コラム「政治なで斬り」決まり文句の自助論を繰り返す菅首相 政治の基本わかっているのか コロナ禍で失業した人への支援躊躇

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  「利して利する勿れ」という有名な古語がある。政治家や官僚などの立場の人は人々が安心して暮らせるように努めるのが役割で、自分たちが先頭に立って利益をむさぼってはいけないという意味だと言われる。

 菅義偉首相は政治の基本がよくわかっていないのか。相変わらず決まり文句の自助論を繰り返し、最近は「絆」を追加して国会答弁でコロナ禍の政府の役割を口にしている。

 実際には感染症の蔓延による社会全体の激変の煽りで解雇され、職を失い自助努力も困難になっている多数の人達への救いの手を差し伸べるのを躊躇しているようにみえる。

現場からの指摘受け止める気配感じられず

 27日の参院予算委員会のテレビ中継を見ましたが、菅氏は口では「政治の使命は国民の生活を守ること」と答弁をしながら、不運にして落ちこぼれて助けを求める人達に目線が向いているとは思えない。参考人として出席したNPO法人「もやい」(貧困者支援組織)の大西理事長が「自助さへ無理な人達が急増しているのに、政治のトップから明確なメッセージが発せられない」と、いっていたが、社会の底辺の現場から厳しい指摘が出たことをまともに受け止める気配は感じられない。

 フジテレビは、雨の中無料の食料品の受け取りに列をなしている場面を放映していた。コロナ禍の中で取材した貴重な映像を、大勢いる秘書官か側近のだれかが、菅氏の耳に入れてもよかった場面だ。

政治家として落第の答弁

 同日午前の参院予算委員会で、石橋通宏氏(立憲民主・社民)が「収入を失い路頭に迷う人々、命を失った多数の人々に政府の政策は届いているのか」と質問。菅首相は「雇用を守り、暮らしをしっかり支えていく。できる限り対応したい」と答えつつ、政府の政策が届いているか、との質問には「いろいろな見方がある。政府には最終的に生活保護があり、セーフティーネットを作っていくのが大事」としていた。これは政治家としては落第生の答弁ではなかろうか。生活保護者は220万人ぐらいで、政府はこのところ基準を厳しくし、受給者を絞ろうとしているので、窓口ではさんざん嫌味を言われるそうだが、それでも受給希望者はこのところ増えている。

 一時停止中の「GO TO キャンペーン」についてもしかりで、再開に備えた約1兆円の補正予算を組んでいることも、コロナ感染拡大防止にどこまで本気なのか疑わせる。声の大きい、しかも選挙や政治献金に協力してくれるような団体に目が行っているようだ。

政治、行政の基本忘れかけているよう

 憲法では国家国務員は国民全体の奉仕者でなければいけないとうたっているが、政治は安倍晋三前首相がよく言っていた「全国津々浦々」にまで目が行き届くように心掛けることがかかせない。いまや政治、行政の基本を忘れかけているかのように見える。

 NHK番組のアンケート調査によると、「GO TO トラベル」に応じた人の多くは一泊6万円超のふだんは手が出ない高級ホテルに出掛けたと伝えられている。潤っているのは有名観光地などの大規模宿泊施設が多いようだ。これらの事業者や団体は政治献金を通じてキャンペーンの早期再開を期待して活発なロビー活動が可能だろう。ビジネスの入国をストップしながら、アジアの数カ国は例外にしていたというのも説明しにくい措置といえるだろう。

 キャンペーンの旗振り役の二階自民党幹事長、そして菅首相に陰に陽に働きかけているか、忖度がかかわっていると見て間違いないのではなかろうか。国民の税金で政治や行政をしているわけですから、使うに当たってはもっと広く目を向けて、しかもきちっと国会で説明できるようでないと、議会制民主主義国家の国会とは言いにくいのではないか。

「失礼」なのはどっちだ

 一時の高い支持率は、「徒手空拳」「苦学力行」首相への期待があったからだと思われる。経済と感染防止の両立という政権の二方面作戦によって、感染症対策が後手に回り、緊急事態宣言の再発出までに至っている。野党議員の質問に菅首相は「失礼ではないか」と怒っていたが、政府のコロナ対策の後手後手ぶりと混乱の方が、よほど国民に対して失礼千万ではないか。