イスラエルとアラブの中小産油国アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンが、国交樹立の合意文書に署名した。署名式は、米ホワイトハウスでトランプ米大統領の仲介で、イスラエルのネタニヤフ首相と、UAE、バーレーンのそれぞれの外相が共に合意文書に署名した。パレスチナ問題で対立してきたイスラエルと国交を結ぶアラブ諸国は計4カ国となった。仲介したトランプ大統領は「新たな中東の夜明け」と礼賛し、「他のアラブ諸国も追随するだろう」と強調した。
これまでイスラエルと国交があるのは、アラブ連盟加盟22カ国中2カ国だけ。4回にわたるアラブ・イスラエル戦争の直接交戦国エジプトとヨルダンの2国で、シリアは国交がない。
大統領選近づく中、国交樹立に注力のトランプ氏
就任後、外交では失敗ばかりで、目立った成果が何もないトランプ政権。歴代米政権が、4回の中東戦争の和平調停に大きな役割を果たしてきたこととは異なり、就任直後にサウジアラビアに訪問して大量の武器売り込みに成功した。大統領選挙が近づく中で、サウジに隣接するアラブ国家のUAEとバーレーンに、イスラエルとの国交を樹立させようと努力を注いできた。
どちらも、アラビア半島の東端、ペルシャ湾に面した中小国で、UAEは人口963万人、バーレーンは人口150万人。接する巨大産油国、サウジアラビアは人口3370万人、対岸のイランは8280万人の大国だ。
国の大小だけのことだけではない。UAEもバーレーンも、イスラエルとアラブ諸国の紛争、パレスチナ問題にかかわったことは全く、あるいはほとんどない。UAEは最近豊富な石油収入を投入して、人工衛星の打ち上げ計画まで持つようになっていて、両国ともトランプ政権が、いわば”抱き込み“にかかっていた。
「アラブの盟主」の立場崩さないサウジ
トランプ大統領は政権発足後、世界2位の産油国でアラブ諸国に大きな影響力を持つアラブの大国であるサウジの取り込みに全力を挙げ、武器の売り込みの増強とパレスチナ問題を中心とするアラブ・イスラエル紛争でのイスラエル支援に力を注いできた。サウジは巨額の兵器購入には応じたが、アラブ・イスラエル紛争に関しては、”アラブの盟主“と自認する立場を崩さなかった。サウジ当局者は「適切な時期に加わるだろう」と外交辞令発言の一方、「パレスチナ問題の包括的な解決が必要」と強調した。
こうして結局、イスラエルの支援となるアラブ諸国との国交樹立は、ペルシャ湾岸の2国だけが、トランプ政権の強い要請に応じることになった。これが、UAEやバーレーン以外のアラブ諸国に広がることはないだろう。
「トランプ大統領の成功」「歴史的和平」と報道
イスラエルとUAE、バーレーンとの国交樹立をなぜNHKや朝日新聞が、大騒ぎしたのだろうか。トランプ政権の外交が失敗ばかりなので、成功もあると宣伝に手を貸したいとでもいうのか。
NHK ニュースはひどかった。まるで、「トランプ大統領の成功」、「中東情勢に大きな影響を与える可能性があります」などと3日続けて朝のトップ・ニュースなどで報じていた。朝日新聞にもあきれた。「これが朝日かよ!」と繰り返し思った。