コラム「番犬録」第19回 冒頭解散は無理筋の「大義なき自己都合解散」 側近だけで極秘に練られた解散戦略 高市政権が勝てば「国民のお墨付きを得た」と何をするか分からない怖さ 新党「中道改革連合」を対抗軸に 「独演会」許した記者会見 旧統一教会との関係や「政治とカネ」の問題に一切触れず 甘すぎるマスメディアの追及 権力監視の役割どこへ 「権力批判」の久米宏さん死す 

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 衆院が1月23日解散した。27日、公示、投開票は2月8日。朝日新聞の直近の世論調査(1月17日~18日)で高市早苗首相によるこの時期の通常国会冒頭の解散・総選挙に対し、賛成は36%、反対は50%とその差が14ポイントも開いたにも関わらず、高市氏は衆院解散に踏み切った。解散総選挙に賛成は18~29歳で67%、70歳以上では20%とここにも「世代の分断」が見られた。内閣支持率は67%と相変わらずの高支持率を保つ。これに対して、立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合(略称『中道』)」に「期待する」はわずか28%で、「期待しない」は66%だった。

 この数字だけを見ると、高市政権は圧勝のように見える。しかし、これまで小選挙区で自民党を全面的に支援してきた公明党が連立離脱し、新党の中道ができたことの選挙への影響も少なくなさそうである。各選挙区で公明票は1万から2万票と言われており、これがすべて立憲に回るかどうかは別にして、21年や24年の総選挙の得票数を参考に時事通信、毎日新聞、朝日などが試算した結果では、公明票の半数以上が立憲に投票すれば、自民に大きな影響があり、場合によっては「比較第1党」は自民から中道に逆転する可能性も出てきた。この意味で中道は自民党の対抗軸にはなったのではないか。ただ、中道の人気は3割に満たず、その結果がどうなるか全く予断を許さない状態だ。私としては「高市独裁」を止めるために中道に頑張ってもらいたい。

 政権発足後、世論調査で60~70%台の高支持率をたたき出す高市政権の人気はまだまだ健在だ。特に若い人々から「話す言葉が分かりやすい」「毅然としている」「ブレない」などの高評価が続いているので「圧勝」もあり得る。私には強い違和感のある高市氏の笑い。「作り笑い」にしか見えないが、若い人の間では、それが「かわいい」という評価もあり、〃サナ活〃や〃高市推し〃という言葉もSNSでは飛び交う。また、世界的傾向ではあるが、日本でも参政党の躍進以来、「排外主義」が跋扈しており、高市氏の「台湾有事」答弁も、その後もかたくなに答弁撤回を拒絶する高市氏の姿勢が「反中国」という点で世論受けしている可能性も高い。親中派は人気がないからだ。だから、高市氏は政権樹立後も「排外主義とは一線を画する」と言い訳しながら、わざわざ外国人担当大臣を置き、外国人との共生よりむしろ規制の強化策を強く打ち出しているということなのだろう。それは、根拠の薄い総裁選前の「外国人が奈良公園でシカを蹴った」発言に始まっていた。

 ただ、「政治の一寸先は闇」との言葉があるとおり、23日の解散後、2月8日の投開票までの16日間で何が起きるか分からない状態が当分続くのではないか。

 朝日の調査結果を見ても分かるが、今回の解散は、26年度新予算の成立をすっ飛ばし、天皇が内閣の助言と承認に基づき行う形式的な国事行為を定めた憲法7条の「衆議院を解散すること」を一応の根拠としている。真冬で豪雪地帯は選挙に行くのも大変だ。大学受験とも重なる時期の選挙である。「支持率の高いうちに」と言うことなのだろうが、そうならば、昨年でも良かったはずである。確か、高市氏、昨年は解散を強く否定していた。「首相は解散の時期については、ウソをついても良い」などという俗論がはびこっているが、ウソは当然、倫理上許されるべきではない。「今は言えない」と言い続ければいいだけである。「自己チュウ解散」といわれるほどの身勝手で大義の見えない無理筋の「自己都合解散」で、今回の解散については、「高市翼賛報道」を続けてきたメディアでさえ、批判のトーンが高い。

 そもそも、「解散は首相の専権事項」などと、政治家やメディアが平然と確かな根拠があるかのように言うことの方がおかしい。憲法7条解散で1960年に最高裁が出した「苫米地事件判決」は、「衆院解散は国家統治の基本に対する高度に政治性のある国家行為であるため裁判所の審査の外にある」として、「統治行為論」で違法性の判断を回避したもので、「7条解散」を認めた判例ではない。1952年以来、7条解散は何度となく繰り返されてきたが、そろそろ、この問題に決着を付ける時期に来ているのではないか。

 23日付の東京新聞の「こちら特報部」によると、九州大の南野森(しげる)教授(憲法学)は、今回の高市氏の解散は「解散権の乱用」と断言。7条解散の乱用を抑止するための方策として「法律で解散権を制限する規定を置くことも必要ではないか」と訴える。立命館大の上久保誠人(まさと)教授(政治学)も、「衆院議員の任期(4年)折り返しとなる2年間は解散権を制限すべきだ」と主張。「そうすれば、中間選挙という意味合いになり、一つの考え方としてあってもよいのではないか」としている。いずれの考え方も今後検討に値する。

 19日の解散表明記者会見で高市氏は冒頭から険しい表情で「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、主権者たる国民に決めてもらうしかない」と威勢の良いたんかを切った。「中道」の野田佳彦代表と斉藤鉄夫代表の名を挙げ、「どちらが首相にふさわしいか」との挑戦的なニュアンスの言葉も出た。

 高市氏は「本丸は責任ある積極財政」と述べ、中道に対抗して、これまで否定してきた食料品の2年間に限定した消費税ゼロの「検討加速」も打ち出した。しかし、このあとも、長期金利は高騰し、国債価格も上がり、日経平均株価は下がった。ベッセント米財務長官は20日、スイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)で「米国の長期金利の上昇は日本からの波及効果を関係がないと分けて考えることは非常に難しい」(22日付朝日新聞)と指摘した。高市政権の「責任ある積極財政」に水を差し、日本の財政政策の悪化を強く懸念した内容だ。私には、米国や特に日本の財界は高市氏の財政規律を無視したような経済政策をあまり歓迎していないように見える。

 会見では「国論を二分するような政策」として、安全保障政策の抜本強化やインテリジェンス機能の強化を挙げ、その前に(日本版CIAと呼ばれる)国家情報局設置、(現代の治安維持法といわれる)スパイ防止法制定、(皇位継承を「男系男子」に限る)皇室典範改正など、これまで手の付けられていなかった課題に取り組むとした。いずれも、防衛費の大幅な拡大(まずGDP比2%から3・5%に、さらに5%の可能性も)や防衛移転3原則の「5類型」撤廃(防衛輸出は何でもOK)などと合わせ、高市政権の超タカ派的性格を象徴する政策の目玉である。だから、高市氏は「右傾化ではなく、普通の国になる」ともわざわざ明言した。私には「こういうおっかないことをやりますよ。私を支持するならば、白紙委任してください」と言っているように聞こえた。

 だが、どのように「国論を二分」するのかや、今年中に方向性を出す安保関連3文書改定のうち、国是のはずの核兵器の「持たず」「作らず」「持ち込ませず」という「非核3原則」について、自分の編著書「国力研究」に「邪魔な」と書いた「持ち込ませず」の問題には全く触れなかった。側近の元空将の内閣補佐官尾上(おうえ)定正氏は記者とのオフレコ懇談で「日本は核(兵器)を保有すべきだ」とまで言い放っている。尾上氏は奈良県出身で勉強会の仲間でもあるらしい。「核保有発言」について、高市氏は何もコメントしていないので、あくまで推定だが、高市氏の現在のホンネは「核保有」にあるのかもしれない。

 さらに、会見では「政治とカネ」の問題にも一切触れず、21日には高市政権は旧安倍派を中心とした裏金問題に関与した37人を含む284人の公認を決めた。この中には、前回「裏金問題」で公認されず、無所属の立候補を迫られた旧安倍派幹部の萩生田光一幹事長代行も含まれる。「幹事長代行」(萩生田氏は鈴木俊一幹事長をしのぐその実権からメディアで「影の幹事長」と呼ばれることもある)という重職にあてた上での、露骨な裏金議員の完全復権である。萩生田氏は「裏金」だけでなく、昨年末に韓国メディアにより暴露された統一教会の取り調べ当局の極秘文書で統一教会と安倍首相とのつなぎ役として登場する。高市氏はなぜこのような人物をわざわざ重用するのだろう。

 この文書に高市氏は32回も登場する。統一教会問題を追及するジャーナリスト、鈴木エイト氏は「文書を読むと、統一教会側の高市氏への大きな期待が書かれている」(ユーチューブ番組での発言)という。従って、高市氏と統一教会の直接的な言及ではなさそうである。韓国のハンギョレ新聞や週刊文春が明らかにしたのは、3200ページ分でまだ1000ページ以上の明らかにされていない文書があると言われる。ただ、「TM(トゥルーマザー、韓鶴子総裁のこと)特別報告」は統一教会の当時の日本の会長らが韓国のナンバー2に対して報告した文書で多少大げさに盛った箇所もあるという。高市氏の出身地を「奈良県」ではなく、「神奈川県」とした間違いの箇所もある。これまでに日本でも、立憲や共産や多くのメディアやジャーナリストが入手し、分析を始めている。高市首相は解散の理由をいろいろ挙げているが、その大きな理由は、この文書を基に国会予算委で追及されるのが怖かったからではないか。だから、それから逃れるために解散した。これはあくまでも私の見立てである。  

 今回も高市首相の解散表明と解散戦略、そして解散記者会見を中心に、新党「中道改革連合」の意味やニュースステーションのキャスターを務めた久米宏さんの死去など5本をフェイスブックに投稿した。

▼高市首相の「ご都合主義解散」 読売報道もその一環

 いくら首相の「専権事項」などと言われても、これは有権者にとっては「大義なき解散」だ。あくまでも首相の権力欲を満たすためだけの個人の「ご都合解散」にすぎない。

 読売新聞オンラインが1月9日深夜に放った今月23日召集の衆院通常国会冒頭解散報道が12日になり、朝日など主要メディアが「解散検討」と言葉を強めて報じ始め、いよいよ解散は現実のものとなりそうだ。前回からまだ1年3カ月。多くの任期を残して議員はクビになる。

 朝日は「唐突な判断に対する反発を懸念して一部の首相側近のみで流れを作る政治手法を選んだ」と書いている。読売報道もその流れの一環だったとも読める。

 投開票は2月上中旬。国民生活に直結する新年度予算が遅れる上、昨年末、韓国で再び火が付いた統一教会自民党汚染問題(高市氏も32回も登場)や首相側近の「核保有発言」などの国会追及もうやむやになる可能性もある。そもそも、「国会での不信任」以外に首相の解散権を認めることがおかしい。

 とはいえ、直近のJNN(TBS系列)世論調査で高市内閣の支持率が78・1%という驚くべき結果が出た。高市氏が何か国民のためになることをやったのか。どう考えても不思議である。

 かなり可能性は高いが、選挙で勝てば、高市氏は「国民のお墨付き」を得たとばかりに大幅な軍拡や改憲に向けてひた走ることになるだろう。

 そう言えば、高市氏は最近「走って、走って、走って、走って、走って」と連呼していた。(1月12日)

▼亡くなった久米宏さん「テレビも新聞も権力を堂々と批判すべきだ」

 テレビ朝日の看板番組だった「ニュースステーション」(現、報道ステーション)のキャスターを18年半も続けたアナウンサーの久米宏さんが死去した。私よりひとつ上の81歳だった。

 久米さんの死を悼むたくさんの新聞記事の中で、きょう(1月14日付)の朝日新聞の後藤洋平編集委員の評伝が私の心に残った。

 「当時と比べると、近年はテレビ出演者の自由な発言が減ってきたように感じる。記者が(久米さんに)そう話すと、『政治の圧力も取りざたされるが、自分たちで手足を縛っているのでは』と返ってきた」

 そして「テレビも新聞も権力を堂々と批判すべきだ、とも語った」。(中略)後藤編集委員は「10年前に受け取った言葉が今も胸に響いている」と書いている。

 10年前の久米さんの言葉だが、昨夜、報道ステーションの追悼番組をみたが、キャスターの大越健介氏がこの朝日記事を読んでこの言葉をどう受け止めたのか知りたい。

 それから10年たったいま、テレビも新聞も、権力を堂々と批判することができているのか。それどころか、私には、メディアがますます、権力にすり寄っているようにしか見えない。

 このところの、高市首相の高支持率を支えるひとつの要因となっていると考えられるテレビを中心としたメディアの「礼賛報道」を見ていると、つくづくそう感じる。あくまで想像だが、久米さんも亡くなる前にそう考えていたのではないか。改めて、久米さんのご冥福を心から祈る。(1月14日)

▼解散戦略の一環が明らかに 今井参与ら少数で練られた

 高市氏が自分都合のためにもくろんだ1月23日召集の通常国会冒頭での衆院解散。 投開票は2月8日になるもようだ。 その解散戦略の一端が今日(1月15日付)の朝日の報道で明らかになった。

 朝日によると、今回の解散戦略は、高市氏や木原稔官房長官、安倍晋三元首相の側近だった今井尚哉内閣官房参与、佐伯耕三内閣広報官ら限られたメンバーで極秘に行われた。

 1月上旬の情勢結果が「自民の単独過半数」を優に超えていたことが、高市氏の決断につながったという。 今日発売の週刊文春によると、この情勢結果では、衆院233の単独過半数を遥かに上回る自民党260獲得という数字が出回っているという。
 
 これを、読売新聞オンラインが9日午後11時すぎに報道。 他の大手メディアが続いたことで「冒頭解散」がサプライズではなくなり、大きな流れとなった。

 読売報道が出たあと、蚊帳の外だった自民党幹部が高市氏に電話し反対すると、「国民に信を問い、政権運営を安定させるのもひとつの方法だ」と返したという。

 その予兆は昨年末からあり、自身に近い税調幹部に昼食会で解散戦略を練り始めていることを示唆。 「解散はフリーハンドにさせて欲しい」と発言した。 首相や側近らは、高市氏が力を入れるスパイ防止法の制定や外国人政策の厳格化を推進するためにも、選挙を経て国民からの「信任」が欲しいと考えた。 そんな中、高市氏や側近らの念頭にあったのは歴代屈指の高い内閣支持率だった。
 
 冒頭解散で予算の年度内成立断念に与党内から、強い反発が出ることを避けるため、ごく少数だけで戦略を練り、麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長ら党幹部への根回しを避け、秘密主義を貫いたなどと書いている。 総裁選で高市氏を勝たせた麻生氏らの怒りはかなりのものらしい。

 私が気になるのは、読売への対応だ。 文春によると、読売は木原官房長官の取材をメインに記事を書いたとみられ、高市氏には確認取材を行っていないようだ(政治部デスク)としている。

 9日の読売オンライン記事の「高市首相が衆院解散を検討」では、「政府関係者が明らかにした」としており、「複数の政府関係者」とは書いていない。 ということは、木原官房長官が高市首相の意を受けて、読売記者に観測気球記事を書かせるためにリークした可能性がある。 木原氏は高市氏が政調会長時代、事務局長として支え、思想的にも近い首相の右腕といわれる。

 読売は昨年9月、石破茂首相の退任で誤報し、政治部長らが社内処分を受けている。 このときも、「石破降ろし」に加担した報道と言われたことがある。 今回はカタチは表面上、スクープだが、結果として、政権の意向を汲んだ報道となったのではないか。 政局報道は常に、そのような恐れがあるのだが、本当にそれでいいのか。 割り切れない気持ちである。
 
 今回の高市首相の自分都合解散の一番の理由は、韓国での統一教会を巡る文書にあると思う。 韓国メディア報道に続き、文春砲が「高市氏が天の願い、32回もの登場」に続き、今週号でも高市氏最側近の佐藤啓官房副長官が安倍元首相の銃撃事件当日、統一教会の集会に招かれ、夫人が夫の代わりに参加していたとの記事をトップに据えて書いている。

 大手メディアは何を恐れているのか。 この問題では、ほとんど独自には、報じていない。 立憲や共産などの野党もこの文書を入手しているようだが、大手メディアもすでに持っているのではないか。

 韓国にある反社会的カルト集団の統一教会と自民党の関係は日本の安全保障にとっても大きな問題である。 だからこそ、高市政権は国会での野党の追及を恐れて、冒頭解散という禁じ手に出たのだと思う。 しっかりしろ、大手メディア。(1月15日)

▼新党「中道改革連合」の持つ意味は

 立憲民主党と公明党の新党立ち上げで一番ショックを受けているのは、高市氏ではないかー。

 高市氏が自民の鈴木俊一幹事長と日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)に1月23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散する意向を伝えた同じ14日、朝日が立憲と公明が新党結成に向けて最終調整に入ったとのスクープを放った。15日の朝日は1面にこの二つの大きな記事が並んだ。いくら「首相の専権事項」だとはいえ、26年度予算成立をすっ飛ばしての無理筋な「電撃解散」をたくらんだ高市氏はこのニュースにさぞ驚いたことだろう。圧倒的な高い支持率に自信を深め、圧勝を目指して麻生副総裁や鈴木幹事長にまで秘密にして、木原官房長官ら側近の少数で極秘裏に進めていた高市氏の解散戦略が大きく狂う事態となったからである。

 立憲の野田佳彦代表と公明の斉藤鉄夫代表は16日、記者会見し、新党の名称を「中道改革連合」(略称は「中道」)とすることを発表した。朝日によると、野田氏は「『中道』は右にも左にも傾かず、熟議を通して解を見いだしていくという基本的な姿勢、『改革』は生活者ファーストの視点で現実的な政策を打ち出していくこと、『連合』は幅広くオープンに賛同する人たちに来てほしいという意味合いだ」と説明した。立憲と公明は引き続き存続させ、衆院議員だけが離党手続きをした上で参加する。参院議員や地方議員は両党に残る。公明は小選挙区で候補者は立てず、立憲を応援、新党の比例の上位にするという。

 16日夜の報道ステーションに野田氏と斉藤氏が出演した。新党は野田氏と斉藤氏の共同代表だが、「政権交代が実現した場合はどちらが総理に」との質問に斉藤氏は「野田さんはいいにくいと思うので私が言うが、総理経験のある野田さんです」と答えていた。

 また、昨年の公明による連立政権離脱時から両党の話し合いが秘密裏に続いていたという。しかし、野田氏は新党が公になった後も「連立政権を目指す」との言葉は使っておらず「比較第1党を目指す」と控えめというか、そこまでの自信のなさを見せつけた。

 ただ、あくまでも、24年の衆院選結果に基づく試算だが、16日の毎日新聞は、「公明票」が一定数目減りするなどした場合、自民現職がいる小選挙区で最大42選挙区の当落が変わる可能性があると報道。「公明票が減少した場合に当落が変動する」27選挙区の議員名と「減少分を立憲候補に上乗せした場合に当落が変動する」15選挙区の議員名を具体的に示した。さらに時事通信も同じ24年総選挙のデータを基に試算し、各選挙区で公明支持層の1万票が自民候補から次点だった立憲候補に流れたと仮定した場合、35選挙区で当落が入れ替わり自民97議席、立憲139議席と小選挙区では逆転するという結果を報道している。そうなるかどうかは別だが、高市政権にとってはいずれもショッキングな結果だろう。

 この新党については当然、自民党や維新などから「選挙互助会」などの批判がつきまとう。問題は、両党には確かに「平和」や「福祉」「人権」について親和性はあると思う。ただ、長い間、民主党の時代から与党と野党という形で対立を続け、公明は集団的自衛権の行使を認めた安保法制を推進し、原発再稼働についても立場に違いがある。19日に「中道改革連合」の基本政策が発表される。17日の朝日の「原案判明」の記事によると、エネルギー政策では、地元の合意や安全性が確認された原発再稼働を容認。安保政策では、現実的な外交・防衛政策として日米同盟を基軸とした抑止力・対処力の強化を図る。立憲主義を堅持した上で、憲法論議を深化させるーなどとしている。

 立憲民主党の「生みの親」である枝野幸男最高顧問は、今回の新党立ち上げへの「複雑な思い」を15日のX(旧ツイッター)で 以下のように発信しているのでその要旨を紹介しておく。
 
 「今回の党の決断について、納得できない、同意しがたいと感じておられる方が少なくないことも受け止めている。率直に言って、結党時の姿のまま続けられたらという思いが全くないと言えばうそになる。しかし、この8年余りで、日本の政治と党を取り巻く環境は大きく変わった。一つは、野党第1党としての『公器』としての変化だ。信念を大切にしつつも、与党に変わりうる選択肢となるためには、より幅広い国民を包摂する姿勢が不可欠だ。二つ目に安倍晋三首相の死を契機とした政治環境の激変だ。安倍氏の逝去により、抑え込まれて変化が一気に噴き出した。極右勢力の台頭、分断を煽る政治、目先の利益を訴える悪しきポピュリズム。こうした動きが勢いを増し、政治の秩序は大きく揺らいだ。その到達点の一つが公明との連立から維新との連立へとかじを切った高市政権の誕生だった。立憲民主党の立場も政治環境も大きく変わる中で、結党時の思いを守るためにこそ、今の状況に合わせて、自ら変わっていく必要があると考えている。選挙で手をこまねいている間に、高市自民党や維新が大勝し、立憲が激減してしまえば、取り返しがつかなくなる。今回の決断が選挙でどう評価されるかは、国民の皆様の判断に委ねられている」

 正直言って、私も「これで高市政権の対抗軸ができる」と思った。だが、「平和」という問題を考える時に、「専守防衛」から逸脱する「集団的自衛権」を容認していいのか、「脱原発」のためにも「再稼働」は許せるのかーなどを考えると複雑な気持ちである。

 高市政権は私が心配した以上に、大幅な軍拡路線や「スパイ防止法」に象徴される人間の自由や尊厳を奪う政策、人権を何とも思わない、とんでもない安倍政権以上の「極右・国家主義・ポピュリズム政権」であることも分かってきた。80歳にもなってこんな恐ろしい政権ができるとは思わなかった。

 もし今回の総選挙で大勝ちさせたら大変なことになるという危機感を感じている。だからこそ、今回の立憲と公明との新党は高市政権の対抗軸になってほしい。それが私の考えた末の結論である。できたら、比較第1党ではなく、政権交代を望んでいる。ただ、「希望の党」の時のような「排除の論理」は「絶対NO」である。今回の党の決断に「反対」かも知れない人たちを排除したらいけない。東京都知事の小池百合子氏と同じになってしまう。また、新党は共産、社民、新選組などリベラルな党とも何らかの形で連携できるように工夫してほしい。2月8日といわれる投開票までもう3週間あまりしかない。(1月17日)

▼情けない高市首相解散会見での記者たち 旧統一教会との関係追及せず

1月19日の解散記者会見は、高市氏の「独演会」だった。高市氏に過剰に気を配った記者たちによる「与党質問」ばかりで、情けないことに、解散するウラの理由とされる「政治とカネ」問題や側近による「核保有発言」、さらに、昨年末、韓国のメディアが暴露した高市氏自身が32回も登場するという「統一教会極秘文書」への質問も一切なかった。また、高市氏の心ない衆院予算委答弁をきっかけとした日中関係の悪化についても、深く切り込んだ質問はなかった。

 ユーチューブで1時間3分の会見の動画全編を見て、自民党官邸記者クラブ(内閣記者会)の高市氏への寄り添いぶりが改めて浮き彫りになった。SNSだけでなく、大手メディアによるこうした無批判の政権加担が結果として、高市氏に高い支持率をもたらし、増長させていないか。「オールドメディア」と揶揄されてくやしくないか。ジャーナリズムは、「権力監視」を最大の使命とする国民の代表なのだからもっとしっかり質問してほしい。
 
 この日午後6時から首相官邸の会見室で始まった記者会見。官邸記者クラブに属する記者や抽選で当たったフリー記者含めて数十人の記者で会場は埋まった。「大義を伝える場として、過去の例を参考にした演出も見られた。記者会見場の背後のカーテンは普段の青色ではなく、赤に替えられた。2005年に小泉純一郎首相が『郵政解散』に踏み切った際に使われたものだ」(20日、読売オンライン)。経産官僚で昨年12月に高市氏が抜擢した故安倍首相秘書官の佐伯耕三内閣広報官(経産省出身)が司会を務めた。佐伯氏は高市氏の信頼が厚く、読売による9日の「衆院冒頭解散」報道を誘導したひとりとの週刊誌報道もある。「アベノマスク」の提案者としても知られる。

 高市氏は緊張しているのか、演技か、ひどく怖い表情で現れた。そこで冒頭、「本日、23日に衆院を解散する決断をしました。高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、主権者たる国民に決めてもらうしかないと考えました」。いつもと異なり、作り笑いはない。私は思わず「役者やのう」とずっこけた。また、支持者狙いのお得意のパフォーマンスである。これが人気のもとなのかもしれない。それから、約30分、所信表明演説と見まがうプロンプターを見ながらの長々とした説明が続いた。この途中から、いつもの作り笑い顔に戻った。説明の最後に「逃げない」「ブレない」と満面の笑みで自分をアピールした。これは受けたかもしれない。

 まず、幹事社の共同通信の記者が「解散の大義」を、やはり幹事社の東京新聞が立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」や突然決まった2年間の限定付きの食料品の消費税減税についてただした。大義について、連立政権の枠組みが変わったことなどを挙げ、新党については「国民不在、選挙目当て、永田町の論理には終止符を打ちたい」と対抗心をむき出しにして強調した。この三つは高市氏の解散自体にもブーメランのように返ってくるとは考えなかったのか。
 
 この後、幹事社以外の質問に移り、日経、フジテレビ、読売、ニコニコ動画、新潟日報、ロイター通信(日本人記者)、静岡新聞、日本テレビの順で質問。幹事社の質問に対する高市氏の長い回答が15分。幹事社以外は15分で、静岡の質問の前に司会の佐伯氏が「残り2問です」と警告。アンカーの日本テレビで「これで終わります」と宣言した。フリーとみられる何人かの記者からのさらなる質問を求める声が上がったが、佐伯氏はこれには答えなかった。この日の朝日の「首相動静」。午後7時3分の会見終了後、小林鷹之党政調会長、鈴木貴子広報本部長、同9時1分、公邸着。「会見後の用事」というのは身内の打ち合わせ。なぜ、こんな大事な会見を1時間で終えるのか。会見時間の延長は、高市氏にとってもメリットは大きいはずである。きっと、耳に痛い質問はお嫌いなのだろう。

 抽選に当たって、この会見に出席したというオンラインメディア「Arc Times」の元朝日新聞記者、尾形聡彦氏はその後の自分のユーチューブ番組で「何度も手を上げたがあてられなかった。日中問題、統一教会問題の質問はなく、官邸があらかじめ高市氏への各社の質問を事前に集め、文字にしたものを記者側も高市氏側も共有、それを読んでいた。私はワシントンだけでなく、諸外国の会見に出ているがこんなやり方をするところはない。これが記者会見とは情けない」と官邸記者クラブを批判した。動画では、記者側の方は分からないが、高市氏は明らかに常にプロンプターをを見るためにときおり、目を下にしていることが分かる。

 20日の読売オンライン「首相、退路断って政権運営の信任得る考え」によると、首相が記者会見で腐心したのは、解散の大義を示すことだった。(中略)このため首相は、この日の原稿を時間をかけて練り上げた。立憲の野田佳彦代表や公明の斉藤鉄夫代表の名前を挙げ、首相候補としてどちらかがふさわしいかを問うような場面もあった」と書いている。やはり、政権側は事前に幹事社だけではなく、幹事社以外の質問もその内容を出させていたのではないか。「退路を断って」という読売の見出しの表現もいかがか。過半数の233議席は無所属を含めて政権は現在も保持している。これも私には、「ヨイショ記事」に見える。
 
 せっかくフリーの記者も参加しているのだから、尾形氏のような政権にとって、「うるさ型」(失礼)の記者からもきちんと質問を受けるべきだった。尾形氏はこの日、首相会見の前に行われた「中道改革連合」の会見にも出ているが、代表も幹事長もきちんとフリーl記者の質問に応じていたという。まさか、以前のジャニーズ記者会見のように「NG記者」名簿でもあるのか。

 私は19日夜は会合があり、テレビ中継を見ることができなかった。家に帰ってから首相会見関連記事の「ヤフー」のコメントを見たが、かなりの数の高市批判コメントがあり、ビックリした。そのほとんどが「大義なき解散」だった。この記者会見は高市氏にとって、解散総選挙の行方を左右する可能性のある大きなものだったはずである。高市氏は会見で「与党で過半数を目指す。内閣総理大臣としての進退をかける」とまで言い切った。ただ、圧倒的に高い支持率が続いている割には「与党過半数を目指す」とは少しショボくないか。せめて「自民単独で過半数」だろう。これまで連立していた公明党が立憲と新党を結成したことは高市氏にかなりのショックを与えたとみられる。

 韓国の統一教会文書は全文に一応目を通した鈴木エイト氏によると、高市氏の登場部分はいずれも、「統一教会側の期待」が書かれているということのようである。ただ萩生田氏がキーパーソンで安倍氏と統一教会を繋いだのは萩生田氏らしい。ハンギョレ新聞は続報を出し、週刊文春に続き、集英社オンラインも文書を手に入れ記事にし始めている。文書は他の大手メディアにもわたっているとみられ、メディアによる統一教会報道は続くはずである。というか、続いてほしい。おそらく総選挙に突入する高市政権にとっては、最も好ましくないテーマとなるはずである。(1月21日)

                                 (了)