沖縄県の反対を押し切り、名護市辺野古で進められている米軍新基地建設の護岸工事で、沖縄防衛局が3月末までに6件の護岸・岸壁工事を途中で打ち切っていたと4月5日付「しんぶん赤旗日曜版」がスクープとして報じた(実際の発行は2日)。地元の琉球新報が5日に追いかけているが、在京全国紙には見当たらない。
辺野古新基地建設では大浦湾側の地盤が超軟弱の「マヨネーズ層」といわれる地盤であることが遅くとも2016年には防衛局内の調査報告で明らかになっており、当初は「設計変更の必要はない」としていた防衛省も、今月中に設計変更の申請を沖縄県に提出する構えを見せているが、新型コロナウイルス感染で日本中に深刻な影響が出ている最中、事実上「ドブに捨てる」ような工事の強行を続けることが問われなければならない。
辺野古工事の「本質」とは
しんぶん赤旗によると、6件の工事は2014年度に発注され、14年11月〜15年3月に着工した。当初から軟弱地盤ということが分かっていたのか工期は延長され、5件は今年2月末まで、1件は3月末までの納期の工事となっていた。しかし20年度間際になっても工事は進まないまま工期の延長はなく、契約が打ち切られていたという。琉球新報によると、6件の工事は途中で打ち切られたにもかかわらず約303億円が支払われたという。
しんぶん赤旗紙は、最初に着工された「傾斜堤護岸新設工事」では約316メートルの護岸の予定が100メートルでストップし、「二重締切護岸新設工事」に至っては当初契約の約6%に減額して精算してしまったなどと指摘。「(軟弱地盤で)保たないものを造ってもしょうがない」という工事を受注したゼネコン関係者の話を伝えている。
辺野古埋め立てを巡る訴訟では、3月26日に、承認撤回の取り消しが法的に可能かどうかについて最高裁が沖縄県の上告を棄却し、県側の敗訴が確定したばかり。31日付の朝日新聞社説は判決について「ものごとの本質に目を向けず、細かな法律論を繰り広げた末に一般社会の常識からかけ離れた結論を導き出した」と厳しく断定していたが、しんぶん赤旗のスクープにはとんでもない「本質」が隠れていることになる。
というのも、辺野古新基地の大浦湾側(最大水深約30メートル)は深度70メートル超の海底にマヨネーズ層といわれる軟弱地盤が存在。さらに今年になって軟弱地盤は90メートルまで達していることを防衛省も認めているためだ。3日付東京新聞も1面で「辺野古地盤粘土90%超」として、防衛省が委託したデータで粘土の割合が最高で99%に達することが分かったと報じた。
深い「マヨネーズ層」
海底の「マヨネーズ層」という言葉が登場したのは、東京国際空港沖合展開事業。羽田沖合は東京のゴミが捨てられヘドロ層が堆積してドロドロの底なし沼状態になっていたため、ヘドロ層とその下の軟弱な沖積粘土層の地盤を強化する工事が難航、計画から供用開始まで約20年を要した。同じように水深18メートル(1期島)と深く、その下に軟弱な沖積粘土層が20メートル以上堆積している関西国際空港でも地盤改良工事は難航。今も地盤沈下は続いており、1期島では1994年の供用開始から17年末までに3・43メートル沈下している。その影響は、2018年9月の台風21号直撃で大規模な冠水被害になって表れた。
辺野古・大浦湾は水深も海底下の「マヨネーズ層」の厚さも羽田や関空をはるかに上回っている。軟弱な粘性土などで構成された地盤の上に土砂を投入し、海上に滑走路などを建設すると、その荷重で土中の水が抜け、体積が減ることによって地盤が沈下する。これを「圧密沈下」と呼んでいるが、圧密沈下で沈下する地盤が不規則になる「不同沈下」が起こると様々な障害が発生する。羽田や関空の場合、滑走路やエプロンなどにちょっとした凸凹が生じるだけで使えなくなるという。自民党関係者からは「(辺野古で使用する)オスプレイは荒れ地や草地でも離着陸するから大丈夫」などとの暴論も出たそうだが、だったらそこら辺の原っぱを使えばいい。
「前代未聞の事態」
防衛省は辺野古工事の工期を当初の8年から12年に延長、工費も約2・7倍の約9300億円に修正した。しかし日本には現在、深度70メートルまでの地盤改良工事に対応できる作業船しかないという。これまで海底地盤改良工事に関わってきた多くの技術者からは、大浦湾の地盤工事は不可能という声が出ている。先のしんぶん赤旗紙は大手ゼネコン関係者の次のような言葉を伝えている。
「調査不足で、後から軟弱地盤が見つかって全部工事が吹っ飛ぶなんて聞いたことがない。全部、やり直しをしないといけないなど前代未聞の事態だ」