コラム「政治なで斬り」防災こそ政治の責任が問われる最重要課題 巨額のコロナ対策費は一大疑獄の様相 

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 9日は、朝から九州や長野・岐阜などを襲った記録的豪雨による洪水や、関東地方で起きた最大震度4の地震など災害のニュースであふれていた。そしてコロナ禍はじりじりと拡大しており、東京都では9日についに感染者が一日として過去最多の224人となった。今、日本はまさに「災害列島」と化している。

 四書の「大学」に「小人天下を取れば災禍並び起こる」という言葉が出てくる。安倍政権の下で相次ぐ災害に、この言葉がぴったり当てはまる。この言葉は、大塩平八郎が天保の飢饉の時に兵を挙げた際の檄文の冒頭にもある。

防災対策にお手上げ決め込む政治

 9日付朝日新聞の天声人語は、気象庁が発表する「いまだかつて経験したことがない豪雨」警報を俎上に載せ、最近の異常気象と防災、治水の難しさに触れている。その左上欄に「激甚災に指定する」という菅官房長官の発言がごく短行の目立たない程度の扱いで掲載されているのに目をやると、防災こそ政治の責任が問われる最重要課題ではないかという思いに駆られる。

 多くの研究者が、大雨による洪水の頻発は地球温暖化に伴う異常気象によると指摘している。米国のトランプ大統領が「アメリカファースト」ゆえに温暖化防止のためのパリ協定に背を向けていることに非難が高まり、日本政府もようやく石炭火力発電の多くを2030年度までに段階的に休廃止する方針を表明した。しかし温暖化防止への関心が強まる一方で、それにかまけて政治が防災対策の強化に「お手上げ」を決め込んでいるように思えてならない。

 列島各地で河川の氾濫、堤防崩壊、交通網寸断、犠牲者多数のニュースが日常茶飯のように伝えられると「またか」とつぶやくと同時に、防災・減災行政の限界と政府の取り組みぶりにいらだちを覚える。この災害は政府の怠慢による「人災」でもあるのだ。

治水は政治の要諦

 近代以前から治水は政治の要諦と言われ、統治者の最大の責務は水を治め 庶民大衆の生活と安全を確保することにあると言われてきた。 

 例えば、戦国時代に甲斐の国で無数の暴れ川の氾濫を防ぐため河川の改修工事に全力を挙げた武田信玄は、「信玄堤」と領民に呼ばれた堤防を築造して信望を集め、群雄割拠状態の甲斐を統一したと言われる。領内を治め天下の覇を争うには治水に懸けざるを得なかったのだろう。武将に限らず、天竜川沿いの渓谷の植林に私財を投じて地域住民をたびたびの水害から救うことに生涯をかけた明治時代の実業家金原明善は、小学校の教科書にもその逸話が取りあげられた。

 翻って安倍政権は洪水被害が発生すると、政府対策本部を設け、自衛隊の災害派遣指示や復旧対策などの事後手当は怠っていない。しかし事前の防災・減災対策は合格点にははるかに及ばないと言わざるを得ない。名称は立派な国土交通省も、河川の改修など豪雨対策への備えは停滞したままの状態と言っていい。 

 敵基地攻撃能力など近隣国のミサイル開発に対する議論に熱を入れる前に、自らの国土の治水や地震対策など自然災害への取り組みが先決ではないだろうか。

 漢字は象形文字だから、形が持っている意味を象徴している。「治」という字のサンズイは黄河の水。たびたび大洪水を起こしている。ツクリの「ム」は、牛がひいて田を耕す器具を横から見た形で、この田で耕した稲の所有者は私だ、という意味にもなる。口は自分が所有する小さな田のこと。つまり、たびたび洪水を起こす黄河の水を運河などで自分の田に引いてきて、稲をつくるために利用することまでを水を治めるというのだそうだ。政治の「治」はなかなか意味が深い。それに比べてアベさんのような人は「泊羽船の処にあらず」と言うそうだ。心の浅いくだらない人物の処には羽で作ったような軽い船でも泊まれないという意味だそうだ。禅林句集に出ている味わいある一句だ。

巨額のコロナ対策費疑惑は過去の疑獄事件と酷似

 コロナ禍への対策もそうだ。安倍政権のコロナ対策は、まさに身内への利益誘導そのものだ。旧知の検察幹部のOBも言っている。事業委託、中抜き(実態はピンハネ同然)、さらにその先の中抜きは、コロナ対策費のあるすべての省庁に広がっている。まさに税金を使った政官財疑惑としては、昭和電工事件や造船疑獄など戦後を象徴する事件に酷似している。

 1948年に起きた昭和電工事件は,食糧増産政策に関する復興金融金庫と肥料メーカー昭和電工との間の20億円にわたる財政資金をめぐる贈収賄容疑で,芦田均内閣の崩壊の原因となった。政官財の44人が起訴された。

 また造船疑獄事件は、政府出資の計画造船の割り当てなどを巡り起きた収賄事件。大手海運会社などが運輸省の高官および自由党幹部に贈賄したとして、検察庁は1954年、業界幹部および自由党の有力者らを次々と逮捕し、自由党幹事長佐藤栄作(安倍首相の大叔父)の逮捕請求を決定した。だが当時の犬養健法相が国会での重要法案審議の状況を考慮したとして、佐藤幹事長の逮捕を見合わせるよう検事総長に指揮権を発動。捜査は実質的に幕引きとなり、犬養氏は批判を浴びて辞任に追い込まれた。

霞が関、永田町の「大掃除」を

 政官財が群がった「構造汚職」の匂いがプンプンする巨額のコロナ対策費だが、先日、元官僚ら旧友たちとの会合に出たら、ある出席者は、官邸、経産省、電通、パソナの伏魔殿は、コロナ対策の巨額な持続化給付金事業費に群がる白アリのようだと話していた。経産省だけでなくコロナ予算を組んでいる役所は、手足がないので民間に委託して、下請け、孫請け、そのたびに中抜き(ピンハネ)が公然と横行しているという。このような無茶なことをしていたら税金はいくらあっても足りないだろう。

 官邸とコロナ関係官庁、電通、パソナなどがかかわった「一大疑獄事件」の様相だと話す財務省のOBもいた。戦後続いた造船、昭和電工などの疑獄事件と酷似したところがあると指摘する。岸信介元首相が喝破した「ろ過装置」を通じて役人や政治家にも「返礼」が出ているかもしれない。官邸の機能が極端に強くなっているので、悪事も「官邸一極集中」になっていると言われる。だから、公文書を作成しなかったり、改ざんしたり、前東京高検検事長黒川弘務氏の定年延長にこだわったりするのだろう。霞が関や永田町の「大掃除」をしなければならないときなのだ。