高市早苗氏を支持するかどうかでその認識に個人差があるとは思うが、あれよ、あれよと言う間に世の中、特に日本の政治状況が新政権の誕生で激変していないか―。このスピード感って、何だか恐ろしい。
10月21日に高市氏が首相に就いてまだ1カ月もたたない。就任直後の「外交デビュー」、その後の9日間の「国会での予算委論戦」も11月14日に終わった。
日中首脳会談の実現で日中関係がやや改善されたと思ったら、それもつかの間だった。高市氏の国会での「台湾有事が『存立危機事態』になりうる」答弁が中国の虎の尾を踏んだ。これに対して中国・大阪総領事の「汚い首は斬ってやるしかない」とX(旧ツイッター)に投稿。これらをめぐり、日中双方のナショナリズムが煽られ、非難の応酬が続いている。14日には中国外務省が、国民に対して、当面、日本への渡航を自粛するよう呼びかける事態に発展した。日中関係はほんのわずかな間で以前よりも、酷い状況に変わった。だが、頼りのトランプ米大統領は習近平中国国家主席と「うまくいっている」とつれない反応だ。高市氏は訪日の際に一緒に米空母に乗り、小躍りするなど愛嬌をあれほど振りまいて歓待したのに、なぜという気持ちだろう。対立がエスカレートして、日中の経済に大きな打撃となる可能性も否定できない。
何より、答弁の「撤回」が一番だが、頑なに高市氏はこれを拒否している。では、この危機をどう乗り越えるのか。就任早々、自分の岩盤支持層を狙ったとみられる踏み込んだ発言がわざわいして、「中国リスク」が「高市リスク」に変わった。なぜか、私は1938年の日中戦争下の近衛文麿首相の時代の「国民政府(当時の中国政府)、相手にせず」との「近衛声明」を思い出した。この声明で、日中戦争は泥沼に、太平洋戦争につながった。もちろん、そんなことはあり得ないと信じている。国家のトップの公的な発言はそれほど重い。
さらに、唯一の戦争被爆国として、長い間、歴代政権が堅持してきた核兵器を「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」の国是とも言える非核三原則を高市政権は、安保3文書改定の議論で見直すつもりのようだ。国会で高市氏は「まだ、今言える段階ではない」と明言を避けた。しかし、高市氏の編著書には「『持ち込ませず』は米国の「核の傘」に期待するなら、現実的でないととの考えを示した。安保3文書に三原則堅持を明記しないよう求めたがかなわず『残念』だ」と書いている(朝日新聞社説)。要するに、高市氏は「非核二原則」にしたいということだ。日本国内への核持ち込みについて、現在は「ない」とされている。このようなことをしたら、被爆団体だけでなく、世論からも大きな批判の声が上がるだろう。では何のためにそんなことをするのか。ジャーナリストの布施祐仁氏は著書「従属の代償ー日米軍事一体化」の中で「米国政府は日本に地上発射型中距離ミサイルを配備し、通常弾頭だけでなく、核弾頭も装着できるようにすべきだと主張している」と書いている。どうも米国内にはそのような声もあるらしい。また、防衛装備移転三原則のせっかくのしばりである「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の「5類型」も撤廃され、殺傷兵器の輸出が全面解禁されそうである。
まだまだある。現代の治安維持法と呼ばれ、「言論、報道」活動にも影響を与えるとして、40年も昔に国民の反対で廃案となったはずの「スパイ防止法」の復活。これとセットで政府のインテリジェンス活動の司令塔組織「国家情報局」創設の議論も始まっている。自衛隊の階級を旧日本軍のように「1佐」を「大佐」に、「1尉」を「大尉」などとすることも「検討対象」だ。「自衛隊員が高い意識と誇りを持って任務に当たることのできる環境整備」が目的だそうだ。さらに、2027年度末までに、米国の中央情報局(CIA)を念頭に「対外情報庁」を作る方針も明らかにされている。「スパイ防止法」は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が熱心に成立を目指して活動していたいわくつきの法案だ。そもそも、平和憲法下の日本に本格的な情報機関は必要なのか。
何よりも、防衛費をGDP比2%への増額の今年度中の前倒しも決められ、米側が非公式で要求しているといわれるGDP比3・5%も視野に入ってきた。いずれ北大西洋条約機構(NATO)並みの5%までいく可能性は高い。そのかなりの部分が米国の軍事産業の懐に入ることになる。高市政権はこれらの一連の政策に、「前のめり」と表現するよりは「何でもあり」という状況だ。GDP比3・5%だと21兆円。原子力は「原子力基本法」で平和利用に限定されているはずだが、オーストラリアや韓国の動きと連動して原子力潜水艦の保有までが政権の射程内にある。これらが実現すれば、日本は世界でトップクラスの「軍事大国」になる。このことを国民はきちんとご存じか。
問題なのは、これらの政策に少数与党のはずの自民と連立を組んだ維新に加えて、野党の国民民主党や参政党も積極的なことである。これではらくらく、国会の議決で過半数を超える。
もう高市氏を単なる〃タカ派〃と呼んだり、〃高市カラー〃などとメディアが報道するのは認識が甘すぎるのではないか。高市氏の相次ぐ軍事、安保、治安優先の政策を「岩盤右翼層受け」を狙ったアピールと見る向きもある。すべての実現は困難だとしても、短期間のうちに、既成事実が積み上げられ、着々と事態は進んでいる。
これも、もとはと言えば、排外主義的な「日本人ファースト」を掲げた7月参院選での参政党の躍進で、保守層を奪われたとの認識を多くの自民党員が持ち、総裁選で予想外の高市氏を勝たせたこと。そして、高市氏の洋服までを話題にするなど、マスメディアが「初の女性首相」と過剰に持ち上げ続けた結果でもある。
「ハネムーン期間」はもう終わった。マスメディアは翼賛報道をやめて、「権力監視」という本来の役割を果たすべきときである。その真価がいまこそ問われている。
今回は国会論議の中から「高市流ゴマカシ論法」や武器輸出全面解禁の問題、さらに、ノンフィクション作家の保阪正康氏の「高市首相への懸念」、ネット情報に対抗する「データジャーナリズム手法導入」の4本をフェイスブックに投稿した。
▼「高市流ゴマカシ論法」 安倍政権時代の「ご飯論法」を思い出す
国会答弁が師匠の故安倍晋三元首相にどこか似てきたぞ―。
高市首相の衆院予算委の野党への答弁をテレビで見ていて、安倍政権時代の「ご飯論法」を思い出した。政権が野党の追及をかわすために論点ずらしやごまかそうとする時に使う論法で上西充子法政大教授が名付けた。
安倍政権とは、高市氏があまりにも生真面目なのでその内容は微妙に異なる感じはするが、11月10日の予算委の野党への答弁で目立った。とりあえず「高市流ゴマカシ論法」と名付けよう。
まず、台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できる存立危機事態になりうるとの7日の予算委答弁について、高市氏は自身の発言は「政府の従来の見解に沿ったもの」と発言の撤回を否定した。その上で「今後、特定のケースを想定したことをこの場て明言することは慎む」と語った。
「今後は慎む」と弁明しても、すでに中国は、高市発言に強く反発し、外交問題になっている。やはり、撤回しかないと思うがどうだろうか。
そもそも、日本は1972年の日中共同声明で、台湾を中国の一部とする中国の立場を「十分理解し、尊重する」と明記し、台湾を国家とは認めていない。この事実をマスメディアも忘れているのではないか。
二つ目は、自民党総裁選で奈良公園のシカを外国人観光客が「足で蹴った」との発言。その根拠を問われ、以前は「現地の秘書から聞いた」としていたが、今回は「私自身、英語圏の人に注意したことがある」と説明。「観光業者の目撃情報や奈良県警が外国語で注意喚起している」と根拠を示した上で発言撤回を拒否した。立憲の西村智奈美氏は10年以降、シカの加害行為で有罪となった2件は、いずれも日本人だった、外国人はいない、と指摘したが、高市氏はその事実は知っているとした。
ではなぜ、わざわざ外国人を強調するのか。「英語圏の人」と述べたり、「注意した」というならば、なぜ、当初から、メディアの質問があった時、そう弁明しなかったのか。
複数のメディアも高市発言後、現場の検証記事を出しているが、私が知る限りでは、外国人の加害の事実は見つかっていないようだ。
高市氏が「排外主義とは一線を画す」といいながら、政府が担当大臣まで設けて、外国人の規制強化を図ることは、外国人との共生とは名ばかりの「官制排外主義」に当たらないか。ルール違反は外国人、日本人を問わず問題なのは言うまでもない。
まだまだある。裏金問題に関与した側近の佐藤啓官房副長官(参院議員)が問題発覚後も選挙による審判を受けていない問題。高市氏は前にこのことを謝罪したものの、「不記載にあった議員については余分に働いていただきたいぐらい」と答弁、起用に理解を求めた。これは、答弁というよりも、開き直りに見える。
さらに、もうひとつ。「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が9日に名誉毀損容疑で兵庫県警に逮捕された事件をめぐり、同党副党首の斉藤健一郎参院議員を自民党会派に加わえていることについて、高市氏は「自民党は参院で無所属の議員と統一会派を組んでいる。N国党と組んでいるのではない」と主張した。自民党兵庫県連は会派を結んだ時から強く反対していた。少数与党であり、ひとりでも多くの議員を、との焦った気持ちは理解できるが、その責任は自民党総裁の高市氏にある。批判をかわすためか、斉藤氏は統一会派を離脱した。
以前に高市氏が総務大臣のころの「政治的に公平でないと認定され、何度も繰り返された場合には電波停止もありうる」との発言で俳優でタレントの坂上忍氏がこの時の高市氏の「法律上の可能性を述べただけであり、圧力を掛けたわけではない」との弁明を批判。「私はこの言葉を聞いたとき『ああ、この人は権力を与えてはいけないタイプの人なんだな』」(週刊新潮)と書いたことが、残念ながらいま、当たっているように思えてならない。
何でもひとりでやろうとするから、このような答弁になるのではないか。力まず、あくまでも謙虚に。もう少し、自分が最高権力者になったことを自覚してほしい。調査媒体が異なるので、単純な比較は正しいかどうか、何とも言えないのだが、JNN調査で82%もあった内閣支持率が9日放送のNHK調査で66%となった。支持率は落ち始めると早い。(事例はいずれも朝日新聞と東京新聞)。(11月11日)
▼昭和史研究の泰斗、保阪正康氏の高市首相への懸念
「その後明らかになる高市氏の政策を見るにつけ、平和を創出して国民生活を支えるという政治の根本に向かおうとしているようには思えない。(中略)根本的な政治姿勢に対する危惧は強くある」
85歳の昭和史研究の泰斗、保阪正康氏が雑誌「文藝春秋12月号」に「大衆よ、ファシズムに呑まれるな」との文章を書いている。
その内容は長い昭和史研究を踏まえた上でのできたばかりの高市政権に対する強い危惧の念である。保阪氏同様、私も危惧どころか、高市政権の安保・防衛問題への政治姿勢に強く危険な臭いを感じとっている。
保阪氏によると、党内右派を中心に票の組織化に執念を燃やした高市氏が念願を果たすことになったと大筋では論評されている、と前置き。
だがより本質的には、日本人ファースト、排外主義、歴史修正主義を特徴とする国家主義的右派の席巻や社会に充満する過激なナショナリズムの気風が、総裁選の投票権を持つ自民党員や国会議員に作用したことが大きかったのではないか。
その意味で高市総裁が誕生したのは、高市氏が党内の権力闘争に勝利したということに留まらず、その背景には現在日本の大衆の情動が色濃く塗り込まれていると言える―などと分析した。
安倍政権は集団的自衛権の容認、憲法改正宣言、官僚やメディアへの独裁的な支配などを行う「経済保守」の性格を有していた。高市氏はまさにそれを継承しようとしている。対米従属を強化し、防衛費増額を掲げて、安保3文書を前倒しで改定すると言っているが、これは軍事への傾斜であると同時に、対米従属のさらなる強化を意味する。
このあと、スパイ防止法、緊急事態条項についての憲法改正などに触れ、高市政権には「国家主義的右派による『国家観』は濃厚にあるが、『国民観』が希薄なのだ」と危惧の念を表明。
「現在の日本人ファースト、排外主義、歴史修正主義という立場はファシズムの兆候と見るべきだろう。危険な熱狂から身を引き剥がすために、私たちは個人に立ち返り、歴史と対峙する必要がある」と結論している。
けっこう長い文章だが、保阪氏の高市政権に対する強い危惧の念がグイグイと伝わってくる。メディアの礼賛報道がはびこるいま、ぜひ全文を読むことをお勧めする。
高市氏は衆院予算委で、台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になりうるとの歴代首相初の国会答弁で中国の強い反発を招いたが、その発言撤回を拒否。さらに、野党に追及されても、国是の非核三原則堅持も明言しなかった。防衛装備移転三原則についても、殺傷力ある武器の輸出拡大の日本維新の会との協議も年内に始まる。少数与党のはずの高市政権のもとで、「戦争ができる国」への準備が猛スピードで進む。(11月12日)
▼武器輸出を全面解禁へ 崩されていく平和憲法の理念
「イケイケどんどん」で本当にいいのか―。防衛費増額などで安全保障に前のめりの高市政権。アクセル役の日本維新の会の後押しで、非戦闘目的に限られていた「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5類型ルールを撤廃。殺傷能力のある武器の輸出を全面解禁する方向にかじを切った。
5類型撤廃は政府.与党内の手続きだけで実現できる。連立から外れた公明党に代わって与党入りした維新がまず、撤回に向けて12日、勉強会を開いた。自民と維新は年内にも与党協議会を開き、来年の通常国会で撤廃実現を目指す(朝日新聞)。
1967年、佐藤栄作内閣で「共産圏」「国連決議で禁じられている国」「国際紛争当事国」など三つの場合には、武器輸出をできないとした「武器輸出3原則」が定められ、76年の三木武夫内閣で「その他の国」への輸出も「慎む」ことになり、事実上の全面禁止となった。
それを、2014年、第二次安倍晋三内閣で、その名前も「武器」という言葉がなくなり「防衛装備移転3原則」に改められ、5類型が整備された。いまから思えば、これが全面解禁への突破口だった。
さらに、日英伊による現行の主力戦闘機F2に代わる次期戦闘機開発をきっかけに、24年、防衛装備移転三原則の運用指針が改定され、第三国への輸出が可能となった。この時、防衛産業から「戦闘機を共同開発するならば、英伊と同様に他国への輸出も必要」との強い声が上がり、これに応じた形だが、戦闘機も当然、殺傷武器だ。武器の輸出拡大を進めたい政府と防衛産業との利害が一致した結果だった。
今回、防衛力拡大やこれを経済の活性化につなげたい高市政権がこれを利用することは、ブレーキ役だった公明党の連立政権からの離脱により、当然の成り行きだった、ともいえる。
武器輸出について、公明党は「しばり」を重視し、維新は5類型を「足かせ」ととらえている。小泉進次郎防衛大臣は就任後、維新で「連絡役」として官邸入りした遠藤啓首相補佐官と面会し、「5類型」の撤廃は維新の方から後押ししてほしい、と求めた(朝日新聞)という。
1976年の三木内閣以来、おおむねGDP比1%以内を目安としてきた防衛費が高市政権ではトランプ米大統領との会談で2%に前倒しする方針を明らかにしており、米側が非公式に要求していると言われるGDP比3・5%も当然、視野に入ってきた。原子力潜水艦の保有の議論も浮上している。
高市政権の登場とともに、軍事大国に向けて「イケイケどんどん」になっていないか。中国の軍事的台頭を口実にして、平和憲法の理念が崩されていく。(11月13日)
▼ネットの偽情報に対抗 マスメディアに「データジャーナリズム」の手法導入
やや少し古い話となるが、9月末、「移民への排外主義」との関連でマスメディアで問題となった国際協力機構(JICA)の「ホームタウン」騒動。朝日新聞の14日付朝刊に山腰修三慶応大学法学部教授(ジャーナリズム論)が「メディア私評」で、「この騒動はメディア政治の現代的特徴の一端を示している」と指摘し、「こういう状況とジャーナリズムが立ち向かうにはどうするか」との重要な問題提起をしている。
山腰氏の結論だけを簡単に紹介すると、「伝統的なジャーナリズムのニュースはもはや『自分たちのもの』ではなくなりつつあるのだ。そのことと陰謀論の活性化とはコインの裏表の関係にある。(中略)陰謀論と向き合うには、それを否定したり、ファクトチェックを行ったりするだけでは十分ではない」と指摘。その上で「なぜ今日の多くの人々が陰謀論の物語に惹き付けられるのかを、マクロな社会の変化との関連性を意識しながら多角的に問うことが求められている。そしてそうした取り組みこそが、ジャーナリズムの現代的困難を乗り越えることにも通じているのである」と結論している。
「ファクトチェックだけでは不十分」ということだが、今の偽情報にあふれるSNSを中心としたネット社会では山腰氏の指摘はもっともだと思う。では「マクロな社会の変化との関連性を意識しながら、多角的に問う」には、どうしたらいいのか。簡単ではないが「データジャーナリズム」という新しい手法が登場している。これも一つの手法であり、これがジャーナリズムの在り方を変えるかもしれない。
そこで、データジャーナリズムの手法を使ったJICAのホームタウン騒動に関するすぐれた報道記事を紹介しておきたい。これは私がいた共同通信の事例だが、朝日新聞をはじめこのところメディアでこの手法が記事作りのさまざまな場面で定着し始めている。多角的な手法の一つとして考えたい。
「ホームタウン」という事業のネーミングがよくなかったとはいえ、こんなことで大事な国際交流がつぶされるとはー。「誤情報」の拡散などにより、一部世論が炎上し、JICAが9月25日、アフリカとの交流推進を目的とした4市の「ホームタウン」事業を撤回した問題で共同通信が10月2日に配信した検証記事で以下のようなことが分かった。
共同通信記事によると、X(旧ツイッター)を分析するメルトウオーター社のツールを使った検証で、以前から排外主義を主張していた人物が8月23日午前1時半ごろ、「日本が特別なビザを付与する制度を創設した」とのナイジェリア政府の誤った発表(8月22日)を引用、さらに事業と移民を結び付け「なぜ日本がアフリカ諸国のホームタウンにならないといけないのか」と投稿。これは約16万8千回閲覧された。23日朝、まとめサイトの関連投稿をインフルエンサー2人が拡散し「移民受け入れ決定」など誤情報が広がった、と分析している。
JICAの8月21日の発表直後には、「ホームタウン」という言葉が独り歩きし、移住と関連付けた投稿や不安の声、アフリカ人への差別的な内容も散見された。しかし、拡散の動きは目立たなかった。それがナイジェリア政府の誤情報発表で急展開したことも間違いない。それに、英BBCなど海外メディアが報道。「これらの発表や報道を示して『正確性』を強調する投稿に、不確かで差別的な内容が掛け合わされて拡散」された。25日には事業に関する投稿数はは約31万件と1日当たりの投稿数のピークを迎えた、としている。記事は「報道や公的発表の引用は、炎上に最も効果のある『燃料』になった」と結論している。
8月25日には、JICAがナイジェリア政府の発表を否定したものの4市には抗議が殺到。Xの分析では、その前の土日に急拡大した投稿に「市役所に電話やメールをしよう」と煽る呼びかけが多数含まれていたことも判明している。反移民感情がネットにあふれ「JICA解体デモ」まで起き、1カ月後の9月25日、JICAは事業の撤回発表に追い込また。
これは、この9月に共同通信にできたばかりの「データ調査報道部」の報じた記事。「アフリカ『ホームタウン』事業 SNSで何が?」「誤情報で炎上 撤回圧力に」の見出しで東京新聞や西日本新聞などに大きく掲載された。「データ調査報道部」はデータ分析に偏らず、現場取材にも力を入れる。同部によると、この部は「調査報道」専門の「特別報道部」を改編し、部長、プレイヤーを兼ねるデスクや記者10人とエンジニア、カメラマン、イラストレーターなど18人体制。今回の記事は3人の記者がかかわった。朝日新聞だけでなく、日経新聞にもすでに同じように「データジャーナリズム」の部門があるという。「オールドメディア」などと揶揄されながらも、マスメディアではいま、生き残りをかけた新たな試みが始まっている。(11月14日)