タリバン支配崩壊後、目立つ女性の社会進出 20年間の内戦の死者は24万人に 英BBCのアフガン戦争データから

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 米軍と同盟国軍は2001年9月から戦争を開始したアフガニスタンから、大使館警備など部隊など少数を残し8月末までに全面撤退する。20年にわたるイスラム武装勢力タリバンとの戦争は終わった。この戦争は、アフガニスタンの国民にどのような惨害を与え、なお、残しているのか。少し時間がたったが、アフガン報道で最も信頼できる英BBCが、項目ごとに最も信頼しているデータを集め、アフガニスタンの現在と今後を“In numbers: Life in Afghanistan after America leaves”(数字が示す、米国撤退後のアフガニスタンでの生活)のタイトルでまとめた、7月13日の電子版の報道から、その要点を紹介しよう。(注:2020年現在のアフガニスタン総人口は3,892万8千人。国土面積は65万2、864平方キロ。日本の総人口は1億2、580万人、国土面積は37万7、976平方キロ)

支配地域を復活し出したタリバン

政府軍、米軍とその同盟国軍の攻勢で、政権が崩壊し、主力がパキスタンに逃れたタリバンは、やがて反撃を開始、全土にわたり、支配地域を復活しつつある。

アフガニスタンの戦争はどう変化したのか、これからどうなるのか。

タリバンは復活したのか?

現在、最後の米軍がほとんど撤退し、タリバンは多くの地域を取り戻しつつある。

アフガニスタンの支配の現状

BBCの専門チームが作成した、全国34州ごとに、青(政府側)。赤(タリバン側)、黄(競合地)に色分けした地図によると、首都カブールはじめ主要都市は政府支配下にあるが、政府側がほぼ完全に支配している州がほぼ3割程度、タリバンが支配している州がほぼ3割程度、のこりの4割程度が競合地区である。BBCはタリバンが最近、支配地域拡大をしていることは確かだと判断しているようだ。この地図の報道から3週間あまりの間、タリバンの支配地域が6割になったなど、よりタリバン優勢の情報が多い。

2001年以来、この戦争によってアフガニスタンと隣接パキスタンで死亡した人数

一般市民          78,314人(うちアフガニスタン人51,613人)

政府軍・警察        75,971人(同60,000人)

タリバンとその他反政府勢力 84,194人(同51、191人)

米軍・同盟国軍人       3,586人

(米ブラウン大学ワトソン研究所による)

国連によると。アフガニスタンでの一般市民の死者は2021年最初の3か月は例年に比べ特別に多かった。新型爆発装置(IEDS)使用と多数市民目標が増えたためだ。

2020年の一般市民死傷者の43%が女性と子供だった。

戦闘を逃れ、難民化した一般住民は数百万人

戦闘を逃れ、難民化した一般住民は数百万人で、多数が飢えに苦しんだ。一部はパキスタンなど国外に逃れた。昨年だけで、は40万人以上が難民となった。国連によると、現状は、アフガニスタンは世界第3位の難民数。1位はシリアで670万人、2位はベネズエラで400万人、3位はアフガニスタンで260万人。また、国民の30%以上が、危機的な食料水準にある。

少女たちはいま、学校に行ける

タリバン支配の崩壊後、女性の権利は著しく改善された。

タリバン支配下の1999年には、中学校に入っている女性は一人もおらず、小学校にも9,000人程度に過ぎなかった。タリバン支配崩壊後の2003年には、学校に行っている少女は240万人になり、現状は350万人になっている。公立、私立の大学の学生の約3分の1は女性だ。

中学校の男女比率は、2003年には女性6%だったが、2017年には女性39%になった。

しかしユニセフ(国連児童基金)によると、現在、なお370万人の子供が学校に行けず、その60%が女性。武力紛争が続いていることと、適切な施設と女性教師が少ないからだ。

タリバンは、今では女性の教育に反対しない、といっている。

社会進出を始めた女性たち 下院議員の27%が女性

女性たちの社会進出が広がっている。政治的な事務所を設け維持する女性やビジネス機会を求める女性たちが増えている。2019年までに千人以上のアフガニスタン女性が、タリバン支配下では許されなかったビジネスを始めている。

現行憲法では、国会下院の27%以上を女性が占めると定められており、現在、249議席のうち69議席は女性議員だ。

★国連、世界銀行、アムネスティの資料による、屋外で行動する女性たちの活躍の比率

カレッジか大学        5%
有給の仕事         22%
公務員           20%

自立したビジネスをしている女性は2019年には1千人以上だった。

女性たちのオンライン

 インターネットへの接続        22%
 携帯電話を保持            69%
 ソーシアル・メディアの利用      440万人

銀行口座所持率

女性の85%が持っていない。7%が持っている。残りは不明
(男性も23%が持っているだけ)
近隣国の女性口座所持率はインド80%、パキスタン21%

(了)