米経済紙「フォーブス」は12月10日、ことしの「世界で最もパワフルな女性」100人を発表、高市早苗首相が第3位に選ばれた。1位は欧州委員会のフォンデアライエン委員長、2位は欧州中央銀行のラガルド総裁だった。朝日新聞(12日朝刊)によると、同誌は高市氏について「強硬な保守派で、同じく(英国の)女性初の首相だった『鉄の女』のサッチャー氏をロールモデル(手本)として挙げている」と説明している。「鉄の女」かどうかは見る人により異なると考えるが、高市氏が他人を信用せず、自説を曲げず、自分のした過ちをけっして認めないという点で〃パワフル〃といえるのかもしれない。
朝日新聞の別の紙面には、高市氏が自民党総裁に当選した際に述べた「働いて、働いて、働いて(計5回繰り返す)」が今年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれたことについて、過労死で親族を亡くした遺族らが「遺族には最大の侮辱である」と抗議したとの記事が載っている。10月21日の首相就任以来、世論調査で高い支持率が続き、最近はやや落ちたものの12月6日、7日のJNN(TBS系列)調査でも75・8%という高支持率を維持していることに驚く。テレビを中心とした決して批判しない、メディアの熱狂的な「翼賛報道」が「鉄の女」の支持率を後押ししているようにも見える。
11月7日の衆院予算委での高市首相の「台湾有事は存立危機事態になりうる」との答弁」から1カ月が過ぎたが、日中関係は予想通り悪化するばかりだ。首相答弁に強く反発し、あくまでも答弁の「撤回」を求める中国は、日本への渡航自粛、日本水産物への輸入手続きの停止、日本への留学の休止、日本人歌手の中国でのコンサートが途中でストップされるなど文化交流にも影響が出始めた。11月末には、日本が議長国として早期開催を目指している中国、韓国との3カ国首脳会談ををめぐり、来年1月の実施を打診したものの、、中国側はこれを拒否した。
そして、12月6日、中国軍機が自衛隊機にレーダーを照射する事態にエスカレートした。防衛省によると、沖縄本島南島の公海上で演習中の中国の空母「遼寧」の艦載機が2回にわたって自衛隊機に断続的にレーダーを照射したという。
7日午前2時に、小泉進次郎防衛相が異例の臨時記者会見で発表した。担当記者の話によると、6日の午後10時ごろから、この問題での官邸の動きが出始め、その4時間後に発表となったという。公表するかどうか、政府がかなり迷っていた可能性もあるが、午前2時発表というのは、高市氏が前日に記者団に通告した上、衆院予算委当日の11月7日午前3時に秘書官らを召集して高市氏自らが赤ペンを持って官僚が作った答弁書の修正をする作業を行ったことを思い出させる。いかにも緊急を装い、「これはおおごとである」とアピールしたのではないかとの意地の悪い見方もできる。レーダー照射があったのは6日午後4時32分頃から約3分間と午後6時37分ごろから約30分間。スクランブル(緊急発進)対応していた航空自衛隊のF15戦闘機に中国のJ15戦闘機が照射した。政府は「危険な行為」として中国側に厳重抗議し、再発防止を求めた。中国側は、自衛隊機が訓練区域に突入してきたと反論した。高市氏は「極めて残念だ。冷静かつ毅然と対応する」と述べた(以上、朝日新聞など)。「冷静」に「毅然」を付け加えるところが「高市流」だ。正直言って、高市政権は中国の「台湾有事答弁撤回」要求に対して、外務省のアジア太平洋局長を派遣しただけで、ほとんどなすすべもなく放置していたので、私はこういうことがいずれは起きるのではと心配していた。
9日には中国軍とロシア軍の核搭載ができる爆撃機が日本周辺を共同飛行しており、これに対抗するかのように10日には、米軍の核兵器が搭載できるB52爆撃機と空自の戦闘機が、日本海上の空域で共同訓練を行った(12日付朝日新聞)と伝えられている。こういうことの繰り返しが偶発的な戦闘を招かないか心配である。
この「軍事的挑発」とでも言うべき事態は、必ずしも、中国上層部の意思ではなく、現場(その範囲が不明ではあるが)の上層部への「忖度による勇み足」というのが中国ウオチャーの見方だ。朝日新聞10日付朝刊によると、今回の事態を公表することについては、自衛隊制服組から「危険の度合いとしてはそこまで高くなく、必要なのか」という意見が出たという。たった1行の記述だが、これは、おそらく高市氏の意向を受けた官邸の動きに対しての現場の反応だったのだろう。5日に民放テレビで小泉氏が高市答弁をめぐり、中国が猛反発している問題について「中国側が流す発信情報、すでに情報戦,認知戦、宣伝戦の一環もある。鵜呑みにしてはいけない」と述べている。また、小泉氏は「30分のレーダー照射が問題の本質」と言っている。確かに中国側の情報を鵜呑みにするのは危険だが、戦闘機から戦闘機へのレーダー照射の危険性はどの程度なのか。知りたいところだ。もちろん、そのいずれもは中国の得意技だが、日本側もこれに対抗して公表に踏み切った可能性もある。マスメディアは中国情報はもちろんだが、政府情報についても、単に垂れ流すのではなくて、この辺をきちんと押さえて報道する必要がある。
中国国営メディアは9日夜、レーダー照射前の中国軍と自衛隊の無線交信とする音声を公開。音声によると、訓練実施を告げられた自衛隊側は通信を「受け取った」と答えたとしている。これに対して小泉氏は、事前に通告があったことを認めた上で「危険回避のための十分な情報がなかった」などと反論した。自衛隊側が通告に対して「受け取った」などと返事をするかどうかは疑問である。
その後の報道を見ても、中国側の挑発だった可能性は高い。ただし、小泉氏が7日未明の記者会見で中国側からの「事前通告」があったことを発表していなかったことは、余計、中国側の反発を招いた可能性がある。記者団は小泉氏の会見でこのことを聞いたのか。聞きっぱなしだったとすれば、問題である。このような事態が起きたのは、高市氏の「台湾有事答弁」がきっかけであり、高市氏が答弁を撤回しない以上、今後も同じようなことが起きる可能性がある。中国側には、レアアースの輸出停止という日本経済を大打撃を与える切り札があることを忘れてはならない。中国は王毅外相が英国、フランス、ドイツ、ロシアなどとの会談で、反日キャンペーンを続けているが、日本にはほとんど切るカードはない。首相として踏み込んではならないことを言ってしまった高市氏の政治責任は重い。今回もいずれも高市政権関連の出来事をフェイスブックに投稿した。
▼共同通信と毎日新聞の世論調査 浜田敬子氏が危機感表明
ジャーナリストの浜田敬子氏が11月26日のテレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」で共同通信と毎日新聞の世論調査で出た数字に危機感を表明した。台湾有事をめぐる高市早苗首相の国会答弁に激しく中国側が反発している問題。浜田氏は番組で「世論調査の数字がひとろ歩きしないようにしないといけないと思っている」としたうえで「そもそも(調査の)聞き方として『存立危機事態』とか、別の調査で、集団的自衛権を行使することに肯定的な声が48%という数字がありますが、みんな分かっているのかなと思うんですよね」と指摘した。私もこの番組を見ていたが、正確を期すため、日刊スポーツの記事を使わせてもらった。
私も17日の投稿で共同と朝日の世論調査結果について書いたが、当初は「高いな」とは考えたものの、その問題に気付かず、後に批判があることを追加した。うっかりというか、お恥ずかしい限りである。J-CASTニュースでも17日に「『あまりにも不適切』『戦争煽ってどうする?』共同通信世論調査めぐり批判続々」との見出しで、国民民主党の鳩山紀一郎衆院議員ら国会議員がX(旧ツィッター)で問題視しているとの記事がネットで配信されていたが、気づかなかった。
いずれとも、この問題の調査の質問はどうだったのか。共同は11月15,16の両日調査。
「問9 高市首相は国会で、中国が台湾に武力侵攻する『台湾有事』に関し、日本が集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』になり得ると答弁しました。あなたは、台湾有事で集団的自衛権を行使するという考えに賛成ですか、反対ですか」
賛成20・7%、どちらかといえば賛成28・1%、どちらかといえば反対25・9%、反対18・3%、分からない・無回答7・0%。どちらかといえばを加えれば、賛成48・8%、反対44・2%となる。
毎日は22、23日調査。9番目の質問で「高市首相は、台湾有事が日本政府の集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』になりうると答弁し、中国政府が反発しています。高市首相の答弁に問題があったと思いますか。理由があれば、その理由をお書きください」。
問題があったと思う25%、問題があったとは思わない50%、わからない24%。別の「1分で解説」という記事では、自由記述ではどんな意見があったのかーとの問には「日本の立場として当たり前のことを言っただけ」など、肯定的な意見が多く寄せられました。「中国を刺激しただけでメリットがない」といった否定的な意見は少数にとどまりました、と書いている。
JーCASTニュースの記事では、鳩山氏は「メディアが一般国民に対して、このように明らかに不合理な質問を投げかけて「賛成VS反対」という非建設的な単純化によって分断を図るのは、あまりにも不適切だといえる」とし、立憲民主党の川内博史衆院議員も「こんな設問に何の意味があるのか。聞くのであれば、『台湾有事で日本が戦争するのに賛成か反対か』を聞くべきだ」と主張している。れいわ新選組の大石あきこ衆院議員も「メディアが戦争煽ってどうする?どうかしている」という。
確かに「『台湾有事』が集団的自衛権が可能な『存立危機事態』になり得る」との高市答弁は、結果として、「中国と戦争を始める可能性もある」といったのと同じだ。あくまでももしだが、米中が戦争になったら、日本は確実に巻き込まれる。そこで狙われるのは遠い米国ではなく、近い日本である。高市氏は自衛隊の最高指揮官である。この事実は過去の首相が「台湾有事」をあいまいにしてきた理由でもある。問題は支持率調査の重要な項目なのでスルーをしてはいけないが、「戦争となり得る」との言葉を入れただけで回答は変わってくるのではないか。世論調査の質問の仕方は重要である。聞き方ひとつで答えが変わる。今回のことで、共同と毎日は教訓としてほしい。(11月26日)
▼「聞かれたので」「そんなことよりも」 党首討論での高市首相のお粗末な釈明
台湾有事答弁は「聞かれたので…」、企業・団体献金の見直しには、「そんなことよりも、定数削減をやりましょう」。首相として、こんな言い方はないのでは。11月26日の初の立憲民主党、野田佳彦代表との党首討論。高市氏の釈明はお粗末極まりないものだった。
「聞かれたので…」は11月7日の立憲の岡田克也元幹事長の質問の方に問題があるとの言いぶりで、質問者に責任を押し付けているように聞こえる。全く首相として無責任な態度である。「そんなことよりも」は、問題の論点をずらして逃げるもので、「こんな釈明をするなんて」とテレビ中継を見ていて情けなくなった。
朝日新聞が今日(11月27日)の社説冒頭で「自身に問題はなかったかのように開き直る。唐突に論点をずらして切り返す。都合の悪い質問は無視する。一国の指導者としての責任の重さをどう考えているのか。自分の言葉でたんたんと語っているつもりでも、これではとても誠実な答弁とは言えない」と指摘したのもうなずける。高市氏の首相としての資質が問われかねない対応である。
本来、この党首討論は、答弁を撤回するかどうかは別にして、中国の経済的圧力を招く口実を与えた首相自身の「台湾有事答弁」の真意を中国側に分からせる絶好のチャンスだったのではなかったか。野田氏の追及も高市氏が松下政経塾の後輩とあってか、ひどく手ぬるいものだった。野田氏は後に「事実上の撤回」とまで述べている。私には、なれ合っているようにすら見えた。
どちらにせよ、そのせっかくの大切な機会を逃したことになる。さらさら、高市氏にその気などなかったと言われれば、それまでのことだが。
11月27日になって、米紙ウォールストリート・ジャーナルが、日米複数の関係者によると、25日にトランプ大統領が高市氏に電話をかけた際、台湾をめぐる発言を抑制し、中国を刺激しないよう助言したと報じた。官房長官は回答を控えた。トランプ氏はその前日に台湾問題について習近平氏と電話会談を行っている。
高市氏はトランプ氏との電話で、「最近の米中関係の状況について説明があった」と記者団に明かし、その具体的な内容については「外交上のやり取り」を理由に答えず、「日米間の緊密な連携を確認できた」と強調していた。
米紙の報道が事実だとしたら、高市氏は国民にきちんと説明すべきだが、高市氏にとって、不都合な事実なので、隠す可能性が高い。ただ、米国としては、中国との関係を修復し、レアアース問題を前進させたばかりなので、トランプ氏の助言はあり得る。
米国はいまは、中国と外交上もうまくやりたいときである。高市氏はそういう状況を理解しながら、台湾有事答弁をしてしまったことになる。
そうすると、高市氏は全く世界の情勢が読めない人なのか、でなければ、問題答弁は自分の支持層へのメッセージなのか。どちらにせよ、高市氏はひとのせいにしているときではない。高い支持率にあぐらをかいているときでもない。すべては、自分のせいなのだから、一刻も早く解決策を立てるべきである。おそらく、どのような形にせよ、答弁の「撤回」か、中国側が納得できる解決策を探るしかない。高市氏が「存立危機事態」では困る。(11月27日)
▼「不都合な事実は隠してもすぐにバレる」 トランプ氏が高市氏に冷たい反応
「不都合な事実」は隠してもすぐにバレるー。今日(11月28日)の朝日新聞は米紙ウオールストリート・ジャーナルが26日にトランプ米大統領が高市早苗首相に25日の電話会談で「台湾問題で中国を刺激しないよう助言した」と報じたことことについて、新たに複数の日本政府関係者に取材した結果を1面トップと2面の「時時刻刻」で大きく報道した。
WSJは助言の内容について「トランプ氏は高市氏に発言のトーンを和らげるよう提案した」と書いている。これに対して朝日新聞は「(台湾有事は)存立危機事態になり得る」との首相答弁をめぐる日中対立の問題に関し、トランプ氏が事態の沈静化を図る必要があるとの認識を示した」とした。この日の東京新聞も「日中両国の対立に懸念を示し、トランプ氏は対立のエスカレートを避けるよう要請。安定した日中関係を維持する重要性に言及した」と書かれている。
三つの報道では「事態の沈静化」「対立のエスカレートを避けるよう要請」「中国を刺激しないよう助言」と少しづつそのニュアンスは異なるものの、トランプ氏は米国の対中貿易交渉の方を重視し、同盟国の日本には冷たい対応をしたと言えそうだ。木原稔官房長官はWSJ報道を部分的に否定していた。高市氏は25日、トランプ氏との電話協議が終わったあと、具体的内容について「外交上のやり取りなので詳細は差し控える」としながらも、「日米間の緊密な連携を確認できたと思う」と強調した。高市氏には酷かも知れないが、私には「親分から叱られた子分」が恥ずかしいので、肝心なことを隠しながら、虚勢を張っているように見えた。
朝日記事で気になったのは「時時刻刻」の「日中対立 日米間の火種に」の「中国側は首相の答弁撤回を求めているが、首相にはそれに応じられない理由がある」という箇所だ。記事が二つ目に挙げた「答弁を撤回すれば、首相には『対中弱腰』の批判が起き、保守層の支持離れにつながりかねず政権基盤が不安定化するリスクがある」というのは、その通りだろう。
問題は一番目に撤回できない理由として挙げた「日本が集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』の判断の幅を狭めるためだ。答弁撤回は、逆に台湾有事を存立危機事態に認定しないと国際公約することになりかねず、現実に台湾有事を事態認定する際の支障になる恐れが出てくる」と書いている。
確かに、高市氏は11月7日の国会答弁で、台湾周辺で中国軍が海上封鎖を行った場合、「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても『存立危機事態』になり得る」と断言した。さらに、別の文脈ではあるものの、「米軍が来援し、それを防ぐために武力行使が行われる場合」とまで語ってしまった。現在はどこの国でも就役していない「戦艦」という言葉を使っているので、官僚の書いたものではなく、高市氏が持論を語ったというのがメディアの評価で、私もそう思う。
ご存じの通り、存立危機事態には、武力行使のための三つの要件がある。集団的自衛権の行使が許容されるためのもので、①日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある②これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適切な手段がない③必要最小限度の実力行使にとどまるべきーこと。
高市氏の答弁は、これらのしばりをかなり拡大解釈したもので、台湾有事での米軍参戦についても、オンラインメディア「Arc Times」の尾形聡彦氏によると、1979年の米国の「台湾関係法」では、この法律は①台湾防衛用にのみに限り米国製兵器の提供や訓練を行う②台湾の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動をとらなければならないーと書いており、決して「台湾有事」があったからと言って、米軍が直ちに出動する規定ではない。これが、台湾に関する米国の「あいまい戦略」の肝だという。
あくまでも、素人考えで、私の記事の読み違いかもしれないが、これらの前提条件を考慮すると、高市答弁はかなりアバウトな内容であり、この答弁が定着すれば、「存立危機事態」の判断の幅をかなり広げるものになるのではないか。とすると、高市氏は単に口が滑ったのではなく、確信犯的にこのように答弁したことになる。朝日新聞がどのような根拠をもとに書いたのかは不明だが、武力を使った中国による台湾有事があれば、自衛隊も参戦する可能性があると言ったのと等しいことにならないか。だからこそ、簡単に「台湾有事は日本の有事」などと言ってはいけない。やはり高市答弁は「撤回」しかない。(11月28日)
▼石破前首相が高市政権に異例の苦言相次ぐ
このところ、石破茂前首相の高市政権に対する新聞インタビューでの異例の苦言が目立つ。
まず、11月28日の九州のブロック紙、西日本新聞のインタビュー。西日本新聞によると、高市氏が検討していると言われる「非核3原則」の見直しについて、石破氏は、緊急時の米軍による核持ち込みは「核抑止力のために絶対に必要か。あまり意味をみいだせない」と否定的見解を示した。その理由として、国民の心理的抵抗を挙げた。また、台湾有事をめぐる高市氏の国会答弁には「歴代政権はバランス感覚をもって対中外交をマネジメントしてきた」と苦言を呈した。
26日の東京新聞インタビュー(掲載は28日朝刊)。東京新聞によると、台湾有事や「存立危機事態」をめぐる答弁に「公の場で言うことではない」と語り、首相答弁を「問題ない」とする回答が多い世論調査結果について「国民はよくぞ言った、と歓迎しているが、これは危ない」と警鐘を鳴らした。台湾有事問題では、さらに「すごくデリケートなものだ」として「政府の任にあるときには、この問題の発言にはすごく気を付けてきた」と述べた。
首相経験者として、今後も高市政権にもの申すかとの質問には「政府を批判しないことが、己の保身につながっても、国のためになるかどうか。疑問と思えば、それを言うのは与党議員の責任だ」とも。
高市支持者から「後ろから鉄砲を撃つ」との批判の声もあるが、歯切れの良い「石破節」を久しぶりに聞いた。
「非核3原則」について、高市氏は26日の公明党の斉藤鉄夫代表との党首討論で「政策上の方針としては堅持している」と答えただけで、検討しているかどうかを明らかにしていない。
高市氏は「国力研究 日本列島を強く豊かに」との編著書の中でこう書いている。
「非核3原則のうち『持たず』『作らず』は引き続き堅持するにしても、『持ち込ませず』については『米国の拡大抑止の提供』を期待するのであれば、現実的ではない。『守るのは、国民の命か、非核3原則か』という判断を迫られるような究極の事態に至った場合に、『非核3原則を堅持する』との文言が邪魔になることを懸念していた」とまで書いている。
高市氏は党首討論以外でも、国会で非核3原則堅持について「申し上げる段階ではない」と明言を避けている。見直しを検討しているのは確かなのだろう。「核抑止力のために、あまり意味をみいだせない」という石破氏のこの問題でのスタンスとあまりにも異なるのに驚く。
唯一の戦争被爆国の日本にとって、「非核3原則」は被爆者だけでなく、大事な大事な原則ではなかったか。同じ自民党政権なのに、基本的な政府方針がこうも簡単に変えられると、するならば、やはり、高市氏は危ない。(11月28日)
▼危ない国旗損壊罪 憲法学者が問題点に切り込む
今日(12月10日)の朝日新聞朝刊の憲法学者、志田陽子氏のインタビュー。自民党、維新の国旗損壊罪新設についての「自国国旗の損壊罪 必要?」の論考だが、その憲法上の問題点に鋭く切り込んだ。
「生身の人間への侮辱とは異なり、国家に対する侮辱には、『法的な被害者』が存在しない。また、国旗が損壊されるのを見て心が痛んだりする国民がいたとしても、その人の権利が侵害されたとはいえない」とした上で「表現の自由に照らして問題がある」と指摘した。
また「逮捕された人が『目的は侮辱ではなかった』と証明するためには、自分の思想信条を捜査機関に明かさなければ、ならなくなる。その意味で国旗損壊罪は、捜査機関が個人の思想信条に踏み込むきっかけを作り出す法律でもある」とし「思想・良心の自由を保障した憲法に抵触する可能性がある」とも指摘している。この二つの指摘はとても、大事であり、非常に勉強になった。
高市内閣のやろうとしていることは、「スパイ防止法」などそのほとんどが戦後の大切な国民主権や基本的人権、平和主義という憲法体制をぶっ壊す動きであり、高い支持率を背景に一気に国の在り方を「国家主義」の方向に変えようとしているとしか思えない。この2カ月足らずの間に世の中の空気がガラッと変わった。「お前、日本人か」「非国民」などの恐ろしい声が跋扈する時代になることだけはごめんである。(12月10日)