「黒人暴行死で抗議デモ」暴力・略奪を煽る白人の左右過激派  黒人は平和デモ守ろうと懸命

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 米国では白人警察官が黒人男性の首を圧迫して殺害した事件が、新型コロナウイルス禍に生活を圧迫された憤まんと重なって、黒人を中心にした抗議デモが全土に広がり、警官隊との衝突や破壊・略奪行動が起こっている。トランプ大統領は軍隊を動員して鎮圧すると強硬姿勢に出ている。だが1日から2日にかけてワシントン・ポスト紙電子版は、極左と極右の白人過激派組織がデモに紛れ込んで暴力化を煽っており、デモ側は懸命に「平和デモ」を守ろうとしていると詳細に報じた。

「ダイイン」や「片膝つき」で衝突回避

 一連の報道によると、白人やヒスパニック(中南米系)も加わるデモは、ニューヨーク・タイムズスクエアなどで警官隊に向き合うと、両手を背中に回して地上に寝転ぶ「ダイイン」をしたり、片膝をついてしゃがむ姿勢を取ったりして、衝突回避に努めていた。首都ワシントンで、ホワイトハウスに近いトランプ社経営のトランプ・インターナショナル・ホテルにデモ隊が押し掛け、警官隊とにらみ合ったときのことだ。1人の黒人女性が片膝をついて、警官隊に同じ姿勢を取ってほしいと呼びかけると、黒人女性を含めた10人近くの警官がこれに応じた。これで衝突なしに平和にデモを終えた。

 この「片膝つき」はトランプ氏が大統領になってしばらくして、アメリカンフットボール試合の開会式で国歌演奏の時、あるスター選手が起立を拒みこの姿勢を取ったことにちなんだものだ。この片膝つきによって衝突が避けられたケースが各地で見られたという。

略奪に多数の白人、デモ参加者が守った店も

 トランプ氏は、極左の「アンティファ」と名乗る反ファッシスト集団が挑発行動に出ていると認めているが、一般的には「トランプ絶対支持」の極右組織も挑発に加わっているのではないかと疑われている。ピッツバーグ市では黒人を装った若者が警察車両のガラス窓を破壊したのをデモに見とがめられて、警察に逮捕された。若者は、動物の権利を守ろうという過激派のメンバーで、自宅から散布スプレーや銃器が見つかった。

 ピッツバーグ市長は、平和デモが彼らにハイジャックされるのをデモ参加者と協力して防ぐことができたと喜んだ。シアトル市長は、驚いたことに略奪や放火などを引き起こしたのは白人の若者で、彼らは騒ぎを起こしてデモに責任を押し付けようとしていると記者に語った。ノースダコタ州では、銃を持ってデモに加わろうとした4人が捕まった。セントポール市長も暴力行動や略奪で捕まったのは、ほとんどが他州からきていたと認めた。

 シカゴでは空が黒煙でおおわれるほどの大規模な騒乱になった。略奪を受けた商店主は3人組にやられた、彼らの行動は組織だった見事なもので、車のナンバープレートはこの州のものではなかったと語った。そのシカゴでは、デモ参加の黒人たちが守って、略奪を免れた店もあったという。

トランプ氏は知っているのか?

 トランプ氏は全土に広がったデモの実態について、どこまで報告を受けているのだろうか。トランプ氏は、毎朝の情報当局の世界情勢についての報告にはほとんど関心がなく、自分の眼鏡でしかものを見ないといわれている。このデモについても、報告が上がっていようがいまいが、考えることは同じかもしれない。

 トランプ氏が、コロナ感染が封じ込められないまま、性急に経済再開を推し進めたとき、民主党知事の州では「まだ早い」と都市封鎖を継続した。これらの州には経済再開を要求するデモが押し寄せた。このデモには地元民より他州から動員されたトランプ支持の保守派や極右の白人至上主義団体の姿が目立ち、銃を持つ戦闘服姿も加わっていた。彼らが黒人差別反対デモに介入していると疑ってもおかしくはない。(6月2日記)