米大統領選挙は11月3日の投票日を前に全米各州で期日前投票が始まっているが、共和党が知事を握っている州では、投票所や郵便投票用投票箱の数が少なく、混乱が起こっている。南部ジョージア州では期日前投票が始まった11日、コロナ感染防止のための密着回避もあって、投票所には朝から長蛇の列ができて、多くの有権者が投票までに10時間待たされた。同じ南部テキサス州では期日前投票の初日の12日に3時間かかったという。
ワシントン・ポスト紙電子版が報じた14日付けの同紙社説は、こうした混乱を引き起こしているのは、両州とも共和党知事に率いられる共和党勢力が民主党票を減らす妨害工作を行っているからだと非難している。
黒人、ヒスパニックの投票率の出足好調
社説によると、今回の大統領選挙への有権者の関心が高く、特に黒人やヒスパニック(中南米からのスペイン語系移民)の投票の出足が各州で高まっている。少数派は民主党支持者が多いが、投票率は必ずしも高くはない。しかし、今回の選挙では人種差別問題が大きなテーマになっているので、投票率が高くなるとみられていた。
これに対して共和党の現職トランプ大統領は対立する民主党候補のバイデン前副大統領との支持率の差がさら広がっている。このため共和党が知事や州議会を抑えている州では様々な妨害工作で民主党票を減らそうとしており、混乱が予想されている。それが期日前投票から始まったということだろうか。民主党支持者はこうした事態を想定して、折り畳み椅子や弁当、雨具などを持参した人もいたが、中には途中で諦めて帰宅した人もいたという。
ジョージア州では選挙管理担当が投票所を増やすための予算を要求したが、共和党多数の州議会が否決した。テキサス州ではドライブイン投票が認められて好評だったが、州共和党がドライブイン投票は身障者だけが許されるもので、誰でも認めるのは違法と提訴した。
テキサス州では共和党敗訴
広大なテキサス州では共和党知事が投票所を各郡1カ所に制限するとともに、郵便投票を認めないと決定、地裁もこれを認めていた。しかし同日午後、巡回裁判所(高裁に当たる)が民主党の控訴を受けて、通常選挙と同様の投票所設置を命じ、郵便投票も通常の期日前投票と同じとして認めた。判決を出した3人はいずれもトランプ大統領が指名した判事だった。
トランプ氏は、郵便投票は不正投票に使われると一方的に主張して、投票で負けても平和的な政権移行には応じないと宣言している。「不正投票」の再集計を要求するなどして、訴訟合戦になるのではないかと懸念されている(「Watchdog21」10日、拙稿『「不正投票」で裁判闘争』参照)。
ワシントン・ポスト紙社説は、有権者の自由で安全な投票を保障することは民主主義の基礎であり、投票日まで2週間あるのだから、投票所や郵便投票用の投票箱の数をもっと増やすよう共和党と各州当局に強く訴えている。(10月15日記)