「アフガン内戦」タリバン解き明かした著者のラシッドからメール 解決への思いこめ1年ぶりに

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 アフガニスタンの内戦、反政府勢力タリバンを解き明かした名著「タリバン」(アハメド・ラシッド著、坂井・伊藤訳、2000年講談社刊)の著者、アハメド・ラシッドから1年ぶりのメールが届いた。アフガン内戦での論評で最も信頼されるジャーナリストとして、米ニューヨーク・タイムズ、英サンデー・タイムズ、BBC電子版などで活躍してきた。冬は生まれ育ったパキスタンのラホール、夏は奥さんの故郷スペインに住んで、米、英、パキスタンなどの新聞、放送に寄稿し続けてきた。

途絶えた連絡

 一昨年夏、マドリードで親しく会った時には、元気で、アフガニスタンはじめ、パキスタン、米国などの情報収集に忙しそうだったのに、ラホールに帰っているはずの一昨年12月以来、ぷっつり連絡が途絶えてしまった。メールには返事がこない。ラホールの自宅は厳重に警備員に守られていたが、パキスタンの情報機関からもタリバンからも、憎まれていたため、いつ、何が起こっても不思議はない。それでも毎年、半分近くはラホールに帰っていた。しかし、2ページも3ページも紹介されているウイキペディアの記述には、死亡はおろか、けがや病気の記述はなんにもない状態が1年間続いた。

毎日が危機

 ところが先月、改めて、「どうしている?トランプは何が何でもアフガンを放り出そうとしているが?」とメールを打ってみた。返事が来た。昨年ラホールの病院で大きな手術を受けたのだ。手術の内容には彼は全く触れなかった。

 しかし、彼がアフガン情勢から目を離すはずはない。タリバンと米国が断続的に続けた和平交渉が妥結したことも、しっかりウオッチしていた。ラシッドの結論は、アフガニスタンの最も重要な協議機関であるロヤジルガにガニ大統領とタリバン代表が出席し、停戦と和解、国家再建に合意することだ。

 ラシッドのメールの主要部分を紹介しようー。

 アフガンでは毎日が危機だ。しかし、私は妥協できるはずだと考えている。それは、米国が約束したこととも、我々が望んでいることとも違うかもしれないが、彼らは解決策を見いだすだろう。政府側も、タリバン側も、このプロセスが失敗することを望んでいない。なぜなら、どちらも、これ以上の戦争が国家を崩壊させてしまうことをよく知っているからだ。

 私は、彼らが最近の大統領選挙とその結果をスクラップにすべきだ、と考えている。そして、タリバンの代表も含むロヤジルガ(坂井注=アフガニスタンの最高決定機関)を開催し、新政府を選出すべきだ、と考えている。もちろんガニ(坂井注=大統領)は決して同意しないだろうが、米国はこの大統領選挙の結果をスクラップする力を持っていた。だが彼らはそれを行使しなかった。