岸田文雄首相は「裏金問題」の発覚以来、内閣支持率が最低を記録するなど気息奄々の政権運営が続いていた。それでも再選に挑むのではないかとの観測もある中で、終戦記念日前日の8月14日、突然、退陣を表明した。最後の〝蜘蛛の糸〟と頼った麻生太郎副総裁からの支持を得られなかったためだろう。自民党内からの退陣圧力による「追い込まれ退陣」というより、「捨てられ退陣」だったように思う。自民党内は「ポスト岸田」に走り出した。
<自民党総裁選>「安倍政治」の検証と脱却が必要だ ポスト岸田に期待できるか 激しい多数派工作でも政治理念語らず 期待なき政権交代
東洋の古典に、「トップは二つの目でしかものを見られないが、何十万何百万という国民の目でみられているから、日ごろの言動に注意が肝心だ」というのがある。岸田政治には、安倍、菅政治が右に舵を切った対米依存強化、反中国志向から、資源小国で貿易立国という立場を踏まえて、かつての宏池会の理念にあるようなバランス感覚のある新思考が期待された。岸田文雄政権の退陣は、国民の「ノー」というジャッジが、政治を動かしたと言えるだろう。また岸田氏は、自ら政治不信にけじめをつけたことは、それはそれで望ましい意思表示だった。
<米大統領選>異例の短期決戦勝利へハリス副大統領が体制固め 旋風吹き始め注目の民主党大会 罵倒で攻撃するトランプ前大統領 混迷する共和党
トランプ前米大統領は7月13日、米東部ペンシルヴェニア州バトラーで開いた選挙集会で演説中に、凶弾を受けて耳に傷を負ったが、こぶしを振り上げ「ファイト」と絶叫して支持者を感動させた。これでバイデン氏との支持率の差を広げて「もしトラ」は「ほぼトラ」へと進む勢いになった。だが、1週間後にはバイデン大統領が民主党内外の「高齢不安」に追い詰められて突然、後継にハリス副大統領を推して選挙戦から撤退し、ハリス氏は翌日から大統領選のカギを握るとされる激戦州のキャンペーンに駆け出した。この2年半、バイデン氏からの政権奪還戦略を着々と練り上げてきたその相手が突然姿を消して、トランプ氏は呆然の態。その隙にハリス旋風が吹き始め、バラバラになっていた民主党は結集した。トランプ優位の世論調査の数値も消え、ハリス氏がリードを奪取した。投票日まであと80日余り。民主党は19日からの党大会でハリス体制を固め、一気に投票(11月5日)に持ち込もうとしている。
南海トラフ地震にさらなる難題 一部区域発生時の対応困難 1週間で警戒終了発信可能か
初めての「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発せられて1週間後の8月15日、気象庁は「17時をもって発表に伴う政府としての特別な注意の呼びかけは終了した」と発表した。おそらく同庁としては十分想定していた一連の対応と思われる。翌16日早朝のあるラジオ番組でコメンテーターが「1週間で予約客のキャンセルが相次いだ宿泊施設もある。経済損失は日本全体でどのくらいに上るか」という問題提起をしていた。しかし、南海トラフ地震臨時情報に関しては、より厄介な問題が残されているように思える。
✺神々の源流を歩く✺
第50回 対馬の神と記紀の神 (上)
対馬神話、記紀神話から独自性を守る
対馬の観光物産協会でもらい受けた同協会編纂の神社ガイドブックは、対馬の神社をコンパクトにまとめていてなかなか便利だ。その中で、神社について「特に明治期に日本各地の伝承が、古事記、日本書紀の伝承によって『上書き』され、その多様性を失ってしまったのではないだろうかと強く感じる」と指摘しているが、見識だと思った。