戦後80年が終わろうとしている。大きな節目のこの年の10月21日に日本で初の女性首相が誕生し、日本にも素晴らしい時代がきた、と思った。しかし、高市早苗氏は就任後1カ月も経たないうちに、11月7日、野党の質問に「台湾有事は存立危機事態になり得る」と国会答弁した。これが、ひどく中国を刺激し、中国からの観光客が激減、日本近海で演習していた中国軍機がスクランブル出動中の自衛隊機にレーダー照射するという一時、危険な事態にまで発展した。
中国側は高市氏に繰り返し内政干渉を理由に「答弁撤回」を求めている。高市氏は「撤回したら、中国のいいなりになることになる」との理由なのだろう。「(台湾問題については)歴代の首相の従来の見解と変わりはない」として、決して撤回しないという意思は崩していない。このことが「毅然としている」との評価を生み、「反中」の世論とあいまって、内閣支持率を上げる結果ともなっているようである。石破茂前首相の時には少しずつ前進していた日中関係は最悪の状態となって、日中は対立を深めている。
高市氏が頼りとする米国のトランプ大統領も中国の習近平国家主席から「日本の非道」を訴えられたためか、電話会談で「慎重に」と高市氏に注意する結果に。来年4月には、トランプ氏は中国に国賓として招かれ、秋には習近平氏の米国訪問など年4回の米中首脳会談が予定され「2G(米国と中国)」体制という言葉が出るほどである。
トランプ氏は来年11月の中間選挙を控えて中国寄りの姿勢を顕著にし始めた。12月上旬には、米国は「『西半球(南北アメリカ)』を自国の勢力圏と見なして排他的に利益を追求する一方、中国とロシアには干渉しない」との国家安全保障戦略を発表した。これにより日米関係は、神戸学院大学名誉教授の内田樹氏が「日米安保条約の廃棄を米国が通告してくる可能性は『低くない』」と指摘する(28日付東京新聞「21世紀の東西分割」)状況にあるようである。
一方で、米国防総省が「2027年までに台湾をめぐる戦争に勝利する能力を獲得すると中国が見込んでいる」との中国の軍事動向に関する年次報告書を12月23日に発表。中国軍は、29~30日まで台湾を包囲する大規模な軍事演習を実施した。米国が大規模な台湾への武器売却を承認したことや高市氏の国会答弁に反発したことに対するけん制の意味もあるとみられる(共同通信)。ただ、「演習はもともと予定されていたもので、理由は後付け」(朝日)との専門家の見方もある。ただし、トランプ氏と習近平氏のことだから、来年の米中の実際の動きを見なければ分からないほど、今後の米中関係は不透明だといえそうだ。
そのような状況下で12月18日、官邸記者クラブとのオフレコ懇談で核軍縮・不拡散問題担当の尾上(おうえ)定正首相補佐官が「日本は核(兵器)を保有すべきだ」と発言した。翌19日朝刊で在京各紙が実名を伏せて報道した。尾上氏の実名は24日に、文春オンラインが25日に週刊新潮が公にした。すぐに被爆者団体から強い抗議の声が上がり、野党や自民党の防衛大臣経験者からも「補佐官更迭」の意見が出た。米国務省の報道担当者も19日、「日本は核不拡散や核軍備管理の国際的なリーダーであり、重要なパートナーだ」と共同通信にコメントした。
高市政権は、木原稔官房長官が「政府としては非核3原則を政策上の方針として堅持している」と述べただけで、「今後も堅持し続けるのか」などで、だんまりを決め込み、その経緯の説明や発言者の実名を発表することもしていない。本来はオフレコ懇談の場で「個人的意見」と断っていたとはいえ、「核兵器の保有」を安全保障担当の官邸幹部が口にするという政権を大きく揺るがしてもおかしくない事態にもかかわらず18歳から29歳までの支持率が92%と、あまりにも高い支持率に怖じ気づいたのか、マスメディアの追及はかなり緩い。頑張って報道をし続けているのは東京ぐらいだ。このままでは、問題は年越しし、1月23日開会予定の通常国会で野党の追及もあるだろうが、メディアの何となく及び腰の姿勢を見るにつけ、最後はうやむやとなる可能性も捨て切れない。メディアは徹底して追及するべきである。
「核保有発言」問題でのメディアの動きを追うとー。毎日新聞と東京は翌20日付の社説で厳しく批判した。朝日はなぜか、12月18日の発言後、5日も経った23日、「核兵器保有論 首相自ら明確に否定を」との見出しで社説を出した。「個人の見解と断っているが、安保政策について高市氏に助言する立場にある。日本が将来的な核武装の意図を秘めているのではないかと、内外で受け取られかねない。首相自らが明確に核保有を否定する発信をすべきだ」と書いている。
内容はその通りだが、実名抜きでは迫力はなく、責任追及にもおぼつかない。週刊文春と週刊新潮が実名に踏み切ったが、官邸記者クラブに属する各社は、発言がオフレコ懇談で出たという理由で「官邸幹部」などの呼称で実名を避けている。週刊誌やネットでは堂々と実名が出て公になっているのに、これ以上、匿名にしておく理由はあるのか。政府高官の「核保有発言」という被爆者の心を著しく傷つける公益性の高い発言をした人物を実名に切り替えないでいいのか。マスメディアは、読者や視聴者の「知る権利」に応えるべきである。
12月27日付の東京「ぎろんの森」は「繰り返される核保有発言」との見出しで、23年前の同じような事例を紹介している。当時の発言主は福田康夫官房長官(後の首相)。実名を報道しないオフレコ取材の席上、非核3原則について「今は憲法だって変えようという時代だから、国際情勢(の変化)や国民が(核兵器を)持つべきだということになれば、変わることがあるかも知れない」と述べた。東京はこれを「政府首脳」による発言として報道。野党側が追及する構えを見せたため、福田氏は発言の4日後、「政府首脳」が自分であることを認めた上で「現内閣で3原則の変更、見直しを考えたり、今後の課題として検討していることは全くない」と3原則の見直しを否定した。
福田氏の発言と今回を比べると、今回は「保有すべきだ」とより直接的な言い方をしている。首相補佐官というその立場は、23年前の官房長官とは異なるものの、首相になる前の高市氏は編著書で「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核3原則のうち、「持ち込ませず」は「邪魔」とまで書いている。その首相が招聘した同じ奈良県出身の元自衛隊制服組の「お友達」の官邸幹部なのだから、首相の任命責任は大きい。その意味でも、高市政権は被爆者に謝罪の上、実名を発表し、その経緯を国民に説明すべきである。また、このところ、元自衛隊のトップクラスの幹部が台湾の「政務顧問」になったり、総合雑誌で「核保有論」を展開したりということが続く。もちろん、辞めた後はどんな発言をしようと自由だが、私はなぜか割り切れないものを感じる。
「言語道断。核兵器は人道に反する。実際に使われたら何が起こるか、何も知らない人がしゃべっているんじゃないか」(東京)。昨年、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員の田中煕巳さんの怒りは大きい。
そもそも、高市政権にとんでもない発言が出たとの自覚はあるのか。「核保有」発言は高市氏の代弁か、少なくとも世論を見定める「観測気球」との見方も出ているのをどう説明する。
今回は「核兵器保有」発言問題と高市氏と石破氏との比較の計4本をフェイスブックに投稿した。
▼高市氏支持の理由は「何事にも毅然としている」
高市氏は首相就任から2カ月以上が過ぎた。「台湾有事は存立危機事態になり得る」との国会答弁で日中対立は深まるばかりだが、高市内閣の高い支持率が続く。そんな高市氏。かつて衆院議員の一期目の国会質問で、当時の「不戦決議」に対する反対の立場から第2次大戦について「少なくとも私自身は当事者とは言えない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもないと思っております」と発言したことがある。
石破氏はことし10月10日の「80年石破所感」で「過去の歴史に学ぶ重要性」を指摘した上で「われわれは常に歴史の前に謙虚であるべきであり、教訓を深く胸に刻まなければなりません」と述べている。高市氏は約30年前の発言ではあるが、首相就任後に発売された右派雑誌「Hanada」12月号の「高市早苗は天下を取った!」特別手記(衆院議員時代に書いた文章の再録)「わが国家観」で、故安倍晋三元首相が「戦後レジュームからの脱却」を掲げたことを評価するなど、その右派としての認識は、当時とあまり変わっているようには見えず、同じ自民党でも石破氏とはその歴史観は全く異なる。
日中関係が悪化する中で、朝日新聞が12月20日の「be」に「日本の近現代史に関心がありますか」の興味深いアンケートを特集した。いつの調査か明示がないが、回答者数は2395人。「日本の近現代史に関心があるか」の質問に「はい」は75%、「いいえ」は25%。「はい」の理由は①戦争に突き進んだ理由を知りたい(1093人)②いまの日本に直接関わる時代だ(1018人)③もともと歴史が好き(733人)④近隣諸国と何があったか知りたい(731人)⑤激動の時代だから(564人)=複数回答8位まで=。「いいえ」の理由は①戦争など負のイメージ(237人)、もともと歴史に関心がない(237人)③他の時代よりロマンが少ない(125人)などとなっている。
さらに、「日本の近現代史を高校までに習ったか」については、「習った」「だいたい習った」の計が41%、「習っていない」「あまり習っていない」は59%。「歴史の情報はどこから」については、①テレビ(ニュース・ドキュメント)(1639人)②新聞(1510人)③書籍(1490人)。そして、「日本人は近現代史をもっと学ぶべきか」については92%の人が「はい」と答え、「いいえ」は8%だった。
この記事では、防衛力が増強され、排外主義が強まる今は「新しい戦前」ではないかという危機感のにじむコメントが多かった、と指摘。また、高市首相の台湾有事をめぐる発言を機に日中関係が悪化する中、近隣諸国との関係を近現代史から振り返りたい、という声が目立つ、と書いている。やや安心する結果ではある。もっとも「between 読者とつくる」とあるので、答えたのは朝日新聞読者ということなのだろう。
それにしても18歳から29歳の若者の高市内閣の支持率が92%(産経新聞とFNNの20,21日調査)という世論調査結果もあり、若者の高市政権に対する支持は熱狂的といえるほどだ。高市首相のことをメディアは単に「保守派」と書くが、その立ち位置は憲法を否定し、戦前回帰を求めている点で歴史修正主義(歴史否定)的右派といえるだろう。「発言にメリハリが利いている」「何事にも毅然としている」というのが多くの支持者の声だが、高市氏の国家主義者やポピュリストの側面をどれほどの人々が理解しているのか、やはり不安である。日本は「新しい戦前」状況にすでにあるのだと私は考えている。(12月24日)
▼批判される大手メディア
文春オンラインが24日、「核保有」発言をしたのは、尾上定正首相補佐官だと分かった、と報じた。元航空自衛隊の空将で高市首相の肝いり人事だった。高市氏と同郷の奈良県出身。(12月24日)
また、大手メディアは批判されます。当然ですが。高市政権はとぼけるつもりだったのでしょう。恥ずかしいことで、大手メディアはジャーナリズムの「権力監視」の役割を果たしていません。(12月24日)
▼本音で核を持つべきと考える人が首相の助言者
オフレコ懇談での「核保有発言」は元空将の尾上(おうえ)定正首相補佐官と文春砲(文春オンライン)が12月24日、実名報道した。早速、25日発売の週刊文春新年特別号を買って読んでみた。また、同じ日の発売のライバル誌の週刊新潮にも尾上氏の実名が出ていた。
週刊文春の見出しは「〃究極の自分ファースト〃高市早苗の全履歴。その冒頭部分にこう書いている。「では一体この発言の主は一体誰なのか。名前と職掌を明らかにしなければ、問題の検証はできない」とした上で「発言をしたのは(核軍縮・不拡散問題担当)の尾上定正首相補佐官です」と明かすのは官邸関係者だ。元航空自衛官で、23年から防衛大臣(現官房長官、木原稔氏が防衛相)政策参与を務め、高市政権で補佐官に。首相と同郷の奈良出身のお友達で防衛問題のブレーンだった。
「本音では核を持つべきと考えている人物を核軍縮担当にしている時点で適材適所とはほど遠い」と文春は指摘。名前を明かした官邸関係者が「首相の任命責任も問われる事案で、本来は更迭されうる発言ですが、その距離の近さからきれていない」という。週刊文春の記事では、高市首相の「お友達」の上、「距離の近さ」から更迭できないという。唯一の戦争被爆国で「非核3原則」を国是とする国でこんなことがあっていいのかー。いまや、高支持率が続く高市氏は官邸にとってアンタッチャブルの〃女王様〃になったらしい。
新潮の方はかなり文春とこの問題に関するスタンスが異なる。だから、その見出しからして「高市首相側近 オフレコ『核保有発言』はそんなに問題か」。「日本の安保環境が厳しさを増す中、国の中枢に入る人物が核について発言することの何が問題なのかと、専門家から疑問の声があがっている」というのが大筋の内容だ。尾上氏の発言を擁護する記事といってもよい。
元自衛官が退職後にフリーな立場で「核保有」に言及したからといって、それは自由である。ただ、元自衛隊幹部が政権の中枢に入って「私は核を持つべきだと思う。最後に頼れるのは自分たちしかいないから」などと、記者たちの前で発言したら、昨年、ノーベル平和賞を受賞した日本被団協など被爆者たちはどう考えるか。首相補佐官に制服組がなるのは初めてで、これまでの政権がそうしなかったことを考えると、それ自体にも問題があるのかもしれない。また、核拡散防止条約(NPT)に日本は加盟しており、原子力基本法も核は平和利用に限られている。NPTでは、原則として核兵器を持てるのは米ロ中英仏の5カ国だけである。北朝鮮やイランの核保有問題で散々努力してきた国連がどれほど困惑するか。その想像力もないのだろうか。日本が核兵器を持てば、中国、韓国、ロシアをはじめ東南アジア諸国も脅威に感じるだろう。
尾上氏は6月に、兼原信克元官房副長官補や山崎幸二元統合幕僚長、武居智久元海上幕僚長とともに同盟国である米国の核兵器を含む軍事力によって日本への攻撃を他国に思いとどまらせる「拡大抑止」の実効性向上に向けた提言を公表した。この中には非核三原則のうち、「持ち込ませず」を「撃ち込ませず」に変更、米の核持ち込みや日米の「核共有」を検討(産経新聞)との内容も含まれている。もともと、高市氏は尾上氏が「核共有」や「三原則変更」を主張する元自衛隊将官を分かっていて首相補佐官に起用したことになる。高市氏自身も編著書「国力研究」で三原則の「持ち込ませず」を「邪魔」と書いており、三原則についての国会答弁はあいまいにしている。この本にも尾上氏は著者として加わっている。尾上氏は高市氏にとって、仲間と言うよりは国防上の「同志」を補佐官にしたのではないかとさえ疑われる。
週刊文春が官邸報道室に事実関係や尾上氏が辞任の意向があるかなどを問い合わせた。その結果は「政府としては、非核三原則を政策上の方針として堅持しています」と回答した。これ以外に回答のしようがないのだろう。野党だけでなく、与党からも「更迭」を求める声が上がっている。中国だけでなく、米国からも「日本は核不拡散のリーダー」とクギを刺すコメントがでる始末である。「更迭」だけでなく、高市氏の「任命責任」も問われるべきであろう。
週刊新潮によると、尾上氏の発言が飛び出したのは12月18日午後2時からの官邸記者クラブとの「オフレコ懇談会」だった。十数名の記者のひとりから非核3原則の見直しに関して問われると、尾上氏は「個人的な見解」と断った上で「核兵器保有論」が飛び出した。ただ、尾上氏は「非核三原則の見直しはポリティカルキャピタル(政治的資本)が必要になる。コンビニで買ってくるみたいにすぐにできる話ではない」と留保も付けている。この懇談会は尾上氏が就任後初めてで、冒頭、官邸スタッフから「話はこの場限りでという趣旨の言葉があった。このため、社によってはオフレコ扱いにするか、いわゆる完オフにするかで見解が分かれた」という。この結果、朝日、毎日新聞、共同、時事通信が報道に踏み切り、日経新聞、産経新聞も続いて記事にした。読売だけが朝刊で書かず、翌日夕刊で書いたという。週刊文春は各社は内容を一切報じない「完オフ」ではなく、発言者をぼかして伝える「オフレコ」と認識したため、「安全保障担当の官邸幹部」という形で報じた、としている。
日本維新の会や国民民主などが「オフレコを破った方が悪い」と書いたメディアを批判したが、官邸の高官が「核保有」に言及するなど、国民がビックリするような公益性の高いテーマだっただけに、各社が報道したのは当然だった。これまでに同様なことがあったと思う。私は尾上氏のこの発言は、これまでの持論が出たもので、当然、実名で報道すべきだった。
また、書いた新聞のほとんどは、その扱いが決して大きいものではなく、私は各社の腰が引けた報道だったと考えている。これからでもいいのでメディア各社は実名で報道し直し、その詳しい経緯についても検証すべきだと思う。そもそも、オフレコは原則として、背景のブリーフィング以外はあってはならない。今回の場合、尾上氏の口が滑ったのか、意図的にアドバルーンとして話したのか分からないが、アドバルーンとして話したのだとすれば、匿名で書くことは問題の検証ができにくくするのではないか。このままだと、高市政権はとぼけ通すつもりだろう。それを打破するためにも、国民からの信頼を回復するためにも、大手メディアは実名にして報道をし直すべきだろう。(12月25日)
▼斎藤隆夫「反軍演説」削除部分復活で食い違い
一国の首相の性格にまで言及すると熱烈な信者から批判を受けるかもしれないが、このひとは本当に意地が悪いー。高市早苗首相のことである。
戦前の帝国議会で政府や軍部を糾弾した「反軍演説」で議会での「言論弾圧」としても有名な衆院議員の斎藤隆夫(1870ー1949年)の肝心な演説の議事録の3分の2が削除されたままになっている問題。戦後80年の節目に与野党で復活の機運が高まり、石破茂前首相も強いこだわりを示したが、高市政権に代わり、議事録復活は頓挫している。28日付の東京が1,2面で「『反軍演説』復活遠のく」の見出しで書いている。
東京によると、11月7日の衆院予算委で立憲民主党の長妻昭氏が高市氏に議事録全文復活への意欲をただしたが、高市氏は「立法府における議事録の扱いは、首相としてコメントすることは差し控える」とのつれない答弁。自民党総裁として党幹部に国会での議論を指示した石破氏とは異なる対応を見せた。
高市氏は石破氏が「戦後80年所感」を出すことに最後まで反対し、米不足対応でも、わざわざ「おこめ券」で石破内閣とは全く違う政策に切り替えて、消費者を混乱させたことでも、分かるように、石破氏のやったことは何でも反対というスタンスだ。
長妻氏は「思想信条よりも、石破政権の取り組みを引き継ぎたくないという思惑があるのではないか」という。ただ、「80年所感」に強く反対したことでも分かるように、高市氏は基本的に戦前の国家が正しかったという「復古主義的右翼」の考えの持ち主で、斎藤隆夫を評価していないのではないか。
斎藤は日中戦争が泥沼化していた1940年2月2日、「世界における戦争の歴史に徴し、東洋の平和より、ひいて、世界の平和が得られるべきものであるか」などと日中戦争処理の疑問と批判を中心とした質問演説を行った。これらの演説により、同年3月7日、衆院議員を除名された。軍部批判はもちろんのこと、ものを言えなくなったファシズム体制下でも、議会で堂々と政府や軍部を批判した議員がいたことは歴史的にもっと評価されるべきだ。
「台湾有事は存立的危機事態になり得る」と国会答弁して中国との関係を自ら悪化させ、高い支持率で軍事費増額に前のめりの何でもありに見える高市政権。議事録復活問題はそのひとつの象徴なのかもしれない。(12月28日)