「緊急事態宣言」閉塞感打ち破る心の準備を コロナ禍を笑い飛ばそう 守るべきは命、そして遊び心

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 新型コロナウイルス感染の拡大で、世の中にうっとうしい雰囲気が広がっている。一斉休校、そして、緊急事態宣言の発令で極に達している。対策は、命を守ることが第一で、経済の分野も大きな柱になっているが、もう一つ大事なことは、この閉塞感を打ち破る「心の対策」だ。その決め手は、コロナ禍や愚策を川柳などで笑い飛ばし、遊び心を維持していくことだ。

「コロナを酒ろ」

  9日朝、民放が朝刊紹介コーナーで、日刊スポーツの見出し「コロナを酒ろ」を紹介していた。酒造会社が、消毒用アルコールと同等のアルコール度数77度の高濃度スピリッツを売り出す、という記事だ。新聞を買って見ると、縦約4センチ、横約3センチの活字が躍っていた。デジタル版の方は「菊水酒造がアルコール販売、消毒液と同等の度数」という普通の見出しで、紙面との落差が大きい。

  スポーツ紙は「だじゃれ見出し」を競っていて、こうした大活字を見ると、ほっとする。言葉遊びは戦時下でもあった。「ぜいたくは素敵だ!」は傑作パロディーだ。国策標語「ぜいたくは敵だ!」(昭和15年)に「素」を加えただけだが、当時の庶民の気持ちが表現されている。

「死神にあかんべえ」

 権力者や世の中を笑い飛ばすのは、川柳の十八番だ。人間が避けられない老病死のうち、老についてはシルバー川柳というジャンルが確立しているが、病死は対象にしにくく、コロナ禍も同様だ。しかし、当事者が作品をつくることはできる。俳句を参考にすると-。

 闘病句では、石田波郷が有名だが、江國滋(1934-1997)の句集『癌め』はユーモアが加わり、波郷の闘病句をこえた感がある。

   死神にあかんべえして四月馬鹿

   おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒

 「おい癌め…」は、『江國滋闘病日記 おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒』(新潮社、1997年)を読むと、亡くなる2日前、激痛の中での作った辞世の句だ。

「コロナだよ!全員集合自粛中」

 当ブログwadtchdog21.comの「ウォッチドッグ川柳」に私が投稿したコロナ関係川柳を紹介するとー。

競馬なら狙う大穴アベノマスク   (4月3日)

コロナだョ!全員集合自粛中  (4月1日)

人まばら銀座に響く時の鐘   (3月30日)

欧州は一つを証明ジョンソン氏 (3月28日)

罰金も補償もなしに「控えおろう」 (3月26日)

独断も支持率上がれば癖になる (3月24日)

コロナ疎開ジージもバーバも夜ぐっすり (3月21日)

恐怖指数どんと上がって大慌て  (3月18日)

当ブログ「犬の遠吠え」には次のような短いコラムを投稿した。

 『暦変更』(4月8日)

 啓蟄は、5月7日といたしまするー

      -陰陽師・安倍の宣言

 『マスク屋敷』( 4月2日) 

    いちまーい  

     にまーい …

      たりなーい       

         -お菊

 『ローマは休日』(3月19日)

   昔も流行の中心だったのよ

      -オードリー・ヘップバーン

 風哲は私の俳号で、柳名としても使っている。笑い飛ばしすぎると、患者ら当事者に不愉快な思いをさせてしまう恐れがある。ギリギリの線をどこに置くか苦心している。

「遊びをせんとや生まれけむ」

 上述の江國滋は永六輔、小沢昭一、桂米朝らと「東京やなぎ句会」を作っていた。この会のメンバーの一人、三田純市(俳号・道頓、演芸作家、落語研究家、『道頓堀物語』などの作者)の没後、妻玲子さんは「『遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん』」という人でした」と悼み、粋で洒脱、飄逸な三十句を選んで紹介している(東京やなぎ句会編『友あり駄句あり三十年』(日本経済新聞社、1999年)。

 「遊びを…」は、後白河法皇編著の今様歌謡集『梁塵秘抄』で最も有名なの歌。平安時代末期、宮廷内、そして武士との争いの中にあった後白河法皇が、京都の人々を魅了した今様を収集し、書き物とは違って消えてしまう歌を残した経過を説明している。遊び心がなければこの文化は残らなかった。富と権力を持った人物の話ではあるが、今の世でも参考になる。

自粛求める説得力を

 緊急事態宣言で気になるのは、安倍晋三首相が、大人の遊び場を名指ししている点だ。「3つの密がより濃厚な形で重なる、バー、ナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスへの出入りは控えてください」(官邸ホームページ)と、三密の場として“悪者扱い”している、との印象がある。休業要請だと、事業者に補償が要求されるので、客の出入りに絞った内容になっている点、慎重な表現になっている。 

  社会党の委員長だった土井たか子さんだったらこんな時どう呼びかけるだろうか、と考えた。先輩記者の送別会の二次会で土井さんがカラオケで「サン・トワ・マミー」を歌っていた記憶が甦ってきた。「私はパチンコとカラオケが好きですが、しばらく我慢します」と話したかもしれない。人々の楽しみを肯定し、その上で自粛を求めるという文脈なら説得力がある。

 映画館も劇場もレジャー施設もお休みとなり、娯楽が奪われている。しかし、自宅で川柳など笑いを作ることはできる。金は出さないが国民には不自由を強いるという政治家らを笑い飛ばすことはできる。