コラム「番犬録」第6回 世の中がだんだんおかしくなってきていないかー何か嫌な予感がする 「戦後80年見解」大丈夫か 進むトランプ政権のマスメディア支配の野望 「まるでマッカーシー時代の『赤狩り』」 「言論の自由の国」はどこへ行く 米国も後押しするイスラエル軍の〃皆殺し作戦〃 石破政権は「パレスチナ国家」承認見送り 「排外主義」の源は〃体感治安〃というくせものにあり

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 一時は野党支持者までが「辞めるなデモ」に参加した「石破支持現象」とは何だったのかー。国会答弁の丁寧さや誠実に見える人柄で世論調査での人気が増していた石破茂政権。辞任表明後もイスラエルへの圧力を目的とした「パレスチナ国家承認」を「承認すれば、イスラエルが態度を硬化させ、パレスチナ・ガザの情勢が一層悪化する」とのいかにもとってつけた理由で承認を見送った。とても納得できない。

 一時は「日米地位協定改定」に触れたこともある石破氏だが、これでは、国連加盟193カ国中、147カ国が承認し、英、仏、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどが承認へ前向きなのに比べて、〃米国のポチぶり〃を国民に見せつけてしまった。正直なところ、全くがっかりである。買いかぶりすぎたと少し反省している。

 9月16日から始まってしまったイスラエル軍によるガザの地上侵攻。米国はこの作戦を事前に承認しており、「短期間に」との条件を付けたというが、ガザのリゾート化まで考えているというトランプ政権がイスラエルの住民虐殺の〃共犯者〃であることは間違いない。では、パレスチナ住民の虐殺をどうしたら止めることができるのか。日本は何ができるのか。国連は十分にその力を発揮できていないようにみえる。日本が「パレスチナ国家承認」を実行すれば、けっこう米国へのインパクトはあったと考えている。その証拠に米国は事前に、日本に「承認するな」と圧力をかけてきた。外務省の分析や見立てはどうなっているのか。また、このような状態なので「戦後80年見解」はどうなるのかも心配である。石破氏は出す方向のようだが、首相として最後なのだから思い切って踏み込んだ内容を見せてほしい。今回はこのほかに①進むトランプ政権のマスメディア支配の野望②排外主義の源は「体感治安」というくせものにあるーなどさまざまなテーマが並んでいる。

▼嫌な予感がする

 石破茂氏退陣表明で世の中がだんだんおかしくなってきた。しっかりしないと日本も大変な時代になる嫌な予感がする。(9月11日)

▼在任中に「戦後80年見解」発表の予定 

 每日新聞が9月11日、石破茂首相が、戦後80年の節目に検討している「首相見解」について、自身の在任中に発表する調整に入ったと報じた。8月15日の「終戦の日」は見送ったが、石破氏は先の大戦の検証を含めた戦後80年の発信に強いこだわりを持っているという。ヤフーコメントでは、「辞める首相が述べるべきではない」と指摘する識者もおり、〃安倍信者〃による反対で炎上気味であることも確かだ。70年安倍談話の上書きを恐れてのことだろう。

 これまで、なかなか、自分の本当の思いを伝えることが出来なかった理由がよく分かる。反対に、閣議決定のない「見解」でもいいから出してほしい、との声も私を含めて国民の中に強くあるのも事実である。

 保守政治家として、あの大戦の反省と教訓、そして戦争の記憶を風化させないという若者たちへの「未来志向のメッセージ」を含めたご自分の心の思いのたけを発信してほしい。

 まだ自民党の復古主義派につぶされる恐れはあるものの、今度こそは石破さんが、それらの妨害を乗り越えてくれると強く期待している。 (9月11日)

▼石破茂政権はトランプ氏の圧力に負けずにパレスチナ国家の承認を

 9月12日の共同通信の記事で、日本政府が米国側からパレスチナ国家の承認を見送るよう要請があったことが明らかになった。22日に国連本部で開かれる「パレスチナに関する首脳会合」に向けて、石破政権は承認の是非をめぐる詰めの協議に入っている。

 フランスや英国、カナダは7月から相次いで、ガザで深刻化する人道危機を踏まえ、「ハマス排除」の条件付きではあるが、パレスチナ国家承認の意向を示している。EUでは、5月にスペイン、アイルランド、ノルウェーが承認し、国連加盟国の4分の3を超える147か国が国家承認している。

 いつまで日本はトランプ氏に追従するつもりなのか。ネタニヤフ政権のガザでやっていることは、市民の大量虐殺であり、身勝手な浄化作戦である。絶対に許してはならない。

 共同通信の記事によると、「日本が国家承認すれば、日米関係に重要な影響がある」と米国側は脅してきたという。米国は8月末には、パレスチナのアッバス議長のビザ発給拒否という暴挙としか言いようがない対応をしている。トランプ氏のいつもの手口に屈してはならない。

 日本国内では、11日に超党派の「人道外交議員連盟」がパレスチナの国家承認を求める要望書と国会議員206人の署名を岩屋毅外相に提出した。岩屋氏は「ガザの現状は看過できない」というスタンスだ。この国連総会には、石破首相も出席予定だ。10月4日には、自民党の新総裁が決まる。石破氏は、ふつうは退陣が決まり「レームダック(死に体)」といわれる立場かもしれないが、戦後80年に合わせた先の大戦を巡る「戦後80年見解」と合わせ、最後の踏ん張りをみせてほしい。(9月13日)

▼相次ぐ誤情報による「排外主義」 統計に基づかない〃体感治安〃こそ問題だ

 このところ、東京都が8月、エジプト・日本経済委員会と雇用分野に関する合意書を締結したり、国際協力機構(JICA)が山形、千葉、新潟、愛媛各県の4市を「ホームタウン」認定したことでSNS上で誤った情報が拡散された。朝日新聞によると、JICAを巡っては、8月末に100人近い人が「JICA解体」を叫ぶデモが起きた。

 都の問題では、SNSで「移民受け入れに合意した」などの誤情報が拡散され、9月に入ってから、ビジネスなどで滞在する住宅整備での国家戦略特区制度活用について「税金で移民を高級マンションに住まわせている」などの投稿が相次いだ。JICAの問題でも、「移民が増える」との抗議が自治体に殺到、外務省が対応の遅れを陳謝した(東京新聞)という。

 日本への〃移民〃はG7でも最低の3%以下で他の国では、ドイツは17%。それにもかかわらず、日本でも、脅威を設定し、攻撃することで安心感を得ようとする「排外主義」や「税金は自国民のみに使われるべきだ」との「福祉排外主義」の動きが広がってきた。

 その背景には、政府や行政の対応に加えて、マスメディアの中でもテレビの情報番組が「ルールを守らない外国人」とゴミ捨てなど身近な問題を特集して「外国人嫌悪」を煽っている面もあるのではないか。私が見ていて特にひどいのがテレビ朝日。

 ことし5月、法務省は「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている社会情勢」を表題とした「不法滞在者ゼロプラン」を発表。7月の参院選では、事前の世論調査などで支持率が予想外にグングン伸びる「日本人ファースト」を主張する参政党の影響もあって争点がいつの間にか減税などの「経済問題」から「外国人問題」にすりかわり、与野党がこの問題を競う形になった。

 また、これに迎合する形で、参院選での敗北を受けて鈴木法相は一定の受け入れ制限も含む外国人の受け入れ政策の抜本的見直しを検討する報告書を公表した。この見直しには、財政、社会保障、教育などのほか「治安」の項目もある。

 「抜本的見直し」はこれまで無策に近い状況で少子化による人手不足解消のために、いつの間にか400万人近い外国人の受け入れを漫然と進めてきた自公政権に責任があり、その点でこの報告書の公表は当然だ。

 ただ、法務省の「不法滞在者ゼロプラン」や報告書の「治安」の項目に示されているようにこれら政策はすべて「治安」が中心になっていて生身の外国人に対する人権配慮の問題がすっぽりと抜け落ちている。名古屋出入国在留管理局施設で収容中に死亡したスリランカ人、ウィシュマ・サンダマリさんの問題などで〃人権無視〃との批判を浴びた入管の元締めの法務省らしいやり方である。法律家や人権団体からその必要性が指摘されている「差別禁止法制」や政府から独立した人権機関設立はどうなるのか。

 「ルールを守らない外国人により安全・安心が脅かされている」という法務省の認識自体も、いわゆる統計に基づかない感覚的、主観的な「体感治安」に根ざしているのが見て取れる。

 この「体感治安」という言葉はくせものである。川口市や蕨市でトルコ国籍の在日クルド人をめぐる共生問題が指摘されている埼玉県の大野元裕知事は8月、外務省にトルコとのビザ免除協定の一時停止を求めた。大野知事は記者会見で「体感治安」という言葉を使ってその理由を説明した。

 ウイキペディアなどによると、「体感治安」は元々「警察用語」だそうだ。最近では露木康浩警察庁長官が全国警察本部長会合でこの言葉を使っている。犯罪学者からは「統計学根拠に乏しく信仰ににすぎない」との指摘もある。また「移民が増加すると治安が悪化する」というのも統計的なものではなく、デマに近い。

 山尾しおり弁護士は「これまで政府には外国人政策に対する戦略的検討も統一的方針もなかった。(報告書はこのことを)正面から認めている。重要な第一歩だ」と評価しつつも「体感治安という言葉に逃げないでほしい」とSNSで主張。そして「そもそも『体感治安』という言葉は、データに基づく立法事実がないのに、政治的に厳罰化したいときの方便に使われがち。体感治安を根拠に厳罰化することにはデメリットしかない」と厳しく指摘している。全く同感である。(9月16日)

▼〃皆殺し作戦〃にも見えるイスラエル軍の暴挙を許してはならない

 パレスチナ自治区ガザの保健当局の直近の発表によると、23年の戦闘開始後からのガザ側死者は約6万5千人、飢餓や栄養失調による死者が428人となった(共同通信)。

 そんな中でイスラエル軍は9月16日、北部ガザ市で地上侵攻を開始した。朝日新聞や共同通信によると、これは、イスラエル側が2,3千人と見ているハマスの〃残党狩り〃のようだが、どうして2個師団数万人もの大兵力を投入する必要があるのか。アリバイ的にイスラエル軍は100万人の住民に避難を呼びかけた。まだ、その6割もの人々が残っているという。「もう逃げる場所もない」との生きるか死ぬかの極限状況に追い詰められている現地住民の声をテレビが伝えていたが、これは真実の声である。

 〃残党狩り〃に入ったイスラエル軍はハマスと住民をどう見分けるのか。国連関係者や報道関係者、病院、救急車、そして子どもまで無差別に殺してきたネタニヤフ首相が主導するイスラエル軍はジェノサイドの最後の〃仕上げ〃に入ったのではないか。虐殺から逃げ惑うパレスチナのひとびとのことを世界の市民が心配している。

 ガザ地区を中東のリゾート地にする、とのとんでもない言葉を口にしたことのあるトランプ氏。今回も事前に米国は「できるだけ早急に完了する」と見方によっては「何をしてもよいから手早く」とも読める条件を付けて地上侵攻の「お墨付き」をイスラエルに与えた。さらに、侵攻直後にトランプ氏は「ハマスは人間の盾作戦を計画している。ハマスには厳しく対抗する」と述べたことが報道されている。これも「場合によっては、住民被害が出てもかまわない」との宣言に聞こえる。

 トランプ氏は時には、調停者を装っているが、軍事援助もするイスラエルの〃共犯者〃である。 パレスチナ人の〃皆殺し作戦〃にも見える今回の暴挙を国際世論は絶対に許してはならない。(9月17日)

▼トランプ氏によるマスメディアへの威圧が続く

 憲法修正第1条に定められた「言論・報道の自由」を大切にする国だったはずの米国で、トランプ氏による自分の気に入らないマスメディアに対する嫌がらせや威圧が続いている。一方で,自分の都合のいいメディアは優遇する。トランプ氏のやっていることは何をやるにしても「今だけ、カネだけ、自分だけ」と言われるが、大きな権限を持つ大統領による「マスメディア支配への野望」は「自分だけ」の〃独裁政権〃の始まりのように見える。このことを、新しい出来事から確認していきたい。

 まず、9月15日、トランプ氏は米国を代表するニューヨーク・タイムズ紙の記事で、名誉を毀損されたなどとして、少なくとも150億ドル(約2兆2千億)の損害賠償を求める訴訟を南部フロリダ州の連邦地裁に起こした。同紙のほか記者4人とトランプ氏に関する書籍を出した米出版社を訴えた。記事や書籍が昨年の大統領選中に発表されたとし、自身に「最大限の損害を与えるよう意図していた」ことが訴えの理由(共同通信)。米国在住のコラムニスト、町山智浩氏のフェイスブック投稿によると、対象となったのは①トランプ氏が父の財産を浪費したという記事②トランプ氏が戦死者を「負け犬」と呼んだという記事③同紙が選挙で民主党のハリス候補を推薦したーことの3件だそうである。

 こういうのを、普通は名誉毀損などを理由に法外な高額の賠償を請求し、相手を金銭的、精神的に萎縮させ、疲弊させることを目的に起こす「スラップ訴訟」といわれる。ただ、トランプ氏は連邦最高裁や、高裁人事にまで手を付けているので、勝訴の見込みが低いかどうかはいまのところ不明だ。連邦最高裁の保守派判事は6人、リベラル派は3人、このうちトランプ氏が選んだのは3人といわれる。

 大統領選直前の昨年11月に番組が偏向しているとして起こした大手放送局のCBSを提訴、ことし7月に親会社が1600万㌦(2350億円)を支払うことで和解。他の3大放送局NBC、ABCに対しても、トランプ氏はこの8月に「放送免許の剥奪」をSNS投稿でちらつかせている。

 また、少女らに対する性的目的での人身取引などの罪に問われた富豪、エプスタイン氏(有罪判決後矯正施設で死亡)とトランプ氏との関係をめぐる報道で大手紙ウオールストリートジャーナルとその親会社に100億㌦(1兆4600万円)の訴訟も起こしている(産経新聞)。CBSのケースを見ても分かるようにトランプ氏のこれら一連の賠償訴訟はメディアにかなりの〃威圧効果〃を与えていることも事実で、メディアがトランプ氏に批判的な報道をさせないように自主規制する〃萎縮効果〃もありそうだ。

 ニューヨーク在住の共同通信出身のジャーナリスト、津山恵子氏は公益財団法人新聞通信調査会が出す雑誌「メディア展望」の7月号の記事「海外情報・米国」で、トランプ氏が大統領就任初日に、メキシコ湾の名称を「アメリカ湾」に変更する大統領令に署名。米国を代表するAP通信社は「世界中にニュースを発信する国際通信社としてメキシコ湾の名称を使い続ける」として、これに従わなかった。これに対して、トランプ氏は大統領イベントの取材から「出入り禁止」を通告。取材制限はいまでも続いているという。ことし2月、APは取材制限解除の仮処分申立を連邦地裁に行い、地裁はいったんはAPの申立を認めたが、7月、3人の裁判官のうち、2人はトランプ氏が指名したと言われる控訴審で逆転した(朝日新聞)。形式的な任命権はあるにしろ、「司法の独立」を超えて控訴審レベルの判事の人事にまでトランプ氏は手を付けていることに改めて驚く。トランプ氏はこのように憲法や「法の支配」など少しも考えていないように思える。

 また、津山氏はホワイトハウスの取材で新たな変化が起きていると指摘する。代表者取材で「ニューメディア」という枠ができたことに加え、伝統的なメディアに反旗を翻す保守系・極右系メディアの名前が目立つようになった。日本でも、最近のテレビニュースでおなじみになった女性、ホワイトハウスのレビット大統領報道官は、ニューメディアを記者会見室に仲間入りさせることを主導。数少ない記者席の最前席を提供した。津山氏は「どうやって選ばれたか不明だが、1万2千社の応募の中から、陰謀論で有名な極右派ウエッブサイト『ブライバート』や極右派ビデオサイト『ランブル』などが選ばれ批判の声が上がっている」。さらに「レビット氏はニューメディアだけに対する対するブリーフィングを行うなど、(このような)各社を優遇している」と書いている。

 「出入り禁止」やテレビ局の「放送免許」に言及するなど、いずれも、その一部は日本のメディア環境でも起きている出来事ではある。これまで事実上「資格が続く限り」米国滞在が認められていた報道関係者向けのビザについて、トランプ政権は8月末、その見直しを発表。報道関係者については今後、最長で240日間の滞在とし、状況によっては同様期間の延長を認めることになるそうだ(朝日新聞)。この措置は一期目の20年にも示されたが、翌年、発足したバイデン政権により撤回された。トランプ氏はそれをまた復活させたわけだ。こういうことについて、トランプ氏は執念深い。

 日本からの特派員に「批判的な記事を書くと追い出すよ」と言わんばかりの措置で、外国の記者まで統制しようというのか。これではまるでどこかの権威主義国家と同じように見えるが、どうだろうか。戦後、日本は米国の民主主義を手本にしてきた。その中心のひとつが「言論・報道の自由」である。それが今や本家本元の米国で崩壊しようとしている。これを止めるすべは、やはり、世界中のマスメディアが「権力監視」のために、結束してこのような暴挙と闘う以外には道はない。(9月18日)

▼トランプ政権の圧力に人気番組打ち切り エスカレートするメディアへの弾圧

 トランプ政権によるマスメディアへの〃威圧〃が続く米国。また新たに三大テレビネットワークのひとつ、ABCの深夜人気番組について、無期限の休止になることが9月17日、明らかになった。朝日新聞によると、トランプ氏の盟友で極右の政治活動家、チャーリー・カーク氏の射殺事件をめぐり、コメディアンで司会者のジミー・キンメル氏の番組での発言が不適切だと批判を浴びたことへの対応だという。

 カーク氏の暗殺事件をめぐって、トランプ政権は「このこと(暗殺)を祝うような発言をした」とのいいががりを付けて、官僚や軍人、教師、メディア関係者などを「左翼」と断定して解雇や懲戒処分にする事態が相次いでいる。カーク氏に対して批判的な意見を言う人は「非国民」なので排除するというメチャクチャな論理で、トランプ支持の右派がネットを探ってカーク氏批判者を「ドキシング」(個人や組織のプライベートデータを掘り起こし、それを公開するサイバー攻撃)する行為も急増中だ。

 このような事態に「まるでかつてのマッカーシー時代の『赤狩り』だ」(ジャーナリスト、北丸雄二氏)という見方も出てくるのは当然だ。〃トランプ教殉教者〃への批判は一切許さないということなのだろう。

 18日夜のテレビ朝日の「報道ステーション」。大越健介キャスターが珍しく声を荒げてトランプ政権のやり方を批判する場面があった。どうしてこのような事態になったのかー。19日付の朝日新聞朝刊よりも詳しいので、「報道ステーション」のネットでの文字起こし版を私流にアレンジして、その一部を紹介しておく。

 ターゲットとされたのは、ABCの人気トーク番組「ジミー・キンメル・ライブ!」。15日の暗殺事件後、キンメル氏はこう述べた。

 「MAGA派(トランプ氏のスローガン『MAGA』=米国を再び偉大に=の一味は、カークを殺害した青年について、自分たちと仲間でないと必死になっている。事件は政治利用され、最低の状態になった」

 容疑者の家族は、MAGA派という情報があり、それを皮肉った発言だそうだ。この番組にはトランプ氏を含めた歴代の大統領も出演。本人を前にしてキンメル氏が政治など時事問題で風刺し揶揄し、皮肉ることが視聴者の人気になり、20年以上も続いてきた。

 この翌日、連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長から早速クレームが。「キンメルのウソは、悪意に満ちている。本当に病的である。キンメルを処分すべきだ」

 FCCはテレビ局の放送免許を所管する政府から独立しているはずの機関。委員長はトランプ氏が指名した人物だそうだ。今回、委員長が放送翌日、「系列局の免許剥奪も辞さない姿勢を示したことがABCの番組休止の理由」(上智大・前嶋和弘教授)だという。

 トランプ氏は「ABCがついにやるべきことを実行する勇気を持ったことを祝福する」(朝日新聞)と得意のSNS投稿した。ABCだけでなく、トランプ氏に辛辣なことで知られるCBSのトーク番組も7月に打ち切りを発表している。

 今回のABCで起きたことは、トランプ政権が賠償訴訟やホワイトハウスでの「出入り禁止」というマスメディアに対しての嫌がらせや威圧にとどまらず、外見上、ワンクッションおいているように見えるものの、FCCを使った自分の気に入らない番組への〃直接介入〃であり、〃言論弾圧〃だと考える。

 トランプ氏のマスメディアに対する振る舞いは、以前よりもさらに事態はエスカレートしたと言わざるを得ない。もっとも、ここまでいかなくとも日本でも安倍晋三政権、高市早苗総務相時代に似たようなことがあったことを忘れてはいけないが・・・。

 いまや、トランプ政権は、FBIや裁判所を含めた司法、中央銀行である「FRB」の人事を握り、そして、女性司令官を次々と解任するなど軍も完全掌握した。その「独裁化」はますます進んでいるように見える。それを支持しているのも米国民である。かつては「言論の自由の国」だったはずの米国よ、どこへ行く。(9月19日)

                              (了)