コラム「政治なで斬り」「東京都知事選」コロナ禍でも小池百合子氏が圧勝 背景に世論の不満が反映されにくい選挙の歪みや有権者の迷い

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 5日に投開票された東京都知事選で小池百合子都知事が再選された。新型コロナ禍が広がり、感染者が増大する状況の中での選挙だったが、小池氏は現職の強みを生かし、圧倒的な票を集め勝利した。とはいえ小池氏に対する積極的な支持や評価というより「ほかに投票したい人がいなかったから」といった消去法による選択だったことがうかがえる。「露出過剰」「実行力欠如」など小池氏への批判は消えず、コロナ対策でも感染者の再拡大傾向について有効な手を打たず、「経過観察」を決め込んでいた。それでも圧勝の結果となったのは、世論や都民の不満がそのまま反映されにくい選挙の歪みや有権者の迷いが現れたためとみられる。

与党政権内に解散の空気強まる

 読売新聞が実施した直近の世論調査によると、安倍内閣の支持率は39%、不支持率は52%と低迷状況が続いている。政党支持率では、自民党が32%と突出しているのに対し、野党は立憲民主党の5%が最高、その他の政党は一桁台前半に沈んでいる。無党派層は46%を占めており、恐らくこの無党派層が「他に適当な人がいない」と判断したと思われる。

 小池都知事の再選の結果を受け、政権与党内には「これなら秋に解散・総選挙があっても勝てそう」という空気が出てきているようだ。結局、野党の分裂状況が続いている限り、政権与党には勝機を見失うことはないという受け止め方が広がり、安倍晋三首相の背中を押す可能性が出てきてもおかしくない情勢になっていくのかもしれない。もちろん「コロナ禍収束の気配がないのに何のための解散か」との議論を招きかねないが、この際、改憲実現を振りかざして「国民投票」の予行演習のつもりで解散断行に踏み切るのも一計といった強気論も出かねない。

政権側の思うつぼ

 「ほかに選択肢がない」「野党に期待できない」など都知事選結果のような消去法が選択基準になると、政権与党の思うツボになる可能性も考えられる。この機に及んで、野党は土俵際に立つ重大危機を迎えるという認識を持たなければならない。これが当たり前だという慣れみたいなものが出てくることが危惧される。