菅義偉首相の故郷、秋田県湯沢市を11月末に訪れた。人口減少に悩む豪雪地帯で、枯葉が散り、すでに寒波が襲来し、雪が降り始めた。湯沢市の街道筋にある自民党支持者宅前には、菅首相のポスターが人通りもない歩道脇に、ひっそりと立てられていた。ポスターには「国民のために働く。」と書かれていた。
JR湯沢駅前の商店街はシャッター通りと化していた。「祝 内閣総理大臣 菅義偉先生」ののぼりだけが目立っていた。秋田県では人口減少が止まらない。総務省が今年1月発表した秋田の人口は98万人となり、記録が残る1968年以降で初めて100万人を割った。総人口に占める15歳未満の割合は秋田が9・81%で、全国で唯一10%以下となった。秋田同県によると、新型コロナウイルスの新規感染者は12月16日はゼロで、累計では94人となっている。
湯沢郊外の秘湯の旅館などに菅氏の首相就任を祝う土産が売られていた。菅氏の似顔絵が描かれ、「スガノミックス」と書かれたレトルトご飯の土産も。この土産は、地元の湯沢産のあきたこまち一等米を使用した玄米と白米のブレンド米という。「『自助・公助・共助』のようにバランスの良い配合で食べやすくしている」と説明しているが、売れ行きは芳しくなく、店員の表情もどこか暗かった。
湯沢市役所近くに白い洋館が建つ。雄勝(おがち)郡会議事堂記念館だ。雄勝郡政の舞台となり、郡制廃止後は市庁舎などとして使われた。完成したのは1891(明治24)年。秋田県内に残る代表的な明治時代の洋風官衙建築物という。当時、十数キロ離れた院内銀山で活動していたドイツ人鉱山技師が設計。湯沢が栄えたのもこの銀山があったからだ。
鳥海山から吹き降ろす風で湯沢では枯葉が散り、寒波が襲来、雪が降り始めた。農作物を保護する畑の雪除けや霜対策、道路の除雪、屋根の雪下ろしなどは、高齢化した住民には大きな負担だ。
連日のように飲食を伴う夜会食に出席している菅首相だが、14日の「Go To トラベル」の全国一時停止表明直後に8人で「ステーキ会食」したことに批判が集中した。高級ステーキを食べるだけでは、「国民のために働く」ことにならない。16日で就任3カ月を迎えた菅首相だが、今後は厳しい試練を迎えることになりそうだ。
東京都では17日、感染者数が過去最多の822人に急増した。国内の感染者も3200人超で過去最多を更新し、各地で病床逼迫への懸念が強まっている。