皇位継承ができる皇族がほとんどいなくなる、との観点から安定的な皇位継承をどうしたら確保できるのかを議論する政府の有識者会議が3月23日、2017年6月の国会の「天皇退位特例法」成立時の付帯決議以来、3年9カ月もたってようやく議論が始まった。
朝日新聞によると、菅義偉政権は年内をめどに論点を整理する方針で、今後は皇室制度に詳しい専門家のヒアリングに入る。焦点は皇室典範で「男系男子」に限るとされている皇位継承資格を女性にまで広げるか、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家の創設」をどうするかだ。
「女系天皇容認」の議論はすでに尽くしている
15年以上前のこととなるが、小泉純一郎内閣時代の2005年11月、首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が、「女性天皇」や母方に天皇の血筋を引く「女系天皇」を認める報告書をまとめた。このとき小泉政権は、06年の通常国会での法案提出を目指したが、秋篠宮妃の懐妊が明らかになったことから、法案は見送られた。安倍晋三官房長官(当時)が有識者会議の報告書を見直す考えを示し、事実上、反故にされた。
旧民主党の野田佳彦政権は12年10月、皇位継承のあり方をめぐる問題とは切り離して、皇族の女性が皇族以外と結婚しても、皇室に残れるようにする「女性宮家の創設」を軸にした論点整理を取りまとめた。だが、同年12月に「女性宮家創設」も「女系天皇容認につながる」と反対する自民党の安倍政権に交代。その後、表だった大きな動きはなかった。
私は05年11月の「女系天皇容認」の報告書(以下「05年報告書」と呼ぶ。末尾に報告書概要掲載)を今回の有識者会議のメンバーの皆さんに、失礼な言い方かも知れないが、いま1度熟読してもらい、ぜひその基本的考え方は踏襲してほしいと考えている。報告書は、05年1月から同年11月まで、日本を代表する皇室法や憲法、政治学、日本の古代史の学者ら10人の有識者が11カ月にわたり、計8人の皇室専門家(中には女系天皇反対論者も複数含まれていた)からじっくりと丁寧に意見を聞いた上で出した結論だった。その基本的考え方は「憲法は『象徴制』と『世襲制』しか規定していない。『象徴』に性別はない。だから、『女系天皇』にしても『世襲』による皇位継承であり、その正当性に疑義は生じない」というものである。
過去に10代8人の女性天皇がいた歴史的事実にあまりごだわっていない。明解な考え方ではないか。詳しくは後に、第14回会議で出た基本的合意の議事概要を紹介する。今回も意見を聞くはずの専門家はこのときと一部は重なるのではないかと思う。だから、「女系天皇容認」を含む「皇位継承問題」については、このときに議論は尽くされていたといえる。
この問題は「皇族数の減少」がきっかけだが、それだけではない。本当の論点は「安定的な皇位継承者」確保のためにも「ジェンダー平等」が世界での趨勢となる中で、皇室での「男女平等」の実現は喫緊の課題である。そのためには「女系天皇の容認」の国民的論議は欠かせないはずだ。共同通信が20年3、4月に実施した世論調査では、「女性天皇賛成は85%」「女系天皇賛成が79%」(1年前の19年4月の朝日新聞調査では、女性・女系天皇賛成が70%以上)にも上っている。「国の在り方」の議論に世論調査結果は重要ではない、との指摘もある。「05年報告書」もその立場である。しかし、国民の8割もの人々が「女性・女系天皇を容認している」という事実は重い。大多数の民意は「女性・女系天皇容認」にある。
官邸にみてとれる「皇位継承順位」変えない方針
私は今回の有識者会議での議論は05年の「仕切り直しの議論」と位置づけている。しかし、菅政権はそうは考えていないようである。私がそう考える根拠は以下の3つの記事にある。
①「前提として現在の継承順位は変えない(主語がなく、地の文で書かれている。誰の見解か不明。おそらく官邸)」(朝日新聞3月24日付朝刊「皇位継承幅広く議論」)
②「悠仁さまで継承順位は決まっている(官邸幹部)」(毎日新聞3月24日付朝刊のサイド記事「政権 意見集約及び腰」)
③「有識者会議では現在の継承順位とともに当面の男系維持を容認する方向で議論が進みそうだ」(東京新聞3月17日付朝刊「皇位継承議論ようやく着手」)
①は断定的だが、②は「官邸幹部の声」③は記者の観測記事とそれぞれ記事内容の強度が異なる。少なくとも、これらの記事からは、菅首相からこの問題を任されているといわれる杉田和博官房副長官(警察庁出身)を責任者とする官邸は、現在の皇室典範通りの①秋篠宮殿下②悠仁親王③常陸宮殿下―の皇位継承順位は変えないという方針がみてとれる。例え、有識者会議の結論が「女系天皇容認」となっても、皇位継承権者は男性皇族を優先し、この後に女性皇族ということになる(この結論もなさそうだが・・・)。愛子内親王が次期の天皇になることはないということなのだろう。
そもそも論になるが、有識者会議が始まったばかりなのに「国家の基本に関わる極めて重要な事柄」(有識者会議での菅首相の言葉)といいながら、すでに一定の方向性が示されているのはおかしくないか。これでは、初めから「05年有識者会議報告書」の結論を無視ということにならないか。このような国家の在り方自体にかかわる大問題の方向性を「官邸官僚」に委ねるとはもってのほかである。
ホンネではやりたくない、及び腰の政権
現皇室典範では「皇位継承」は「男系男子」に限られており、継承権者は秋篠宮殿下ら男性皇族3人のみである。未婚の女性皇族は6人(内親王3人、女王3人)いるが、女性皇族は結婚後、皇室を離れる。17年6月、安倍政権時に成立した「天皇退位特例法」の付帯決議では「政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方のご年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方のご事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること」となっていた。
19年10、11月の天皇の「即位の礼」の終了後に議論を始めることになっていたが、先延ばしにされ、昨年2月には、菅官房長官(当時)は国会で秋篠宮殿下の「立皇嗣の礼の後」と答弁。「立皇嗣の礼」は当初、同年4月19日の予定だったが、新型コロナウイルスで延期された。このとき、官邸内には「結論は急がない。20年後に決めればいい」(朝日新聞2月11日付朝刊)という声もあったほどだ。そして、「立皇嗣の礼」は20年11月8日に実施された。それから有識者会議の初会合まで4カ月。やっと開催までこぎ着けた。「特例法施行後速やかに」と付帯決議はしていたが、特措法施行は「19年4月30日」。コロナ禍のためやむを得なかったといえば、その通りだが、もし、有識者会議が「女系天皇容認」の議論に踏み込めば、自民党内の〃超保守派〃が反発するであろうことは必至で、菅政権としては「できたら、やりたくない」というのがホンネだった。
昨年4月には、内閣官房の「皇室典範改正準備室」のチームが戦後の1947年10月に皇籍を離脱した旧宮家の復帰(超保守派の主張)に関する考えを有識者に意見聴取しているとの産経や読売の報道が出た。この後も、昨年11月8日の「立皇嗣の礼」の後には「皇女」検討がメディアで報道された。「皇女」というのは皇室典範に規定はない。皇室の公務の負担軽減策として、女性皇族が結婚した後も公務を続けてもらう制度で、特別職の国家公務員と位置づけ「皇女」の称号を贈るという案だ。女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設は女系天皇の容認につながるとする党内の〃超保守派〃に迎合するような、「皇位継承」とは全く次元の異なる提案である。
また、04年に政府が設けた有識者会議の名称は「皇室典範に関する有識者会議」だったが、今回の名称は「『退位特例法案に対する付帯決議』に関する有識者会議」と前回よりもその趣旨が不明確で、消極的な印象を与える。このように自身が雑誌などで「女系天皇容認」や「女性宮家創設」に強く反対し、かつ官房長官の時に、報告書の見直しを表明した安倍前首相にならってか、菅政権もこれまで、この問題で「及び腰」だったことも事実だ。
有識者会議設置は菅氏の「続投宣言」?
ではなぜ今回、有識者会議を設けたのか。国会の付帯決議は無視できないと考えたこともあったと考えるが、それは建前だろう。「天皇の生前退位」を議論した有識者会議の座長代理だった御厨貴東大名誉教授は以下のようにその理由を推理する(3月29日、毎日新聞デジタル)。
<なぜこの時期に有識者会議で議論を始めたのか。急ぐ理由で考えられるのは、新型コロナウイルス対応や五輪だけでなく、国家の基本にある問題に(菅政権が)手を付けることで、もうすでに本格政権であるということを言いたい面もあったと思う>
確かに、御厨氏の分析のように、菅氏は安倍氏の後の総裁を継いだので任期は今年9月まで。党内的にも、意見が真っ二つに割れる可能性のあるやっかいなこの問題をテーマの一つとすることで「もうすでに本格政権である」ことを党内にアピールする効果もあるだろう。もうひとつ、このところ、メディアで二階俊博幹事長との不和も伝えられる菅氏だが、無派閥なのでやはり頼りにするのは、二階氏だ。少し前のことだが、19年11月26日の記者会見で、二階氏は、皇位継承の在り方に言及し「男女平等、民主主義の社会を念頭に置いて考えていけば、おのずから結論は出るだろう」と女性・女系天皇を容認するともとれる発言をしたことがある。菅氏は、「皇位継承」をテーマに取り上げることについては、このような立ち位置にある二階氏の理解も得られると踏んだ可能性もある。当面、9月までの総裁任期なので、総裁選で「続投」が承認されない限り、半年間という残された任期中だけでは、どのような形になるにせよ、この問題を解決することは困難な状況にあることは、間違いない。その意味では、有識者会議設置は、菅氏の「続投宣言」という側面もある。
会議メンバーはいずれも政府の“お気に入り”
今回の有識者会議のメンバーは前慶應義塾塾長の清家篤氏(労働経済学)を座長とし、大橋真由美上智大法学部教授(行政法)、冨田哲郎JR東日本会長・経団連副会長、俳優・作家・歌手の中江有里氏、細谷雄一慶応大法学部教授(国際政治)、宮崎綠千葉商科大教授(国際政治、元ニュースキャスター)の6人。男女半々で40代も3人いるが、皇室問題の専門家はいない。清家氏と宮崎氏は「退位有識者会議」のメンバーで、大橋氏は政府の地方制度調査会委員、冨田氏は地方創生の総合戦略を議論する「まち・ひと・しごと創生会議」のメンバー、中江氏は文化庁文化審議会委員、細谷氏は安倍政権が設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に加わった。宮崎氏は令和改元の有識者懇談会のメンバーでもあった。6人とも、政府の委員などで何らかの政策決定に関与する政府の〃お気に入り〃である。官邸幹部によると、この人選の理由は①大事なのは平均的な国民の感覚を持っていること②天皇制や皇位継承について予断や確固たる信念がない人が望ましかった(朝日新聞24日付朝刊)という。
この記事では、さらに、ヒアリングを行う専門家についても「日本の未来に関わる話。できるだけ若い人からも聞きたい」「できるだけ女性を多く」としている。いずれも、もっともらしく聞こえるが、会議のメンバーに憲法や皇室法の専門家がいなくて、まともな議論ができるのか。「平均的な国民の感覚」ならば、「女系天皇認容」だろう。また、皇位継承などに自分の意見を持つ人を排除しているように聞こえ、これでは、今回、メンバーに選ばれた人たちにも失礼ではないか。こんなことでは、官邸官僚の主導で議論が誘導されないか、心配だ。
有識者会議の主な論点(専門家から意見聴取する項目)は①皇位継承資格を女性に認めること、女系に拡大することへの考え(女性・女系天皇)②女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持したり、皇室活動を支援したりすることへの考え③皇統に属する男系男子を皇族と養子縁組するのを可能にするか、現在の皇族と別の新たな皇族とすることへの意見④天皇・皇族の役割や活動⑤皇族数減少に対する意見⑥男系男子が皇位を継ぐ現行制度の意義―など10項目だ(東京新聞24日付朝刊)。
②については「女性宮家」との表現は使われなかった。全体として、「旧皇族の皇籍復帰」が聴取項目に入るなど、かなり「女性宮家創設」や「女系天皇容認」に反対する〃超保守派〃の意見に配慮した内容となっている。早速、立憲民主党の蓮舫代表代行や共産党の穀田恵二国対委員長が24日の記者会見で「旧皇族が突然皇籍を取得して国民から自然な理解をえられるのか」「時代錯誤だ」などとの批判が出たことは、この聴取項目自体が〃超保守派〃をかなり意識したものといえるからだろう。
23日の初会合では、議事内容の公開方法も確認した。それによると、①会議は非公開とし、要点をまとめた議事記録を2週間後をめどに発言者名を付けずに公開②配付資料は原則、直ちに公開③座長か事務局が事後説明するーとした。次回は4月8日。ヒアリングの対象となる専門家は最終的に20人程度としている。
「女系天皇容認」報告書の持つ意味
このような時期だからこそ、いま1度、「女系天皇」を容認した05年有識者会議の報告書の持つ意味を改めて考えてみたい。 04年12月27日、小泉政権下で発足した「皇室典範に関する有識者会議」のメンバーは以下の通りだ(肩書はいずれも当時)。 座長、吉川弘之 産業技術総合研究所理事長、元東京大学総長 精密工学
座長代理 園部逸夫 元最高裁判所判事
岩男壽美子 慶應義塾大学名誉教授(社会心理学)、 元男女共同参画審議会会長
緒方貞子 国際協力機構理事長 元国連難民高等弁務官 政治学者
奥田 碩 日本経済団体連合会会長
久保正彰 東京大学名誉教授 日本学士院長 西洋古典学
佐々木毅 前東京大学総長 政治学
笹山晴生 東京大学名誉教授 日本古代史
佐藤幸治 近畿大学法科大学院長、京都大学名誉教授 憲法学
古川貞二郎 前内閣官房副長官
15年以上前なので亡くなっている方もおられる。園部氏は「皇室法概論」の著書もある日本の皇室法の最高権威。佐藤氏の憲法をはじめそれぞれの分野で大きな業績を残した人たちである。
また、有識者会議が05年5月と同年6月に意見を聴取した専門家(いずれも肩書は当時)は以下の通りである。
05年5月聴取
大原康男 國學院大教授(宗教行政論)
高橋 紘 静岡福祉大教授(現代史、皇室研究)、皇室ジャーナリスト
八木秀次 高崎経済大学助教授(憲法学)
横田耕一 流通経済大学教授(憲法学)
05年6月聴取
鈴木正幸 神戸大学副学長(日本近代史学)
高森明勅 拓殖大学客員教授(神道学、日本古代史学)
所 功 京都産業大学教授(日本法制史)
山折哲雄 国際日本文化センター名誉教授(宗教学、思想史)
この8人は皇室問題の専門家で、「女系天皇」や「女性宮家創設」に強く反対する学者も入っている。ただ同じ保守の学者でも「女系容認」の学者もいる。高橋紘氏は「象徴天皇」(岩波新書)など、皇室関係の著書が多数あるジャーナリストで、私の尊敬する共同通信社会部皇室班の先輩だった。もちろん「女系天皇容認論者」である。残念ながら、11年9月に亡くなった。
この有識者会議は05年11月に報告書を小泉首相に提出したが、その前の05年10月25日の第14回会議で「女系天皇容認」を打ち出した。その議事要旨が「なぜ女系天皇を容認するのか」が分かりやすくまとめられているので、その中心部分を紹介したい。議事要旨をさらに、分かりやすく私がまとめた。詳しくは、インターネットで報告書全文を参照してほしい。
【05年報告書議事概要】
(1)意見の集約のための意見交換
▼憲法は「象徴制」と「世襲制」しか規定していない 「象徴」に性別はない
<憲法は象徴制と世襲制しか規定していない。「世襲だから当然に男系男子」との議論は、理論的には難しい。現実に125代男系で継承されてきたという事実はあるが、今回、こういう事態に立ち至って、憲法の角度から改めて考えてみると、国民が世襲制の天皇についてどう考えるかというと、男系に固執するよりも、親から子へと、直系で受け継がれることではないか。天皇は、憲法では、国家・国民統合の象徴と定められているが、象徴に性別はないと考えるのが健全なのではないか>
▼皇室典範に「男系男子」と規定する必要はなかった
<私的な世界では、いろいろな考え方や家族の在り方があるのは当然。しかし、この有識者会議は、あくまで公的な制度である皇位継承制度について検討している。いろいろな思想や確信を持った国民があり、中には、女性や女系に皇位継承資格を拡大することに違和感を持つ方もおられるだろう。しかし、現行の憲法制定時に、象徴と世襲に絞ったことは大きな歴史の変化で、それはそれで国民は受け入れている。憲法との関係では、皇室典範に「男系男子」と規定する必要はなかったが、それまでの伝統に配慮して「男系男子」とした。それが、今は維持できなくなっているので、憲法に戻って考えるもの>
注1 「男系継承の意義」については、報告書で「皇位は、過去一貫して男系により継承されてきたところであり、明治以降はこれが制度として明確にされ、今日に至っている」と報告書は書いている。
注2 皇室典範は明治憲法時には、憲法と並ぶ最高法だったが、戦後の憲法下では一般法のひとつで、その位置付が大きく異なっていることに注意する必要がある。
▼「女系天皇」にしても「世襲」による皇位継承で正当性に疑義は生じない
<女系の皇族に皇位継承資格を拡大した場合には、女系天皇の正統性に疑問が生じるとの議論をする方があるが、世襲で皇位が継承され、国民の積極的な支持が得られる限り、正統性に疑義が生じる余地はない>
▼旧皇族の皇籍復帰は国民の理解を得られない
<今後、現行典範を改めずに男系男子で行けるのか、という点から考えると、複数配偶制(側室)の否定や少子化の状況の中で、確率的には男系男子の数は極めて少なくなることが、これまでの議論の中で明らかになった。仮に旧皇族が復帰したとしても、こういう状況では極めて不安定なものになる。また、皇籍復帰して皇位を継承することは、これまでの歴史の中で極めて異例であり、国民の理解も得られないと考えざるを得ない>
注 旧皇族 1947年(昭和22年)10月、皇室会議は昭和天皇の弟の3直宮家(秩父宮、高松宮、三笠宮)を除く、11宮家51名の皇籍離脱を決めた。旧宮家ともいう。またこの皇籍離脱者の子孫も含めた総称で用いられることも増えている(ウィキペディアなど)。
▼象徴天皇制は国民の支持がなければ、存続できない
<この会議に臨むに当たり、世論調査で何割だからどう、という発想をとるべきでないという考え方を一貫して持ってきた。他方、象徴天皇の制度は、国民の一般的な共感と支持がなければ存続できないわけであり、それを無視したようなことはできないことも厳然たる事実。その中で、現状がどうなのか、このままだと憲法の象徴天皇制度がどうなるのか、ということを考え、この会議として筋を通した結論を出すことで国民にも理解をいただけるようにするということではないか>
▼新しい皇室の姿は国民のバックアップがなければ、成立しえない
<新しい皇室の姿は、皇室ご自身のご努力と良識ある国民のバックアップがなければ成立しえず、それこそが今一番望まれているものなのではないか。この有識者会議での結論に対する国民の支持は、手続き的には、国会で議論していただくことであるが、有識者会議としても、国民の支持が最大限得られるよう、考えられる範囲で努力し、その結論が国民の意識と乖離しないことを意識して、議論を進めてきた>
(2)これまでの議論を踏まえ、皇位継承資格を皇族女子や女系の皇族に拡大する方向を基本に報告書の取りまとめに向けた作業を進めることで、意見の一致を見た。
また、皇位継承順位については長子優先か兄弟姉妹間男子優先かという点に関しては、今後報告書について議論を行う中で意見の集約を行うこととなった。
05年報告書に従えば継承順位1位は愛子内親王
これらの理由を挙げた上で、05年11月24日、「長子優先」の報告書を提出した。報告書の該当部分は以下の通りである。
<「長子優先」の場合、出生順に皇位継承順位が決まることから、制度として分かりやすく、また、国民の期待やご養育の方針も早期に定まるという点で優れている。国民が、天皇が男性であることになじんでいる面はあるとしても、以上のような意味での安定性は、最大限に尊重されることが望ましい。したがって、天皇の直系子孫を優先し、天皇の子である兄弟姉妹の間では、男女を区別せずに、年齢順に皇位継承順位を設定する長子優先の制度が適当である>
この報告書に従えば、現行の皇位継承順位から「女系容認」と「長子優先」に代わり皇位継承順位は第1位が愛子内親王となる。
せっかくここまで議論が進んでいたにもかかわらず、安倍政権により、この報告書は反故にされた。今回の有識者会議の議論についても、「論点整理」だけで終わるのでは、との観測も自民党内から出ている。確かに、国のありようを変えるのだから、国民的議論が必要なことはいうまでもない。「女系天皇」や「女性宮家創設」について、〃超保守派〃からの強い反対の声があることは確かである。民主主義なのだから、このような意見があること自体を私は否定しない。ただ、国民全員が納得できる「皇室制度」などは元々、無理筋の話であり、できるだけ多くの国民の理解が得られる制度作りが急がれる。最悪なのは、皇室の公務の負担軽減策として、女性皇族が結婚した後も公務を続けてもらう「皇女制度」でお茶を濁す手法である。菅首相のこの問題に対しての、官邸官僚への〃丸投げ〃の姿勢を見せられるにつけ、この人の「国家観」は一体、どこにあるのだろうかと考えてしまう。繰り返すが、「女性宮家創設」も「女系天皇容認」もジェンダー平等の観点からも必要である。