏と会食。<6月下旬以来のこと。麻生氏になかなか「うん、よし」と言ってくれていないようです)
10日 岸田首相が地元・広島の支援者に「私が責任を取らないと収まりがつきません」と電話したという(15日付熊日)
14日 岸田首相が「私が身を引くことでけじめをつける」と述べ、突然の退陣表明。/麻生氏と茂木が会食。「うちの派閥には河野がいる。派閥が一つになっての支持はできない」と断る。
岸田派の上川陽子、林芳正両氏も出馬へ
15日 終戦記念日。/岸田首相が(閣僚らの出馬について)「気兼ねなく堂々と論戦をやってほしい」と発言。/加藤氏(茂木派)が萩生田氏と面会し「出馬したい」と伝える。/経済産業相の斎藤健氏が「総裁選に出るべきだとの連絡が寄せられている」と明かし、出馬への意欲を表明。
16日 小林氏支援グループが会合し「19日出馬表明」を確認。/河野氏が麻生氏に出馬の意向を伝え、麻生氏もやっと了承。/加藤氏が「総裁選に向け具体的な動きをしたい」と出馬への意欲を表明(BS11番組)/官房長官の林氏(岸田派)が周囲に意欲を伝える。表向きは「総裁選についてはコメントを控える」と語る(17日付熊日)/外相の上川氏が岸田派若手に「出ると決めました」と電話(18日付朝日)
17日 岸田首相は、岸田派の上川、林両氏が出馬の意向なのに対し「2人とも出てもらえばいい」と岸田派議員に語る。
19日 小林氏が正式に出馬表明。正式表明の1番手。裏金事件には緩い態度。<支持議員24人が囲み、11人は安倍派。記者会見ではジャーナリストの鈴木エイト氏や東京新聞記者の望月衣塑子氏を指名したため厳しい質問となる>
石破茂氏、裏金問題で発言後退
20日 自民党総裁選選挙管理委員会。「告示日9月12日、投開票日9月27日」を決定。
22日 公明党が「9月28日党大会」(代表選出)の日程決定。
24日 石破氏が地元の鳥取県八頭町の和多理神社境内で、総裁選出馬を正式表明。表明2人目。5度目の挑戦。「裏金事件に厳しく望む」「国民の審判を受けるにふさわしい候補者か、党が責任を持つ」、公認問題について「議論は徹底的に行うべきだ」と公認しない可能性まで示唆。/野田氏が「(裏金)不記載の人たちは自分の力で勝っていきませんか」と無所属出馬を促す考えを表明。
25日 石破茂氏が、裏金問題で「新体制で決めることだ」と後退発言。
「次の立民代表」は野田佳彦氏がトップ
26日 河野氏が総裁選出馬を正式表明。表明3人目。3度目の挑戦。「不記載の金額の返還でけじめとして前へ進みたい」と表明。「けじめがつけば後は党の候補として国民の審判を仰ぐ」と公認を容認する考えを示唆。ただフジTV番組では「それぞれの人にそれぞれのけじめがある」とあいまいさ残す。/読売新聞世論調査で、「次の総裁」は石破氏22%、小泉氏20%、高市氏10%。自民支持層では小泉氏22%、石破氏20%。「次の立民代表」は元首相の野田佳彦氏25%、前代表の枝野幸男氏15%、代表の泉健太氏8%。(26日付読売)
河野氏の返納案に自民党内で異議
27日 麻生派(志公会)研修会。麻生会長(党副総裁)が「同じ釜の飯を食って育ってきた同志としてしっかり応援していきたい」と河野氏支持を表明しつつも、「一致結束、(箱)弁当みたいに縛り上げるつもりは全くない」と事実上の自主投票。/衛藤征士郎元衆院副議長が、不記載額の返納を求めた河野発言について「理解できない。あまりに唐突で、発言をよく検証する必要がある」と疑問を呈し、安倍派若手議員には「パフォーマンス先行だ」と反発が広がる。/茂木氏は「不記載収入を国庫納付できるよう(政治資金規正法の)改正を行ったが、過去に遡及するのは難しい」と河野氏の返納案に異議。/立憲民主党の野田氏は「深い反省もない人たちがにぎやかにやっている。それに厳しくものを言うのが野党の役割だ」と自民党の対応を批判。/玉木雄一郎国民民主党代表が「万引きをして盗んだ物を店に返せば無罪放免という話ではない」と自民党を厳しく批判。
政治とカネの問題のけじめ「変えたい」と小泉進次郎氏
28日 河野氏が、裏金返納問題で「不記載額を議員が派閥に返還したうえで、派閥が解散するときに国庫に納付すべきだ」と述べる。
30日 石破氏が首相官邸を訪れ、岸田首相にあいさつ。石破派選対本部を発足。本部長は岩屋毅氏。/河野氏選対会議(議員会館→派閥事務所に変更)麻生派所属は54人のうち麻生会長ほか13人。/岸田首相と麻生氏が立候補予定の林、茂木両氏と昼食。/小泉氏が記者団の取材に「政治とカネの問題にけじめがついていないことを変えたい」と表明。
<2024/8/31>