「米大統領選」政党支持でも共和党が急落し保守派も減る 再びリベラル優位の時代へ

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 米大統領選挙まで100日を切る中、トランプ大統領の支持率は民主党のバイデン前副大統領に10ポイント前後の大差をつけられている。世論調査会社ギャラップの調査によると、政党支持でも民主党が与党・共和党を逆転し、さらに差を広げる勢いになっている。同調査は共和党支持者に多い保守派が減り、民主党支持に多いリベラルが増えていることも示している。トランプ氏はバイデン氏との1対1の対決で劣勢だけでなく、両候補をそれぞれ支える政党の競い合いでも同じような流れが起きているとなれば、共和党はホワイトハウスと同時に上院選も失う可能性も出てきた。

民主党支持が11ポイント差をつける

 ギャラップが2004年から継続してきた政党支持調査によると、20年1月に共和党47%対民主党45%と民主党を逆転 (トランプ政権発足以後、政党支持率では民主党が共和党を上回っていた)。2月も共和党が47%で民主党の46%をリードしていたが、3月に民主45%対共和43%と再逆転された。6月には共和党が急落して、民主党50%対共和党39%と11ポイントの大差がついた。ギャラップはこの差を劇的と評している。

 ギャラップは、1月から2月にかけて失業率が史上最低を記録するなど米経済が好調だったこと、下院で多数を占める民主党がトランプ氏の弾劾裁判に踏み切ったものの共和党多数の上院が否決、これで共和党が政党支持で民主党を逆転したと解説。  

 しかし、2月に入ると新型コロナの感染が米国でも広がり、トランプ大統領の対応が批判を浴びることになった。これで共和党支持が後退して民主党の挽回を許した。コロナ感染はその後も拡大の一途をたどるなかで、5月下旬には黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に乱暴に取り押さえられたまま死亡する事件が起きた。人種差別に抗議する「黒人の命も大事だ」運動が全米に広がったことに対して、トランプ大統領がデモを暴徒扱いして弾圧しようとしたと批判が高まった。

 これで共和支持が一気に落ち込み、民主支持と大差がつく結果となった。両党支持の差が10ポイントを超えるのは、ギャラップ調査では異例の事態という。

「保守の時代」終焉?

 さらに注目されるのは、政党支持の背後にある政治理念でも同じような変化が起きていることだ。同調査は自分の政治的立場を保守、穏健、リベラルの三つに分けて、何処に属すると思うかと聞いた。その結果は次のようになった。

共和党支持が民主党支持を逆転した1月は、保守40%、穏健34%、リベラル22%。

3~4月には保守37%(-3ポイント)、穏健36%(+2)、リベラル23%(+1)。

5~6月には保守36%(-1)、穏健34%(-2で元に戻る)、リベラル26%(+3)。

 ギャラップは、保守の減り方とリベラルの増え方は、共和、民主両党支持のアップ・ダウンの流れと重なっているとみている。

 民主党が11月の大統領・議会選挙で、ホワイトハウス、上院、下院を総取りするならば、2008年のオバマ氏当選のとき以来となる。オバマ民主党政権は10年の中間選挙で下院を奪われ、12年には再選を果たしたものの、14年の中間選挙で上院も失っている。共和党はオバマ政権8年をはさんで、ブッシュ政権(2001~09年)、トランプ政権(17年~21?年)と不人気政権が続いたことで大きなダメージを受ける。1980年の大統領選で(共和党候補)レーガン元大統領が圧勝し「保守の時代」に入ったといわれた米国の政治状況だが、再びリベラル優位の時代に振れる可能性が生れつつある。

(8月2日記)