コラム「番犬録」第20回 高市首相のふわっとした人気だけで日本の行方を判断していいのか 自民、維新の与党で300超える大勝利の可能性  やや腰の引けた朝日の首相と統一教会絡みの「TM特別報告」報道 TV党首討論での大局観のない発言 NHKの討論番組ドタキャン 統一教会問題と「円安ほくほく」発言の追及逃れのためか 萎縮したMBSの謝罪報道 「日本核武装」めぐる内田樹氏の問題提起をどう受け止める

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 具体的な政策でなく、ふわっとしたした首相の人気だけで日本の大切な行方を判断していいのかー。解散記者会見冒頭での首相の「高市早苗が内閣総理大臣でいいのか、主権者たる国民に決めてもらいたい」という言葉が有権者の心に突き刺さったようである。当初は「日本は議員内閣制で大統領制ではない」などと、SNSで一時批判の声も上がったこの言葉。高市氏のもくろみ通り「初の女性首相」であることと相まって爆発的な〃高市人気〃につながり、時が経つにつれ、有権者の総選挙での圧倒的な自民党への支持となったのではないか。こんな選挙でいいのか。大きな疑問だが、民意がそうならば仕方がない。

 1月27日の選挙公示日から1週間経った2月2日。朝日新聞朝刊1面トップに「自維300議席超うかがう 中道ふるわず半減も」の見出しが躍った。

 1月31日から2月1日にかけて約37万人を対象とした衆院選中盤情勢調査結果は①自民党は単独で233議席の過半数を大きく上回る勢いで日本維新の会と合わせて与党として300議席をうかがう②立憲と公明の新党「中道改革連合」はふるわず、167議席の公示前勢力から半減する可能性もある、との内容だった。それまでに、読売新聞、共同通信、日経新聞などマスメディアの序盤情勢が出ていたが、いずれも「自民が単独過半数うかがう 中道は伸び悩み」というもので、朝日調査はそれらを大きく上回っており、私のように中道ができたことで超タカ派の高市政権の対抗軸となりうる、と期待していたものには、ビックリの結果だった。

 その詳しい分析が朝日の3日付朝刊に出ているので簡単に紹介する。

 調査は比例が電話と選挙区がインターネットで実施。選挙区、比例区ともに、投票態度を明らかにした人を対象に分析した。情勢調査と合わせて実施した世論調査で、内閣支持率は57%、不支持率は25%。前回、自民が単独過半数を割った24年総選挙時の石破茂内閣時の支持率は33%で、不支持率は39%。今回、全国11ブロックの比例区投票先を合算すると、高市内閣の支持層の65%が自民に投票すると答えた。高市氏率いる自民が、前内閣と比べてほぼ倍増した支持率の多くから支持を集めている様子がうかがえると分析している。また、内閣支持率に加えて自民支持率も前回の25%から33%に上昇。自民支持層の9割が比例区投票先に自民を選び、支持を底支えしている。「高市早苗が首相でいいのかどうか、国民に決めてもらうしかない」。解散に踏み切った理由をこう説明した首相にとって、高い支持率が追い風になっている。

 これに対して、中道には、比例だけでなく、選挙区でも逆風が吹いている。その背景には、結党が公示直前となり、野党間の調整が整わなかったことがある。中道が「大きな結集体」になれていない現状があらわとなった、と分析。それでは、選挙区に1万~2万票あるとされる公明票はどうか。今回の世論調査で昨年の参院選の比例区投票先を聞いたところ、「公明」と答えた人(公明投票層)は4%。このうちの2割程度は自民支持層が含まれているとみられる。こうした公明投票層のうち、中道を投票先に選んだのは比例区では76%、選挙区では56%だった、としている。公示前の中道の選挙区106議席に比べて下限24から上限39、比例61議席だったのが下限36、上限48となっている。この中道の分析の部分は、私が数字に弱いのかも知れないが、分かりにくい。

 前回衆院選で「自民優勢」との在京各紙に比べて「自民過半数割れ」を予想し、その通りになるなど選挙の情勢分析には定評のある朝日だが、「投票態度を明らかにしていない人は選挙区では4割にのぼる。選挙区での戦いぶりが中道の選挙結果を左右しそうだ」とも書いている。「まだ確定ではないよ」という言い訳なのだろうが、記事のリード部分にこの記述はない。よほど自信があるのか。また、2日、共同通信が「自民が単独過半数の勢い 中道の不振続く」との中盤予測を配信しており、朝日以外の在京各紙の序盤情勢も「自民単独過半数を超える勢い」という点で共通している。従って、自民が「大勝」しそうだという傾向は間違いないだろう。

 ただ、改めて、大手メディアによる国政選挙での「情勢分析」報道が有権者の投票行動に影響を及ぼす可能性も指摘されている。結果はいずれははっきりすることなので、各社調査でそのポイントに大きな開きが出るなど世論調査の信頼性が揺らぐ中、そこまで大きな金をかけて各社競争してやる必要があるのか、との問題点も指摘しておきたい。

 要するに、「作り笑顔」と「パフォーマンス過剰」を特徴とする「何かやってくれそう」という高市氏のタレントへの「推し」のようなふわふわした人気はいまだに衰えず、その人気が内閣への高支持率を生み、自民が大勝しそうだということなのだろう。

 自分の首相の地位を守るだけの無理筋の真冬の「自己チュウ解散」と言われながらも、高市氏が具体的にこの3カ月あまりの間に何か国民のためにしたことがあったか。ほとんど思いつかない。就任以来、「台湾有事は存立危機事態になり得る」と国会答弁して日中関係を悪化させただけでなく、今回の総選挙でも「裏金議員」や「統一教会汚染議員」を公認し、比例復活も認めた。公示日前日の民放の党首討論でも、韓国の統一教会「TM特別報告」に書かれた「32回も文書に登場」をれいわの大石晃子代表に突かれると顔色を変えて「名誉棄損になりますよ」などと脅す。唯一の戦争被爆国としてこれまで歴代政権が堅持すると約束してきた「非核3原則」への質問には一切、だんまりを決め込み、その「変更」を暗ににおわす。

 防衛費の大幅増額や、基本的人権を奪いかねない「スパイ防止法」、「国家情報局」「日本国旗損壊罪」などの政策を打ち出すなど、高市政権には「国論を二分する」ような問題がてんこ盛りだ。高市氏が師と仰ぐ故安倍晋三首相は「積極的平和主義」を掲げて平和と反対方向の「集団的自衛権容認」の安保法制制定で「戦争のできる国」にしたが、高市氏はさらに、それを拡大・発展させ「将来、戦争をする国」にしようとしているのではないか。中国との関係の発言を見ていると、その思いは強くなる一方である。今回の選挙は「政権選択選挙」ではあるが、平和か戦争かの問題も問われている、と私は考えている。

 高市氏は1日午前に開かれた恒例のNHKの討論番組「日曜討論」を直前になってキャンセルした。高市氏はX(旧ツイッター)で「遊説会場で熱烈に支援してくれる方々と握手した際に、手を強く引っ張られて痛めた。関節リュウマチの持病があり、手が腫れてしまった」と投稿。尾崎正直官房副長官が翌日になって「持病の関節リュウマチが遊説中に悪化をして、1日朝に治療が必要になった」と弁明した。番組は午前9時から10時15分までだったが、キャンセルは午前8時半ごろだったらしい。午後からの岐阜、愛知への遊説は予定通り実施した。高市氏は右手の指にテーピングを巻き、左手首にリストバンドを着けた状態で街頭演説に臨んだという(2日付東京新聞)。遊説時のニコニコしながら元気に演説する高市氏の動画がネットに上がっている。NHKのこの番組は、今回選挙で1回だけの大事な党首討論。その論戦での高市氏の参加を国民は期待していたはずである。それをなぜドタキャンしたのか。

 1月29日発売の週刊文春2月5日号は高市氏の「統一教会シリーズ第3弾」としてスクープ記事を載せた。冒頭の5ページが「高市事務所裏帳簿を入手! 統一教会&逮捕社長のパー券購入を隠蔽していた」との記事で埋まった。その内容は、高市事務所の裏帳簿を文春が入手。その中に統一教会の関連団体が19年に2回計4万円のパーティー券を高市事務所から購入、12年にも3名が計6万円分のパー券を購入していた、という。高市氏の22年8月のXは、統一教会との接点は「すべてなし」と断言していた。同月に公表された自民党の調査結果にも高市氏の名前は記されていなかった。つまり、文春報道によれば、高市氏はこのことを隠していたことになる。さらに、1月31日には応援演説で「輸出産業にとっては大チャンス、外為特会(外国為替資金特別会計)の運用、今ほくほくの状態だ」と発言。「円安メリットを強調した」と海外の通信社を含むメディアから批判を受けた。

 NHKの討論番組ドタキャンは、以上の二つのことも、失礼ながら、野党党首から問いただされるのが嫌だから逃げたとの疑いは残る。地方への応援演説には行くことができたのだから、お気の毒ではあるが、そういう疑いをもたれないためにも、手の痛みを我慢してでもNHKの討論番組は欠席すべきではなかったのでは。共産、社民両党は2日、このことで抗議文を自民に送っている。高市氏はXを使って言い訳はするが、きちんと記者会見を開いての説明をしない人である。高市氏は「与野党で過半数取れなければ責任を取る」と公言していた(その後にこれを撤回したような発言も?)。2日付の朝日新聞は情勢分析記事の終わりに「首相人気に頼る自民。ベテラン議員は『ふわっとした支持は失言一つで離れる』と警戒する」と書く。勉強不足もあるのか、言う言葉が軽く、失言も多い。あくまでも皮肉だが、せっかくの「大勝利」間近なのだから、くれぐれも発言にはご注意を。

 今回は1月27日から選挙戦に入った高市政権の動きとメディアの対応など4本をフェイスブックに投稿した。

▼「TM特別報告」文書を朝日も報道 毎日と比べやや腰が引ける

 朝日新聞は25日付朝刊で、統一教会幹部から韓鶴子(ハンハクチャ)総裁にあてた「TM(まことのお母様)特別報告」と題する文書を入手し、その内容を初めて報道した。韓国の聯合ニュースやハンギョレ新聞が昨年末にすっぱ抜いて以来、この文書を入手し、その内容を報じた日本のメディアは週刊文春1月15日号(8日発売)、同22日号(15日発売)を皮切りに、大手メディアも毎日新聞が23日付朝刊で,TBSも24日の「報道特集」で取り上げた。それに加えて、朝日が続いた意味は大きい。

 高市早苗首相が26年度予算成立を吹っ飛ばし、評判がひどく悪い真冬の解散総選挙にあえて踏み切った理由の大きな一つがこの文書を国会の予算委で追及されることを恐れたためといわれている。昨年の韓国メディアの報道後にも日本の大手メディアは韓国報道を紹介するかたちで簡単に報道しただけで、その扱いも大きなものではなかった。特に週刊文春が強調した「高市総裁が天の願い」「高市首相も32回登場」の肝心な部分については、毎日と日本経済と後になって東京新聞が触れただけで、その他の大手メディアは無視した。

 今日の朝日は「旧統一教会、政界との接点を強調」「韓総裁に18~22年の『成果』報告文書」の見出しで、社会面準トップという比較的大きな扱いだった。ただ、その書きぶりを精査すると「記述には誤りも 教団『確認中』」という中見出しを付け、「文書の記述は詳細で、政治家が関わる行事の日時など事実関係は正確な部分も多い」としながらも、肝心な高市氏の部分は「高市早苗首相の名は『期待する政治家のひとり』などの趣旨で多数回登場するが、実際には奈良である出身地について、報告書は『神奈川』と記述する」とだけ書くにとどめている。「文書に32回登場」や「高市総裁が天の願い」という具体的な言及がない。

 それに比して、統一教会が16日にホームページに掲載した「事実に反する内容が加えられたり、書き換えられたりしている」と主張。「政治家に関する記述にも誇張や脚色がある」と紹介している。統一教会側の反論を載せるのは当然だが、問題は「高市氏」に触れた部分に具体性がないだけでなく、毎日報道と比べて見ても、出てくる回数が約500回と突出している故安倍晋三元首相のことは「安倍晋三首相(当時)と複数回、面会したとの記述もある」と触れたのみ。また、毎日では「約70回も登場する」と書かれているこの問題のキーパーソンの萩生田光一幹事長代行についても「常に連絡を取り合う関係」と記されてはいるものの、内容が薄すぎて物足りない。朝日がこの問題で文書を入手し、報道し始めたことには評価するが、全体として、なぜか、腰が引けた内容となっている。朝日新聞はもっと頑張れ。

 この問題で日本の大手メディアが再び報道を始めたことは大いに評価したい。民放の情報番組など他のメディアも続いてほしい。(1月26日)

▼党首討論に見る首相の大局観のない「パフォーマンス過剰」な発言にあきれる

 今の時代、こうしたハッキリとしたものの言い方をする人が受けるのかもしれない。衆院選公示日直前の1月26日、テレビで中継された日本記者クラブや民放の党首討論での高市首相の振るまいを見ていてつくづくそう感じた。

 国民の高い支持率が続く「日本初の女性総理大臣」が自分の味方にしたいと考える野党党首には「政権参加」」への嫌らしいほどのプロポーズの態度を示してこびを売り、自分と政治思想が異なる少数政党党首には、その主張に、顔色を変えて強く反論する。こういうところも、高市氏が師と仰ぐ故安倍晋三元首相に似ているのかもしれない。確かに、分かりやすいかといったら、分かりやすいのだが、明らかに演出やパフォーマンス過剰である。こう言っても、「高市ファン」には聞こえないだろうが、一国の首相なのだから、もう少し「大局観」や「バランス感覚」のある鷹揚なところを見せてほしい。

 解散記者会見冒頭から突然、「高市早苗が内閣総理大臣でいいのか、主権者たる国民に決めてもらいたい」と言って驚かしたり、今後法案提出予定の「スパイ防止法」のような人権をないがしろにしかねない政策について、「国論を二分するような」との首相として口にするのはいかがと思わせる国民の分断を示す言葉を使う。本来、国のトップの役割は国民の分断を煽ることではない。政策実現のために、あくまでも地道に粘り強く、国民に理解を求めるところにあるはずだ。それが熟議を大切にする議会制民主主義のまっとうな在り方だと私は思う。高市氏はその正反対のパンチの効き過ぎたきつい言葉が次々と出てくる。

 このような独りよがりの人物に選挙で勝たせてお墨付きを与え白紙委任したら、それは「独裁国家」の道をまっしぐらということになりかねない。党首討論を見て改めてそう思った。衆院解散から2月8日投開票という戦後最短の「政権選択選挙」が27日始まった。日本記者クラブ、テレビ朝日の報道ステーション、TBSの「News23」と26日にあった党首討論で出た高市首相の発言のうち、私が今回の総選挙を象徴しているのではないかと考えた言葉ややり取りを「独断と偏見」で拾った。

■政治とカネ・裏金問題

 午後1時過ぎから始まった恒例の日本記者クラブ主催の「党首討論」。衆参いずれかで10人以上の議席を持つという政党条件にあてはまる自民、維新、中道、国民、共産、れいわ、参政の7党首が約2時間、討論した。この中で、今回選挙の大きなテーマとされる「政治とカネ」、自民党の裏金問題について。「自民党は裏金事件に関与した候補らを公認し、比例代表の重複立候補を認めたのはなぜか」との記者クラブ側の質問に、高市氏は「みそぎが済んだとは受け止めていない。とにかく2度と繰り返さないことが一番大事。ルールを徹底的に順守する自民を構築していくことが私の役割で、専門知識を持つ人材にもう一度働くチャンスを与えてほしい」と答えた。

 思わず、この答えにはのけぞってしまう。萩生田光一氏などは「裏金」だけでなく、もう一つの大テーマである統一教会問題にも大きく関係しているとみられる議員。昨年末に韓国メディアにより報道された「TM特別報告書」にその名が約60回も登場する。18年から5年間で2728万円もの裏金が明らかになっているにもかかわらず、高市氏はメディアの批判も恐れず、「影の幹事長」といわれる幹事長代行という党の要職に抜擢した。高市が「みそぎは済んでいない」よいうならば、公認すべきではない。朝日新聞の27日付夕刊のの「素粒子」。「みそぎは済んでいないが働かせてくれ。そんな馬鹿な話はあるか」。全くその通り。こういう発言にはあきれるほかしかない。

■台湾有事「逃げれば日米同盟つぶれる」また新たな火ダネを提供

 次は夜の「報道ステーション」。高市氏は「台湾有事」への対応を説明。「台湾有事に日米両国が現地に滞在する邦人や米国人の救出のため、共同で退避作戦を行う可能性がある」と指摘。その上で「(日本と)共同で行動をとっている米軍が攻撃を受けたとき、日本が何もせず逃げ帰ると、日米同盟は潰れる」と語った(日経)。日中関係の悪化のきかっけとなった昨年11月7日の衆院予算委での「台湾有事は存立危機事態」答弁では必ずしも明確でなかった集団的自衛権の対象を具体的に語ってしまった。

 中国側から再三、その答弁撤回を求められたが、高市氏は「政府の従来の見解に沿ったものだ」として、これを拒否し、中国による日本へのレアアース輸出停止問題にまで波及しつつある。米中の関係修復をのぞむ米トランプ大統領からも電話でしかられた、との報道もあった。高市氏は「今後は特定のケースを想定したことについてこの場で明言することは慎む」と〃反省〃していたはずだ。それなのになぜ、わざわざ、中国をさらに刺激しかねないこのような発言を再びしたのか。

 前回の答弁が「反中国」の日本の世論と相まって高市氏の高い内閣支持率に結びついたと考え、高市氏は、下がり始めた支持率の浮揚をもくろんだのではないか。「奈良公園で外国人がシカを蹴った」発言がこれも世論受けする排外主義につながる「外国人政策の厳格化」に結びついたのと同じ姑息な政治手法だと思う。中国との関係が悪くなればなるほど高市氏の人気が高くなるということなのだろう。自ら外交での対話を進めずに「中国側とはいつもオープン」とは聞いてあきれるほかはない。

■韓国の「統一教会TM文書」でれいわ・大石氏と〃バトル〃

 最後に「News23」。れいわの大石晃子共同代表が「自民党も維新も今、スキャンダルじゃないですか。維新は国保逃れ、自民党も統一教会との文書が出てきた・・・っていう渦中であります。その時解散するっていうのは・・・」と批判。これに対して、高市氏は突然、厳しい表情になり「それ名誉棄損になりますよ。出所不明の文書について・・・」とくってかかった。

 これに対して、大石氏は「名誉棄損の構成要件て分かっていますか」と切り返した。高市氏はさらに、「その文書なるものを見ましたけれど、明らかに誤りです。例えば、私の名前が30何回出てきているとかいうところ。明らかに事実じゃない。神奈川県出身で神奈川の支部から支援を受けたとあったが、私は奈良県です。名誉棄損だと思いますよ」と主張した。これに大石氏は「名誉棄損だと言われる方が名誉棄損ですよ。出所不明の文書ではありませんしね」と反論した(日刊スポーツ)。
 
 このバトルで分かったことは、韓国文書に高市氏は自分の名前があることを強く意識していたことだ。それならば、もっと前に、会見などで弁明しておくべきだったのではないのか。だから、「統一教会文書逃れ解散」などと言われる。

 「TM特別報告」は日本の元統一教会会長らが韓国の韓鶴子総裁に教団なナンバー2の人物を通して報告したもの。韓国の捜査当局から韓国メディアが入手してスクープした。週刊文春が2回にわたり「高市総裁が天の願い」などの見出しでその詳しい内容を報道。朝日、毎日,TBSなどの日本の大手メディアも入手し報道し始めている。確かに高市氏の出身地を間違えるなど、事実と異なる点はいくつかあるが、日本の統一教会元会長が「自分が報告した」と認めている文書だ。決して「出所不明」ではない。そういえば、23年春に発覚した、安倍晋三政権時の高市氏が総務相時代の放送法「政治的公平」に関する総務省の行政文書をめぐり、自分の発言を記した文書について「ねつ造だ」と主張し、そうでなければ、辞職も辞さない姿勢を示したが、当時の松本剛明総務相は「行政文書」と認めた事件を思い出した。それでも、高市氏は辞めなかった。

 こういう言い方は高市氏の癖なのかもしれない。

 そもそも、私の知る限り、この問題で高市氏が発言するのは初めてだが、19日の官邸記者クラブとの記者会見でこのことを一切、質問もしなかった大手メディアも悪い。この問題を追及し続け、文書に目を通したジャーナリストの鈴木エイト氏は「統一教会による高市氏への大きな期待が何度も書かれている」と指摘している。私は「News23」は見ていなかったが、この問題について、大石晃子氏は報道ステーションでも追及しており、その時の高市氏の顔は恐ろしいほどこわばっていた。
 
 この問題でのマスメディアの腰の引け方は一体、どうしてなのか。

 大手メディアの上からの圧力や高市政権からの圧力よりも、高支持率が続く、高市政権の現場の忖度やけっこう高市ファンが多いといわれるマスメディア内の記者個人の考え方が関係しているのかもしれない。このところ、現場のマスメディアの記者たちも、意識が大きく変化し、「権力の監視」などよりも、分かりやすい「高市びいき」の記者がけっこういるのではないか。そうでなければ、これほど大量の〃ヨイショ翼賛報道〃が続くわけがない。
 
 公示日の27日午前10時前、JR秋葉原駅電気街の広場。安倍元首相が選挙のたびに使った「保守の聖地」と呼ばれる演説会場だ。高市氏はここで維新の吉村洋文代表らと選挙カーに上り第一声。マイクを握った高市氏は「歯を食いしばって30年以上かけてやっと総理大臣になれた」と左手を目に当て涙ぐむ姿を見せた(スポニチ)。私はテレビのニュースで見ただけだが、なぜか、いつもと異なり、化粧も薄く、地味な服装に見え「(与野党で過半数という)退路をたった戦い」を演じていた。そういえば、まだ、総裁になったものの首相が決まらない段階の時に「総裁になっても総理になれないかわいそうな高市早苗」と自ら言っていたことを思い出した。やはりこの人は自己愛の強い「パフォーマンス過剰」な人である。選挙は人気投票ではない。(1月28日)

▼「強くてこわい日本」MBS報道での謝罪 萎縮していないか

 在阪テレビ局、毎日放送(MBS)の虫明(むしあき)洋一社長は1月29日の記者会見で、22日放送の情報番組「よんチャンTV」(放送は関西エリアのみ)の衆院選報道で、一部政党が「強くてこわい日本」を目指していると説明したとして「非常に不適切。各政党と視聴者におわび申し上げる」と謝罪した(共同)。

 報道によると、番組では衆院解散を特集。公約やスタンスを基に「有権者の判断軸」を提示した際に、主要政党を2グループに分けて、自民、日本維新の会、参政の3党が「強くてこわい日本」を目指していると説明。もう一つのグループ(中道改革連合、国民民主、共産、れいわ)は「優しくて穏やかな日本」だった。

 東京新聞に掲載された共同原稿にはその経緯が書かれていないので朝日の記事で補足する。朝日によると、放送直後から、SNSで「偏向報道」「印象操作では」といった批判が相次ぎ、22日と23日にMBSは番組内で文言を訂正。正しくは「強くて手ごわい日本」だったとし、アナウンサーが「選挙前のこの時期に、本当に不適切であったと考えています。選挙の関係者の皆さん、視聴者の皆さんにご迷惑をおかけしました」などと謝罪していた。

 虫明社長はこの分類が番組に出演したジャーナリストへの事前取材に基づくものだったと説明。「強くてこわい」の真意は「周辺諸国から見て、外交や安全保障上、手ごわく侮れない日本という意味だった。前提を省略した丁寧さを欠いたまとめ方になった」との述べた。この言い訳も少し苦しい。

 番組でアナウンサーが謝罪し、さらに社長も謝罪する。確かに名指しされた三つの党から見れば、選挙中のことでもあり、支持者が「偏向報道」と言いたくなるのも分からなくない。ただ、「軍事費の拡大」「スパイ防止法制定」「国家情報局新設」など、今回選挙は高市首相が選挙演説で「強い日本」を連呼し、「国論を二分する」と記者会見で表明するなど国民にとっておっかないテーマがてんこ盛りである。それを「強くてこわい日本」と言ったからと言ってそれほど大きな問題になるのか。ましてや社長が謝罪するほどのことなのか。維新ファンが多い大阪の放送局で起きたことを割り引いても違和感が残る。

 むしろ、高市政権が勝利すると「強く怖い日本」になることを危惧するメディアや有権者の声もけっこうあるのも事実である。私もそう考えている。社長までが謝罪したことで、こういう有権者層の声を逆に無視したことにならないか。マスメディアに対する「偏向報道」や「印象操作」というSNSでの批判はよくあることなのでメディアとしては確かに表現などに注意を払う必要はあるものの、萎縮してはならない。
 
 日本の昭和史研究の第一人者である保阪正康氏は、昨年の雑誌「文藝春秋」12月号「大衆よ、ファシズムに呑まれるな」との論考で、現在の日本社会の政治動向について以下の4極に分解しているという。今回の問題を考える上でも参考になるので紹介する。
 
 ①国家主義的右派政党(参政党、日本保守党)
 ②国民政党右派(自民、公明)
 ③国民政党左派(国民民主、立憲民主)
 ④左派リベラル(共産、れいわ、社民)
  保阪氏は「日本維新の会」については①と②の間に位置づけている。

 私の考えは保阪氏と少し異なる。保阪氏は「国家主義的右派」について条件として①日本人ファースト②排外主義③歴史修正主義(歴史否定)ーの3つを挙げる。とすると、全体的に自民は②かもしれないが、高市氏は①で、公約などを見ると、維新も①である。立憲と公明が衆院で新党を作り、安保政策や原発再稼働にカジを切ったことで、立憲には、この2つの政策に必ずしも賛成でない人がいるとしても、誓約して新党入りしているので、「中道改革連合」は②の国民政党右派になり、私は国民民主も②と考えるので③の政党はなくなったと見る。全体的に④の「左派リベラル」を除けば、より右寄りになったのではないか。

 高市氏の登場で、保守を「強硬保守」と「穏健保守」に分ける報道もある。欧州の政党は「極右」と「中道右派」「中道左派」、そしてリベラル左派と分ける考え方もあるが、「イデオロギーの終焉」(ダニエル・ベル)が提起されて以来、ソ連の消滅もあって、その分類も難しくなった。ただ、以前の選挙時には「保革対立」という言葉で使われた「革新」という言葉が社会党の消滅(社民党として残る)とともに、いつの間にかなくなった。アジア太平洋戦争時には「革新官僚」という言葉もあり、それは右派の官僚を指した。

 現在の政党状況には、昨年の「日本人ファースト」を叫ぶ参院選での参政党の大躍進をきっかけとして「高市政権」が生まれた。異論はあろうが、高市氏の排外主義的、国家主義的スタンスから見て現在の自民党は「極右」の立ち位置にかなり近づいたと私は考えている。米国のトランプ大統領や欧州で「極右」の台頭が目立つようになってきたことも無関係ではない。(1月30日)

▼「今回選挙の隠された争点は『核武装』」 ショッキングな内田樹氏の問題提起をどう考えるか

 東京新聞の名物コラム「時代を読む」。フランス文学者で神戸女学院大学名誉教授・内田樹(たつる)氏の「選挙の先に来るもの」(2月1日付朝刊)は私にとって、かなりショッキングな内容だった。マスメディアでの、選挙で「自民優位」が伝えられる中で、改めてこの問題についても考えてほしい。

 その内容とは「今度の選挙の隠された争点は『日本核武装』である。でも、メディアはそれを報じない。たぶん気づいていないのだろう」と警告していることである。

 内田氏によると、「大義のない解散」には公約に掲げてある政策を実現すること以外の政治的意味がある、とする。高市早苗首相はもし選挙で信任を得たら「国論を二分する」ような大胆な政策に、批判を恐れることなく果敢に挑戦する、とも述べている。

 その根拠として、昨年12月18日の安全保障担当の「官邸筋」が記者団にオフレコで「私は(日本も)核を持つべきだと思う」と語り、その時に、この人物が用いたのが「国論を二分する」という表現だった。選挙に勝てば、首相はおそらく核武装に「挑戦」する気だと思う、と書く。そして、日本の政局だけ見ているといかにも唐突に思えるだろうが、米国の外交専門誌を読んでいると「日本核武装」は別に珍しい論件ではない,として、米外交問題評議会発行の「フォーリン・アフェアーズ」(Foreign Affairs)1月号には「同盟国の核武装で戦後秩序の再建を」という論文が掲載されていた。カナダ、ドイツ、日本に核武装させる「選択的核拡散」の有効性を論じていた、という。米国は西半球に軍事力を集中させるために東アジアから撤退させたいと考えており、在韓、在日米軍は縮減して、東アジアにおける偶発的な軍事衝突に米軍が巻き込まれることを最小化する。「日本核武装はその文脈で出てきたプランである」とする。 

  その上でこう書く。

 官邸が「核武装」を言い出したのは、米国のこの戦略的文脈の中の話である。まず国内に「中国は敵だ」という感情を醸成する。「戦うならば、核がいる」という方向に世論を誘導する。それによって、中国の「戦狼外交」が抑制的になれば、結構な話だし、仮に核戦争が起きても日本がこの世から消えても、中国と刺し違えてくれるならありがたいーと。トランプ氏はしたたかである。

 昨年末からのトランプ政権の国家安全保障戦略や国家防衛戦略をみると、確かに、トランプ政権は昨年の習近平国家主席との会談で「G2」という言葉を使い「米中の棲み分け」により、はっきりはしないが、(例え、台湾有事があっても)日本も自国は自国で守り、戦えという戦略に大きくカジを切ったようにも見える。高市氏がただちに「核保有」や「核共有」にまでいくかどうかは別として、今年中の改定を目指す「安保改定3文書」のうち、「非核3原則」の見直しは、「持ち込ませず」だけでなく、それ以上の意味を持つことになる可能性も否定できない。本当にそれでいいのか。内田氏の論旨は明解で、それなりの説得力がある。

 内田氏のこの考え方は、元朝日新聞記者のユーチューブニュースチャンネル「Arc Times」でも、東京新聞コラムに先立って、内田氏が展開していたこのところの持論だ。

 内田氏が言う官邸筋は、尾上(おうえ)定正核軍縮・核拡散担当総理補佐官だ。5人いる補佐官のひとり。航空自衛隊出身の元空将で高市氏と同じ奈良県出身。「持たず、作らず、持ち込ませず」の「非核3原則」について高市氏が「持ち込ませずは邪魔だ」と「見直し論」を書いた編著書「国力研究ー日本列島を、強く豊かに」(24年8月発行、産経eブックス)でも、尾上氏は「自衛隊の実力と反撃能力」という論文を掲載している。どうしても来てほしいと、高市氏が内閣官房に引っ張ってきた制服組初の総理補佐官だ。尾上氏は、第2次岸田文雄内閣で当時の木原稔(現官房長官)防衛相の政策参与をつとめており、高市氏、木原氏とも関係が深い。制服組OBの中でも、「核戦略理論」にも明るいとされ、他の安全保障の専門家と共に笹川平和財団で各政策を提言。この中では、「非核3原則」の見直しに加えて「日米の核共有の検討」がうたわれている、という(週刊新潮1月8日号)。
 
 内田氏がこのコラムで、尾上氏が「国論を二分する」という表現を使ったかどうか私は確認できていない。だが、最近のトランプ政権の動きと、もうひとつ、今回総選挙での連立与党の日本維新の会の公約が気になる。自民と維新の連立合意書よりも踏み込んだ政策として、維新の公約はロシアの核による威嚇に触れ「核共有を含む拡大抑止に関する議論を開始する」と書いている。この問題については、過去には岸田首相が「非核3原則堅持の立場から認められない」と国会答弁しているにもかかわらず、高市内閣の「アクセル役」を自称する維新が「専守防衛を『積極防衛』に転換する」ことに加えて、「核共有」を公約を盛り込んでいる(29日付朝日)。

 自民の公約には書けないが、維新の公約ならば書けるということなのか。もちろん、「非核3原則」でさえ、どうするのか意図的に明確に説明しようとはしない高市氏と自民よりタカ派の維新の連携プレイもあり得る。超タカ派の高市氏が「非核3原則」の見直しだけでなく、「核拡散防止条約(NPT)」という乗り越えなければならない大きな壁はあるものの、「核共有」や「核保有」を念頭に入れている可能性は高い。国民はそれでも高市政権を信任するのか・・・。

 内田氏がコラムで指摘した「今回選挙の隠された争点」としての「核武装」。唯一の戦争被爆国である日本にとっては、「核保有」も「核共有」も同様、絶対に許してはならない問題である。最後にもうひとつ。尾上氏の「核保有発言」。記者団にとって、名前は出さないオフレコだったという理由があるのかもしれないが、この問題を報じた新聞はいまだに尾上氏を匿名にしているだけでなく、なぜか、あまりこの問題に触れようとしない。政権の上げた「観測気球」かもしれない高市氏側近の「核保有発言」について、これ以上、発言者の実名を出さないことは、メディアが政権の戦略に加担したといわれても仕方がない。発言当初、自民党内にも「処分論」が出ていた。週刊文春などは確認をとった上で実名で記事を書いている。これで大手メディアは「国民の知る権利」に応えているといえるのか。高市氏は、この問題にだんまりを続けているが、「スパイ防止法」制定や「国家情報局」など日本の行方を大きく変える政策について、説明をしない問題が多すぎる。それを「白紙委任」など、とんでもないことである。自民を大勝ちさせたら、「何かしてくれる」が大化けし、高市氏には何でもありとなるだろう。よく考えて投票してほしい。(2月1日)