大坂なおみ選手が黒人殺害に強い抗議表明 被害者7人の名前入り黒いマスク着用 テニスの全米オープンで

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 テニスの四大大会の全米オープン女子シングルスで人種差別撤廃を訴えながらコートに立った大坂なおみが2年ぶり2度目の優勝を果たした。1回戦から警官による黒人男性暴行死事件などの被害者名が入った計7枚のマスクを試合ごとに着用して勝ち取った勝利。米メディアからも称賛の声が相次ぎ、ニューヨーク・タイムズ紙は「コート内外で積極的な大坂、全米制す」と大きく報じた。

差別問題を「広く知ってもらう」

 大坂選手は、決勝後のインタビューで「7枚のマスクに込めたメッセージは?」と聞かれ「あなたはどんなメッセージを受け取りましたか? それがより大事な問題。みんなが議論を始めてくれたらいい」と問い返した。それは、日本も含めた社会への問いかけでもあった。
 
 ハイチ出身の父を持つ大坂選手は大会後に「祖先に感謝したい。私に流れる血を思い出すたびに負けられないと思うから」とツイッターに投稿した。 

 大坂選手は、全米オープン前哨戦テニスのウエスタン・アンド・サザン・オープン参加拒否を8月26日、表明した。その後、ツアー統括のWTAと全米テニス協会からの要請を受け、参加することに同意した。それについて「それにより、抗議運動への注目を一層集めることができる」と語った。

「アスリートである前に一人の黒人の女性」

 こころからの支持を込めて、大坂選手の参加拒否表明全文を転載させていただく。

 こんにちは。多くの皆さんもご存じのように、私は明日(27日)の準決勝に出場する予定でした。しかし、私はアスリートである前に、一人の黒人の女性です。黒人女性として、私のテニスを見てもらうよりも、今は注目しなければいけない大切な問題があると感じています。 私がプレーしないことで劇的に何かが起きるとは考えていませんが、白人が多い競技で議論を始めることができれば、正しい道へのステップになると思います。相次いで起きている警官による黒人の虐殺を見ていて、正直、腹の底から怒りが湧いています。数日おきに(被害を受けた人の名前の)新しいハッシュタグをつけ(SNSに投稿し)続ける状況に苦しみ、疲れています。 そして、同じ会話を何度も何度も繰り返すことにとても疲れてもいます。いったい、いつになったら終わるのでしょうか?

正当な選挙妨げるか予測できないトランプ氏

 もちろん私も大坂選手のフアンだ。彼女が楽しく、安心してプレーできる米国になるよう、11月3日の大統領選挙でトランプ政権を追放してもらいたい。最近の世論調査では、トランプ氏の支持率は、民主党大統領候補のバイデン前副大統領の支持率より10~7ポイント低いが、人種差別に抗議するデモの一部暴徒化を受け「法と秩序」を前面に掲げるトランプ氏がじわりと差を詰めているとの世論調査もあり、情勢は予断を許さない。トランプ氏がどんな手段で正当な選挙を妨げるか、予測しきれない不安もある。

 新型コロナウイルスの流行が拡大しつづけるなか、とりわけ、黒人やヒスパニックなどの非白人社会での流行拡大とそれに伴う生活の困窮が深まっている。そうした状況下で、黒人やヒスパニックなど非白人が要求を掲げたデモが全国的に拡大したが、トランプ氏は各州の警察力を信頼できず、州兵を派遣し鎮圧するケースが多くなっている。

「黒人いじめ」で保守的白人層の票固め図るトランプ氏

 5月にミネソタ州ミネアポリスで警官が、犯罪とは無関係の黒人市民を殺害した事件では、全国的に抗議行動が広がった。その中で、8月25日にはウィスコンシン州ケノーシャで、自分の車に乗ろうとした黒人市民を、警官が七発も発射して瀕死の重傷を負わせた。事件後に起こった市民らの抗議デモに警官隊が発砲、市民2人が死亡、1人が重傷を負った。市民らの抗議デモが続いたが、トランプ氏は「州兵と連邦の治安要員をウィスコンシン州ケノーシャに派遣し、法と秩序を回復させる」とツイートで宣言した。ホワイトハウスによると、トランプ氏はすでに1000人近い州兵と約200人の連邦治安要員を召集したという。ケノーシャを訪れたトランプ氏はデモで被害を受けた企業を視察した後、州兵部隊の司令部となったケノーシャの学校で、「警察も州兵も実に素晴らしい仕事をしている」 と述べた。

 トランプ氏は、大統領選挙で全人口の約13%を占める黒人の票を当てにせず、「黒人いじめ」で保守的な白人層の票を固めようとしている。しかし、全人口の約62%を占める白人の大部分は、民主的、人道的な米国を求めていると思う。