ドキュメント「石破首相苦闘の軌跡」 首相退陣までの孤独な50日間

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 参院選で「与党過半数割れ」となった石破茂首相は直ちに退陣かと思われたが、50日間粘りに粘ったものの最後は力尽きた。9月7日の退陣記者会見で「私は党内で大きな勢力を持っていない。融和に誠心誠意努めてきた。それが結果として〝石破らしさ〟を失った。『どうしたら良かったのかな』という思いはある」と正直に心境を吐露した。孤独な闘争の軌跡をたどってみた。

意外だった続投表明

・7月20日:参院選で与党過半数割れ、自民党大敗。/テレビ各社に出演し、石破首相が「国家に対する責任、比較第一党としての責任はきちんと果たしていく」と述べ、続投を表明。
・7月21日:石破首相が記者会見し、「政治を停滞させないよう比較第一党としての責任、国家に対する責任を果たしていく」と、続投を正式に表明。
 <衆院選、都議選、参院選と3つの選挙で大敗したにもかかわらず、直ちに続投を表明したのはちょっと意外。キーワードは「比較第一党」だった>

自民党内で退陣論拡大

・7月22日:両院議員総会の開催を求める動きが活発化。/笹川博義農水副大臣が「責任を取ることがリーダーとしての当然の帰結」と発言。
・7月23日:日米関税交渉が合意。/石破首相が首相経験者の麻生太郎、菅義偉、岸田文雄氏と会談。石破首相の進退問題について「一切話は出ていない」(石破首相)というが、続投容認論も出なかった。/共同通信世論調査(21~22日)。石破首相は「辞任すべきだ」51.6%。内閣支持率9.6ポイント急落し、発足以来最低の22.9%。/読売新聞世論調査(21~22日)。石破首相は辞任するべきだと「思う」54%。内閣支持率10ポイント急落し、発足以来最低の22%。
<当初は世論調査でも逆風。自民党内の退陣論が拡大>

ちぐはぐな動き

・7月25日:自民党青年局(中曽根康隆局長)が反旗。参院選総括後に首相を含む党執行部に「自ら責任を取る」よう党執行部に申し入れ。
・7月28日:両院議員懇談会を開催。約4時間半。首相の退陣や責任追及など厳しい意見相次ぐ。正式の「両院議員総会」開催の要求も出た。/朝日新聞世論調査(26~27日)。石破首相は「辞めるべきだ」41%、「辞める必要ない」47%。
・7月29日:自民党役員会。両院議員総会の開催を決定。/自公幹事長が「2万円給付」めぐり協議を開始。
・7月31日:自民党が参院選大敗の要因を検証する総括委員会の初会合。
・8月 1日:ガソリン税の暫定税率廃止問題で与野党協議開始。
・8月 4日:衆院予算委員会。立憲民主党の野田佳彦代表が消費税減税や2万円給付問題、企業献金での自民・立憲民主間の協議を提案したのに対し、石破首相は前向きに応じる答弁。
 <自民党内で参院選の敗戦責任が厳しさを増すなか、与野党との政策協議を始めるなどちぐはぐな動きをみせる。党内からは石破首相の独断と反発も>

総裁選開催めぐる綱引き

・8月 8日:両院議員総会開催。総裁選の前倒しを求める意見が相次ぎ、前倒しの是非を問う意思確認方法について党総裁選挙管理委員会(逢沢一郎委員長)に一任。森山幹事長は、参院選総括を月内に行う方針を表明し、総括報告書をまとめた段階での辞任を示唆。
<次は、臨時総裁選開催をめぐる綱引きが始まった>

衆院解散論が取りざた

・8月18日:朝日新聞世論調査(16~17日)。石破首相は「辞める必要ない」54%。内閣支持率7ポイント急上昇し36%。
・8月24日:石破首相が小泉純一郎、山崎拓氏と会食。
<小泉氏が「郵政解散」について話したことから、首相周辺でも衆院解散論が取りざたされる>

世論の「辞任不要論」

・8月25日:共同通信世論調査(23~24日)。石破首相は「辞任は必要ない」57.5%。内閣支持率12.5ポイント急上昇し35.4%。/読売世論調査(22~24日)。辞任すべきだと「思わない」50%。内閣支持率17ポイント急上昇し39%に。
 <世論の「辞任不要論」は石破サイドの強気の源泉の一つ>

衆院解散の〝脅し〟

・8月25日:石破支持の鈴木宗男氏がブログで「総裁選をやれというなら解散・総選挙で国民の信を問うのが民主的だ」と発言。
 <石破サイドによる衆院解散の〝脅し〟は退陣論の火消しにならず、かえって火に油を注ぐ結果に>

退陣容認論出始める

・8月28日:神田潤一法務政務官がX(旧ツイッター)で「総裁選挙の前倒しを求める考え方に大きく傾いている」と投稿。
・8月29日:小林史明環境副大臣がXで「総裁選を早期に実施すべきだ」との考えを示す。要すれば副大臣辞職すると表明。
 <内閣の構成員からまで総裁選の前倒しすなわち退陣容認論が出始める>

辞意なだれ

・9月 2日:党参院選総括委員会が参院選総括報告書をまとめる。「解党的出直し」をうたう。/両院議員総会開催。森山幹事長が辞意表明し、「進退伺」を石破総裁に提出。他の党4役も辞意表明。
<森山幹事長の辞意表明は読み込み済みだったが、他の党4役への辞意なだれまでは読めなかったか>

内堀も埋まる

・9月 3日:麻生太郎党最高顧問が麻生派研修会で、臨時総裁選の是非を問う文書に「署名し、提出する」と表明。
・9月 4日:先の総裁選で石破氏を支援した遠藤利明元総務会長が、石破総裁に自発的辞任を促す発言。自発的に辞任しない場合は総裁選の前倒しに賛成する考えを表明。
<石破支持だったベテランの辞任要求は痛かった。内堀も埋まる>

退陣へ最後の地ならし

・9月 5日:麻生派所属の鈴木馨祐法相が総裁選前倒しを要求。
・9月 6日:菅義偉副総裁と小泉進次郎農相が石破首相と長時間話し合う。退陣への最後の地慣らし。
・9月 7日:石破首相が退陣を表明。
                               (了)