コラム「政治なで斬り」「Go To」の運用見なし迫られる菅首相  コロナ禍で多くが苦境に陥る 旅行業者は公助、それ以外は自助の矛盾する政治理念 

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 菅義偉首相は新型コロナウイルス対策の観光支援事業「Go To トラベル」の運用見直しを表明した。コロナ禍による感染が急拡大する中、経済再生を優先してきた首相は方針転換を迫られた格好だ、菅政治にはどこか人間的に大事なバランスが欠けているような感じがする。まだ問題は終わった訳ではないだろう。

菅首相に欠けるもの

 菅首相と同じ苦学力行型だった田中角栄元首相は、だれにでも会うと「おい、飯食ったか」といったそうだ。徒手空拳で雪国の新潟から上京した田中氏は、毎日がまずその日を食ていくことが大変だった。それが習いせいとなって、だれにでも挨拶代わりに出てくる口癖になった。「元気でやっているか」というような意味だと名物秘書の早坂茂三氏から聞いたことがある。

 菅政権は「自助 共助 公助」の新自由主義路線を掲げる。だがそれだけでは社会不安は防げない。裏返せば自助では解決困難な課題に挑戦して、多くの人が抱えている不安を解消できるのかという政治の根本に思い致してほしい。菅氏にはそれが欠けている。

コロナ不況下で増える女性の自殺者

 「Go To キャンペーン」政策は、「自助 共助 公助」でいうと公助に当たり、観光、交通、旅行業者を新型コロナウイルス禍から救助しようという判断から打ち出されたと思われる。自民党内では菅首相、二階自民党幹事長が関係する団体ではないかと陰口をたたかれているが、苦境を政治が救うのはいいとして、その税金は消費税を2回にわたってあげたものだ。

 コロナ不況では、ほかにもっと多くの人々が苦境にあえいでいる。NHKでも職場や仕事を失い 住む家もなく路上生活を余儀なくされ 自殺を覚悟するような若者や働き盛りの中年労働者を多数、取り上げて伝えている。警察庁によると今年10月の自殺者はは2153人で昨年同期より600人以上も増え、特に女性の増加が著しく、コロナ禍の不況が原因としか考えられない。

田中角栄氏との人間の出来栄えの違いにじみ出る

 離職 失職を余儀なくされた人達が次の職を探すのが簡単ではないこともテレビが紹介している。大学生の就職内定も60%台だ。観光、交通、旅行業者には税金で公助しながら、そうでない人には自助を強要するのは政治の理念に大いに矛盾しているし、政治の根本精神から言ってもまったくおかしい。首相周辺はなぜこんなことに気が付かないのか、忖度主義になっているのだろうか。周辺がすぐに注意しないといけない局面にある。菅氏と田中角栄氏。同じ苦学力行型、雪国出身でも、人間の出来栄えの違いがにじみ出ている感じがする。